英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第28話
~夜・ノイエ=ブラン~
「こんな場所があったのか……」
「フン……繁華街でも超一等地だな。」
「フフ、僕が顔を出しているホストクラブも近くにあるよ。そういえば、この店……前は議員先生の御用達だったけど最近は外国の賓客が多いんだって?」
”ノイエ=ブラン”に入ったロイドは驚き、ランディは鼻を鳴らし、ワジは静かな笑みを浮かべた後シャーリィ達に尋ねた。
「あー、そうみたいだね。ちなみに今日は貸し切りだから遠慮なくくつろいじゃっていいよ。さ、入った入った♪」
尋ねられたシャーリィは答えた後奥の部屋へと入って行き
「お、おい……」
「自由気ままな子だねぇ。」
その様子を見たロイドは戸惑い、ワジは口元に笑みを浮かべ
「……ガレス。お守り、ご苦労さんだな。」
「ハハ、とんでもない。」
ランディは疲れた表情で溜息を吐いた。その後ロイド達はシャーリィの後を追った。
「―――来たか、ランドルフ。」
「叔父貴……ずいぶん唐突じゃねえか?前に会ってから2週間……何の音沙汰もなかったクセによ。」
パフェを食べているシャーリィの隣にいる大男――――シグムントに呼ばれたランディはシグムントを睨んだ。
「フフ、こちらも色々やることがあってな。しかしお前がこの場にツレを連れて来るとは……2年前のお前じゃ考えられないな。」
「フン……うちのリーダーは義理堅いんでね。」
意外そうな表情でロイド達を見るシグムントにランディは疲れた表情で説明し
「―――初めまして。クロスベル警察、特務支援課、ロイド・バニングスといいます。」
「同じく支援課の準メンバーワジ・ヘミスフィアだよ。」
シグムントに見つめられたロイドとワジはそれぞれ名乗った。
「”クリムゾン商会”代表、シグムント・オルランドだ。迷惑をかけた貸しもある。ゆっくりと飲んでいくがいい。」
「……では、お言葉に甘えて。」
「ところで迷惑をかけたっていうのは旧鉱山の一件でいいのかな?」
シグムントの言葉にロイドは頷き、ワジは口元に笑みを浮かべて尋ね
「クク、さてな?腹も減ってるんだろう?すぐに料理を持ってこさせよう。」
尋ねられたシグムントは答えず話を誤魔化し
「もぐもぐ……あ、パフェもう一つ追加ね!」
パフェを食べきったシャーリィは無邪気な笑顔で言った。
「さて……積もる話もあるが。まずは客人。お前らからの質問に答えよう。それが目当ての一つだろうが?」
「……はい。話が早くて助かります。率直に言って、クロスベル警察はあなた方の動向に注目しています。特に――――どのような目的でクロスベルに滞在しているかを。」
「フフ、直球だな。俺達がここにいる理由は幾つかあるが……もちろん最大の理由は”契約”を結んだからだ。」
「それは……エレボニア政府との契約ですか?」
「フフ、ノーコメントだ。ウチの業界にとっちゃあ守秘義務に接触するんでな。」
「……なるほど。」
自分の質問に答えなかったシグムントの話を聞いたロイドは頷き
「それじゃ、エレボニアのレクター大尉との関係は?ルバーチェ跡地の買収でお世話になったそうじゃない?」
ワジが続けて質問をした。
「クク、あの戯言使いか。”鉄血”の懐刀だけあってなかなか面白い小僧だ。案外、ツァオあたりとも良い勝負をするかもしれんな。」
「え!?」
「叔父貴……あの眼鏡野郎も知ってんのか?」
シグムントの話を聞いたロイドは驚き、ランディは目を細めて尋ねた。
「去年、”連中”の縄張りをかき回した時にやり合った。正直、ぬるい仕事だったがヤツの手勢いは食い下がられてな。フフ、まさかこの街でも顔を合わせるとは思わなかったが。」
「モグモグ……ウワサの”銀”ってのには結局会えなかったんだよねー。別の仕事をしてたらしくてニアミスだったみたいでさー。確かちょっと前までクロスベルにいたんでしょ?」
「ああ、ルバーチェが消えてから音沙汰はねぇらしいが……―――って、誤魔化すな。あのレクターってヤツとの関係を聞いてんだろうが。」
「クク、つまりはノーコメントというわけだ。それ以上は察しろ。」
「チッ……」
「いいさ、ランディ。ちなみに差し支えなければでいいんですが……今回の”契約”というのはどのくらいの額なんですか?」
「ほう……」
「あはは、お兄さん、。目の付け所がイイね~。」
ロイドの質問を聞いたシグムントとシャーリィは感心し
「なるほど、そんな反応が出てくるくらいの額なんだ。1億ミラくらい出てるのかな?」
2人の反応を見たワジは頷いた後口元に笑みを浮かべて尋ね
「ノーコメントだ―――とはぐらかしてもいいが。ま、今回の契約に関してはそのくらいの額と言っておこう。」
尋ねられたシグムントは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「い、一億ミラ相当の契約……」
「フフ、豪気だねぇ。」
「……ロクでもねぇことをやろうとしてるみてぇだな。」
シグムントの答えを聞いたロイドは驚き、ワジは口元に笑みを浮かべ、ランディは溜息を吐いた。
「フフ、サービスはここまでだ。それじゃあ……そろそろ本題に入るとしよう。――――ランドルフ。前も言ったが休暇は終わりだ。貴様には近い内に次の”闘神”を継いでもらう。」
「ッ……!」
「な……」
「”闘神”……親父さんの異名だっけ?」
(へえ……?)
シグムントの言葉を聞いたランディは唇を噛みしめ、ロイドは驚き、ワジは尋ね、エルンストは興味深そうな表情をした。するとその時
「―――ざけんな!何を口走ってやがる!まさか酒に酔ったとか抜かすんじゃねえだろうな!?」
ランディが怒りの表情で怒鳴った!
「フフ、簡単な話だ。”赤い星座”を率いるのは”闘神”でなくてはならん。そして、それを継ぐのは兄貴の息子である貴様の義務だ。」
「な、何で俺が…………”闘神”が必要ってんならアンタが継ぎゃあいいだろう!?何ならシャーリィでもいい!女じゃいけない理由はねえはずだ!」
「俺はあくまで”戦鬼”……戦場を蹂躙するだけの存在。兄貴みたいにはなれんし、また、なりたいとも思わん。それは娘も同じ……いや、ある意味俺以上だろう。」
「うんうん、シャーリィも”闘神”なんて柄じゃないなぁ。」
「ぐっ…………」
シグムントとシャーリィの話を聞いたランディは唇を噛みしめた。
「―――ランドルフ。貴様にはわかっているはずだ。兄貴が何故、”赤い星座”をも滅ぼしかねんメンフィル帝国軍に挑んだのかを。」
「………あ………」
「かつて兄貴は貴様に”試練”を与えた。そして貴様はそれを乗り越え、見事”闘神”を継ぐ器を示した。―――お前も気付いているはずだ。もう”他のもの”にはなれんことを。」
「……ッ……!」
「”闘神”を継ぐ試練……」
(クク、どんな試練だったのか気になるねぇ。)
不敵な笑みを浮かべたシグムントに視線を向けられたランディは唇を噛みしめ、ロイドは驚き、エルンストは不敵な笑みを浮かべていた。
「えへへ、今はヘタレてるけど昔のランディ兄は凄かったよね。なにせ”西風”の大部隊を撃破するために、あの村を―――」
そして興味深そうな表情をしたシャーリィが話しかけたその時
「―――黙れ。頼むから……それ以上喋るな。」
ランディは膨大な殺気を纏って叫んだ後呟き、そして身体を震わせ
「……ランディ……」
「………………………」
(あっははははっ!一瞬だが本性がでたねぇ!さすがは”闘神”なんてとんでもない異名を受け継ぐ器を持っているだけはあるねぇ!)
ランディの様子を見たロイドは驚き、ワジは黙り込み、エルンストは凶悪な笑みを浮かべていた。
「ダサ……ちょっとショックだなぁ。これでも昔はランディ兄に憧れてたこともあったのにさー。」
一方シャーリィはつまらなさそうな表情をした後溜息を吐いた。
「……クク。そのくらいにしておけ。今夜は帰るぞ、シャーリィ。」
「ん、わかった。」
そしてシャーリィはシグムントと共に立ち上がり、シグムントはランディに近づき
「その姿、兄貴が見たらどう思うかよく考えてみろ。それ以上無様をさらす前に従うか、逃げるか、抗うか決めるがいい。―――さもなくば。死ね。」
ランディを静かに見下ろして言った後凶悪な笑みを浮かべた!
「……!」
シグムントの言葉を聞いたロイドは表情を厳しくし
「………………………」
ランディは黙り込んでいた。
「ふふっ、お休みランディ兄♪お兄さんたちもまたね~♪」
そしてシグムントとシャーリィは去って行った。
「……ったく、お嬢たちを連れて来なくてよかったぜ…………さすがにカッコ悪すぎだろ……」
2人が去った後黙り込んでいたランディは顔を上げて無理矢理笑顔を作り
「ランディ……」
ランディの様子をロイドは心配そうな表情で見つめた。
「……すまねえな。無様なところを見せちまったみたいだ。」
「……そんな風に言うなよ。どう考えても……おかしいのは彼らの方だろう?」
「フフ、でもそこまでヘコんでるところを見ると―――意外と図星だったみたいだね?」
「ワジ……!」
ランディに尋ねたワジをロイドは声を上げて睨み
「クク……イヤな野郎だ。ああ……そうだ。この上もなく図星で……痛いところを突かれちまった。」
ランディは凶悪な笑みを浮かべてワジを見つめた後頭を下げて身体を震わせていた。
―――その後、ロイド達は車を手配しようとする支配人の申し出を断ってから帰途についた。心配そうに待っていたリィン達とセルゲイ達に無事な姿を見せ……眠そうなキーアを寝かしつけてからロイド達は事の顛末を報告した…………
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