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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第27話

遊撃士協会に入ったロイド達はミシェルの好意によってアリオスが戻るまで支部の2階でくつろぎ、アリオスが戻ると情報交換を始めた。



~夕方・遊撃士協会・クロスベル支部~



「―――なるほどな。”クリムゾン商会”というのにそんな裏があったとは……」

「最近、帝都方面の情報が入りにくくなってたものねぇ。ありがと、おかげで助かったわ。」

ロイド達の話を聞いたアリオスは頷いた後考え込み、ミシェルは溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべた。

「いえ、お役に立てたら幸いです。」

「しかし”赤い星座”の情報はそっちの方でも掴んでないわけ?ギルドって、猟兵団と小競り合いをすることが多いって聞くけど?」

「確かに多いが”赤い星座”クラスの大物と事を構える機会は滅多にない。……下手をすればお互い全面戦争になりかねないからな。」

ワジに尋ねられたアリオスは重々しい様子を纏って答え

「そこまで……」

「遊撃士と猟兵……まさに正反対の存在ですしね……」

「何が何でも民間人を守る存在……金に雇われてどんな非道な事もする存在……よく今まで潰し合わなかったものね。」

「ちょっとした小国の軍隊レベルみたいですね……」

アリオスの話を聞いたエリィは厳しい表情をし、リィンとエルファティシアは真剣な表情で呟き、ノエルは不安そうな表情で言った。

「―――数ある猟兵団の中でも”赤い星座”は別格といえるわね。大陸全土のコネクションを持ち、紛争の兆しあらば即座に介入して自分達を高く売り込む……同じ猟兵団で匹敵しそうなのはかつて存在していた”西風の旅団”くらいかしら?」

「たしか、ルバーチェの若頭の古巣だった場所だったっけ?」

「……あっちもあっちで歴戦の猛者どもが集まる猟兵団だ。特に”猟兵王”と呼ばれたトップは化物みたいなヤツだったが……1年前のリベールの”異変”の件で”空の覇者”に討ち取られたらしい。」

ワジの疑問にランディは目を細めて答え

「一応、その情報についてはギルドの方でも把握しているわ。”異変”の際、”西風の旅団”はリベールの援軍要請に応えたメンフィル軍との戦いによって一人残らず殲滅されたから事実上壊滅しているそうだけど……”赤い星座”もその時の戦いでおよそ半数を失ったにも関わらず精力的に活動しているみたいね?」

ランディの話にミシェルは頷いた後真剣な表情で尋ねた。

「叔父貴が残っているからな。―――赤い星座の副団長、”赤の戦鬼(オーガロッソ)”シグムント。”闘神”と”猟兵王”に匹敵するほどの化物だ。」

「その3人は特に有名だろう。―――話を聞く限りでは、俺ですら太刀打ちできるかどうか。」

「そ、そんな……!?」

「”風の剣聖”が太刀打ちできない……?」

(相当厄介ね……)

アリオスの言葉を聞いたロイドは驚き、エリィは信じられない表情でアリオスを見つめ、ルファディエルは考え込んでいた。

「うーん、アタシの見る限りじゃ五分五分くらいかしら?剣士と猟兵じゃ、戦闘スタイルも得意とする間合いも違ってくるし。」

「……だな。アンタは確かに強いが叔父貴も正真正銘の化物だ。やり合えばお互いタダじゃすまねえだろう。……まあ、あのセリカって言うエステルちゃんが遊撃士協会に残して行ったとんでもない助っ人やヴァイスハイト局長、後はギュランドロスのオッサンが戦えば話は別かもしれねぇが……」

「……エステルちゃんに感謝ね。アリオスをあしらうほどのとんでもない強さを持つ助っ人を残して行ってくれたんだから。それに今のクロスベルにはあの”紅き暴君”や”黄金の戦王”だけじゃなく、”六銃士”全員が揃っているからね。彼らと協力し合えば勝利も見えてくるわね。」

「ああ、わかっている。―――だが必要とあらば敵対することもあり得るだろう。そしてその際にはセリカ殿達にも助力を頼むつもりだ。問題は彼らが何の目的でクロスベル入りをしたかだが……」

アリオスに言ったランディの言葉を聞いたミシェルは安堵の表情で溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべ、アリオスは重々しい様子を纏って頷いて答えた後ある事を言い、アリオスの言葉を聞いた全員は考え込んだ。



「結局そこですよね……」

「これだけ情報を集めてもそこがわからないんじゃねぇ。手掛かりはエレボニア政府が絡んでいるってことくらい?」

考え込んだ後何も思いつかなかったノエルは溜息を吐き、ワジも溜息を吐いた後言った。

「それなんだけど……一つ、気になる情報があるのよ。共和国方面でアリオスが掴んできてくれたんだけど。」

「え……?」

「どんな情報ですか?」

「ああ――――”黒月(ヘイユエ)”についてだ。どうやら現在、共和国政府が”黒月”の長老たちと何かの取引を行っているらしい。」

「本当ですか……!?」

「”黒月”の長老というとシン君のおじいさまもそうね……」

アリオスの情報を聞いたロイドは驚き、エリィは黒月を訪ねた際、ツァオよりある人物の観光案内を依頼されて実行し、その時の人物の事を思い出した。

「……それでね。もう一つポイントなんだけど。その取引を主導したのがキリカ・ロウランって女性なの。」

「ええっ!?」

「それって……まさか、あのキリカさん!?」

「へえ、競売会の時に見かけた黒髪のお姉さんか。」

「実は、彼女は遊撃士協会とも縁がある人物でな……リベールのツァイス支部で受付をしていた経験もある。だが、1年ほど前に引退し、カルバードの情報機関に移籍した。その機関の名前を”ロックスミス機関”という。」

「そうだったんですか……」

「ロックスミス……共和国の大統領の名前ですね。」

アリオスの話を聞いたロイドは溜息を吐き、ノエルは考え込み

「大統領主導で、新たな情報機関が設立された話は聞きましたが……ちょ、ちょっと待ってください!”赤い星座”と”黒月”は以前抗争しているんですよね!?その2つに、二大国の諜報関係者がそれぞれ接触しているという事は……」

エリィは溜息を吐いた後ある事に気付いて表情を厳しくした。

「フフ、見事な対立構図が出来上がりつつあるというわけだ。」

「くっ……」

「ま、まさかクロスベルの地でエレボニアとカルバードの代理戦争を……!?」

そして静かな笑みを浮かべて言ったワジの言葉を聞いたロイドは唇を噛みしめ、ノエルは厳しい表情になった。

「当然、その可能性も考えられるわね。特に明日からの通商会議では。エレボニアからの宰相に皇子、カルバードからは大統領が来るわ。お互い機に乗じて、相手のトップを抹殺するつもりかもしれないけど……」

「だが、それにしてはお互い、接触を隠していないのは不自然だ。仮に”黒月”や”赤い星座”が動けばそうした背景が明るみに出て国際社会の非難を招き寄せるだろう。エレボニアにしてもカルバードにしてもそれだけのリスクを負うとは思えん。」

「う、うーん……」

「……確かに、短絡的な攻撃を仕掛ける状況ではありませんね。でも、それならどうして……?」

(裏組織を利用してまでやる事……ね…………元々二大国はクロスベルを手に入れる機会を狙っていたから、それに関する事だと思うのだけど……問題は通商会議で何のために裏組織を使うかね。)

ミシェルとアリオスの話を聞いてノエルとエリィは考え込んだが答えは出なく、ルファディエルも考え込んでいた。

「クソ、叔父貴ども、一体何を考えてやがるんだ……?」

「―――いずれにせよ、現在出来つつ構図には何らかの意味があるはずです。多分、俺達が手に入れていない”欠けたピース”があるはず……それを掴む必要がありそうですね。」

「あ……」

「フフ、なるほどね。」

「ウフフ、さすがロイド君。先回りされちゃったわね。」

「実は、我々も同じ見解でな。その”欠けたピース”についてはギルドの情報網を駆使して現在当たりを付けている最中だ。」

ロイドの言葉を聞いたエリィは明るい表情をし、ワジは口元に笑みを浮かべ、ミシェルは感心し、アリオスは口元に笑みを浮かべて言った。

「そうだったんですか…………」

「そんじゃ、何かわかったらこっちにも教えてくれんのか?」

「ええ、新たな事実が判明しだい、警察本部にも連絡するわ。」

「お前達の方でも何か掴んだら知らせてくれ。明日から3日間を何事もなく乗り切るためにな。」

「了解しました……!」

「何か判明したらすぐにお知らせします。」

その後、ツァイトと共にキーアとシズクがギルドに戻って来た。ロイド達は、父娘水入らずで夕食に行くというアリオスたちに別れを告げて支援課に戻る事にした。


~夜・中央広場~



「そういえば、明日はシズクちゃんとデパートの屋上に行くんだったっけ?」

「うんっ!じょまくしき、だっけ?いっしょに見ようってヤクソクしたのー。」

「ふふっ、そうなんだ。以前ならともかく今のシズクちゃんなら、見る事も可能ね。」

「うんっ!楽しみだって言ってたよ~!シズク、『こんな楽しみを手に入れられたのも、みんなティア様のおかげ』って嬉しそうに言ってたよー!」

「そっか……」

「……よかったよな。あの子の目がある程度見えるようになって。」

「……俺達の世界で盲目を治すなんて信じられないような治療だしな。」

「フフ、初めて教団事件が役に立ったかもしれないわね。そのおかげでイーリュンの高位司祭がクロスベルに留まる事ができたのだから。」

嬉しそうに話すキーアの話を聞いたロイドとランディは口元に笑みを浮かべ、リィンとエルファティシアは静かな笑みを浮かべて言った。

「ねえねえ、ランディ―。さっきから元気ないねー?」

一方ランディの顔を見たキーアは心配そうな表情で見つめ

「ハハ、そんな事ねぇって。シャキーン、ホレ見ろ!いつも通りのクールでハンサムなナイスガイだろ?」

見つめられたランディはわざとらしいポーズをとって笑顔でキーアを見つめた。

「ないすがいー?」

「先輩、ナイスガイはさすがに死語なんじゃ………」

「フフ、空元気も元気のうちってことかな?」

ランディの言葉にキーアは首を傾げ、ノエルは苦笑し、ワジは口元に笑みを浮かべて言った。

「ええい!混ぜっ返すな、後輩ども。」

そして2人の言葉を聞いたランディは突っ込んだ。

「ハハ……でもランディ、あまり一人で思いつめないでくれよな?」

「そうね、こういう時のために私達がいるんだから……くれぐれも自分だけで何とかしようと思わないでね?」

「ハハ、わかってるって。――――ただまあ一応、俺の身内でもある連中だ。一応、腹を割って話してみようとは思ってる。」

「それは……」

「……危険じゃないのか?」

ランディの提案を聞いたエリィは不安そうな表情をし、ロイドは真剣な表情で尋ねた。

「ま、勝手知ったるヤツだ。しかし叔父貴のヤツ、話があるとか抜かしながら全然、音沙汰がねぇんだよな。」

「ああ、昼に訪ねてみた時も不在だったみたいだしな……」

そしてロイド達は支援課のビルに向かって行った。



「ふう、さすがに腹が減ったな。そういや課長や局長達は、今夜は遅くなるんだったよな?」

「ああ、明日の除幕式の段取りが長引いてるみたいだからな。」

「ふふ、だったら今日は外食で済ませるのもいいかもしれないわね。」

「あ、たまにはいいですね。」

「すると、レストランか龍老飯店あたりになるかな?」

「フフ、そういえばこのメンバーになってまだ外食はしていないわね。」

「……少し、楽しみだな。クロスベルは様々な国の料理が食べられるし。」

「ああ、荷物を置いたらみんなで出かけようか――――」

ビルの近くまでロイド達は話し合い、ビルの近くで立ち止まったその時

「グルルルル……」

ツァイトがビルの入り口を睨んで唸っていた。

「ツァイト?」

「どうしたの?」

ツァイトの様子を見たロイドとエリィは不思議そうな表情をし

「んー、なんかお客さんが来てるって言ってるよー?」

キーアが不思議そうな表情で言った。

「お客さん?」

「こんな夜に一体誰だろう?」

キーアの言葉を聞いたロイドとリィンは不思議そうな表情をし

「…………………」

ランディは目を細めて入口を睨んだ後ビルの中に入って行った。

「ランディ?」

「……とにかく入ろうか。」

そしてロイド達もランディの後を追って行った。



~特務支援課~



ロイド達がビルの中に入るとソファーにくつろいでいる赤毛の少女をランディは睨んでいた。

「な……!」

「ランディの従妹の……」

状況を見たロイド達は驚き

「えへへ、どもども。シャーリィ・オルランドでーす。遅かったねー。待ちくたびれちゃったよ。」

一方少女―――シャーリィは驚いているロイド達に無邪気な笑顔を見せた。

「……お前……一体、何しに来やがった……?」

「あ、つれないなー。ランディ兄は。2年ぶりの可愛いイトコに素っ気なさすぎるんじゃないの?」

「いいから答えろ……何しに来やがった。いや――――ここで何をしていた?」

目を細めたランディがシャーリィに尋ねたその時

「ふふっ……――ぬるいね、ランディ兄。対人トラップを仕掛けてたら入った瞬間に挽肉になってたよ?いつからそんなに腰抜けになっちゃったのさー?」

シャーリィは不敵な笑みを浮かべて尋ねた。

「………………………」

「あ、貴女…………」

「いきなり何を……!」

(この歳でそんな事を考えるなんて…………さすがはあの”赤い星座”に所属している事はあるな……)

シャーリィに尋ねられたランディは目を細めてシャーリィを睨み、エリィとノエルは厳しい表情でシャーリィを睨み、リィンは真剣な表情でシャーリィを見つめていた。

「ふふっ、心配しなくてもトラップとかは仕掛けてないよ。ランディ兄一人だったら、そんなお遊びもアリだったけど。”戦争中”でもない限り、一般人は巻き込みたくないからね。」

「っ…………」

「まさに遊撃士とは正反対の存在ね……」

そしてシャーリィの言葉を聞いたエリィは唇を噛みしめ、エルファティシアは目を細めてシャーリィを見つめ

「ほえ~………」

キーアは呆け

「ふう……こりゃまた過激な子だねぇ。」

ワジは溜息を吐いた。



「……―――君。シャーリィといったか。改めて……支援課のロイド・バニングスだ。」

「あ、どもども。こないだはゴメンねー?つい耳たぶ噛んじゃってさ~。」

「……それはともかく。ここはクロスベル警察の分室で君の座っているそのソファーも公費で賄われたものだ。トラップだの巻き込むだの……子供の前で不用意な発言は控えてもらおうか?」

「あはは、ゴメンゴメン。つい懐かしかったからお兄にジャレつきたくってさ~。」

「……フン。お前が俺になつくタマか。大方、叔父貴の使いで俺を呼びに来たんだろうが?」

ロイドに睨まれ、無邪気に笑って答えたシャーリィの言葉を聞いたランディは鼻を鳴らした後目を細めてシャーリィを見つめて尋ねた。

「え……!」

「それって……」

「ふふっ、正解。」

ランディの言葉を聞いたロイドとエリィは驚き、シャーリィは頷いた後立ち上がった。

「パパが言ってたでしょ?いずれ話があるって。明日から忙しくなりそうだし。今晩あたりはどうかだってさ。あ、別に断ってもいいけど?」

「ハッ、断った場合でも”手段”を選ばねぇってんだろ?お見通しなんだよ。……お前らのやり方は。」

「ふふっ。調子が戻ってきたみたいだね。パパは”ノイエ=ブラン”で先にやってるけど、どうする?」

「フン、いいだろう。みんな、悪いが夕食は俺抜きで―――」

シャーリィの言葉に頷いたランディがロイド達に言いかけたその時

「ねえねえ、ランディ。このお姉ちゃん、ひょっとして悪いヒト―?」

キーアが真剣な表情でランディに尋ねた。

「ちょ、キーア!」

「キーアちゃん、下がって……!」

キーアの言葉を聞いたロイドとエリィは声を上げてキーアをシャーリィから距離を離した。

「悪いヒトは酷いなぁ。ていうか何その子!?メチャクチャ可愛くない!?」

一方シャーリィは溜息を吐いた後興味深そうな表情でキーアを見つめ

「んー?」

見つめられたキーアは首を傾げ

「ウチで預かってる子でな。―――手を出したら殺すぞ?」

ランディは静かに答えた後凶悪な笑みを浮かべてシャーリィを見つめ

「……!」

「っ…………」

(あっははははっ!中々良い殺気じゃないか!さすがはあたいが見込んだ男だ!)

ランディの様子を見たロイドは表情を厳しくし、エリィは不安そうな表情をし、エルンストは笑った後凶悪な笑みを浮かべた。

「あはは、わかった。少なくともこのビルを爆破するのは止めておくよ。あ、モチロン冗談だからね?」

(な、なんて会話……)

(こりゃ、心臓に悪いね。)

笑っている様子のシャーリィを見たノエルは溜息を吐き、ワジは真剣な表情で呟いた。

「―――ま、そういう事だから叔父貴んトコに顔を出してくる。今夜中に戻るからあんま心配しないでくれや。」

「で、でも……!」

「さすがに危ないんじゃ……!」

ランディの言葉を聞いたエリィとノエルが不安そうな表情で声をかけたその時

「―――なあ、ランディ。だったら俺も挨拶に伺っていいかな?」

ロイドが信じられない提案をした。

「!?」

「ええっ!?」

「ロ、ロイドさん……!?」

「一応、支援課のリーダーとして同僚の身内に挨拶するのは礼儀だろうからな。それに高級クラブなんていい社会勉強になりそうだし。」

仲間達が驚いている中ロイドは仲間達に説明した。

「へぇ……面白いね、お兄さん。いいじゃんいいじゃん、せっかくだから付いてきなよ♪」

一方話を聞いていたシャーリィは興味深そうな表情をした後笑顔で言い

「フフ、だったら僕もご一緒させてもらおうかな。高級クラブ”ノイエ=ブラン”……一度遊んでみたかったんだよね。」

ワジは静かな笑みを浮かべて言った。

「キレイなお兄さんもどうぞ!あれ……ひょっとしてお姉さん?」

「フフ、一応お兄さんってことになっているみたいだけど?」

シャーリィの疑問にワジが笑顔で答えたその時

「だあああっ!なに考えてんだお前ら!?シャーリィ、お前も勝手に話を進めんじゃねえ!」

ランディは声を上げた後シャーリィを睨んで指摘した。

「まあまあ。車で送り迎えするからさ。そうだ、お姉さん達も来る?あ、でもその子と狼はさすがに連れていけないなぁ。」

「―――エリィ、ノエル、リィン、エルファティシアさん。夕食はキーアと済ませてくれ。それと課長と局長達に一応、連絡を。ツァイトは課長達が戻るまでここの守りをよろしく頼む。」

「ウォン。」

「で、でも……!……わかった。留守の方は任せて。」

「……気を付けて下さい!」

「こっちの方は俺達で守っているよ。」

「……ま、頑張ってきなさい。」

「ねえねえ、ロイド。どこかに出かけるのー?」

「ああ、ランディ達とちょっと出かけて来るよ。遅くなるかもしれないから夜更かししないで寝るんだぞ?」

「うんっ!行ってらっしゃい!」

「クソ、どうしてこんな事に……」

次々と話が勝手に進んで行くのを見たランディは溜息を吐き

「ま、腹を括るしかないんじゃない?」

ランディの様子を見たワジは口元に笑みを浮かべて言った。その後ロイド達はシャーリィの先導によって中央広場に停車しているリムジン車に近づいた。



「これは……」

「たしかラインフォルト社の防弾リムジンだっけ?」

リムジンを見たロイドは驚き、ワジは尋ね

「フン、さっそくこんな代物まで買ったのか。さすがに景気がいいじゃねぇか?」

ランディは鼻を鳴らした後口元に笑みを浮かべてシャーリィを見つめた。

「あはは、おかげさまでガッポリ稼いでるからねぇ。」

ランディの言葉にシャーリィが答えたその時、リムジンの扉からスーツ姿のサングラスをかけた男が出てきた。

「シャーリィ様、お疲れ様です。それと若―――ご無沙汰しておりました。」

「ガレス……久しぶりだな。それはともかく、さすがに若ってのはよせよ。」

男―――猟兵の一人、ガレスに言われたランディは答えた後溜息を吐いた。

「……バルデル様の件、お聞きになったかと思います。本当に惜しい方を……心よりお悔やみを申し上げます。」

「……ああ。」

「湿っぽい話はナシナシ!今夜はパーッと行くんだから!ささ、乗って!お兄さんたちも早く早く!」

「ああ……それじゃあ遠慮なく。」

「フフ、お邪魔するよ。」

そしてロイド達はリムジンに乗り込み、ガレスも乗り込んだ後運転を始めた。



「フフ、さすが豪華だねぇ。猟兵団ってのはそんなに儲かるのかい?」

「うーん、ウチは特別かな?資産家や大貴族のお得意様も多いし、1千万ミラとか普通に入ってくるよ。」

「ヒュウ♪」

シャーリィの話を聞いたワジは口笛を吹き

「そんなに……」

「……トップクラスの猟兵を抱えたらそれなりに維持費もかかるしな。当然、武装は最新のものばかり―――そろそろ飛行船でも手に入れたかよ?」

ロイドは驚き、ランディは頷いて答えた後目を細めてシャーリィを睨んで尋ねた。

「あはは、それはまだ。やっぱり頑丈さだとリベールの軍用艇がいいんだけどなかなか裏に流れないからねぇ。ま、いざとなったら潜入して奪っちゃうって手もあるんだけど♪」

(……冗談だよな?)

(ま、そういう事にしとけ。)

笑顔で言ったシャーリィの言葉を聞いたロイドは冷や汗をかいてランディに尋ね、尋ねられたランディは溜息を吐いて言った。一方その頃、エリィは端末である人物と通信をしていた。



「そうですか………そんな事に。」

「ええ……ごめんなさい。せっかくティオちゃんがまた連絡してくれたのに。」

通信相手―――ティオの言葉にエリィは申し訳なさそうな表情で答えた。

「……いえ。話が聞けてよかったです。とりあえず、今日はこれで。また連絡させてもらいます。」

「ええ、わかったわ。」

「ティオ、またねー!」

「その……あんまり心配しないでね?」

「はい、失礼します。」

そしてエリィ達はティオとの通信を終えた。

「ふう……ロイド達……本当に大丈夫かしら。」

「相手が相手だけにさすがに心配ですね……」

「まあ、相手は何といってもあの”赤い星座”だからな…………」

「う~ん、さすがに心配しすぎだと思うわよ?ロイド達にも一応心強い護衛―――ルファディエル達がいるのだから。」

通信を終えたエリィ達はそれぞれ話しあっっていた。するとその時

「おー、帰ったぞ。」

「ただいま帰りました。」

「やっと、帰って来れたか……」

セルゲイ達の声が聞こえ

「あ、かちょー達だ!」

声を聞いたキーアがエリィ達と共に声が聞こえた方向を見つめるとセルゲイやアル、ヴァイスがビル内に入って来た。

「課長……!それに局長達も……!」

「ちょうどいい時に帰ってきましたね……」

「お、お疲れ様です。」

「随分、長引いたのね。」

セルゲイ達を見たエリィとリィンは明るい表情をし、ノエルとエルファティシアは声をかけた。

「遅くなった。状況は変わっていないか?」

「ええ、先程連絡した時のままで……」

「……あたし達も店の近くで待機した方がいいんでしょうか?」

自分達に近づいて尋ねたセルゲイの言葉にエリィは頷き、ノエルは尋ねた。

「ま、そう心配すんな。”ノイエ=ブラン”周辺には一課の監視も入ってるからな。」

「あ……!」

「そ、そうだったんですか。」

「ただ、連中がその気になれば監視の目も潰されるかもしれん。……とにかく今夜は連中(あいつら)の帰りを待つしかねぇだろ。」

「フッ……それにしても話に聞いた時に思ったがロイドも中々大胆な事をする。クッ……もう少し早く会議が終わっていれば俺も付いていったものを……!」

「きょ、局長……!」

「無茶苦茶な事をしているとはいえ、仮にも貴方は警察(おれたち)のトップなんですからそんな危険行為は止めて下さいよ……万が一の事があったらどうするつもりですか……ただでさえ、貴方はエレボニア、カルバードの両政府から厄介者扱いされて睨まれている存在なんですから…………」

「そうですよ!」

口元に笑みを浮かべて言った後悔しそうな表情で言ったヴァイスの言葉を聞いたエリィは冷や汗をかき、セルゲイは疲れた表情で溜息を吐いて言い、ノエルも力強く頷き

「ハッハッハッ!なんだ?俺の行動に普段から頭を痛めている割には心配してくれるんだな?それに俺の女性関係で煩く言うノエルも俺を心配してくれているのか?」

ヴァイスは笑った後静かな笑みを浮かべてセルゲイとノエルに視線を向け

「あ、当たり前ですよ!女性関係にだらしない人とは言えフランが本気で交際している人なんですから……局長になにかあったらフランが悲しみます!」

「……まあ、貴方が警察(おれたち)にとって必要な存在である事には変わりありませんので……というか自覚しているなら、少しは無茶苦茶な行動を控えて下さいよ……」

視線を向けられたノエルは真剣な表情で答え、セルゲイは静かな表情で答えた後溜息を吐き

「フフ………それにしてもヴァイスハイト。ロイド達に付いていけなかった理由は他にもあるでしょう?」

「そうですね。」

その様子を微笑みながら見ていたエルファティシアは小悪魔な笑みを浮かべてヴァイスに尋ね、エルファティシアの言葉にアルは頷いた。



「ほう?やはり2人にはバレたか。」

ヴァイスは静かな笑みを浮かべて言い

「え…………そうなんですか?」

「一体他にどんな目的が……」

ヴァイスの答えを聞いたリィンは意外そうな表情をし、エリィは不思議そうな表情でヴァイスを見つめたその時

「それは勿論、高級クラブに行けなかった事でしょうね。」

「そうね♪高級クラブだったら綺麗な女性がたくさんいるでしょうしね♪」

アルは静かな笑みを浮かべて言い、エルファティシアは笑顔で話を続け

「その通り!クッ………つくづく惜しい事をした!」

ヴァイスは力強く頷いた後悔しそうな表情をし

「ハ、ハハ…………」

「きょ、局長…………」

「ううっ……何でこんな人にフランが……」

「ハア…………」

ヴァイスの様子やアル達の答えを聞いたリィンは苦笑し、エリィとノエル、セルゲイは疲れた表情で溜息を吐いた。



その後高級クラブ”ノイエ=ブラン”に到着したロイド達はシャーリィ達と共に店の中へと入って行った…………………… 
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