英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~タングラム門の警備隊演習の参加要請~前篇
その後行動を開始したロイド達は緊急要請の依頼者の元に向かった。
~タングラム門~
「―――ようやく来たな。」
部屋に入って来たロイド達を見た警備隊員の男性はロイド達に声をかけ
「あ……」
声をかけられたロイドは声を上げた後仲間達と共に警備隊員に近づいた。
「ダグラス少尉……お疲れ様です!」
「よう、シーカー曹長。特務支援課とやらの居心地はどうだ?」
「ハッ!毎日色々と勉強させていただいています!」
警備隊員―――ダグラスに尋ねられたノエルは敬礼をして答えた。
「はは、それはなによりだ。今後のためにも、しっかり精進するがいい。」
「ノエルさん、この方が……?」
「……おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名はダグラス。この度、警備隊の少尉に就任した者だ。お前達の事は副司令から詳しく聞いている。以後お見知りおき願おう。」
「よろしくお願いします。」
「リィン・シュバルツァーです。以後、お見知りおきを。」
「フフ、見た目通りの人物のようだね。」
「ええ、話通りの人物ね。」
「あんたも相変わらず元気そうだな、ダグラスの兄さん。」
ダグラスの言葉を聞いたエリィとリィンは会釈をし、ワジとエルファティシアは口元に笑みを浮かべ、ランディは話しかけた。
「お前さんもな、ランディ。ベルガード門でのリハビリ訓練、ご苦労だった。それと―――ロイド。会うのは久しぶりだな。先の教団事件じゃ、随分と活躍したらしいが。」
「はは……ご無沙汰してます。教官が少尉になったって聞いて本当に驚きましたよ。あの『鬼のダグラス』にこってり絞られた記憶が鮮明に蘇ったというか……」
「おいおい、昔のあだ名なんか持ち出すもんじゃないぞ。まったく、恥ずかしいだろうが。第一俺なんかよりエルミナ大尉の方が『鋼鉄の鬼上官』っていわれるほど容赦がなく、おっかないぞ?」
「ええっ!?ダ、ダグラス教官よりですか……!?」
「ア、アハハ……あたしもエルミナ大尉の訓練に参加させてもらった事がありますけど、あたしもエルミナ大尉に凄い恐怖を感じましたよ……」
「そうなんだよな……美人なのに、これがまたとんでもなく恐ろしいんだよ…………あの局長は一体どんな手を使って、あのエルミナ大尉を惚れさせたのか、未だにわかんねぇよ……」
ダグラスの話を聞いたロイドは驚き、ノエルは苦笑し、ランディは疲れた表情で溜息を吐き
(うーん、警察学校では厳しい人だったみたいね……それにしてもエルミナ大尉ってそんなに厳しい方なのかしら?)
(ええ、それはもう”鋼鉄の軍師”と呼ばれたほどとんでもなく固く、厳しい人よ。……まあ、ヴァイスハイトのお陰で大分柔らかくなったようだけど……)
その様子を見ていたエリィは呟いた後首を傾げ、エリィの言葉を聞いたエルファティシアは溜息を吐いて言った後口元に笑みを浮かべた。
「……おっと、これくらいにしておこう。今日は仕事でわざわざ来てもらったんだからな。」
「仕事というと……『演習への参加要請』だね?」
「ああ、その通りだ。今回の演習は、お前達特務支援課を叩き直すのが目的だ。俺の厳し~い訓練をバッチリ受けていってもらうぞ。」
「へっ……警備隊じゃなく、俺達のためなんですか?」
ダグラスの話を聞いたロイドは意外そうな表情で尋ねた。
「ま、もちろん警備隊員にもいい経験になるだろうしな。なお、警察の上層部にはすでに話を通していてな。公式な合同訓練という名目だ。」
「なるほど……支援要請っていうよりは割とちゃんとした訓練みてえだな。」
「ハハ、まあそういうことだな。――――ただし、この訓練にはエルファティシア・ノウゲート。お前は参加できない事になっている。」
「え……」
「あら、どうしてかしら?」
ダグラスの説明を聞いたロイドは呆け、エルファティシアは意外そうな表情で尋ねた。
「お前の持つ力があまりにも強すぎる為だ。ギュランドロス司令やヴァイスハイト局長達からお前の強さを聞いたり、教団事件によるお前の活躍を報告書で見たが……お前がロイド達と共に戦っちまうとお前の魔術やアーツによって警備隊員達がほぼ一撃でやられちまう上治癒魔術なんか使われちゃ、一瞬で逆転されるからな。そのせいでロイド達を鍛え直す意味や警備隊を鍛える意味がなくなっちまうからな。それにお前の場合はロイド達と違って、既に”完成した”強さを持っている者だ。そんな奴が一緒になったら反則だろうが。」
「た、確かにエルファティシアさんの魔術やアーツの威力は凄いですものね……」
「実際、グノーシスで強化された警備隊員も一撃で戦闘不能にしていたしな……」
ダグラスの話を聞いたエリィやロイドは苦笑し
「か~っ!エルファティシアちゃんだけズルすぎだろっ!」
「全く、羨ましいよ……僕と変わって欲しいくらいだ。」
「ワジ君は一番鍛えないと駄目な人でしょうが………」
「うふっ♪みんな若いんだから、頑張りなさい♪」
「お、俺達と大して変わらない容貌でそんな事を言われても、違和感しか感じないのですが……」
ランディとワジは溜息を吐き、ノエルは呆れた表情でワジを見つめ、エルファティシアは口元に笑みを浮かべて呟き、その言葉を聞いたリィンは冷や汗をかいて苦笑していた。
「こちらの準備はすでにできている。あとはお前達次第だが……」
「一度、装備や道具の確認をした方がいいかもしれないわね。クオーツの構成も見直した方がいいかも。」
ダグラスの確認を聞いたエリィはロイドに助言し
「どうする、早速演習を始めてもいいか?」
ダグラスは再び尋ねた。
「ええ、こちらも準備はできてます。」
「よし。シーカー曹長も、警備隊が相手だからといって戸惑わないようにな。警備隊員と相対することで新たに学べることもあるだろう。」
「はっ、了解しました!」
「それでは、早速演習を開始するぞ。全員、屋外の駐車場に移動してくれ。」
その後ロイド達は演習する場所に移動した。
「それではこれより”ダグラス式演習プログラム”を開始する。双方、準備はいいか?」
「ダイモン隊員以下5名、準備完了しております。」
「特務支援課も、同じく。」
「よし。なお、これから行う戦闘では、特務支援課チームのアーツの使用を一切禁止する。」
「ちょ……ちょっと待ってください!こちらだけアーツなしなんて、さすがに不利すぎるんじゃ……」
ダグラスの説明を聞いたロイドは驚いた後意見をしたが
「なるほどな、これが噂の”ダグラス式”の一つってわけか。」
ランディは納得した様子で頷いた。
「その通り。この演習プログラムは、様々な不利な条件を踏まえてどう戦うかを試すものだ。そうすることで、様々な状況に対応する力を高めるのが狙いなのさ。その為、不利な条件があっても意味がないエルファティシア・ノウゲートは真っ先に演習のメンバーから外させてもらった。」
「なるほど、『鬼』の名は伊達じゃないってことだ。フフ……面白くなってきたじゃないか。」
「ふぅ……やるしかないみたいね。」
ダグラスの説明を聞いたワジは静かな笑みを浮かべ、エリィは溜息を吐いた。
「話はついたようだな?それでは……全員、構えをとれ!」
そしてダグラスの号令の元、警備隊員とロイド達はそれぞれ武器を構えた。
「はっ!!」
「相手は戦闘のプロ、警備隊員……しかもアーツは使えない上エルファティシアさんの援護はなし、か。みんな、油断するな!絶対に活路を見いだせるはずだ!」
「りょ、了解です!」
「……始めっ!」
そしてロイド達は戦闘を開始した!
「みんな、一気に行くぞ!!」
戦闘開始早々ロイドはクラフト―――鼓舞で仲間達の闘志を高め
「「エニグマ駆動……………喰らえっ!!」」
警備隊員達はオーブメントを駆動開始した後クラフト―――ナパームグレネードを一斉に放ち、それを受けたロイド達は傷を負ったり火傷をしたりしてのけ反り
「「「そこだっ!!」」」
スタンハルバードを持った警備隊員達はクラフト―――大切断で一斉に襲い掛かった!
「オォォォ……フンッ!!」
「オォォォ……セイッ!!」
「「「ガッ!?」」」
しかしランディが放ったクラフト―――テンペストレイジとワジが放ったクラフト―――ブロードアックスを受けてダメージを受けると共に吹っ飛ばされた!
「「ゴルゴンブレス!!」」
そこにオーブメントの駆動を終えた警備隊員達がアーツを放ってロイド達にダメージを与え、さらに
「クッ……!?」
「う、動けない……!」
「参ったね……!」
ロイドとリィン、ワジは状態異常―――”石化”になって動きを止めた。
「今だ……!」
「一気にたたみかけるぞ……!」
「ああ……!」
それを見たスタンハルバードを持つ警備隊員達はそれぞれ突撃したが
「させない―――クロスミラージュ!!」
「「「グアッ!?」」」
エリィが放った銃撃によって怯み
「ほーらよ!!」
「「「ガッ!?め、目が……!」」」
ランディが放り投げた閃光爆弾が発した閃光によって目が眩み、怯んだ。
「回復弾、発射します!!」
その時ノエルがクラフト―――バイタルグレネードで自分達の傷や状態異常を回復した。
「クッ……目が……!」
「なら、アーツで対抗するぞ!」
「エニグマ駆動……!」
一方目が眩んだ警備隊員達は全員一斉にオーブメントを駆動させたが
「無駄だよっ!!」
「グッ!?」
「ガッ!?」
ワジが放ったクラフト―――トリニティカードによってオーブメントの駆動は中断され
「行くぞ――――紅葉切り!!」
「うわっ!?」
「ガッ!?」
「くっ!?」
さらにワジに続くように放ったリィンのクラフトを受けて残りの警備隊員達のオーブメントの駆動も中断された。
「毒弾、発射!!」
そこにノエルが毒の弾丸をアサルトマシンガンで放つクラフト―――ポイズンショットを2人の警備隊員に命中させ
「うっ……!?」
「くっ……!?」
毒弾を受けた警備隊員達は毒に侵されて表情を青褪めさせ
「これは耐えられるかしら!?そこぉっ!!」
それを見たエリィは古式導カライフルで行う、正確無比な3連続貫通射撃――――ペネストレーターを放った!
「「ぐっ……!?」」
エリィが放ったライフルによる威力が高い3連続の銃撃を受けた警備隊員達は戦闘不能になって地面に膝をつき
「ランディ、こっちも決めるぞ!」
「合点承知だぁっ!!」
「「バーニング……レイジ!!」」
「「「ぐわっ!?…………」」」
残りの警備隊員達にはロイドとランディがコンビクラフトを放って戦闘不能にした!
「よぉし、そこまで!」
警備隊員達の様子を見たダグラスは声を上げ
「いつつ……やるねえ。」
「アーツの使用を禁止されているのに……さすがでありますッ!」
地面に膝をついている警備隊員達は感心していた。
「なんとかなったみたいだね。」
一方ワジは静かな笑みを浮かべ
「アーツが使えない状況は戦闘中に何度か体験したことがあるけど……今回みたいに最初から使えないっていうのはなかなか大変だな。」
「ああ。中々体験できない訓練になった。」
疲れた表情で呟いたロイドの言葉にリィンは頷き
「1年ちょっと前の、リベールの導力停止現象のときもこんな感じだったのかしら……」
エリィは疲れた表情で溜息を吐いた。
「”ダグラス式”第1段階は危なげなく突破できたようだな。それでは続けて、第2段階……今度は戦技の使用を禁止した上で戦ってもらうぞ。」
「おいおい、まだやんのかよ!?しかも戦技を禁止だぁ!?」
「あ、あのまさか魔術も駄目なのですか………?」
そしてダグラスの話を聞いたランディは驚いて声を上げて尋ね、エリィは不安そうな表情で尋ね
「なぁに、お前達だったら何とかなるだろう。……それと魔術も当然、禁止だ。良い経験だと思って、一丁、やってみるといい。」
尋ねられたダグラスは口元に笑みを浮かべて言い
「少尉……キビしすぎです……」
「アハハ……私は外されて良かったわ~。さすがに魔術を禁止されちゃ、かなりマズイし……」
ノエルは疲れた表情で溜息を吐き、エルファティシアは苦笑していた。
「よし、警備隊員起立!双方、戦闘態勢に入れ!」
「ハッ!!」
するとその時ダグラスの号令によって警備隊員達は立ち上がって再び武器を構えた。
「くっ……戦技や魔術を使えないのは正直つらいけど……なんとか、アーツと通常攻撃を混ぜて勝つぞ!」
「……ええ!」
「ああ!」
唇を噛みしめた後言ったロイドの言葉にエリィとリィンは頷き
「……始めッ!」
ダグラスの号令の元、ロイド達は再び戦闘を開始した!戦技や魔術が使えない事によってロイド達は苦戦を強いられたが、それぞれが協力して通常攻撃やアーツで警備隊員達を戦闘不能にした。
「うむ、そこまで!」
戦闘不能になり、地面に膝をついた警備隊員達を見たダグラスは声を上げた。
「くはー、マジかよ……」
「まさか、ここまでやるとはな。」
地面に膝をついている警備隊員達は驚いたり感心したりしていた。
「ふぅ……さすがに辛かったですね。」
「ああ……戦技がどれだけ戦いにおいて重要だったかわかるな。」
「ま、何とかなったようだしいいじゃねぇか。どーよ、これで文句はねえだろ!」
一方ノエルとロイドは安堵の溜息を吐き、ランディは呟いた後目を細めて声を上げた。
「フフ、なるほどな。確かによく育ってるみたいじゃないか。それならば……”ダグラス式”第3段階に移らせてもらおうか!」
ダグラスは口元に笑みを浮かべて言った後警備隊員達の前に飛び込んでスタンハルバードを構え
「警備隊員、起立!最終訓練へと移行する!」
「はっ!」
号令をかけ、警備隊員達を立ち上がらせた!
「これは……!」
「ふぅん……話に聞いていたとおり、デキるみたいだね。」
「”鬼のダグラス”……警備隊ではあのギュランドロス司令達に次ぐ実力は伊達じゃないはずだ。皆、一瞬たりとも油断するんじゃないぞ!」
それを見たエリィは警戒した表情になり、ワジは興味深そうな表情をし、ロイドは呟いた後真剣な表情で号令をかけた。
「はっはっは、なかなかリーダーも板についてるみたいだな。……では、今までの演習の総決算といこうじゃないか。この俺を……全力で打ち倒してみろ!」
その様子を見たダグラスは豪快に笑った後叫び
「へっ、望むところだぜ!」
「行きます!」
ランディとノエルは声を上げた後戦闘を開始した………!
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