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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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2章~西ゼムリア通商会議~ 第26話

『西ゼムリア通商会議』―――各国首脳を招いた国際会議がディーター・クロイス新市長の提唱で開催されようとしていた。同時にそれは、完成したばかりの新市庁ビルのお披露目を兼ねていた。―――通称『オルキスタワー』。地上40階、高さ250アージュとなる、大陸史上初の超高層ビルディングは今や大陸中の人々の関心を呼んでいた。そして―――各国首脳がクロスベル入りをし、オルキスタワーが公開される前日。警察本部の対策会議の場に別の用事でいないヴァイスとアル以外の支援課のメンバーが呼ばれていた。



~警察本部~



「―――以上が明日から3日間の通商会議の警備体制となります。ベルガード、タングラム門及び国境付近にはすでに警備隊による検問体制が敷かれています。市内に関しては――――ジョーリッジ課長、ドノバン警部。」

会議に参加している者達に説明をしたダドリーはそれぞれの課の責任者を指名し

「あー、広域防犯課では総員を市内巡回に当たらせている状態だ。会議終了までフル稼働だな。」

「二課は駅・空港・商業区画を特に重点的に警戒しているぜ。こちらも会議終了までは総員で当たることになりそうだ。」

指名された2人はそれぞれ説明した。

「なお、警備対策本部は捜査一課で運営している状況です。考えられる限りの非常事態に対応できると自負していますが……」

「……どんなに厳重な警備体制も決して完璧ではありえない。そこで支援課(ウチ)の出番ってわけだ。」

「ええ、お伝えしているようにセルゲイ課長には渉外担当として対策本部に詰めていただきます。警備隊方面との連絡も受け持っていただけると。」

「やれやれ、人使いが荒いこった。俺なんかより有能な局長やルファディエル達を使えばいいだろうが。」

不敵な笑みを浮かべて言ったダドリーの言葉を聞いたセルゲイは溜息を吐き

「ハハ、とにかくいろんな所に顔を突っ込んでるからな。それで死角を突いたやり方で有利な捜査体制を確立する……」

「うむうむ。『搦め手のセルゲイ』の面目躍如ということだなぁ。」

「よしてくださいよ、ンな昔の話。」

ドノバン達の言葉を聞いたセルゲイは目を丸くして指摘し

「『搦め手のセルゲイ』ですか……」

「ふふっ……成程という呼ばれ方ですね。」

「昔の話だ、昔の。それで……コイツらに関してはいいんだな?」

ロイドとエリィの言葉を聞いたセルゲイは溜息を吐いた後ダドリーに確認した。

「ええ、構いません。彼らにはしばらく遊軍として動いてもらおうと思います。」

「遊軍ということは……」

「通常の支援活動を行いながら何かあればバックアップに回れるようにするんですね?」

ダドリーの言葉を聞いたノエルは声を上げ、ロイドは尋ねた。

「ああ、その通りだ。遊撃士協会と同じスタンスだが彼らに頼り切るわけにもいかん。それに……”あんな連中”が入り込んできた以上、予想外の事態への保険は欲しい。」

「あんな連中……」

「”彼ら”の事ね……」

「―――”赤い星座”だな。」

ダドリーの話を聞いたエリィは不安そうな表情をし、エルファティシアは真剣な表情で呟き、ランディは静かな口調で言った。



「ああ……猟兵団”赤い星座”……ゼムリア大陸西部において最強と言われる猟兵団の一つだ。現在、多数の所属メンバーがクロスベル入りしていることが確認されている。ちなみに1年ほど前、あの『黒月(ヘイユエ)』と共和国方面で大規模な抗争を起こし、さらにリベールの”異変”でも”結社”に雇われてメンフィル帝国軍と戦争したらしい。」

「ふーむ、物騒な連中だなァ。」

「ってことは、この街で黒月や”店員”として偽っているメンフィル兵がいるラギール商会と抗争や戦争の続きをするつもりなのか?」

「いえ、基本的に猟兵団はミラによって動く連中です。以前争っていたとはいえ、再び争う理由にはなりません。そうだな、オルランド?」

ドノバンの疑問をダドリーは静かな口調で否定した後ランディに視線を向けて尋ね

「―――まあな。縄張りを重視するマフィアと違って猟兵団にはミラと戦場が全てだ。昨日の敵は今日の味方……その逆も日常茶飯事にありえる。その意味で、以前の抗争を引っ張るというのはねぇだろう。」

尋ねられたランディは頷いた後答えた。

「……例え団長を討ち取った人物がいても、連中は動かないのだな?」

「ああ。戦場で討ち取られるのもまた、猟兵団として日常茶飯事だからな。団長や部隊長だってあり得る事だ。」

「となるともう一つの心配は…………―――シュバルツァー。ラギール商会や未だラギール商会の客人として現在もクロスベルに滞在している”赤い星座”の団長を討ち取った”戦妃”が”赤い星座”に抗争をしかける可能性はあるか?」

ランディの説明を聞いたダドリーは考え込んだ後、リィンに視線を向け

「……恐らくそれはないと思います。ラギール商会の目的はあくまでこちらの世界の商品を大量に手に入れる事ですので。それと確かにカーリアン様は”戦闘凶”とよくメンフィル兵達に呼ばれているくらいですが、あくまでその時に起こった戦場での戦いを楽しんでおられるとの事なので、自ら抗争を仕掛ける事はないと思います。」

「そうか……」

リィンの答えを聞いて頷き

「フフ、そうなると一つの謎が浮上してくるわけだ?どうして”赤い星座”がクロスベル入りしたのかっていう。」

会話を聞いていたワジは静かな笑みを浮かべて尋ねた。

「一課でも探ってはいるがその目的は未だ判明していない。ただ、エレボニア政府の後押しを受けているのは確実のようだな。」

「通商会議に関係することで何かを行おうとしている……もしくは共和国系の『黒月』やメンフィル帝国系の『ラギール商会』の台頭を抑えるのが狙いでしょうか?」

「ま、どちらもあり得るだろうな。いずれにせよ、通商会議において無視できる要素じゃないってのは間違いなさそうだな。」

「ええ、無論です。―――ちなみに”赤い星座”だが、クロスベル市の周辺にも何度か足を延ばしているらしい。もし、各地を回ることがあればそのあたりの動向も探って欲しい。」

セルゲイの言葉に頷いたダドリーはロイド達に言った。

「―――了解しました。それでは、支援要請に対応しつつ、”赤い星座”の情報収集を行います。」

「何かありましたら各方面に応援に行きますのでいつでも連絡してください。」

「おう、頼りにしてるぜ。」

「遠慮なく頼らせてもらうぞ~。」

ロイドとエリィの言葉にドノバン達は頷き

「それともう一つ……ツェリンダー局長とノウゲート警視が”また”何か問題行動を起こそうとしたとき、すぐに連絡を頼む。……あの2人の事だ。今のこの状況で”何か”行動を起こす可能性が高い。」

ダドリーは疲れた表情でロイド達に言い

「ハ、ハハ…………了解しました。」

「うふっ♪しっかりと”信用”されているわね、2人は。」

「笑いごとではないですよ……」

ロイドは仲間達と共に脱力した後苦笑しながら頷き、エルファティシアは微笑み、ノエルは疲れた表情で溜息を吐いた。その後ロイド達は支援課のビルに戻って、支援要請を端末で確かめた。

~特務支援課~



「緊急度が高そうなのは両警備隊とウルスラ病院からか……でも、あのギュランドロス司令とダグラス教官から呼ばれることになるなんてな。」

「ダグラス教官?警備隊の少尉になった方よね?」

支援要請の内容を見て呟いたロイドの言葉を聞いたエリィは不思議そうな表情で尋ねた。

「ああ、少尉になられる前は警察学校の教官をされていたんだ。基礎体力の向上から格闘訓練、トンファーによる制圧術なんかをみっちりたたき込まれたよ。」

「元々、警備隊のホープとして期待されていた方だったんです。でも、あの前警備隊司令に疎まれて閑職に回されたらしくて……」

「俺も演習で世話になったが凄まじくタフな兄さんだよな。戦闘力でいったら多分、ギュランドロスのオッサン達の次くらいなんじゃないか?」

「なるほど……ずいぶん凄そうな方ね。でも、警備隊との関係を考えると一度お会いしておきたいわね。」

ロイド達の説明を聞いたエリィは頷いた後言った。

「ああ、挨拶がてら行ってみよう。……けど、ギュランドロス司令の支援要請か…………何だか無茶を言われそうで、ちょっと怖いな……」

「まあ、あのオッサンの事だからこっちが予想もしていない事をさせると思うぜ。例えばオッサンやルイーネ姐さん達と手合わせ……とかな。」

ロイドの言葉を聞いたランディは口元に笑みを浮かべて言い

「あ、あの司令達と手合わせって……」

「どう考えても無謀としか思えないわよね……IBCの戦いの時も、全員凄い戦闘能力を見せていたし……」

「ギュランドロス達と戦闘なんて、私も正直遠慮したいわ。」

「ア、アハハ……できればそうならないように祈っておくしかありませんよね……」

ランディの言葉を聞いたロイドとエリィは表情を引き攣らせ、エルファティシアは溜息を吐き、ノエルは冷や汗をかいて苦笑していた。

「……だが、もしそんな事になったらなったでいい機会だと思うぜ?……あくまで俺の予想だがギュランドロスのオッサンは叔父貴と同じか、それ以上の強さだ。叔父貴とやり合う前に一度やり合って、どれほどの強さか経験するいい機会になるだろうしな。」

「へえ。そこまで強いのかい、あの新司令は。」

「さすがはあのヴァイスハイト局長が好敵手と認めるだけはあるな……」

「……そうだな。それとウルスラ病院に新たに赴任した教授からか……」

ランディの言葉を聞いたワジは意外そうな表情をし、リィンは真剣な表情で呟き、ロイドは頷いた後呟いた。



「ヨアヒムに代わって薬学と神経科の両部門を引き継ぐ人物……ま、どうしても警戒しちまうな。」

「でも、セイランドっていうのはどこかで聞いた事があるね。確かレミフェリアあたりで有名な名前じゃなかったっけ?」

「レミフェリアの医療メーカーでセイランド社という所があるわね。大公家とも縁のある名家だけどその関係者の可能性はあるかも。」

「うーん、そうなるとそこまで怪しい人物じゃなさそうだけど……―――まあいい。例の薬についての話もあるみたいし、ウルスラ病院にも行かなくちゃな。」

「フフ、君の憧れのお姉さんもいるみたいだしね。ナース服が凄まじく似合ってる聖女様みたいなヒトでしかもあの”英雄王”の側室の一人の上、”本物”の聖女―――”癒しの聖女”の養母なんだって?」

「そう言えばセシル様は現在、クロスベルに滞在しているんだったな……」

ワジは静かな笑みを浮かべてロイドに尋ね、リィンはある事を思い出して呟き

「なっ……!?い、いや、セシル姉は昔からお世話になっているだけで……―――というかメンフィルの軍人であるリィンはまだわかるとして、ワジ!?面識ないのに何でそこまで知ってるんだよ!」

ワジに尋ねられたロイドは驚いた後苦笑したがすぐにある事に気付いて信じられない表情でワジに突っ込んだ。

「ワリワリ、俺が話しちまった。」

「くっ、ランディ……お前な!」

そして笑顔で言ったランディの言葉を聞いたロイドはランディを睨み

(……ロイド。ちょっと動揺しすぎだわ。)

(結構、図星みたいですね……確かに素敵な人だったからわかる気がしますけど……)

(くかかかかっ!もしかして嫉妬か~!?)

(フフ、あんまりセシルばっかり大切にしているとエリィに愛想をつかされるわよ?)

ロイドの様子を見たエリィはジト目でロイドを見つめ、ノエルは苦笑し、ギレゼルは笑い、ルファディエルは微笑んでいた。

「……コホン。まあ、それはそれとして。その先生に会う前にセシル姉には話を聞いておきたいかな。……ヨアヒムの残した傷跡(ダメージ)から病院が立ち直れているかも心配だし。」

「そうね……あ、でも、シズクちゃんは今日は街に来ているのよね?さっきキーアちゃんがギルドに遊びに行ってたし。」

「ああ、今日は一日シズクちゃんと遊ぶんだって張り切って出かけて行ったな。ギルドにいるだろうから時間があったら行ってみよう。」

「ええ、そうしましょう。」

「シズクっていうのはあの”風の剣聖”の娘だっけ?」

ロイド達の会話を聞いていたワジは不思議そうな表情で尋ね

「ああ、ちょうどキー坊と同じくらいのトシになるな。あのお堅いオッサンの娘とは思えないくらいの良い子だぜ。」

「ふふっ……シズクちゃん、可愛いですよね。確か話によると”癒しの聖女”様に治療してもらえる機会があって、盲目だった目を治してもらったって聞きましたが……」

「へえ……まさか盲目を治すなんて、さすがは”癒しの聖女”だね。……ちなみにその話は本当なのかい?」

ノエルの話を聞いて驚いた後ロイド達に尋ねた。



「ああ。教団事件の後、リウイ陛下達との戦いによって重傷を負った警備隊やマフィア達の傷を治療するためにしばらくペテレーネ神官長と共にウルスラ病院に留まってくれてね……それでセシル姉が機会を見つけて、シズクちゃんの目をティア神官長に治療してもらったんだ。」

「おかげで完全にとは言えないけど、目は見えるようになったの。今は眼鏡をかけていればある程度見えるそうよ。……完全でないとはいえ、視力が戻った今、入院する必要もないのだけど、アリオスさんの希望で視力を元の状態にしてほしいらしくて、今も入院しているのよ。」

「そうなんだ……けど、いくら”癒しの聖女”とはいえ、目を完全に治す事は無理だったんだ。」

ロイドとエリィの説明を聞いたワジは意外そうな表情をして呟き

「……まあ半年ほど、ティア神官長やペテレーネ神官長の治療を定期的に受けられれば視力を完全に戻す事も可能だって話だけど、さすがにそれは難しくてな……」

ワジの言葉にロイドは答えた。

「しかしまあ、シズクちゃん、目が見えるようになった時すっごく喜んで、”癒しの聖女”さんに涙を流しながら何度も頭を下げてお礼を言ってたから、本人は満足していると思うぜ?」

「フフ……見えなかった目が再び見えるようになったのだからそんな行動をとってもおかしくないわよ。」

「完全でないとはいえ、盲目を治すなんてさすがは”癒しの聖女”と名高いティア様だな……」

「まあ、”魔神”に秘められるとてつもない魔力を受け継いだ状態の治癒を専門としているイーリュンの高位神官ならそういった事も可能でしょうね。」

そして口元に笑みを浮かべて言ったランディの言葉にエリィは微笑み、リィンは感心し、エルファティシアは口元に笑みを浮かべて言った。



「さて……話は戻るけど今日は挨拶がてら、クロスベル各地を回るわけだ。――――”赤い星座”って連中の動向なんかも探りながら。」

「ワジ……!」

「き、君ねぇ……!」

「フフ、ストレートね。」

ランディを見つめて言ったワジをロイドとノエルは睨み、エルファティシアは口元に笑みを浮かべて見つめ

「……ああ、いい。コイツの突込みももっともだ。元、身内が言うのもなんだが、あの連中は正直シャレにならねぇ。多分、旧鉱山に爆薬を仕掛けたのも連中の可能性が高いだろうしな。」

(……”赤い星座”か。後でリウイ陛下に彼らに対してどういう調査をすべきか聞いておかないとな……)

見つめられたランディは疲れた表情で答えた後真剣な表情で言い、リィンは真剣な表情で考え込んでいた。

「ランディ……」

「その、そんな風に決めつけなくてもいいんじゃ……」

「叔父貴とシャーリィ―――あの2人の事はよく知っている。断言はできねぇが……支援課の力量を試したんだろう。古巣を捨てた俺が流れ着いたのがどの程度”やれる”場所なのかをな。」

「……!」

「そ、それだけのために……」

「…………………………」

(”赤い星座”か。正直、ロイド達には”まだ”早い相手だし、あまりにも危険すぎる相手だわ………できれば”銀”のように早い内に何らかの策で危険な芽を摘み取っておきたいけど…………クロスベルの法律では猟兵を取り締まれないしね…………せめて彼らが他国で犯罪でも犯していればいくらでもやりようが…………――――!フフ、そう言えば彼らはリベールの”異変”で”結社”に雇われてメンフィル軍と戦ったという話だったわね……もしかしたら…………後でチキに確認しておくべきね。)

ランディの言葉を聞いたエリィは表情を厳しくし、ノエルは信じられない表情をし、ロイドは考え込み、ルファディエルは考え込んだ後ある事に気付いて不敵な笑みを浮かべていた。

「別に害意があるわけじゃない。単なる好奇心であんなことをやれるような連中ってわけだね?」

一方ワジは真剣な表情でランディに尋ね

「ああ、あの程度のトラップなんざ連中には挨拶程度ってことだ。その意味じゃ、せっかく戻りはしたが俺一人で連中の動向を調べた方が――――」

尋ねられたランディは溜息を吐いて頷いた後真剣な表情で提案しかけたが

「――――だったら尚更だ。確かに”赤い星座”というのは放置できる連中じゃないだろう。クロスベルへの来訪目的にしてもエレボニア政府との関係にしてもいずれ突き止めて行く必要がある。ただし……あくまで特務支援課としてだ。」

ロイドが制止し、真剣な表情でランディを見つめて言った。

「ロイド……」

「俺達にはランディが必要だし、ランディを一人にするつもりもない。ランディだって、一人で動いて何かできる見込みは無いんだろう?だったら……勝手に動くなんて言わないでくれ。」

「……………………」

「ふふ、相変わらず大した口説き文句だねぇ。」

「で、でもその通りですよ!こういう時に力を合わせるのが特務支援課なんですよね!?」

「ええ、勿論よ。あの教団事件でも、私達は全員の力を合わせて立ち向かった。ランディ、今回も同じではないの?」

「……はは。悪ぃ、つまらないことを言いかけたみてぇだ。」

「ああ、まったくだ。とにかく車もあることだし、今日は支援要請を片付けながら郊外を回ってみよう。アルモリカ村にも足を延ばしてもいいかもしれない。」

「そうだな……俺も今回を機に郊外の地形を把握しておきたいし……」

「フフ……それじゃあ出かけるとしようか。」

ロイドの言葉にリィンは頷き、ワジは静かな笑みを浮かべていた。そしてロイド達は出かける為に次々と入口を出て行ったが、ランディが出ようとした所をロイドが呼び止めた。



「―――なあ、ランディ。」

「ん?なんだ、ロイド。」

「その……お父さんのことだけど。」

「ああ、それか……別に気にすることはねぇぜ?あの世界じゃ珍しくもねぇ話だ。それに、団を抜けた時に俺と親父は縁を切っている。何も感じないわけじゃねぇが……ま、サバサバしたもんだぜ。あの”戦妃”のお姉さんが親父を殺したって話は驚いたが……それだけだ。別にあのお姉さんを恨んでもいねーぜ?星見の塔で初めて俺達と出会った時、あのお姉さんが俺に興味を示したのは多分、それだけ親父がお姉さんに興味を抱かせるほどの強さだったんだろうな。……おかげでその息子の俺まで興味がいってるようだしな。ハハ…………戦いを仕掛けられない事を祈っておかないとな。」

ロイドの言葉を聞いたランディは一瞬驚いた後なんでも無い風に答え、苦笑していた。

「……そっか。でも、気が向いたら色々と聞かせてくれよな?一応、リーダーとして相談に乗れることがあるかもしれないしさ。」

「………………………………」

「あ、ゴメン。ちょっと生意気だったか?」

「ハハ、違う違う。何だかんだ言ってお前も成長してると思ってな。うーん、お兄さん感慨深いぜ。」

「あのな……」

「……ま、気が向いたら相談するかもしれねぇ。そん時はよろしく頼むぜ。」

「ああ……!」

ランディの言葉にロイドが頷いたその時

「あれ、何してるの?」

「2人とも、忘れ物?」

ワジとエリィの声が聞こえてきた。

「ゴメン、すぐ行く!」

「そんじゃあボチボチお仕事を始めるとすっか。」

声を聞いたロイドは返事をした後ランディと共にビルを出た。



その後ロイド達は支援要請を片付ける為に行動を開始した………… 
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