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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはA's ~一方の視点、そして暴走の始まり~


時間は少しさかのぼり。


蒔風がヴォルケンリッターを追って飛び出した後の部屋。
煙にむせながらも、なのはたちは無傷だった。

「みんな!!無事!?」

ユーノの張った結界で全員が無事に立ち上がった。


「くそっ!!やられた!!あんな映像流されたら、騎士たちがああなることをわかってやっているぞ、あいつ!!」

「クロノくん、管理局は」

「もちろんあんな強引な封印なんか考案してないし、僕も知らない!!蒔風は!?」

「舜なら四人を追って行っちゃったよ!!」

「なら・・・・彼に任せよう」

「え?私たちも応援に・・・」

なのはが蒔風を助けに行くと言い、フェイトがそれについて行こうとする。
だが、そこに待ったの声がかかった。



「いや、ここは舜に任せてください」

「君たちは僕らと一緒にはやてちゃんのとこへレッツゴーー!だよ!」



そこには白虎と朱雀が人型で立っている。
初対面のクロノ、ユーノに最初の時に会ったなのはとフェイトが紹介する。

「で、舜が言うには今すぐに向かって欲しい場所があるそうなんです」

「はやてちゃんのお見舞いだね!!」

朱雀と白虎の提案に、なのはたちが目を丸くする。

「え?」

「で、でも・・・」

「大丈夫です。獅子天麟の三人がヴィータさんたちを足止めしています。はやく!!足は確保してあるので、急ぎましょう!!」

朱雀が二人に呼びかけて玄関から外に出ていった。


「クロ君とユーノンはどーする?一緒に行くの?」

白虎が二人に訊くが、その返事はノーだった。


「僕は・・・・気になることがあるんだ。あの最後の映像・・・・ユーノ、調べてくれないか?そのあとに僕も向かう」

「いいけど・・・なにを?」

「照合してもらいたいんだ・・・・はずれてくれたらいいと願ってるんだが・・・・」


なので二人を残し、白虎と朱雀はなのは、フェイトと共に出ていった。

途中で蒔風からの提案を貰い、その通りにすずかとアリサを拾って、ヴィータ達よりも早く病院にたどり着く。





病院のロビー
ここに四人の少女がけたたましく入ってきた。


「なのはちゃん!!ほんとうにはやてちゃんが入院してるの!?」

「ちょっと!!なのはもフェイトも黙ってないで言いなさいよ!!それに舜はどうしたのよ!!」

「ごめん二人とも!!詳しいことは言えないんだけど、とにかく来て!!」

「私たちを・・・信じて!!」


なのはとフェイトの真剣なまなざしにアリサが「うっ」とたじろぎ、了承してくれた。
病院の受付ではやての病室を聞き、その部屋に急いで向かう四人。





そして病室に辿り着き、扉をあけると、そこには上体を起こして窓の外を見つめているはやてがいた。


「はやてちゃん!!!」

「すずかちゃん!!」

すずかがはやてに飛びつき、再会を喜ぶ。

「お見舞いに来てくれたん?ありがとうなぁ。そちらさんは、たしか・・・」

はやてがなのはたち三人を見て、前にすずかからもらったメールの写真を思い出す。

「あ、紹介するね。私の友達の、高町なのはちゃん、フェイト・テスタロッサちゃん、アリサ・バニングスちゃんです」

「「「よろしくね!!」」」

「うわぁ・・・うち、身体が悪くて学校全然行けんから、こんなに友達できたのは初めてや!!」

はやてがうれしそうに両手を合わせてほほ笑んだ。

『フェイトちゃん・・・わかる?』

『うん・・・言われてみないとわからないくらいだけど、確かに闇の書の気配がする』

『ヴィータちゃん達、どこにいるの?』


そう考えているなのはたちの前に、はやてがお菓子を出してくれた。
どうやら、見舞い品のようなのだが、誰が置いていったのかわからないもののようだ。


「みんなでこれ食べよ!!な?な?」

はやてがこれ以上ないように笑う。
その笑顔を見て、なのはもフェイトも納得した。

この子は確かにヴォルケンリッターを、あんなにも人間に変えた子だ、と。
この優しさを見ればわかる。この笑顔を見ればわかる。
あの四人が敬愛と、信頼と、親愛を込めて「主」と呼び、命や誇りを投げ捨ててまで尽くそうとする、そんな人物だと。

だからこそなのはとフェイトは悔しかった。

こんな子が、いま目の前にいるのに。
こんなにも近くにいるのに、もう大丈夫だよ・・・と言えないことが、とてもとても悔しかった。

思わず抱きしめて泣いてしまいそうになる。
しかし、その感情をこらえ、楽しそうな笑顔をして見せる。


と、そこで二人は気づいた。

窓の外


そこには何のなかったが、確かに誰かの感情が増大するのを感じた。


『いる・・・ね』

『うん』

そこではやてが二人に声をかけてきた。


「なのはちゃん、フェイトちゃん、どうしたん?」

「え?あ、なんでもないよ?」

「そうそう・・・でも、そろそろ時間じゃないのかな?」


そういって時計を見る二人。
見ると確かにそろそろ面会時間は終わりだ。

「あ・・・ホンマやね・・・」

「はやてちゃん、今度、絶対に、絶対に、一緒に遊ぼうね!!」

「え?うん。わかったよ?でもなんでそんな・・・・」

「絶対に・・・・」

そういって決意する二人。
この少女を永遠の眠りになどつかせてたまるか。



四人はここに来たのは急だったこともあって、また今度ゆっくりお話ししようと約束し、病室を出た。



ロビーで白虎と朱雀が迎えた。

「では、アリサさんは私が、すずかさんは白虎がお送りいたしましょう」

だが、そんな提案にアリサはノーと言った。

「いいわよ。最悪車呼ぶし、これくらいなら二人で一緒に帰るわ」

「えーー?でもーーー」

「本当に大丈夫ですから・・・・」

『どうします?ここ、危険になるかもしれませんよ?』

『僕たちとしてはきちんと送っておきたいんだけど・・・・・』

『でもアリサは言い出したらなかなか曲げてくれないから・・・・』

『大丈夫だと思うよ。戦う時になったら結界を張るから』

白虎たち四人が念話で相談し、これ以上引き下がってもしょうがないので、二人をそのまま帰した。


「ではこれから・・・む?なのはさん、フェイトさん。主が呼んでいるので、私たちはここで」

「はい。じゃあ私たちはヴィータちゃんのところに!!行こう!!フェイトちゃん!!」



そういって四人は別れ、それぞれの目的地に走っていった。




「レイジングハート!!」「バルディッシュ!!」

「「セーーット、アップ!!!」」


二人がバリアジャケットをまとい、デバイスを手に夜空に飛びあがった。

そこで近くのビルの屋上が炎に包まれる。


そこにはヴォルケンズの四人と、仮面の男が立っていた。


「フェイトちゃん!!」

「うん!!」


すぐさまその場に向かうなのは達。

が、そこで二人の動きは止まってしまう。


バシィ!!バシィ!!!

二人の体に巻き付く魔力の縄。
空中にバインドされ、二人が三角柱の小さな結界に閉じ込められてしまった。


「え!?これは!?」

「どういう・・・こと!?」

なのはとフェイトは目の前の状況に驚く。


なぜならそこには仮面の男がいたからだ。
右腕を首から吊っているということを覗けば、全く同じ姿だった。
しかし、シグナム達の居る屋上にも仮面の男はいる。

つまりは、同じ姿をした人間が二人いるのだ。

これが空間を瞬時に行き来し、蒔風の攻撃でも無傷を装えたトリック。
わかってしまえば、単純な話だった。


「ふ、二人!?」

「くっ!!これを・・・離せ!!!」

その結界と一緒に、第二の仮面の男が屋上に来た。


「な・・・テスタロッサ!?」

「なのはちゃん!?」

シグナムとシャマルが二人の姿を確認し、名前を呼んだが、結界の効果でその姿は消えてしまった。


「さて・・・では・・・」
「仕上げに入ろう・・・・」


バシィン!!!



仮面の男が四人をまとめてバインドし、動きを封じる。

「闇の書・・・蒐集!!!」


そして書に命じた。
シグナムとシャマルの胸元からリンカーコアが抽出され、闇の書に収集されてしまう。

「うわああああああああ!!!」
「きゃああああああああ!!!」

すると、二人の姿がゆっくりと消えていき、消滅してしまった。

「そんな!!」

「シグナムさん!シャマルさん!!」

結界の中でなのはとフェイトが叫んだが、その声は届かない。


「闇の書へ帰れ、騎士たちよ。今までもそうやって完成させてきたようにな」

「おい」

「・・・ああ、そうだったな」

そういって二人が変身魔法を行使する。

二人が変身したのは、紛れもないなのはとフェイトだった。


「闇の書の覚醒には主の深い絶望が必要だ」

「心は痛むが・・・・仕方がない」


そういって腕を振るうと、魔法陣が屋上に現れ、そこにはやてが転送されてきた。

その瞬間に、なのはに扮した男がヴィータを蒐集する。

「うわあああああああああああ!!!!」

そしてヴィータの姿も消えてしまった。
いきなりこのような場所に送られて動揺するはやてに、さらにそのような光景を見せつける。

はやては目の前で「家族」が奪われることに、混乱し、錯乱した。

「え・・・ちょ・・・なんで・・・・なんでや!?どうなってるんや!?なんで・・・なんでヴィータを!!!シグナムは!?シャマルは!?」


そんなはやてにフェイトに扮した男が言う。

「彼女たちももう消えたよ。もうあなたの元に帰ってくることはない」

「闇の書も・・その騎士も・・・そしてその主のあなたも・・・ここに存在してはならないんだよ」


「「だから消えて」」


「うをおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


その瞬間、ザフィーラがついにバインドを破り、なのは姿の男に拳を突き出す。
しかしそれは魔力壁に阻まれ、再びバインドで拘束されてしまう。

「ぐああああああああああああああ!!!!!」

そしてザフィーラも蒐集されてしまった。


「ザフィーラ!!ザフィーラーー!!!!」


どうしてこんなことになる?
私は何も悪いことしてないのに。
ただ、みんなと平和に暮らしていきたかっただけなのに。
なんでやっと手に入れられた家族を奪う?
なんでやっと手に入れられた幸福を奪う?

どうして!!どうして!!!!!



「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



はやての慟哭が、闇夜に響く。

そこで男たちはその場から離脱し、変身を解除した。
と、同時になのは、フェイトを束縛していた結界をバインドが解ける。


「はやてちゃん!!」
「はやて!!!」


二人が名前を呼ぶが、届かない。


はやてが、闇の書が覚醒する。
その体が闇に染まり、闇の書の管理人格の姿に変化する。
それはもはや、はやての面影などなくなっていた。


「主は・・・悲しんでおられる・・・・」

「はやて・・ちゃん?」

「主は・・・自分の愛すべき騎士たちをいなくなった現実を、悪い夢であるように願った。私はそれを体現しよう・・・・愛すべき、主の願いを成し遂げよう」

「はやて!!!」

「そして・・・・騎士たちを傷つけたものには罰を」

《Diabolic emission》

「「!!??」」


闇の書の管理人格が手を上げる。
その手の先に濁った黒い球体が生成された。

「デアボリック・・・エミッション」


ズゴォ!!!!


空間魔法がその場を包む。
なのはとフェイトを、騎士たちを追い詰めた存在として管理人格が牙を剥いた。



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そこから離れたビルの屋上。
そこで仮面の男二人はその光景を眺めていた。

「あの二人・・・もつかな?」

「闇の書が完全な暴走状態に入るまで持ってもらえれば・・・それまで・・・・」


ギュオッ!!バシィ!!!

その瞬間、地面から伸びた青い魔力光の縄が二人を締めあげ、拘束した。


「ストラグルバインド・・・強化魔法を無力化するバインドだ・・・あまり使い勝手はよくないけど・・・こう言う場合は役に立つ」


その背後からクロノ・ハラオウン執務官の声がした。
二人が振り返り、その姿を確認する。

クロノが言葉を続けた。

「君たちみたいな、変身魔法を強制解除するからね」

「くっ!」

男が魔法がインプットされたカードを取り出し、この場を脱しようとする。


「動くな」


しかし、それもかなわない。
蒔風がカードを取り出すよりかも一瞬早く、地面からビルの屋上のフェンスを飛び越え着地し。十五天帝すべての刃が二人の首筋にあてられていた。


「くそ・・・・くあああああああ!!!」
「ぐあああああああああ!!!」

二人の変身魔法が解ける。

そしてそこにいたのは


「やっぱりか・・・・リーゼロッテ、リーゼアリア・・・・」

クロノが残念そうな声を出す。

「もしかしたらと思っていた。だけど、そうではないと願っていた!!」

「闇の書の封印・・・か」

そこにユーノからの連絡が入る。

『クロノ、映像の解析、できたよ。あの制服は・・・・ギル・グレアム提督のものと一致した』

「ありがとう、ユーノ。君もなのは達の助けに入ってくれ」

そういって通信を切るクロノ。


「・・・説明する・・・必要はないみたいね」

「まさかクロスケがここまでやるなんてなぁ~」

「一人でも鍛錬を怠るなと言ったのは君たちだ」


「目的は闇の書の完全封印。おそらく、最初からはやてが闇の書の主だと知っていたな?」

蒔風の糾弾に、彼女たちが口を閉ざす。


『いいんだ、話しなさい』

そこに映像が入る。
そこに映っていたのはギル・グレアムだ。

「でも、父様!!」

『彼らは、もうおおかたの事は知っているだろう。隠しても無駄だよ』

「・・・はい・・・・」


「提督、あなたは独自に闇の書の調査をしていました。そして八神はやてが今代の所有者であることを突き止めていた」

『そうだ。あの子の父の知人を名乗って、資金援助もした・・・・私は、これが運命だと思ったんだ。孤独な子ならば、例え封印されても悲しむ人は比較的少ないとね・・・・・欺瞞だな・・・偽善だな・・・・』

「そうだな。それが偽善で欺瞞だ」

「でも!!あの書のせいで何人もの人の命が!!・・・あんたの父さんだって!!」

「それとこれとは関係ありません!!!たとえ誰かが犠牲になったからと言って、あの子がいなくなってもいい理由にはなりはしません!!!まだあの状態ならば、封印されるほどの罪は犯してない・・・・そんな子を!!あなた達は!!!」

「法だとか!!そんなこと言ってられるものじゃないんだよ闇の書は!!!今やらなきゃこの世界だって消える。あの子にはかわいそうだけど・・・・そのためにこの世界が消えてもいいの!?」

そんなロッテの言葉に、クロノが反論しようとするが、それよりも早く蒔風が言葉を発した。


「そんなわけあるか!!!!だけどな、誰かが失われて誰かが助かるなんて、俺はそんなのはもう見たくない!!!ああ、そうさ!!綺麗事だよこれは!!!闇の書を止めて、はやても救うなんて、現実的じゃないかもしれない。でもな、それを為すために俺は力を持ってんだ!!クロノはここまで強くなったんだ!!なのはとフェイトはあそこで踏ん張ってんだ!!封印するならその後にしろ。そこで見ていてくれ。俺たちのなすことが、どんな結果になるかをな」

「「『・・・・・・・』」」

三人が言葉を失う。
そこにクロノが言葉をつづけた。

「それに・・・提督のプランにはまだ欠点があります。封印用の魔法が、暴走した闇の書に十分に効く可能性は決して高くはないはずです。たとえ成功して、どんな場所に隠しても、きっといつかは誰かが発見し、呼び覚ましてしまう。力を求める人の想いが、その善悪に関わらずそれを見つけ出してしまう。闇の書のプログラムが、書き換えられてしまったように、人はいつか・・・・」

「・・・・・俺はもう行くぞ、クロノ。この二人はまかせたぞ」

「ああ・・・・二人を送ったら、すぐにそちらに向かう!!」

「ああ・・・よっし・・・行くか!!」

ブワッ!!と蒔風が開翼する。
その翼は銀白に輝き、夜の闇に美しく映えた。

「俺の正義を見せてやるからよく見とけ!!ギル・グレアム、あなたの手段は決して誉められたものではないが、その想いは本物だ。悲劇を食い止めるその決意は、このオレが認めよう!!安心しろ。闇の書は必ず止める。貴方の「願い」は俺が聞いた!!!」

バウッ!!!蒔風が飛び出し、なのは達の方へと飛んでいく。



「行こうか」

クロノが二人を連れて、グレアムのいる管理局本部の部屋へと向かった。


この戦いに関係した者の想いはたった一つだけだった。


-悲劇を止める-


しかし、その想いが数々の事象を捻じ曲げてきた。
だが、ここからは揺るがない。

闇の書を止め、はやてを救う。
その想い、たった一つだ。






to be continued

 
 

 
後書き

アリス
「次回、闇の書の夢」

ではまた次回










あれ?台詞が出てこないや・・・・

アリス
「全力全開!!」

二回目だぞ 
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