世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
なのはA's ~悪魔の正義~
映像が再生される。
そこは何処かの病室のようだ
その部屋に車椅子に座ったはやてと、その傍らに立つ仮面の男がいた。
どうやらはやては寝ているか、意識を失っているようだ。
『やあ、管理局諸君。そして守護騎士の四人。そちらにいる「世界最強」と、「異世界の協力者」のおかげで、多くのページが集まり、闇の書はもう完成する』
男が闇の書のページをパララララ・・・と流して捲っていき、その状態を見せる。
『故に君たちから彼女を預かる意味もない。最近症状もひどくなってきていてね。今この病院に預けているのだよ。ああ気にするな。ここは君たちもよく知っている病院だ。八神はやての主治医がいる方がいいと思ってね』
「海鳴・・大学病院か!!」
「まて!!まだ行くな!!」
飛びだそうとするシグナムを蒔風が腕を掴んで止める。
「まだ最後まで見るんだ。いまさら居場所を教えたということはあそこからは動かない。違うか?」
そう言われてはシグナムも止まるしかない。
モニターに再び目を向ける。
『さて・・・さっきも言った通り、八神はやての容体が悪化してね。まあ、私としては完成間近だから問題はないんだが。もう諸君は気づいてるかな?我々の目的は闇の書の完全封印だ。未完成状態での封印は転生してしまって無意味なので、一旦完成させる必要があった』
『だか、もうその段階は過ぎた。これから彼女は闇の書と共に永遠ともいえる眠りにつく』
『その前に別れの言葉でも送らせてやってもよいと、我らが主人の言葉だ』
『闇の書の主に言葉を伝えたくば、来い。我らはその場にはおらん。最後の時間を過ごすといい』
そこで最後にカメラがはやてにズームする。
彼女は眠っているようだが、表情は苦しそうだ。
「みんな・・・どこにおるん・・・・ヴィータ・・シグナム・・・シャマル、ザフィーラ・・・・」
それは寝言だったが、なによりも彼女の精神状態を表していた。
そしてカメラが戻されて
『では・・・・悲劇の「闇の書」ここに眠らんことを』
ガタガタとカメラが傾き、最後に男とは別の人影が映ってから、映像が終わる。
ザーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・
モニターには砂嵐が映し出され、もうこれ以上はないことを表していた。
「おい・・・・最後にちょっと映ったの・・・見たか?」
「ああ・・・お前にも見えたか、ヴィータ」
「私にも・・・見えたわ」
「同じく・・・・」
ヴォルケンズが静かに立ち上がる。
どうやら、映像の最後に映っていた「誰か」に反応しているようだ。
「最後に映ってた「人影」・・・よく見えなかったけどよ・・・・あの服、管理局の制服じゃねえのか?」
ヴィータの言葉がその場の蒔風たちを糾弾するように響いた。
「そうか・・・我らは騙されていたということか・・・闇の書の封印・・・確かに、その可能性を考えなかった我らが愚かだった!!!」
「おまえら、少しはいい奴らだと思ったのに!!あたしたちをだましてたんだな!!!!」
「違う!!俺たちは!!!!」
「黙れ!!!!!!!もはや信用ならん!!!!このまま主を封印させてなるものか・・・・完成さえすれば、主は救われるのだ!!!!主はやてを救いに行くぞ!!!ヴィータ、シャマル、ザフィーラ!!!!」
「「「おう!!!」」」
「待っ・・・・・」
ドゴン!!!!
マンションの一室から爆発が起き、騎士甲冑を纏った四つの人影が飛び出していった
そしてその後を一つの影が追っていく。
それを確認し、シグナムがその人影を食い止める。
『シグナムッ!?』
『先に行け!!こいつは私が食い止める!!!』
『わ、わかった!!!』
ヴィータ達が病院の方に飛んでいく。
それを見た人影、蒔風がシグナムに訊く。
「お前!!本当に俺たちがそんな奴らに見えんのかよ!?冷静に考えてくれ!!あれは・・・」
「もはや・・・なにも信じられん!!!お前たちがそうでないとも思っているが、もしかしたらとも思っている!!そんな輩と、一緒にはいられない!!!!」
ガキィ!!!
シグナムが蒔風を押し返し、開翼した蒔風が宙に立つ。
「・・・・いくら翼人でも・・・今の私を止めることなどできないぞ」
「止めるんじゃない。助けるんだ!!!」
「う・・・うおおおおおおおあああああああああ!!!!!」
「ああああああああああああああああああああ!!!!!」
シグナムが涙を流しながら斬りかかってくる。
蒔風がそれを「風林火山」で受け止める。
すでに組み立てされており、「風林」「火山」が両手に握られていた。
と、マンションの駐車場から、一台の車とバイクが飛び出していった。
車の方にはなのはが乗って、運転しているのは人型の白虎だ。
バイクにはフェイトが後ろに乗り、同じく朱雀がハンドルを握る。
そのなのはとフェイトに蒔風が念話で交信する。
『お前ら!!すずかとアリサを拾ってけ!!!』
『え!?すずかちゃん達を!?』
『どうして?』
『お前たちが病院に言っても、はやては魔法のこと知ってるし、相手がお前らじゃ戦闘になっちまうのが落ちだ!!だけどすずかの友達って言って病室に先に入っちまえば、あいつらもいきなり戦闘はしない・・・はずだ!!!』
『はずって!!』
『こっちもいきなりなんだ!!今頃ヴィータ達の方には獅子天麟ズが追いついてるはずだ!!時間は稼ぐから、早くしろ!!!』
『わ、わかった!!』
『朱雀!!白虎!!お前ら、急げよ!!』
『おっけー!!』
『了解!!』
そこでもう一度シグナムと蒔風は離れ、お互いを見据える。
「病院名を言うべきではなかったな」
「・・・・どうやらヴィータ達も足止めされているようだ・・・・だが、我らヴォルケンリッター、主の元へといかねばならんのだ!!!」
「だから!!一旦体勢を立て直して!!それに闇の書は・・・・」
「そんなことはどうでもいい!!!!!主が・・・・今!!この瞬間にも我らの名を呼んでいるかも知れんのだ!!!!我らを最も必要としてくれているあのお方が!!涙をこぼして枕を濡らし、そばにいてくれと我らの名前を呼んでいるのだぞ!!!!たとえこの先にどんな障害があろうとも、我らは行かねば・・・行かなければならないんだ!!!」
「ッ・・・・シグナム・・・・」
「そのためにはたとえ翼人であろうとも!!我らは貴様を・・・殺してでも押し除ける!!!もはや我らには、主以外に、本当に心を預けられる物はないんだ!!!!!!主の笑顔のためならば、貴様を切って捨てる覚悟すらある。騎士の誇りだって捨ててやる!!!!レヴァンティン!!!」
《Schlangeform!!!!》
ガシャァ!!!
レバンティンの刃が分裂し、どこまでも伸びていく。
鞭状連結刃の形態となったレバンティン・シュランゲフォルムが蒔風とシグナムを急退場に覆いつくす。
「なに!?ぐおっ!?」
蒔風の背中が熱くなって、そこに手を伸ばすとヌルリと血がこびりついていた。
「蒔風舜!!!そこをどいて・・・・貰おうかァァァああああああ!!!!!」
シグナムが柄を引く。
すると、蒔風の周囲の連結刃が絞り込まれて、蒔風を簀巻きにする。
「ぐおおおおお!?これは・・・・」
刃一つ一つが蒔風の身体に抉りこんでいく。
その隙間から血が滴り落ちて、地面へと落ちていった。
「はぁぁあああ!!!」
シグナムがさらに柄を引く。
ジャリ・・・・ギャリリリリリリリ!!!!
ズパァ!!!!
「・・・・が・・・・ふっ・・・」
蒔風に巻き付いた連結刃が一気に引かれ、その肌を切り刻んだ。
血しぶきが弾け、シグナムの頬に少しだけ撥ねる。
レヴァンティンを通常の状態に戻し、シグナムが蒔風を見つめた。
終わりか、と思われたが、蒔風の唸り声がその場に鳴り響く。
「・・・・・が、あああああああ!!!・・・・この・・・・調子に・・・のるなぁ!!!!」
蒔風が斬撃を飛ばし、それをシグナムが弾く。
だが、蒔風は止まらず、次々と斬撃を繰り出していく。
その間にと傷口からぼたぼたと血がこぼれていく。
そんな状態の蒔風を見てシグナムは叫んだ。
「もうよせ!!死ぬぞ!!」
「心配すんなら・・・こんなこと最初からすんじゃねええええええ!!!!」
グブォッ!!!!
蒔風が吐血する。
そこで蒔風の斬撃が一旦止む。
いや、止んだのではない。
溜まっていっているのだ。
最初の斬撃が横一列に高く設置され、その下にまた一列、一列と連なり、巨大な「斬撃の壁」となってシグナムに襲いかかる!!
「鎌鼬切演武・四季早々!!!夏、津波ぃああああ!!!!!」
蒔風の津波がシグナムに殺到する。
それをよけるでもなく受け止めるでもなく、シグナムのとった行動とは
「レヴァンティン!!!」
ガシュウガシュウガシュウ!!!
レヴァンティンを鞘に収め、カートリッジをロード、魔力を圧縮しだした。
「飛龍・・・一閃!!!!!!」
そしてそれを抜き放つ。
ゴゴゥ!!!!
連結刃の状態のレヴァンティンに魔力を乗せ、さらに炎に変換されそれを纏った刃が津波と正面からぶち当たり、大爆発を起こす。
グォッ・・・・ドゴオオオオオオオオオアアアアアア!!!!!!!!!
その爆発に蒔風が一息つく。
しかし、その顔はすぐに驚愕の物へと変わる。
爆煙の中からシグナムが飛び出してくる。
服が少し裂け、煤が付いて、血を少し流しているが、その眼は依然としてたったひとつの想いが宿っていた。
-必ず、主の元へ-
「同じ相手に何度も破れるような!!ベルカの騎士ではない!!!!!!」
ガギィン!!!!!
シグナムのその剣撃をとっさに「火」を抜いて、半分鞘に入った状態で受け止める蒔風。
だが、レヴァンティンの剣身に焔がともり、それが爆発し、蒔風を地面に吹き飛ばしていく。
ドォっ!!ヒュオオオオオオオオ・・・・・ドゴン!!!!
蒔風が落ちた先は小さな林だ。
それを確認したシグナムはヴィータ達を追って飛んで行ってしまった。
「ぐお・・・いってえ・・・・」
「大丈夫か、主!!」
蒔風は地面には直撃していなかった。
手元に残していた青龍と玄武が人型に顕現し、受け止めてくれたのだ。
「それにしても古代ベルカの騎士、侮れん」
「ああ、主をここまでやるとはな」
「ばっか野郎。今回はあれだ。行かせてやったんだよ。まだ負けてねえよ」
ふ、と蒔風の心情がわかって笑う青龍。
そして玄武が訊いた。
「では、儂らの負けはなんでしょうかな?」
「おまえら・・・わかってんだろ?」
「「「救える物を、根こそぎ救えなかったとき」」」
「獅子天麟はどうだ?」
「どうやら突破されたようだの。ようやる」
その報告を聞いて蒔風が息を噴き出す。
「ふーー。行くぞ。まだタイムアップじゃねえ」
「は」「御意に」
蒔風がヨロリと立ちあがって足を進める。
病院までは、少し遠かった。
「畜生が・・・今日がなんの日だか知ってんのか・・・今日は・・・・クリスマスイブだぞ!!!」
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「くそっ、一歩遅かった!!」
ヴィータ達はシャマルのデバイス、クラールヴィントの効果で姿を消して遠くから病院の窓を覗いていた。
「うう・・・テスタロッサちゃんとなのはちゃんなら何とかなりそうでも、すずかちゃんがいるんじゃ手が出せないわ・・・」
「なんという手段・・・・主はやての友人をも利用するか・・・・っ」
「あいつら・・・はやての友達連れて見舞いに来て・・・・でもあの表情・・・本気で心配してるみたいだ・・・」
遠くから見る病室には、なのはたち四人組ははやてを見舞っていた。
今自己紹介してるようで、それでもフェイトとなのはの動きは少しそわそわしてる。
「なあ・・・あの映像、本当は・・・・」
「言うなヴィータ。もはや何も信じられんのだ。我らは孤立している。「もしかしたら」ということに惑わされては・・・・・」
そういってたしなめるシグナムも悔しそうに唇をかんだ。
あの二人の少女は本気で主を心配してくれている。
それはここから見てもはっきりとわかった。
しかし、シグナムの脳裏にいくつもの可能性が現れていく。
もし、あれがすべて演技だったら?
もし、あれが自分たちをおびき寄せるためのものだったら?
もし、彼女たちも闇の書の封印を望んでいて、主もろとも・・・・・
そうではないと信じたい。
だが、その考えを「ない」と断言できないのもまた事実。
それができない自分が、シグナムたちは何より悔しく、己を恥じた。
「すべてはあの男が悪いんだ・・・こんな変なことになったのも、全部・・・全部!!」
が、そこに四人とは別の声が響く。
「悪いのは闇の書だ。その呪いのプログラムで、一体いくつの命が消えていったと思っている」
バッ!!!!と四人が振り返る。
病院から少し離れたビルの屋上に、あの仮面の男が立っていた。
「ッッッっ!!!!!」
四人が言葉もなく飛び出して屋上に降り、男を包囲する。
「貴様ぁ・・・・・」
「ほう・・・管理局の人間は一緒じゃないのか。まさか、映像の最後に映っていたあの影が理由でか?」
「お前・・・・分かってやってやがったのか!!!!」
「この場に管理局員に来られると厄介だからな」
「き・・・さまぁぁぁあああああ!!!!」
シグナムが激昂し、レバンティンの刃に魔力を乗せ、それで形成した斬撃を飛ばした。
反対側にいた三人は、とっさにそれをかわし、シグナムの方へと寄る。
斬撃は男の方へと向かい、爆発し、男から後方の屋上部分すべてを火の海に変え、灼熱の世界へと変える。
だが、その炎の中にゆらりと人影が映り、男は一切の傷なく歩み出てきた。
その姿にシグナムが忌々しそうに言い放つ。
「悪魔・・・・め」
「悪魔?違うな。闇の書を葬り去る、正義だ」
男が返す。
自分のやっていることは正しいと、まるで自分に言い聞かせるように。
だがしかし、この男は勘違いしている。
本当の正義などどこにもない。
「正義」を「正しさ」として語った時点で、その者は「正義」ではない。
「正義」とは、各人の中にある定義に過ぎない。
それに気づかないこの男は、ただの自己満足の塊に過ぎなかった。
英雄とは、それになろうとした時点で、英雄失格なのだ。
to be continued
後書き
なのはは自らを悪魔だといい、決して戦うことが正しくないとわかりながらも、分かり合うために戦いました。
しかし仮面の男はもうこれしかない、と決め、これが正しいと自分に言い聞かせて無理やり正当化しています。
アリス
「それが違い、ですか」
アリス
「次回、はやて、慟哭」
ではまた次回
こんな出会いをしていなければ………
私とお前は、いったいどれほどの友になれただろうか
まだ………間に合います!
止まれん………
我等守護騎士、主の笑顔のためならば、騎士の誇りさえ捨てると決めた。
もう………止まれんのだ!!
止めます、私とバルディッシュが!!
Yes Sir
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