英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第13話
~旧市街・メゾン・イメルダ~
「相変わらずここは埃っぽいな……」
鍵を開けて室内に入ったロイドは疲れた表情で呟いた。するとその時、何かがぶつかる音がした。
「魔獣も相変わらずいるようね……」
「ああ……とりあえず、アパート内の魔獣を掃討した後手配魔獣を退治しよう。………っと。その前に、リィン。君の戦闘能力を確かめさせてもらっていいか?」
「先程のミシェルさんとの話では剣士のようだけど……」
「ああ。魔獣と出会ったら、俺一人で戦うから手を出さないでくれ。」
ロイドとエリィに見つめられたリィンは頷いて答え
「フフ、早速お手並み拝見ってかな。」
「もう、ワジ君ったらあたし達もリィン君と同じ新人同士なんだから、そんな上から目線で言わないの。」
ワジは静かな笑みを浮かべ、ワジの言葉を聞いたノエルは呆れた。その後ロイド達がアパート内を探索していると魔獣が3体現れた!
「3体か……いけるか?」
魔獣の数を数えたロイドはリィンに尋ね
「ああ、任せてくれ。――――行くぞっ!!」
尋ねられたリィンは頷いた後鞘から剣を抜き
「二の型――――疾風!!」
電光石火の如く、敵達全員に強襲してダメージを与えた!
「「「…………………」」」
一方敵達は一斉にリィンに襲い掛かったが
「フッ!!」
リィンは素早い動きで後ろに跳躍して回避し
「燃えろ!連続火弾!!」
さらに短い詠唱で発動した魔術による火の球を2つ一体の敵に放ち、それを受けた敵は弱点でもあった火属性攻撃を受けて燃え尽きると共に消滅し
「ハァァァァァ…………絶!!」
さらにリィンは続けてクラフト――――洸破斬によって発生した衝撃波で一体の敵の身体を真っ二つにし、もう一体の敵を瀕死状態においやり
「止めだ!弧影斬!!」
最後の一体に一瞬で近づいて抜刀すると共に駆け抜け、リィンが駆け抜けると敵の身体は真っ二つになって消滅した!
「す、凄い……!」
「へえ……やるじゃないか。」
リィンの戦闘を見ていたノエルは驚きの表情で呟き、ワジは感心し
「凄いな……まるでアリオスさんを見ているみたいだ。」
「ハハ、さすがにそれは言いすぎだよ。」
口元に笑みを浮かべて言ったロイドの言葉を聞いたリィンは苦笑しながら剣を鞘に収めた。
「そう言えばリィンはさっき魔術を使っていたようだけど……それもメンフィルに留学してから習得したのかしら?」
一方ある事を疑問に思っていたエリィはリィンに尋ね
「ああ。メンフィルの訓練兵は武器での戦いだけじゃなく、適性があれば魔術での戦いも教えて貰えるんだ。俺は妹と違って火炎魔術だけ適性があるんだ。」
尋ねられたリィンは頷いて答えた。
「へ!?リィンの妹さんも魔術が扱えるのか!?」
一方リィンの答えを聞いたロイドは驚きの表情で尋ねた。
「ああ。治癒と再生、神聖、冷却、純粋魔術に適性があり、それぞれある程度使える。」
「け、けどどうして侍女の仕事をしている方が魔術を教授してもらえたの……?」
「……エリゼは一般の侍女として仕えるのではなく、皇家の方達―――特にリフィア殿下に仕える事を希望していてね。それで皇家の方達に直接仕える侍女にはある条件があるんだ。」
エリィに尋ねられたリィンは静かな表情で答え
「ある条件?」
リィンの話を聞いたロイドは不思議そうな表情をした。
「戦闘技能があるか、もしくは魔術の適性がある事…………それがメンフィル皇家に直接仕える侍女になれる条件なんだ。」
「ええっ!?ど、どうしてそんな条件が必要なの!?」
「どう考えてもメイドの仕事をする上で必要ないと思うのですが……」
そしてリィンの話を聞いたエリィは驚き、ノエルは信じられない表情で言った。
「……メンフィル皇家の方々は有事や戦争が起こった際、先頭に立って民や兵を導くからな。当然、世話係の侍女も戦場に付いて行く必要がある…………勿論、侍女は戦う必要はないけど戦場では何が起こるかわからない。だから自衛の意味も込めて、メンフィル皇家の方々に直接仕える侍女には戦闘能力が求められるんだ。」
「確かに思い返してみれば、”教団”によるクロスベル襲撃の時にお妃どころかお姫様だって戦っていたね。」
「さ、さすが”大陸最強”と呼ばれている国ですね……メイドにまで戦闘能力を求められているなんて……」
(そういえばお姉様がメイドだった時からお姉様、魔術が扱えたわね…………)
リィンの説明を聞いたワジは納得した様子で頷き、ノエルは驚きの表情で呟き、エリィはある事を思い出していた。
「そういう訳だから侍女見習い達に教育する時点で侍女見習い全員、魔術師達や皇家に直接仕える侍女や侍女長達によって魔術の適性を調べられるんだ。……それで幸運にもエリゼには魔術の才能があり、さらにエリゼ自身最初から皇家に―――リフィア殿下に仕える事を強く希望していたから、魔術も含めた皇家に直接仕える侍女としての教育を受ける事ができ……晴れてリフィア殿下付きの侍女になれたんだ。」
「どうしてリィンの妹さんはそんなにリフィア殿下に仕えたかったのかしら?」
「……メンフィル皇家や貴族の方々にシュバルツァー家の事を信用してもらうためさ。メンフィルの次代を担うリフィア殿下に直接仕え、信用してもらえれば皇家や貴族の方々も元・敵国の貴族とはいえ、信用してもらえるだろう?それもあのリフィア殿下なら自分が信用した者や気に入った者には良い待遇にしてくれるというとても懐が広い方だし。」
「そうだったのか……リィンも妹さんと同じ理由でメンフィル軍に?」
(そういえばリフィア殿下、お姉様と出会った時から気に入ったとか言う理由でお姉様を自分かプリネ姫専属の侍女として来ないかと勧誘していたわね……)
エリィの疑問に答えたリィンの話を聞いたロイドは驚きの表情で言った後尋ね、エリィはかつての事を思い出していた。
「ああ。俺が目指す最初の”道”はリフィア殿下の親衛隊に入隊する事だな。……まあ、殿下の親衛隊は侍女と違って人気があるから入隊するにはかなりの戦闘能力が求められるけどね……」
一方ロイドに尋ねられたリィンは頷いた後苦笑した。
「え…………リフィア殿下の侍女の人気がないってどういう事?次期皇帝であられるリフィア殿下に直接仕えられるなんて大変名誉な事だから、希望する方も多いと思うけど。」
一方リィンの話を聞いてある事を聞いたエリィは尋ねたが
「ハハ…………イリーナ皇妃の妹であるエリィなら知っているだろう?リフィア殿下が皇家の中で一番型破りな方である事を。」
「な、なるほど…………要するに侍女の方が殿下の型破りさに付いていけないのね……」
リィンの説明を聞いて冷や汗をかいて苦笑しながら言った。
(い、一体どんな方なのでしょう……?)
(『西ゼムリア通商会議』にも参加するから気になるな……)
(フフ、あの”姫君の中の姫君”でさえ勇ましいんだから、次期皇帝の皇女はもっと勇ましそうだねぇ。)
2人の会話を聞いていたノエルは戸惑い、ロイドは考え込み、ワジは静かな笑みを浮かべていた。その後ロイド達はアパート内にいる魔獣達を掃討した後、手配魔獣を探して見つけて戦闘をして退治し、ウェンディに頼まれた依頼を終えたので、ウェンディの所に向かって報告した。
~オーバルストア・ゲンテン~
「あ、お疲れ様ー。どうやらちゃんと戦闘をこなしてきたみたいね。それでエリィさんにワジ君、マスタークオーツを実際に使ってみた感想はどうでした?」
「ええ、何ていうか驚きました。」
「ああ、まさかクオーツ一つであれだけのパフォーマンスを発揮できるとはね。正直、ここまでとは思ってなかったかな。」
「ふふ、いいリアクションですね~。ちなみに最終段階まで成長させると、あることが出来るようになるんだけど……まあ、それは実際に育ててみての楽しみかな。」
「へえ~、まだサプライズが用意されてるんですね。」
「今でも十分凄いのにさらに凄くなるのか……」
「はは、楽しみにしておくよ。それで、講習ってのはこれで終わりでいいんだよな?」
ウェンディの話を聞いたノエルとリィンは驚きの表情で呟き、ロイドは口元に笑みを浮かべた後尋ね
「うん、警察本部にも私の方から報告させてもらうわ。じゃあ最後にオーブメントに関して質問があれば何でも答えさせえてもらうけど。改めて聞いておきたいことは?」
「そうだな……」
尋ねられたウェンディは頷いた後ロイド達からの質問を聞いて答えた。
「ありがとう、ウェンディ。勉強になった。」
「ふふ、なら良かった。ちなみにこれ、エニグマⅡ用の新規格のクオーツ。私から特務支援課に再始動をお祝いしてプレゼントよ。」
ロイドの言葉に頷いたウェンディはロイドにクオーツ『鷹目』を渡した。
「悪いな、ウェンディ。必ず有効に使わせてもらうよ。」
「本当に助かります。」
「ふふ、どういたしまして。とりあえず、また何かわからないことがあったらいつでも聞いてくださいね。隣のカウンターでも新しく色々なサービスを提供していく予定だし……これからもオーバルストア”ゲンテン”をよろしくお願いします。」
「フフ、こちらこそ。」
「今日はどうもありがとうございました。」
「それじゃあ、今日はこれで失礼します。」
その後ロイド達はヴァイス達と合流する為に警察本部に向かった…………
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