英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第12話
~遊撃士協会・クロスベル支部~
「あら、あなたたち………」
支部内に入って来たロイド達を見たミシェルは驚き
「ミシェルさん……ご無沙汰しています。」
ロイドはミシェルに声をかけた後受付に近づいた。
「フフ、久しぶりじゃない。アルタイル市での捕り物、本当にご苦労だったわね。」
「ありがとうございます。こちらこそ、アリオスさん達の協力があって助かりました。」
「ふふ、ミシェルさんもお元気そうですね。」
「フフン、もちろん絶好調よ♪ま、エステル達がいなくなったおかげで忙しさは増しちゃったけど。」
「やはり、そうなんですか……」
ミシェルの話を聞いたロイドは真剣な表情で頷き
「でも、アリオスさんや他の遊撃士の方々で上手く回しているみたいですね?」
ノエルは尋ねた。
「ま、手が足りないのには慣れているしね。なんとか切り盛りさせてもらっているわ。」
「まあ、そこは民間人の味方たる遊撃士……どんなに多忙を極めても泣き言は言ってられないだろうしね。」
「その通り、よくわかってるじゃない。アナタたち警察も認められてきたようだけど、だからこそ私達も―――って、もしかしてこの子達……?」
ワジの言葉に頷いたミシェルは答えかけようとしたがワジ達を見つめてある事に気付き
「ええ、支援課の新メンバーです。」
ロイドは頷いて答えた。
「このたび、警備隊より出航したノエル・シーカーです!」
「メンフィル帝国軍・訓練部隊所属、リィン・シュバルツァーです。」
「ワジ・ヘミスフィア……とだけ名乗ればわかってもらえるかな?」
そしてノエル達もそれぞれ自己紹介をし
「へえ……なかなか面白い子達が集まったみたいじゃないの。現警備隊隊員は言わずもがな、あの”テスタメンツ”の頭やメンフィルの軍人までいるなんてね。何にせよ、支援課の再開はこちらにとっても大助かりよ。いざというときは頼りにしちゃっていいのよね?」
ミシェルは興味深そうな表情でノエル達を見つめた後ロイドに尋ね
「ええ、もちろんです。それと………今この場にはいませんが局長とアル警視、そして既にご存知のエルファティシアさんも支援課に所属しているのでよろしくお願いします。」
「へえ……また思い切った行動をしているのね、”黄金の戦王”と”蒼銀の魔剣姫”は。」
ロイドの話を聞いたミシェルは驚きの表情で呟いた。
「やはり遊撃士協会も局長達の事はご存知なのですか?」
ミシェルの様子を見たエリィは尋ね
「ええ。……――――”六銃士”…………最初は忙しい遊撃士の代わりに手配魔獣を退治して、遊撃士協会から賞金をもらっていたフリーの傭兵だとみられていたんだけど…………次々といくつもの盗賊団や”猟兵団”を壊滅に追いやったり殲滅したりしてからは遊撃士協会や各国の軍部の見る目は変わったわ。」
尋ねられたミシェルは目を閉じて語った後真剣な表情になった。
「ほ、本当に司令達はたった6人でそんな凄い事をしたんですか……」
ミシェルの話を聞いたノエルは驚きの表情で呟き
「ええ。しかも彼らは常に市民の味方だったからね。彼らによって盗賊団や猟兵団の脅威から救われた市民達は彼らを”英雄”扱いして凄く慕っているわ。………何度か遊撃士協会の方でも全員最初から正遊撃士として所属しないかと勧誘はしたんだけどね。残念ながら常に断られた上、まさかクロスベルの警察と警備隊に所属するなんてねぇ……」
ミシェルは頷いた後口元に笑みを浮かべてロイド達を見つめた。
「まあ、それは俺達自身も驚いているんですけどね。局長とアル警視が優秀かつ健全なお蔭で警察の各方面は助かっています。」
「そうですね。警備隊の方でもギュランドロス司令達が来てくれたお蔭でソーニャ副司令達も随分助かっています。」
ミシェルに見つめられたロイドは苦笑しながら頷いた後口元に笑みを浮かべ、ロイドの言葉にノエルも頷いた。
「フフ、これからのクロスベルが明るい事になるのは間違いなしね。まあ、その代わり忙しくはなるけど……エステルが残した”置き土産”がいるから、しばらくはこっちも楽になるわね。」
「”置き土産”?」
ミシェルの言葉を聞いたリィンは不思議そうな表情をし
「セリカさん達ですか………………IBCで一緒に戦って感じましたけど、下手すれば戦闘能力はアリオスさんをも越えているんじゃないですか?」
ある事を察したロイドはミシェルに尋ね
「越えているも何も、一度セリカとアリオスが手合わせしたんだけど、アリオス、セリカに手加減された状態で一方的にやられたわよ。」
尋ねられたミシェルは疲れた表情で答えた。
「ええっ!?」
「あ、あの”風の剣聖”を手加減した状態で…………」
「へえ…………それは凄い腕だね。」
(……まあ、”世界の禁忌”とまで伝えられている”神殺し”なら可能だろうな……)
ミシェルの説明を聞いたエリィとノエル、ワジは驚き、リィンは納得した表情になった。
「あれを見て改めてエステルの知り合いの出鱈目さを思い知ったわね…………後でフェミリンスの正体を知った時は驚いたわよ……まさか”神”自身がたった一人の人間を守っているなんて…………”神”と契約している事といい、メンフィルの皇族達と親しい事といい、あの娘は一体、どれだけ出鱈目なのよ……」
そしてミシェルは溜息を吐き
「ハ、ハハ…………」
(それだけでは飽き足らず、エステルさんは空の女神の子孫というとんでもない人だものね……)
ロイドは表情を引き攣らせて笑い、エリィも表情を引き攣らせていた。
「それにしても”風の剣聖”か。機会があれば同じ八葉の剣士として手合わせしてみたいな。」
「あら………貴方もしかしてアリオスと同じ流派の”八葉一刀流”なの?」
そしてリィンが呟いた言葉を聞いたミシェルは興味深そうな表情でリィンを見つめ
「はい。メンフィルに留学する少し前、”剣仙”――――ユン・カーフェイ師匠に出会えて、さらに指南をして頂いた時期がありまして。ありがたくも『初伝』を授かっています。」
「へえ……リィンはアリオスさんと同じ”八葉一刀流”の剣士なのか……」
「フフ、それは心強いわね。」
リィンの説明を聞いたロイドは驚き、エリィは微笑んだ。
「メンフィルに留学?さっきメンフィル軍に所属しているって言ってたけど………」
一方ある事が気になったミシェルはリィンに尋ね
「あ、はい。実は俺は元・エレボニアの領土の一部を治めていた貴族―――”男爵”の爵位のシュバルツァー家の者でして……”百日戦役”でメンフィル軍がシュバルツァー家が治める土地に侵攻した際、無血開城してメンフィルに降伏し、メンフィル帝国に所属し、元・敵国の貴族であるシュバルツァー家が皇家に忠誠の証を見せ、信用してもらう為に俺はメンフィル軍に志願し、妹はメンフィル皇家に仕える侍女として働いているんです。ですから俺の出身はこちらの世界です。」
「そういえば”百日戦役”でメンフィルはエレボニアの領土をいくつも奪い取ったって話だったわね………けど、意外ね?プライドの高いエレボニアの貴族なら絶対に降伏なんて事しないと思ってたけど。」
「……その頃には既にメンフィルの強さは知れ渡っていましたし、父さん達は貴族としてのプライドより俺と妹の事を考えてくれましたから……お蔭で所属する国が違うだけで、今まで通りの待遇にしてもらえた上、妹共々メンフィルには色々とお世話になり、こちらに来る前もリウイ陛下がわざわざ元・”八葉一刀流”の剣士であったカシウス准将に俺を鍛えるように依頼して頂き、カシウス准将には短期間ながらも鍛えて頂きました。」
「ええっ!?あ、あの”剣聖”にも鍛えてもらったのか!?」
ミシェルに説明するリィンの話を聞いたロイドは驚き
「ああ。後はカシウス准将自らが鍛えた人の一人、リシャール殿にも少しだけ鍛えてもらったり、手合わせをしてもらったよ。」
「へえ………”剣聖”だけじゃなく、王国軍の元・情報部を率いていたあのリシャール大佐にも鍛えてもらったなんてねぇ…………これは期待できそうね。新メンバー共々、期待していいのよね?」
リィンの話を聞いたミシェルは口元に笑みを浮かべた後ロイドに視線を向け
「はい!立場は違いますけど互いに力を合わせていきましょう。」
視線を向けられたロイドは力強く頷いた。
「フフ、最初に会った頃よりいい顔になってきたわね。それじゃ、改めて…………これからよろしくお願いするわね。」
ロイドの様子を見たミシェルは静かな笑みを浮かべた後ウインクをした。
その後ロイド達は旧市街にあるアパートに向かった………………
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