英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第121話
~太陽の砦・最奥~
「……よし………!」
「ハッ………賭けは俺達の勝ちだな!」
「大人しく投降しなさい!」
地面に膝をついているヨアヒムを見たロイドは声を上げ、ランディは口元に笑みを浮かべ、エリィはヨアヒムに命令した。
「クク………やれやれ。………一つ教えてあげよう………知っての通り”グノーシス”の効能は単純な身体能力の強化などではない………感応力の強化、引いては服用者の潜在能力を引き出すものだが………その使い方を極めれば……こんな事もできるのさ………!」
一方地面に膝をついているヨアヒムは溜息を吐いた後、凶悪な笑みを浮かべて説明し
「ハハハハハッ!!」
なんとクラフト―――魔眼を使ってロイド達の身体の動きを止めた!
「な…………!?」
「なんだコイツは!?」
「く、空間が………呪縛されている………!?」
身体が動かなくなったロイドとランディ、ティオは驚き
「こ、これって……ワイスマンの”魔眼”………!?」
「馬鹿な………どうやって!?」
「何で使えるの~!?」
見覚えのある技にエステル、ヨシュア、ミントは驚いた。
「クク――――そちらの3人とティオ・プラトー、そしてレン・ヘイワーズは随分と興味深い体験をしているようだな。”リベル=アーク”に”影の国”か………」
そしてヨアヒムは口元に笑みを浮かべて呟き
「こいつ………あたしたちの記憶を!?」
「まさか………そこから再現したのか!?」
ヨアヒムの言葉を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは驚きの表情で叫び
「ワイスマン…………ほう、これはなかなか共感を覚える人物のようだ。『身喰らう蛇』の情報も思っていた以上に興味深い………フフ……なかなか愉しませてくれそうだ。」
エステル達の情報を読み取っていたヨアヒムは笑い
「……………………」
「くっ……………こんなヤツに………」
「む~……………!」
ヨシュアは真剣な表情でヨアヒムを睨み、エステルとミントは悔しそうな表情でヨアヒムを睨んでいた。
「クク……賭けは僕の勝ちだ。―――さっそく君達には”グノーシス”を飲んでもらうよ?そうすれば君達は僕の思うがまま………キーア様も納得してお戻りになって頂けるだろう。」
「てめえ………!」
「そ、それが狙いで私達をここまで………!?」
そしてヨアヒムの話を聞いたランディとエリィは驚いた後ヨアヒムを睨み
「クク、君達のような愚物にどうしてわざわざ面会の時間を割いたと思っている?全てはキーア様のため………それ以外の理由がどこにあるというんだい!?」
「………あ、あなたは………」
睨まれたヨアヒムが叫んだ言葉を聞いたティオはヨアヒムを睨んでいた。
「………そこまでの力を手に入れておきながら………その上、キーアに拘る理由が一体どこにあるんだ………?」
その時考え込んでいたロイドはヨアヒムに疑問を投げかけ
「ほう………?」
ロイドの疑問を聞いたヨアヒムは興味深そうな表情でロイドを見つめた。
「彼女が本当に500年前の時代の出身だったとしても………あくまで普通の女の子であるのは変わらないんじゃないのか………?それだけの力を手に入れながらどうしてキーアに拘る……?」
「た、確かに………」
「根本的な疑問だね………」
ロイドの疑問を聞いたエリィとヨシュアは頷いた。
「クク、言っただろう。彼女は”神”となる御方………キーア様の前には、この力など比較するのもおこがましいだろう。いや、クク………そもそも比較すること自体、意味が無いとも言えるのかな………?」
「ワケの判らねぇことを………」
「本当に………誰かさんにソックリだわ………」
「そうだよね~。」
ヨアヒムの言葉を聞いたランディはヨアヒムを睨み、エステルとミントは呆れていた。
「まあいい………この際だから聞いておく。――――どうしてキーアは競売会の場にいたんだ?」
その時ロイドは真剣な表情でヨアヒムに尋ね
「…………………………」
尋ねられたヨアヒムは何も答えず、黙り込み
「確かにそれも………まだわかっていないわね……」
「マフィアの方でも……心当たりが無いそうですが………」
ロイドの質問を聞いたエリィとティオは考え込んでいた。
「………続けて聞くぞ。俺の兄―――ガイ・バニングスを殺したのはあんたか………?」
「ほほう………そうか、そうだったのか!なるほど………2人きりの兄弟………歳の差は10近く……兄の殉職後はクロスベルを離れ再び戻ってきたというわけか………はは―――これは傑作だ!まさか君があの厄介な男の弟だったとは………!」
そしてロイドの疑問を聞いたヨアヒムはロイドの記憶を読み取って興味深そうな表情をした後笑った。
「………それは肯定の言葉と受け取っていいのか?」
「フフ、確かに当時、彼は僕の存在に迫っていた。厄介だからルバーチェに頼んで抹殺するよう依頼したんだが……どうやら殺したのは全く別の勢力だったようだな。3年前、マルコーニはさも自分達の手柄のように僕に恩を着せてきたが………ガルシアの方は否定していたからその可能性は無いだろう。」
「なるほど………だろうと思ったよ。―――あんたみたいな男に兄貴が負けるとは思えないからな。」
自分の疑問に答えたヨアヒムの説明を聞いたロイドは頷いた後口元に笑みを浮かべ
「!!ほう………面白い事を言うじゃないか。」
ロイドの言葉を聞いたヨアヒムは目を見開いた後、ロイドを睨んで呟いた。
「キーアが競売会の場にいた経緯………多分それも、あんたにとっては想定外の出来事だったはずだ……自らが”神”と崇める存在を簡単に手放すわけがないからな………」
「………確かに……」
「余りに非合理的ですね………」
ロイドの推理を聞いたエリィとティオは頷き
「……くっ………確かにあの日………キーア様は永き眠りからようやくお目覚めになった………だが、僕がそれを知った時にはこの祭壇から居なくなっていた……おそらくご自分で地上に彷徨い出たと思ったが………」
ヨアヒムは唸った後考え込んだが
「そして偶然、出品予定だった人形のトランクに入り込んだ………?―――馬鹿げている。そんな事がありえる訳がない。”黒月”にもたらされた情報もある。つまり―――今回の事件に関しては黒幕であるあんたも知らないことが少なくないという事だろう。」
「ぐっ………」
ロイドの指摘を受けて悔しそうな表情をし
「はは………良いツッコミだぜ!」
「ロイド君、凄い!」
「さすがは捜査官だね……」
ランディとエステル、ヨシュアはロイドを称賛した。
「だ、だからどうした!キーア様がお戻りになればそのような瑣末な疑問は―――」
そしてヨアヒムが狼狽えた様子で答えかけたその時
「”真なる叡智”?冗談も大概にしたらどうだ………?あんたが今していることは、誰かの記憶を盗み見て、誰かの力を真似ただけだろう………あんたが非道な実験を元に完成させた薬とやらも同じ………罪も無い子供達を弄んで愚かな試行錯誤を繰り返した挙句、偶然見つけた結果でしかない………そんなものが断じて”叡智”であるものか……!」
ロイドは笑った後ヨアヒムを睨み
「き、貴様………」
ロイドの言葉を聞いたヨアヒムは怒りの表情でロイドを睨んだ。
「確かに”叡智”というには下劣すぎるかもしれないわね………」
「………卑しいと言ってもいいかと思います。」
「全くだぜ。同じ”叡智”で呼ばれているルファディエル姐さんの異名が穢れるぜ。」
ロイドの言葉に頷いたエリィはヨアヒムを睨み、ティオとランディは呆れた表情で見つめ
「ごめん、ワイスマンの方が遥かにマシだったかも……」
「ああ………僕も同感だ。」
「ミントも。」
エステルは呆れた表情で答え、エステルの言葉にヨシュアとミントも頷いた。
「そして今もなお………あんたはその下らない幻想をキーアに押し付けようとしている。あの陽だまりのように明るくて、無邪気で天真爛漫で……そして思いやりのある俺達の大切なあの子に……!」
そしてロイドは怒りの表情でヨアヒムを睨んで呟いたその時
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」
なんと全身からすざましい気を発してヨアヒムの魔眼の効果を打ち砕き
「――――そんな馬鹿げた事をさせるものか!!」
大声で叫んだ!
「ば、馬鹿な………」
それを見たヨアヒムは信じられない表情をし
「あ……」
「身体が………動くぜ!」
「呪縛が………解けた………!?」
「そうか……彼の”魔眼”は所詮コピーしただけのもの…………動揺すれば保てない程度の不完全なものだったのか………!」
「ロイド君の気合いがブチ破ったってわけね………!」
「凄い!まるでママみたい………!」
「フフ、どうやら私達の力は必要なかったようですわね………」
「ええ……………」
呪縛が解けたエリィ達は次々と立ち上がった!
「うふふ。それともう一つ、あなたは勘違いしているわ、ヨアヒム・ギュンター。教団は必死で空の女神の存在を否定しているようだけど………かつて存在し、今も空の女神は生き続けている事をあなたたちは自分達が手に入れた”真なる叡智”で証明してしまっているのよ?」
そして立ち上がったレンは余裕の笑みを浮かべて呟いた。
「何だとっ!?」
レンの言葉を聞いたヨアヒムは驚いた後レンを見つめ
「うふふ、まだわからないの?レン達の記憶を読み取れば、教団が否定していた空の女神が存在している事がわかるでしょう?」
「何………!?」
見つめられたレンが小悪魔な笑みを浮かべて言った言葉を聞いたヨアヒムが驚いてレンを見つめたその時
「!!??ば、馬鹿な………空の女神が存在し………その子孫が”光”の名を受け継ぎ、今も生きているだとっ!?」
目を見開き、信じられない表情でエステルを見つめて叫んだ!
「へっ!?」
「ええっ!?」
「お、おいおいおい………!一体どういう事だよ、そりゃっ!?」
ヨアヒムの言葉を聞いたロイド、エリィ、ランディは驚いた後エステルを見つめたその時
「全くもう………あたしの許可もなく勝手にあたしや父さんに隠されている最大の秘密をしゃべらないでよね、レン。父さん達にも秘密にしているんだから………」
エステルは呆れた表情で溜息を吐いた後ジト目でレンに視線を向けた。
「エ、エステル!?」
「い、一体どういう事なんですか、エステルさん!?」
エステルの言葉を聞いたロイドとエリィは驚きの表情でエステルを見つめ
「あはは……まあ、ここまでバレちゃあしょうがないわね。………レンの言う通り、あたしと父さんのご先祖様は空の女神って訳。ま、要するにあたしと父さんはフェミリンスの末裔であるエクリアさんやリウイ達と同じ、”神”の子孫なの。」
見つめられたエステルは苦笑しながら答え
「エステル………そんなあっさり答えないでよ………ゼムリア大陸中を揺るがす事実だとちゃんとわかっているのかい?」
「アハハ………」
エステルの言葉を聞いたヨシュアは呆れた表情で溜息を吐き、ミントは苦笑していた。するとその時
「「「ええええええええええええっ!?」」」
ロイドとエリィ、ランディは同時に大声で叫び
「エ、エステルちゃん!今の話は本当なのかっ!?」
「エ、空の女神に子孫がいるなんて、聞いた事がありませんよ!?」
ランディとエリィは驚きの表情でエステルを尋ねたその時
「というかロイドさん達、わたしやエステルさん達が写った”影の国”で撮った写真で空の女神の両親も見ていますよ?」
ティオは苦笑しながらロイド達に指摘し
「なっ!?それは一体どういう事だ、ティオ!!」
「い、一体誰が空の女神の……!」
ティオの指摘を聞いたロイドとエリィは驚きの表情でティオに尋ね
「写真に写っていた赤毛で鎧を着た剣士の方――――”赤髪の冒険家の冒険日誌”の主人公、アドルさんとその右隣に写っていたセルリアンブルーの髪で白い翼を生やした女性―――フィーナさんが空の女神の両親です。そして左隣に写っていた金髪の女性―――エレナさんが後にアドルさんと結婚して子供を産んで、その子孫が空の女神の夫になったんです。そしてその夫の人が空の女神と共に混迷に満ちた当時の世界を救って、”光”と称され、空の女神の子供やその子孫は以後その名前を名乗り続けていると”影の国”でアドルさん達が帰還した後、わかったんです。」
尋ねられたティオは答えた。
「………………………」
「あ、”赤髪の冒険家の冒険日誌”って実話だったの!?し、しかも空の女神の父親だったなんて………!で、でもそんな事より……!」
「エステルちゃんが空の女神の子孫って………ハハッ!どこまで出鱈目なんだよ、エステルちゃん!」
ティオの説明を聞いたロイドは口をパクパクし、エリィは驚きの表情で叫んでエステルを見つめ、ランディは驚いた後感心した様子でエステルを見つめ
「あはは。あの時は驚いたわ~。まさかご先祖様に会えるなんて、予想もしていなかったわ~。」
見つめられたエステルは笑いながら答え
「へ!?」
「エ、空の女神の子孫である事に驚かなかったのですか!?」
エステルの答えを聞いたロイドは驚き、エリィは尋ね
「まあ最初は驚いたけど、よく考えたら”神”の子孫ならエクリアさん達みたいに他にもいるじゃない。だから、そんなに驚く事じゃないと思うわよ?ただ単にあたしのすっごい昔のおばあちゃんが空の女神だったってだけの話。」
「いや、そんな考えができるの、君だけだと思うけど……」
「フフ、それがママのいい所だよ♪」
2人の疑問に答えたエステルの言葉を聞いたヨシュアは呆れた表情で指摘し、ミントは笑顔になり
「「フフ……………」」
エクリアとフェミリンスは微笑み
「「……………………」」
ロイドとエリィは絶句し
「ハハ………と、とんでもない器の持ち主だな、エステルちゃん………」
ランディは冷や汗をかいた後苦笑しながらエステルを見つめ
「フフ……レンさんの言う通り、教団は自分達の力で否定していた空の女神が存在していた事を証明してしまったようですね。」
「クスクス。ねえ、どんな気分?必死に否定していた空の女神が存在していた事を自分達の力で証明してしまった事に♪」
ティオは静かな笑みを浮かべてヨアヒムを見つめ、レンは小悪魔な笑みを浮かべて信じられない表情で固まっているヨアヒムに尋ね
「き、貴様――――――――ッ!認めるか………絶対に認めるもんか………!そうだ………”真なる叡智”がまだ不完全だったんだ………そうだ、そうに違いない………!空の女神が存在する訳がない………!これは何かの間違いだっ!!」
尋ねられたヨアヒムは叫んだ後怒りの表情で呟いた後必死の表情で大声で叫んだ!
「ホント、教授と一緒で往生際が悪いわね………あたしは空の女神じゃないから空の女神が何をどう思っているかは知らないけど………きっとあたしや自分の両親であるアドルさんとフィーナさん……そして自分の夫や夫の先祖でもあるエレナさんと共にこう思っていると思うわ………絶対に教団を許さないって!!」
ヨアヒムの様子を見たエステルは静かに呟いた後その身に宿っているサティアの力――――”正義の大女神”の力を解放し、セリカと同じ髪と瞳の色をした後膨大な神力をさらけ出している神剣―――天秤の十字架を鞘から抜いてヨアヒムに剣の切っ先を向けて怒りの表情で睨みながら叫び
「な、な、なっ……………!?」
エステルに睨まれたヨアヒムはエステルの背後に怒りの表情で剣の切っ先を自分に向けている”影の国”でエステルやティオ達と共に戦った空の女神の父親でもある”赤毛の冒険家”アドルや全ての始まりとなった”始まりの勇父”ナユタ、アドルの妻となった”光の白騎士”エレナ、エステルに自らの魂を委ねた”正義の大女神”アストライア、杖を自分に向けて怒りの表情で睨んでいる空の女神の母親である”自由の女神”フィーナや片翼の光の翼を生やしたナユタの妻であり、フィーナの先祖でもある”始まりの聖母”クレハ、大剣の切っ先を自分に向けて怒りの表情で睨むエステルの前世である”聖炎姫”リンと同じように斧槍の切っ先を自分に向けて怒りの表情で睨むもう一人のエステルの前世である”森の守護者”ラピス、そしてフィーナの容姿や髪の色、アドルの瞳の色と同じ女性がその隣にいる栗色の髪と自分と同じ瞳の色でアドルの容姿とよく似ている青年と共に怒りの表情で自分を睨んでいる幻影が見え、幻影の睨みに圧されたヨアヒムは杖を落として後ずさった…………!
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