Ｔｈｒｅｅ　Ｒｏｓｅｓ

「この国において働くぞ」
「国、そして民の為に」
「帝国の全ての為に」
「そうする、ではな」
　太子は陰から動いていた、だがその動きは確実で一つ一つ周りの国々に対しても進めていた。そのことに気付いている者は国にはいなかった、大公さえも。
　その大公は今度はマリー、マリア、セーラにだ。それぞれ言っていた。
「ではそなた達もだ」
「はい、王家の者としてですね」
「そのうえで、ですね」
「それぞれ」
「働いてもらう、特にだ」
　大公はセーラとマリアを見て言った。
「いいな」
「はい、それでは」
「婚礼の用意を」
「進める、それでだ」
　大公は二人にさらに言った。
「セーラは半島に行ってもらうことになりそうだが」
「はい」
「マリアはだ」
　自分の娘にはこう言った。
「そなたはこの国に残るかも知れない」
「この国に、ですか」
「そうだ、どうやらな」
　こう言うのだった。
「あちらの事情でだ」
「島国の」
「そなたの夫はあの国の第一王子だ」
　即ち第一王位の継承者だ。
「だが王子はこの国に来る」
「確かあの国は今は」
「おかしな状況になっている」
　その状況もだ、大公は話した。
「今はな」
「私を受け入れてくれるかどうか」
「微妙な状況だ」
　それがおかしな状況だというのだ。
「旧教の国だが」
「それでもですか」
「新教への反発もあるが」
　しかしというのだ。
「だが」
「旧教徒達の間で、ですか」
「そうだ、内輪揉めが続いている」
　その旧教徒達の中でというのだ。
「実にな」
「まさか」
　マリアもここまで聞いて察してだ、父である大公に言った。
「王国派と帝国派で」
「その通りだ、双方に別れて争っている」　
　それが島国の今の状況だというのだ。
「だからだ」
「私は、ですか」
「今あの国に入られるかどうか」
「微妙なのですね」
「内戦になるかも知れない」　
　最悪の事態もだ、大公は言及した。
「ことと次第によってな」
「そこまでの状況ですか」
「そうだ、だが次第に帝国が優勢になってきている」
　この国の方がというのだ。
「王国派の勢力は弱まっている」
「では」
「内戦の危険はあるが」　
　このことは確かであるがというのだ。
「しかし」
「それでもですか」
「そうだ、どうもだ」
　さらに言う大公だった。