英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第119話
最奥に到着したロイド達は澄んだ色をした湖の中に立っている橋を渡り終え、広い場所に出た。
~太陽の砦・最奥~
「ここは………」
「………地下の湖………?」
ロイドは立ち止まって周囲を見回し、エリィは考え込み
「こんなモンが広がってたのかよ……」
「地下にこれほどの湖があるなんて………」
ランディは目を細めて呟き、エクリアは真剣な表情で呟いた。
「皆さん、あれ………!」
その時何かに気付いたティオは声を上げて視線を向けた。ティオの視線の先には祭壇らしき場所にヨアヒムが病院に置いて行ったファイルの中にあった写真と同じ球体の設備があった。
「キー坊の写真に映っていた………!」
「この場所で撮られたものだったのね………」
設備を見たランディは声を上げ、エリィは真剣な表情で呟いた。
………なんかね、暗くてでっかい場所がアタマの中に浮かんできた。上の方がぼんやりと光っててキレイだけど、ちょっとコワイ感じ
「そうか……あれはこの場所の事だったのか。」
そしてキーアの言葉をロイドが思い出して呟いたその時
「フフ………その通りさ。」
ヨアヒムの声が聞こえた後、祭壇の陰から司祭のような服装を身につけたヨアヒムが現れた。
「ヨアヒム・ギュンター………」
「い、いつの間に………」
「………どうやら本当に只者じゃなさそうだね。」
現れたヨアヒムを見たロイドは厳しい表情をし、エステルとヨシュアは真剣な表情で睨んでいた。
「―――ようこそ。我等の起源にして聖地へ。特務支援課の諸君、そして遊撃士協会とメンフィル帝国のお客人……歓迎させてもらうよ。」
ヨアヒムは階段を下りながら不敵な笑みを浮かべ、階段を降り、広間に来たヨアヒムにロイド達は武器を構えて近づいた。
「っ……」
「……………」
ヨアヒムをティオは唇を噛んで見つめ、レンは真剣な表情で見つめ
「………あなたは………」
「随分と余裕じゃねぇか……」
エリィとランディは厳しい表情でヨアヒムを睨み
「…………………――――ヨアヒム・ギュンター。単刀直入に行かせてもらう。”グノーシス”を投与して操っている人々を今すぐ解放し、悪魔達を元の世界に戻せ。どんな方法かは知らないが………あんたが操り、悪魔達を召喚しているのはわかっている。」
ロイドは真剣な表情で黙って見つめた後ヨアヒムに命令した。
「ああ、別に構わないよ。」
その時ヨアヒムは意外そうな表情で答え
「え………」
ヨアヒムの答えを聞いたロイドは呆けたその時
「IBCビルでも言っただろう。――――キーア様を引き渡せばいくらでも手を引こうと。」
ヨアヒムは醜悪な笑みを浮かべて答えた。
「ふ、ふざけるな………ッ!」
「まだそんな世迷言を………!」
「てめぇ……喧嘩売ってんのか?」
「………最低の犯罪者ですね。」
「クスクス。状況をわかっていてそんな無謀な事を言っているのかしら?肝心の”グノーシス”とて既に解毒できるとわかっているし、どれだけ悪魔を召喚しようとパパ達がいる限り無駄な抵抗だし、時間をかければかけるほどこっちだって新たなメンフィル兵を呼び寄せられるわ。第一、ここであなたを殺せば操られた人達も元通りになるし、悪魔召喚も消えるでしょうね♪」
ヨアヒムの答えを聞いたロイドは叫び、エリィとランディはヨアヒムを睨み、ティオは蔑みの表情で見つめ、レンは凶悪な笑みを浮かべ
(なにコイツ……教授並に性格が悪そうね。)
(ワイスマンはここまで狂気じみてはいなかったけど……)
(正直、どっちも良い勝負だとミントは思うよ?)
エステル、ヨシュア、ミントは小声で会話をし
「………………………」
(………あの者はもう”後戻り”ができない程”魔”に身体を売り渡していますわ。例え解毒薬とやらを使っても……)
エクリアは真剣な表情でヨアヒムを黙って睨み、フェミリンスは警戒した表情でヨアヒムを睨んでいた。
「やれやれ………これでは話にならないな。そもそもキーア様は我等が教団の崇める御子――――それを返せというのがどうして理不尽なんだい?」
ロイド達の様子を見たヨアヒムは溜息を吐いた後尋ね
「自分達が6年前、どんな事をやったと思っている!そんな連中にキーアを引き渡せるわけがないだろうが!」
「それよりも……いい加減、キーアちゃんの素性を明らかにしなさい!ちゃんと身元は判っているのでしょう!?」
尋ねられたロイドは怒鳴り、エリィは怒りの表情で命令した。
「クク………なるほど。―――君達はまだ、キーア様がこの時代の生まれだと思っているのか。」
一方エリィの言葉を聞いたヨアヒムは口元に笑みを浮かべて呟き
「!?」
「こ、この時代……!?」
「「「……………………………」」」
ヨアヒムの呟きを聞いたロイドは驚き、ティオは戸惑い、レン、エクリア、フェミリンスは目を細めて考え込んだ。
「フフ、いいだろう。”叡智”に至らぬ者に話すのは本来禁じられているが………君達には特別に教えてあげよう。」
ロイド達の様子を見たヨアヒムは口元に笑みを浮かべて言った後振り向いて球体の設備を見上げて説明した。
「つい一月前までキーア様は眠っておられた―――この祭壇の聖なる揺りかごでまどろむように………500年以上にも及ぶ、永き眠りに就かれていたのさ!」
「!!!」
「なっ………!?」
「………ま、まさか………!」
「てめえ……フカシてんじゃねえぞ!?」
高々と叫んだヨアヒムの説明を聞いたロイドとエリィ、ティオは驚き、ランディは怒鳴った。
「フフ、別にそんな驚くことも無いだろう?現代の技術では不可能でも古の技術ならばそれが可能―――………500年前、アーティファクトを研究していた錬金術師がこの地にあった。この祭壇は彼らの技術を元に造られたと伝えられている。」
ロイド達の様子にヨアヒムは口元に笑みを浮かべて再び振り向いてロイド達を見つめて説明し
「”星見の塔”を建造した中世の錬金術師たち………」
「そ、そんな繋がりがあったなんて……」
(………”星見の塔”………そういえばあそこには大量の本があったわね………あれらに何か手掛かりになりそうなものが載っていそうね………)
ヨシュアが呟いた言葉を聞いたエステルは驚きの表情で呟き、レンは真剣な表情で考え込んでいた。
「以来、キーア様は500年もの永き眠りに就かれていた……当然、その素性を知る者は我が教団にすら残っていない。……つまりはそういう事さ。」
「……そんな……」
「何てこった………」
「………キーアちゃんの過去………取り戻してあげられると思ったのに………」
「………………」
ヨアヒムの説明を聞いたロイド、ランディ、エリィ、ティオは悲しそうな表情や辛そうな表情になり
(フェミリンス……今の話を聞いて、どう思いますか?)
(………恐らくあの幼子は貴女のように”神”のような力を受け継ぐ存在………遥か昔、何かがあって封印されていたか、もしくは………)
(何者かによって錬金術や魔道で創られた存在――――ホムンクルスである可能性があるかもしれない………という事ですね………)
エクリアとフェミリンスは真剣な表情で念話をしていた。
「フフ………何を哀しむことがあるんだい?キーア様に過去など不要……なぜなら彼女はこれより、真の”神”になるのだから―――!」
一方ロイド達の様子を見ていたヨアヒムは笑った後醜悪な笑みを浮かべて叫んだ!
「なっ………」
「か、神って………!?」
ヨアヒムの言葉を聞いたロイドとエステルは驚き
「ハハハ、文字通りの意味さ!君達はいい加減、真実に気づくべきなんだよ!”空の女神”エイドス!?そんなものが何処にいる!?全ては七耀教会によるまやかしだと何故気付かない!?」
2人の様子を見たヨアヒムは大声で笑った後高々と叫び
「しょ、正気かよ………!?」
「め、女神の存在を疑う人がいるなんて………」
ヨアヒムの言葉を聞いたランディとエリィは信じられない表情で見つめた。
「クク、だがそれが我が”D∴G教団”の説く真理だ。よく誤解されるのだが………我々は別に、悪魔という存在を崇拝しているわけではない。ただ、女神という概念を否定するために好都合だから概念的に利用しているにすぎない。毒を持って毒を制す……つまりはそういう事だよ。」
「ふ、ふざけないで………!」
そしてヨアヒムが説明をしたその時、ティオは大声で叫び
「だったらどうしてあんな酷いことを………!………みんな………みんな泣き叫んでいた………!わたしがいたロッジはそれでもマシだったと聞いている………!悪魔なんて崇拝してもいないのに………どうしてそんな………!」
何かを耐えるように辛そうな表情で呟き
「ティオ………」
「………ティオすけ………」
「………………………」
ティオの様子を見たロイドとランディは心配そうな表情で見つめ、レンは辛そうな表情で黙り込んでいた。
「クク………ティオ・プラトー。君の名前は覚えているよ。アルタイル・ロッジで素晴らしい感応力を示し、さらには悪魔との配合が成功し、理論上その身に秘める力は高位の悪魔クラス……いや、ひょっとすれば聖典に出てくる七十七の悪魔でも特に力が強い悪魔――――”深淵”のアスタルテや”暴虐”のロストフルムにも劣らない力が覚醒する可能性があると推論されていた検体……いやはや、まさかこんな形で検体本人に会うことになるとはね。」
「…………………………」
口元に笑みを浮かべて語るヨアヒムをティオは辛そうな表情で黙って見つめ
「……丁度いい。改めて話してもらおうか……大陸各地のロッジで行っていた数々の非道な儀式の目的を……!」
ロイドは真剣な表情でヨアヒムを睨んで言った。
「おや、まだわからないのかね?全ては”グノーシス”の完成度を高めるための実験だったのさ。人が極限状態の時に示す想念の強さや潜在能力の開花………それが”グノーシス”の完成度を高める格好のデータだったわけだ。」
「……!」
そしてヨアヒムの説明を聞いたロイドは唇を噛みしめてヨアヒムを睨み
「ちなみに子供が多かった理由は単にデータサンプルの精度の問題さ。思春期を迎える前の幼く無垢な検体の方が色々と―――」
ヨアヒムは自慢げに説明をしたその時
「………っ…………」
「…………………」
ティオは過去を思い出しのか身体を震わせ、レンは膨大な殺気を纏ってヨアヒムを睨み
「やめろ………!」
「いい加減にしなさい!この人でなし……!」
ロイドとエリィは叫び
「………まさか”俺ら”以上の外道がいるとはな………」
ランディは目を細めて呟いた。するとその時黙って考え込んでいたレンはヨアヒムを真剣な表情で見つめてある事を尋ねた。
「―――ヨアヒム・ギュンター。察するに、あなたは数々の実験を総括していた責任者のだったようね……?」
「フフ、その通りだ。だからといって教団内の位階が高いわけではない。そもそも我が教団は、真なる神の元、平等の―――」
「レンはそんな事、知る気はないし知りたくもないわ。―――それより、だったら知ってるはずよね?”楽園”と呼ばれたロッジのことを……」
ヨアヒムの説明を遮ったレンは真剣な表情で尋ね
「レン………」
「……………」
「レンちゃん………」
レンの言葉を聞いたエステルとヨシュアは真剣な表情で、ミントは心配そうな表情でレンを見つめ
「その名前は………!?」
「あの黒いファイルにあった………」
レンの言葉を聞いたロイドとエリィは驚き
「ほう……その存在を知っているのか?あれは教団の有力者がわざわざ作らせたロッジでね。各地の有力者を取り込み、弱味を握って教団の手づるとする。正直、僕が考えていた実験の趣旨からかけ離れてしまったロッジだったよ。」
「そう……………やっぱり………」
「なるほど………そういう事か………その”楽園”とやらに引き込んで議長の弱みを握ったんだな!?」
意外そうな表情をした後答えたヨアヒムの説明を聞いて納得した様子で頷き、ロイドは真剣な表情で尋ね
「あ………!」
「やっぱりそう繋がんのかよ………!」
エリィとランディは声をあげた。
「フフ、僕は全てのロッジの実験結果に目を通していたからね。6年前の、あの忌々しい作戦で殆んどのロッジが失われた後………丁度いい後ろ盾を手に入れることが出来たわけだ。”ルバーチェ”なんていう、便利な手足のオマケ付きでね。」
「やっぱりか………警備隊を操れているのもそのあたりの関係だな………?」
「そ、そういえば………」
「どうやって”グノーシス”を連中に服用さえやがったんだ!?」
ヨアヒムの話を聞き尋ねたロイドの疑問を聞いたエリィはある事に気付き、ランディは目を細めて尋ね
「ああ、議長の子飼いである警備隊司令に強引に回させたのさ。ウルスラ病院で開発された画期的な栄養剤という触れ込みでね。クク、まさかこんなにあっさりと信じるとは思わなかったが………」
「くっ………やっぱりか………!」
「阿保司令が……さすがに迂闊すぎんだろ………!」
ヨアヒムの説明を聞いたロイドは唇を噛みしめ、ランディは目を細めて叫んだ。
「―――”楽園”に話を戻すがあれは例の作戦に参加した”英雄王”や”闇の聖女”達によって潰されたようなんだよね。」
「…………………………」
話を戻したヨアヒムの話をレンは真剣な表情で黙って聞いていたが
「ああ、しかし”楽園”には一つだけ大きな心残りがあったな。天才的な感応力を持つ、一人の幼い検体がいたんだが………これがまた傑作でね!周囲にいた別の検体の人格や検体の属性を”グノーシス”投与をきっかけに自分のものとして取り込んだのさ!いや、その実験データだけでもせめて回収できていれば―――って、君は!ハハハハハハハッ!まさかティオ・プラトーだけでなく、”楽園”での検体まで―――」
「―――もういいわ。知りたい事は全部わかった。もう、それ以上話す必要はない。それ以上話せば肉片も残さず”殲滅”するわ。………ロイドお兄さん、ごめんなさいね。レン、少し出しゃばったみたいね。」
醜悪な笑みを浮かべて語るヨアヒムの説明を聞き、膨大な殺気を纏わせてヨアヒムを睨んで話を中断させた後ヨアヒムを睨みながらロイドに謝罪の言葉を言い
「いや、おかげでこちらもかなり整理できた気がする。―――これで心置きなく逮捕に踏み切れそうだ。」
レンの謝罪の言葉を聞いたロイドは口元に笑みを浮かべて答えた後ヨアヒムを睨みながら呟き、そして警察手帳を出し
「―――”D∴G教団”幹部司祭、ヨアヒム・ギュンター。自治州法に基づき、傷害、騒乱、不法占拠、薬物使用、虐待などの数多の容疑で逮捕する………!」
「略式ではあるけど、捜査令状、および逮捕状も既に出ているわ!」
「大人しくお縄に付いてもらおうか!」
エリィとランディと共に宣言した!
「―――フフ、いいだろう。僕と君達のどちらが目的を達せられるのか………ここは一つ。賭けをしようじゃないか。」
ロイド達の宣言を聞いたヨアヒムは口元に笑みを浮かべた後片手を上げた。するとヨアヒムの全身に瘴気が纏った後ヨアヒムの髪は白髪になると共に眼は怪しげな紅に変わり、さらにヨアヒムの上空に杖が現れた後ヨアヒムの手に収まった!
「そ、その髪は……!?」
「しかも魔導杖の一種ですか………」
変わり果てたヨアヒムの髪を見たエリィは驚き、ティオは真剣な表情でヨアヒムが持つ杖を見つめていた。
「フフ、僕の髪はこちらの方が地の色でね………”グノーシス”を投与し続けて少々風変わりな体質になったんだ。何せここ数年、まったく睡眠を取っていないくらいだからねぇ。」
「おいおい………シャレになってねぇぞ。」
「なるほど………それで病院勤めをしながらここまでする時間が取れたのか。」
ヨアヒムの説明を聞いたランディは目を細め、ロイドは納得した様子で呟き
「フフ、さすがは捜査官。いい所に気付くじゃないか。―――ちなみにこの杖は例の錬金術師たちが造り上げた魔導具の最高傑作の一つさ。古代遺物すら凌駕する力を秘めていてね……」
ロイドの言葉を聞いたヨアヒムは口元に笑みを浮かべた後説明し、そして短い詠唱をしてなんと”暴虐”のロストフルムと”深淵”のアスタルテを自分の周囲に召喚し
「こんなものまで使役できるくらいさ………!」
高々と叫んだ!
「くっ………!」
「あの”悪魔”達は………!」
「”暴虐”のロストルムと”深淵”のアスタルテか………!」
悪魔達を見たロイドは唇を噛みしめ、ミントは驚き、ヨシュアは厳しい表情で叫んだ。
「さて、そろそろ幕切れとさせてもらうよ。多分、今日という日は記念すべき一日になるだろう………キーア様が”神”となって我等が悲願が達せられる日にね!」
そしてヨアヒムは戦闘の構えをした後高々と叫び
「痴れ言を……!」
「あなたなんかに………絶対に負けない……!」
「”殲滅天使”を本気で怒らせたらどれほど恐ろしいか………その身を持って味わいなさい!」
ヨアヒムの叫びにロイドとティオ、レンは叫んだ後仲間達と共にヨアヒム達に分散して向かい、ロイド、エリィ、ティオ、ランディ、レンはヨアヒムに、エステル、ヨシュア、ミントはロストルムに、エクリアとフェミリンスはアスタルテに向かい、それぞれの戦闘を開始した!
こうしてロイド達は”D∴G教団”幹部司祭、ヨハヒム・ギュンター達との決戦を開始した……………!
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