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身体は男でも

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2部分:第二章


第二章

「それじゃあすぐに」
「頼むね。ところでね」
「ところで?」
「お姉さん奇麗だね」
 その爽やかな微笑みでだ。青年はアッチャカラーンに言ってきた。
「女の人のタクシーの運転手って珍しいけれど」
「そ、そういえばそうですよね」
「うん。僕もタクシーを使う時が多いけれど」
「そうなんですか」
「いや、サラリーマンだけれどね」
 バンコクのだ。ごく普通のだというのだ。
「それでも。色々とあってね」
「それでなんですか」
「タクシーを使うことが多いね」
 こうアッチャカラーンに話すのだった。
「どうもね。ただね」
「ただ?」
「お姉さんみたいに奇麗な運転手さんははじめてだね」
 まただ。バックミラーにその爽やかな笑顔を見せての言葉だった。
「僕もラッキーだよ」
「有り難うございます。私も」
「お姉さんも?」
「はい、そう言ってもらうと」
 笑みを、にこにことしたそれを抑えられないでだ。アッチャカラーンは答えた。
「私も嬉しいです」
「そう言ってくれるんだ。それじゃあね」
「はい、バンコクの駅までね」
「わかりました」
 こうしたやり取りからだった。アッチャカラーンはその青年をバンコクの駅まで送った。そうしてだ。
 その日からだ。彼、心は彼女はだ。昼も夜も青年のことを思い浮かべた。
 それは昼食の時も同じでだ。ぼうっとしていた。その彼にだ。
 ここでも同僚達がだ。彼に言ってきたのだった。
「まさかと思うけれどな」
「惚れたか?」
「誰かに惚れたかい?」
「恋をしてるのかい?」
「ええ、そうなの」
 アッチャカラーン自身もだ。そうだと答える。
 そのうえでタイ風のソーセージをかじりながらだ。こう彼等に答えた。
「素敵な人だったわ」
「おいおい、本当に恋してるんだな」
「目がうっとりとなってるぜ」
「顔もな」
「あんな人見たことなかったわ」
 うっとりとしての言葉だった。
「これまでね。だからね」
「まさかと思うけれどな」
「告白か」
「そうするつもりなんだな」
「ええ」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「そう考えてるわ」
「あのな、それは幾ら何でもな」
「やばいだろ」
「っていうか相手男だろ?」
「それはなあ」
 同僚達は止める顔になってだ。そのうえでだ。
 アッチャカラーンに対してだ。それぞれこう言ったのである。
「まずいぜ、相手がいることだからな」
「相手がそうした趣味ならいいけれどな」
「けれどそうとは限らないからな」
「だからな」
「それはわかってるわ」
 思い詰めながらも真面目な顔になってだ。アッチャカラーンは同僚達に答えた。
「私だって。けれど」
「けれどって。どうしてもか」
「告白するってのか」
「そうするんだな」
「ええ、するわ」
 絶対にだとだ。アッチャカラーンは言った。そうしてだ。
 
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