機動戦士ガンダムSEED 終わらない戦争
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第一話 夢の続き
夢を見ていた。
全てを殺し、砕き、奪い、
そして全てを失ったあの日の事を
「………ああ、夢か。」
ナスカ級高速戦闘艦ラヴクラフト。割り当てられた個室で俺は目を覚ます。時刻はグリニッジ標準時で午前2時。プラントの中心都市、アプリリウス・ワンへの入港予定は7時なので、まだ暫く余裕がある。
「随分久しぶりの夢だな。………プラントに来たからか?」
プラント。俺の祖国。当時16歳の俺が全てを捧げ、そして失った場所。
あの日、メサイアが堕ちた後、漸く機体のエネルギーが切れていることに気が付いた。小一時間程の宇宙漂流の末、回収されたのはアークエンジェル。そこからプラントに戻り、ザフトを退役した。
逃げたのかもしれない。また何かを背負って戦うのが怖かったのだと、そう思われても仕方がない。アカデミーの同期では、辞める人間はむしろ少数派で、何度も引き留められた。でも、俺は思いを変えるつもりはなかった。
分からなくなったのだ。何の為に力を得て、何の為にそれを振るったのか。曖昧な感覚だったが、それを抱えたまま軍にいても、間違えるだけだと確信があった。
「ま、それでも未練がましく民間軍事会社をしてるんだけどな?」
誰に言うでもない。自らを嗤う。
俺の今の仕事はPMC。『D.I.V.A.セキュリティ』社の第01MS中隊長だ。結局俺は戦いの為に生まれ、戦いの中で死ぬのだろう。カムイ・クロセという人間は、元々その為に生まれたので、その発想に特に抵抗感は無かった。
「………シミュレータでもやるか。」
制服のジャケットに袖を通し、部屋を出た。
C.E.77年8月7日 アプリリウス・ワン 宇宙港
プラントの政治の中心、アプリリウス・ワン。その宇宙港に俺“達”はいた。
「たいちょー。退屈であります、帰っていーですか?」
「ど阿呆。我慢しろ、エディ。仕事中だ。」
若干、いやかなり背の低い、制服に着られている少女と、
「立て、エディ。さもなくばこの場で鉄拳修正するぞ。」
「落ち着け、ジャック。今に始まった事じゃない。」
背が高く、シュッと引き締まった体躯の生真面目そうなハンサムと、
「そうよ、ジャック。私が最近相手してあげてないからってイライラし過ぎよ?」
「誰が!俺は別にイライラなど……第一アレは貴様が勝手に!!」
「痴話喧嘩は他所でやってくれ、シリル。」
金髪でグラビアアイドル並みのスタイルを持つ美女と、
「それなら隊長!私とシリル姉さんは他所に行って〇〇〇とか■■■■■とか▽▽▽▽▽▽▽とかしてきt「………その辺にしとけ、サキ。」
何やら不穏な発言をする黒髪の美少女の計五人で宇宙港のメインゲートにてとある“人物”を待っていた。
俺の前にいる四人の男女を見ると改めて思う。
(俺の部下にキワモノしか居ないのは何故だ……?)
こいつらはD.I.V.A.セキュリティ社第01MS中隊に所属するメンバーだ。第1小隊の俺、エディ・カーマイン。それと第2小隊のジャック・アリストン、シリル・レイブン、サキ・マキナの計五人、俺が隊長兼第1小隊長、ジャックが副隊長兼第2小隊長だ。元々第1小隊の二番機だった隊員は、諸事情で地球にいるため、これが俺の部下の全員である。が………
どいつもこいつも性格に癖があり過ぎるのだ。一応全員俺より年下で尚且つ俺がひたすら実戦形式で鍛えまくったので、戦闘中はちゃんと指示に従うし技量も申し分ないのだが………。
気を取り直して今回の任務である。プラント最高評議会からの依頼で、極秘でオーブに向かう政府の要人の護衛だ。俺達は現在、その要人を待っているという状況である。
部下達の相手をしつつそれとなく周りに気を配る。と、それらしき黒塗りの車がロータリーに入ってきた。
「お前ら、馬鹿はここまでだ。お客様だ。」
車が俺達の目の前で停まる。ドアが開き中から出てきたのは、見覚えがあり過ぎるくらい有名な人物だった。
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