とある科学の裏側世界(リバースワールド)
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ep.016 決戦7
我紋を倒した的場は意識を失っていた。
的場が目覚めたのはそれから30分後くらい。
「これは....どういうことだ。」
的場は混乱した。
先ほどの我紋との戦闘は的場の記憶にはなかった。
しかし、我紋の姿も近くにはなかった。
的場が起きると、1人の少年が待っていた。
「やっと起きたか。 多少の治療はした。」
的場は自分の体を見て驚いた。
箱部の手当も凄かったが、彼の手当は応急処置のレベルをゆうに越していた。
全身は出血どころか、傷跡1つ残っていなかった。
正真正銘の完全回復だった。
的場は立ち上がり、相手を見る。
少年は簡単な自己紹介をした。
「俺は桐崎飛鳥。 お前の次の相手だ。」
的場は構え、桐崎もまた構える。
そして静寂の中、2人の息がピッタリと合ったその瞬間、戦闘が始まった。
先手を取った桐崎は炎の翼を展開し、翼からは炎の弾丸らしきものが飛んで来る。
的場は凄まじい弾幕を一目で把握すると、すり抜けるようにそれを避けてみせた。
『さっきの我紋との戦闘で最後に見せたアレは驚いたが、あれは一時的なものなのか? だが、身体能力は間違いなくレベルアップしている。』
桐崎の先ほどの弾幕を避け切るのは少なくともレベル5の実力で戦闘慣れしていないと避けることすらできない。
仮にそうであってもギリギリ避けられるくらいだ。
『不思議だ。 自分の想像以上に自分の体を使いこなせてるのが分かる。』
そして的場は桐崎と腕1本分くらいまで接近する。
右手に腕からパワーを込めて拳を飛ばす。
若干空気を裂くような音を出しながら拳は桐崎に迫る。
この時に、的場は能力をフルで使っていた。
そのため、直撃すれば桐崎の腕がもげる。
「うぐっ.....。」
しかし、最初の一撃は桐崎の攻撃だった。
桐崎が飛ばした炎の弾丸は的場に突破されると戻って来たのだ。
『追尾弾ってことなのか.....でも!』
的場は崩れそうなバランスでも1歩踏み出し、拳を叩き込んだ。
どこの誰が見ても桐崎の右肩に直撃したのが分かるくらい見事に決まった。
「ゔっ........。」
声だけでその痛みは想像を絶するのが分かる。
しかしそれは瞬間的なものだ。
もげた桐崎の肩辺りから炎が生まれ、やがてそれはもげた腕も包み込み、桐崎は見えなくなる。
炎が消える時には腕はもう完全に元に戻っていた。
「腕が治ったなんて、あれはもう治癒とかそう言うレベルの話しじゃないな。」
攻撃のあと体制を立て直して的場は分析をした。
今の光景を見れば、自分がどうしてここまで完璧な治療をされていたのかハッキリ分かる。
「今のが炎の1部。」
桐崎の体が炎に包まれ、手を剣を持つような形にすると炎で作られた剣が出現した。
つまり桐崎は炎で武器も自由自在に作れるという訳だ。
今の桐崎は、体に纏った炎が盾となり手に持った炎が剣の役目をしている。
「次が不死鳥の2部。」
桐崎は地面を蹴って飛び出す。
そのタイミングに合わせて背中から炎の翼が生え、桐崎は"飛行"する。
それは地を駆ける数倍は速い。
的場はさらに距離を取るために後方に大きく飛ぶ。
着地し周辺を見回すと、鉄パイプが数本転がっている。
『これなら多少の足止めも。』
的場は弧を描くように体ごと左足で地面をなぞり、鉄パイプを空中に蹴りやる。
そのままの流れで右手で空中のパイプを掴むと、右回りし、逆手で鉄パイプを投げる。
そのまま2本、3本が飛んでいく。
「そんなもの、紙切れに等しいな。」
桐崎の炎の剣は鉄パイプを難なく真っ二つにする。
それは触れるだけで物を焼き切るようだ。
しかも切断面は軽く焦げている。
そこから推測するにあの剣は鉄を溶かした。
そして鉄の融点は1500℃を越えている。
人に当たればそれはそれは恐ろしいことになる。
「食らえ! 炎刀・焔!」
桐崎は剣を縦に振り下ろす。
刀身は的場に届いていないが、剣からは斬撃が生まれ、それは地を走っていく。
「これはヤバイ!」
的場は直感でそれを理解し、左に緊急回避する。
斬撃は的場が立っていた場所を通過。
直撃すれば的場は真っ二つになっていた。
しかし、今の攻撃から桐崎の戦闘スタイルと炎の剣の長さ、収縮の範囲等を理解した。
『次は懐に叩き込む!』
的場はクラウチングスタートをするような姿勢を取り、息を止めて駆け出した。
走りながらさらに肉体パフォーマンスを上げていく。
血流が早くなっていくのを体で感じる。
「真正面からの突撃など、愚策も甚だしい。」
桐崎は剣を構える。
持ち手を両手で握り、刀身を真っ直ぐ的場に向ける。
その見た目は剣道の熟練者のようだ。
「食らえ! 炎刀・焔!」
再び斬撃が地面を駆け抜ける。
的場はそれを気にせず突っ込んでくる。
そして斬撃は的場を黒焦げにする.....はずだった。
しかし、斬撃は消滅する。
同時に的場の身体能力も極端に上がり桐崎の目で捉えられなくなる。
「目で捉えられない。 少なくともマッハ3は越えているのか!」
気が付けば的場の攻撃は桐崎に当たっていた。
しかも能力も掛けてある。
しかし、両者ともに違和感を感じた。
『直撃したにしては先ほどよりも明らかに能力の精度が落ちている。』
『本来ならあそこまで影響が小さい訳がない。 それにさっき.......能力が消滅したのか?』
的場は自分に起こっている異常現象に初めて気付いた。
今までは無意識の中で使っていた能力に気付き始めた。
そう思えば、池野を倒した時も我紋を倒した時もその前後の記憶が定かでなく、まるで途中で切れたビデオのように断片的に記憶がなかった。
すると突然桐崎が話し始めた。
「俺は自分の力が好きじゃなくてな。 回復力を除けば、技は欠点が幾つかある。」
桐崎は自身の能力、フェニックスについて話す。
主な欠点は2つあるらしい。
「フェニックスの力。 それは自身が持つフェニックスの数より1つ多い数までしか使えない。」
自身が持つフェニックスの数よりも2つ以上先の技を使うとフェニックスでダメージをカバーし切れないため、最悪、一撃で瀕死の反動を受けることもあるらしい。
そしてもう1つの欠点は順番通りに解放しなければならないこと。
第2の技を繰り出すには第1の技を既に使用していないといけない。
そして桐崎はフェニックスを2体所持し、手順通りに力を解放していた。
「これは奥の手だったんだが、お前に使うんなら上等な技だ。」
桐崎は両の手の平から炎を生み出し、混ぜ合わせ、濃縮させる。
次第にそれは膨張し、エネルギーの塊になっていく。
膨大な熱の塊。
「これが太陽の3部。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォオオオオ!!
エネルギーの塊は凄まじい音を立てながらさらに膨らみ、濃縮され、巨大爆弾のようになっていく。
「この一撃が正真正銘、最後の一撃だ。 冥土の土産に食らって行きな。」
的場は静かに拳を構え、そして駆ける。
桐崎は限界まで圧縮された熱の球体を飛ばした。
ゼロ距離で当たれば少なくとも肉片は残らないだろう。
『もっと、もっとだ! もっと速く駆けろ!』
静かな表面とは裏腹に内面の方では自身にある力を引き出すことに必死になっていた。
しかし、起こそうとして奇跡は起こらない。
奇跡は偶然の重なりで起こるものなのだから。
ところが次の瞬間、桐崎の能力で発生したエネルギーの塊は突如消滅する。
「何ッ!!」
「ヌゥゥォォォォォォォォォォオオオオ!!」
的場は拳を構えたまま桐崎の目の前まで来ていた。
この時に桐崎は的場の本当の力を理解した。
「そうか....的場の本当の力...なら今のはアイツの計らいだな。 とことん見据え過ぎて気に食わないやつだ。」
桐崎は一切の防御を取らず、顔面で拳を受ける。
そのまま吹き飛ばされると、もう立ち上がらなかった。
「俺の...本当の力?」
的場は階段を目指した。
後書き
桐崎の技の1つ「太陽の3部」の
ソレイユはスペイン語での"太陽"を意味してます。
次回はstudentの武道最強が相手です。
お楽しみに。
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