クバ王国の衣装
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第六章
「安心していいよ」
「ああ、お金のことも」
「教えた分も貰ったからね」
「そうですか」
「安心してね、その服はあんたのものだよ」
笑って言うおばさんだった、そして。
琴乃は撮影中に笑顔でその服を着た自分の姿を披露した。撮影は最後の最後まで行い意気揚々とザイールを後にした。
そして放送を亜美の部屋で彼女と共に観てだ、こう言った。
「面白かったわ」
「自分の番組で、よね」
「ええ、とてもね」
「私もそう思ったわ、琴ちゃんのよさが出てるし」
「そうよね」
「あの時にあったことも思い出すし」
「いや、暑かったわ」
琴乃はザイールの熱帯の気候を思い出しつつこうも言った。
「虫も多かったし」
「番組の中でも言ってたわね」
「実際にそうだったしね」
「そして服も作ったし」
「いい経験だったわ」
満面の笑みでだ、琴乃は言った。
「本当にね」
「そうよね、それであの服は持ってるのね」
「クローゼットの中にあるわ」
琴乃の部屋のそこにというのだ。
「ちゃんとね」
「それは何よりね」
「いい模様だからね、それでね」
「それで?」
「あの服の模様よかったから」
だからとだ、琴乃は亜美に話した。
「私が服のデザインをする時はね」
「参考にするの」
「そう考えてるわ」
「じゃあそうしたお仕事する?」
亜美は琴乃に顔を向けて鋭い、仕事をする時の目になって問うた。
「やがては」
「デザイナーね」
「それもする?」
「やっぱり将来はね」
今はモデルだが、とだ。琴乃は言った。
「考えていたわ」
「じゃあそっちの勉強もしないとね」
「そうよね」
「今度は日本の服も勉強しましょう」
「着物ね」
「あとアットゥシとか琉装とかね」
北海道や沖縄の服もというのだ。
「勉強しましょう、それと勿論お洋服もよ」
「勉強すること多いわね」
「そうよ、そっちも頑張るのよ」
「そうするわ」
琴乃は亜美に笑顔で応えた、そしてだった。
テレビの中にいる自分自身を観た、クバ王国の服を着ている彼女はにこりと笑っている。彼女が大好きになった模様が入っている服を着たうえで。
クバ王国の衣装 完
2016・6・29
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