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マゾヒズム

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2部分:第二章


第二章

「引っ張り罵りながらです」
「そして後ろからだな」
「犯して下さい。そしてそれから」
「犯された後はどうされたい」
「蝋燭を」
 今度はそれだった。
「蝋燭を私の背中に垂らして下さい。熱いものを」
「そうして欲しいんだな」
「お願いします」
 これから起こることにだ。それまで以上に期待にうち震えながらだった。
「今日はそうして私をいじめて下さい」
「わかった。それではな」
 夫は鞭を振るいだしてだ。妻の身体を打ちだした。その中でだ。
 美也子は歓喜にうっとりとなりながらだ。こう言ったのである。
「これが・・・・・・」
「気持ちいいんだな」
「幸せです」
 そうなっているとまで言うのだった。
「こんないいものはありません」
「わからない。何故だ」
 妻を打ちながらだ。夫は彼女に問うた。
「何故こんなものがいいんだ」
「愛する人にぶたれ虐められる」
 その虐められるという言葉、自分が言ったその言葉自体にもだ。
 美也子はうっとりとなりだ。省吾に言ったのである。
「それがいいのです」
「それがわからない。しかしだ」
「しかし?」
「私も今の君の姿を見て」
 自分に打たれ恍惚となり普段とは全く違う妻の顔、そして黒い下着に覆われた豊かな肢体を見てだ。彼もだというのだ。
「欲情する。いいか」
「はい、お願いします」
「犯す」
 自分からだ。妻に言った。
「君を犯す。いいな」
「乱暴に。汚い言葉で罵って」
 そうされることにもだ。美也子は欲情、それもこのうえなく激しいものを感じていた。
 そしてだ。そのうえでだ。
 自分から省吾の身体を掴みだ。それからだ。
 その服を剥ぎ取りだ。夫の身体にむしゃぶりついた。
 そうして抱き締め指を這わせだ。舌で嘗め回しながらだ。
 妻はだ。夫にまた言ったのだった。
「では今から犯して下さい」
「後ろからだな」
「そうして下さい。汚く罵って」
「ではだ。豚」
 いきなりこう言ってだった。省吾はだ。
 自分の身体を跪き貪る妻の頬をはたきだ。
 そのうえでその下着を乱暴に剥ぎ取りだ。両手で豊かな、それでいて形のいい尻を掴みだ。
 後ろから襲いかかった。それからだ。
 妻の長いあえて波だたせている髪を掴みだ。こう言うのだった。
「これがいいんだな」
「はい、最高です」
 妻は夫にだ。笑みを浮かべて言った。
 その目は上を向きだ。そのうえだ。
 口から舌を出してだ。激しく喘ぎながらだった。
「このまま。もっと」
「火だな」
「蝋燭もお願いします」
 それもねだるのだった。
「私の背中に。そしてこのまま」
「犯して欲しいんだな」
「今日もそうして虐めて下さい」
 まただ。苛めという言葉を自分から出すのだった。
 そうしてからだ。自分から身悶えしつつだ。
 夫の責めを受け闇の中で白い肢体を喘がせるのだった。これが彼女の夜の姿だった。
 この夜の二人の営みは続いた。美也子は昼は貞淑な貴婦人だが夜はだ。
 淫らな妖婦になり夫と交わり続けた。その肢体は衰えずしかもだ。
 身体の傷は増えていく。だがこのことは彼女にとっては喜びだった。
 夜に常に夫にその傷を見せてだ。そして言うのだった。
 
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