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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第40話

~特務支援課~



「―――でも、それはおかしいわ。今回、一課が出て来たのはあくまで結果でしかない。リーシャさんが気を利かせて私達に頼まなかったら表に出なかったわけなんだし。」

「うーん、確かに。となると、一課の目を欺く陽動っていう線は無いか………そもそも”(イン)”の存在を知っている人間は誰なんだろう?」

「そうね……雇い主である”黒月(ヘイユエ)”は当然として。やり合っている”ルバーチェ”と動向を追っている捜査一課……あとはルバーチェのもう一つの対抗組織であるラギール商会や、ルバーチェと関係のあるハルトマン議長も知っていそうね。」

「ハルトマン議長って……昨日も言っていた?ええ、帝国派のリーダーにして議会を牛耳っている大物政治家よ。多分、ルバーチェ最大の後ろ盾と言ってもいい存在ね。ちなみに、おじいさまの改革案はほぼ全てこの人に潰されているわ。」

「そうなのか………名前くらいしか知らなかったけど。そうなると”銀”にとっては逆に敵対勢力になるってことか。」

「ええ……関係は薄そうね。」

「「「「「…………………」」」」」

ロイドとエリィが話し合っているとティオ達は黙ってロイドとエリィを見つめ

「ティオ、ランディ?それにセティ達もどうしたんだ?」

「どうしたの?狐につままれたような顔をして。」

5人に見つめられたロイドとエリィはそれぞれ尋ねた。

「いや………だって、なあ?」

「エリィさん………今日はすごく元気ですね?」

「昨日の沈み様が嘘みたいだよ?」

「あ、うん………―――ごめんなさい。昨日はどうかしていたわ。でも、もう大丈夫。足手まといにはならないから。」

ティオとシャマーラの言葉を聞いたエリィは頷いた後、口元に笑みを浮かべて呟き

「だからエリィ………足手まといなんて言うなって。むしろ俺達の方が色々助けてもらってるんだからさ。今だってほら、エリィがいると推理もはかどって助かるし。」

「そ、そうかしら………」

ロイドに言われ、嬉しそうな表情をした。一方ティオ達はその様子をじっと見つめて考え込んだ後

「………怪しい。」

「……妖しいです。」

「妖しいよ~?」

ランディは真剣な表情で、ティオはジト目で、シャマーラはからかうような表情でロイド達に言い

(フフ、完全になにかありましたね。)

(ええ………)

セティとエリナは微笑みながら小声で会話していた。

「えっ………」

「ちょ、ちょっと………」

一方ランディ達の言葉を聞いたロイドは呆け、エリィは頬を赤らめた。

「そういや昨日の夜……屋上から話し声が聞こえたな。ひょっとして………」

「……なるほど。おめでとうございます。ロイドさん、エリィさん。」

「い、いや、別にお祝いを言われるような事はしてないぞ?」

「そ、そうよ………ただちょっと、色々話したっていうだけで………」

ランディとティオの言葉を聞いた2人は慌てだした。

「なるほど、色々ねぇ。―――で、どこまで行ったんだ?」

「ランディ!」

そして興味深そうな様子で聞いていたランディはロイドは怒鳴り

「ちょ、ちょっと!ティオちゃん達もいるのに………」

エリィは慌てた。

「どこまて行った……ああ、お付き合いの過程で色々な段階を踏むという―――」

「いやいや、無いから!」

ティオの言葉を聞いたロイドがすぐに否定した。

「ひゅーひゅー。」

「……ひゅーひゅー。」

「クスクス……」

「フフ、2人ともアツアツだね~?」

「シャマーラ。面と向かっていうのはさすがに可哀想ですよ?」

そしてランディとティオはからかい、セティは微笑み、シャマーラはからかうような表情で見つめ、エリナは微笑みながらシャマーラに注意した。

「い い か げ ん に し な さ い。」

「はい……」

一方エリィはすざましい威圧を纏った笑顔でランディ達を見回して黙り込ませた。



「まったく………俺とエリィの関係を疑うなんてそんなのあり得ないだろう?」

一方ロイドは呆れた表情で答え

「……え………」

ロイドの言葉を聞いたエリィは驚いてロイドに視線を向けた。

「そもそも釣り合わないっていうかそんな雰囲気にならないっていうか………なあ、エリィ?」

そしてロイドは苦笑しながら答えた後、笑顔でエリィに尋ねたが

「……………………………」

「………あれ。」

怒りの表情のエリィに睨まれ、呆けた。

(おいおい……)

(踏みましたね……)

(やれやれ……そんなんじゃ、先が思いやられるよね?)

(そうですね。そこがお父様と違いますね。)

(鈍感………)

その様子を見ていたランディ達は呆れ

(あっははは!見ていて本当に飽きない男だねぇ!)

(クカカカカッ!さすがだ……さすがだよ、ロイド!)

エルンストとギレゼルは陽気に笑い

(フウ………こういう所を教育し直しておかないとね……)

(………鈍感な人間だ。私でもわかるぞ………)

(無自覚で異性を惹きつける………一番性質の悪い人間だな………)

ルファディエルは溜息を吐き、メヒーシャとラグタスは呆れ

(エリィさん、可哀想です……)

(自分の気持ちをわかってもらえないなんて、エリィ、可哀想………)

(あ~あ、踏んじゃったね、ロイド。)

(こういう所はウィルと違うわね。)

水那やアトはエリィを可哀想なものを見るような目で見つめ、クレールとクレアンヌは呆れていた。

「……そうね、そうよね………ただお話して、つまらない相談して乗ってもらっただけだものねぇ……”あんな事”も貴方にとっては”ただのお礼”なんでしょうねぇ……ええ、そんな甘い雰囲気には全くもってなりませんでしたとも!」

一方エリィは静かな怒りを纏った後、ロイドを睨んで大声で言った!

「………え、えっと……あの、釣り合わないってのは俺がエリィには釣り合わないって言ってるだけで……」

エリィに睨まれたロイドは戸惑った後、言い訳をしたが

「ギロッ………」

「………すみません。」

エリィに睨まれ、黙り込んだ。

(クカカカカッ!面白い、面白すぎる!ロイド!我輩を笑い殺す気か!?)

その様子を見ていたギレゼルは笑い続けていた。

「くっくっく………まあ、なんだ。元気が出て何よりじゃねえか?」

「あ………」

「……安心しました。ひょっとして警察……辞めてしまうんじゃないかって思ったのに………」

「……ごめんね、心配かけて。将来、どうするかはまだわからないけれど………今、私がいるべき場所はここであるのは間違いないから。だからみんな………改めてよろしくお願いします。」

ランディとティオの言葉を聞いたエリィは微笑みながらランディたちを見つめた。

「エリィ……」

「………エリィさん。」

「はは、お嬢の突っ込みがないとやっぱり締まらねぇもんな。」

「突っ込ませているのは貴方たちが原因でしょう……―――まあ、それはともかく。捜査方針だけど結局、どうしようかしら?」

ランディの言葉に溜息を吐いたエリィは気を取り直した後ロイドに尋ねた。

「そうだな………」

「一課とは別のアプローチで”銀”に迫ると言っても………色々切り口があるので逆に迷ってしまいますね。」

「こうなったら、あれだ。カルバードの東方人街に出張しに行くってのはどうだ?少しは”銀”の手掛かりも掴めるんじゃねえか?」

「そ、それは盲点だったな。」

「でも、外国に出張なんてそんなの許されるのかしら?支援課の範疇から外れそうな気がするし………」

ランディの提案を聞いたロイドは驚き、エリィは考え込んだ。

「………もう一つあります。チキさん達から情報を”買う”のはどうでしょうか?」

「へっ!?」

「まさか………情報も”商品”として”売って”いるの!?」

そしてセティの提案を聞いたロイドとエリィは驚き

「ええ。情報も立派な”商品”の一つですし。」

「確か………チキさんに聞いた事があるんだけど、メンフィルの諜報部隊の一部隊をリウイ様から貸し与えてもらっているらしいから、もしかしたら情報があるかもしれないけど………その代わり、値段も高いと思うよ~?特に”銀”みたいな重要な情報は。」

「……代償は高い分、払う物を払えば、話してくれると思います。ラギール商会はどのような者でも払う物を払えば、”客”ですから。……例えその”客”がルバーチェや黒月であろうと。」

エリナ達はそれぞれ説明した。

「フム……値段がどのくらいになるかは知らないが、あのメンフィルの諜報部隊が動いているなら何か情報を持っていてもおかしくないな。こりゃ、ラギール商会から情報を買う事も考えた方がいいんじゃねえか?以前、あの店長が俺達ならサービス価格で商品を売るって言ってたから、利用する手はないだろ?ちょっとはまけてくれると思うぜ。」

説明を聞いたランディは目を細めて頷いた後、ロイドとエリィに尋ね

「そうだな…………………」

「ただ、サービスされたとしても、値段がどのくらいになるかが問題なのよね…………裏の情報を買った事もないから、相場もわからないし…………」

尋ねられた2人はそれぞれ考え込んだ。

「……………………」

一方ティオは目を閉じて考え込んだ後、立ち上がって端末に近づいた。

「ティオ………?」

「どうしたの?」

「警察のデータベースをもう少し漁ってみようかと。一課の動向なども掴めるかもしれませんし………ただ、昨夜調べたばかりなので追加情報はないかもしれませんが。」

自分の行動に不思議そうな表情をしているロイドとエリィにティオは答えた。

「そうか………」

「ま、やらないよりマシか。」

そしてロイド達は立ち上がって端末に近づいた。すると何かの音が鳴った。

「あ………」

「どうしたんだ?」

「………珍しいですね……導力メールが届いているみたいです。」

「導力メール?」

「確か、文章だけの情報を端末に送るものだったかしら?」

ティオの言葉を聞いたロイドは首を傾げ、エリィが尋ねた。

「はい、すごく便利なのに警察では使っている人が殆んどいないみたいで………キーボードが使える人がまだ少ないせいでしょうね。」

「なるほど………確かに俺も使えないな。」

「それより、誰からなんだ?」

「今、開いてみます……………え…………」

ランディに促され、メールの内容を読んだティオは呆けた。

「なんだ……?」

「いったい誰から―――!?

ティオの様子に気付いたロイドとエリィは仲間達と共にメールの内容を見て顔色を変えた。



”銀”より支援要請あり。試練を乗り越え、我が元へ参ぜよ。さすれば汝らに使命を授けん。



「こ、これは………!」

「おいおい………何のイタズラだ、こりゃ!?」

「ティオちゃん……このメールはどこから!?」

「警察本部ではありません…………わかりました。”クロスベル国際銀行(International Bank og Crossbell”………―――通称IBCです。」

メールの内容を見たロイドとランディは驚き、エリィに尋ねられたティオは端末を操作して答えた。

「………どういう事だ……?」

「何故、私達に連絡を取ってきたのでしょうか……?」

メールを見つめたロイドとセティは考え込み

「IBCっていやあ、大陸中からミラをかき集めてる銀行だろ?何でそんなところがこんなイタズラを送ってくるんだ?」

ランディはティオに尋ねた。

「………わたしに聞かれても。でも、このメールは間違いなくIBCの端末から送られています。誰が送ったのかまではわかりませんが。」

「もしかして”銀”がIBCに潜入しているとか……?」

「暗殺者なのですから、可能性はありそうですね。」

ティオの言葉を聞いて考え込んだロイドの意見にエリナは頷き

「正直、あり得なくはないわね。それにIBCビルには外部の会社も幾つか入っているわ。確か………エプスタイン財団の事務所もあったんじゃないかしら?」

エリィも頷いた後、ティオに尋ねた。

「ええ………知り合いがそこで働いています。ですが………どうやらこのメールはIBCのメイン端末から送信されているみたいですね。外部の会社が関わっている可能性は低いと思いますが………」

そしてティオは答えた後、仲間達と共に考え込んだ。

「……直接聞いてみるしかないか。ルファ姉のお蔭で大っぴらにできるとはいえ、なるべく一課にはこれ以上睨まれない為に内密に捜査を進めたかったんだけど………」

「さすがに身分を明かさないで聞いてみるのは難しそうだな。ま、余計な横槍が入る前に動いちまえばいいんじゃねえか?」

ロイドとランディがそれぞれ呟いたその時

「…………………………ひょっとしたら内密に調べさせてもらえるかも。」

エリィが提案した。

「え………」

「どういう事ですか………?」

「……私の友人にIBCの関係者がいるのよ。その人のお父様に事情を話せば力になってくれるかもしれない。」

「そうだったのか………」

「おお、好都合じゃねえか。さすがお嬢。色々なコネを持ってるな。」

「まあ、それなりにね。でも、とても忙しい方だからクロスベル市にいるかどうか………」

ランディに感心されたエリィは頷いた後考え込んだ。

「どんな立場の方なんですか?」

「……多分、知ってると思うけど。ディーター・クロイスっていうの。」

「「え!?」」

「「あ………」」

そしてエリィの話を聞いたロイドとセティは驚き、ティオとエリナは声を出し

「??なんか、どっかで聞いた事があるような……?」

「なんだ、有名人なのか?」

シャマーラは首を傾げ、ランディはロイド達に尋ねた。

「あ、うん………ある意味、知名度で言うならイリアさん並みかもしれない。」

「ディーター・クロイス………大陸有数の資産家にして国際経済の中心人物の一人………現IBC総裁ですね。」

「おお、銀行のトップかよ!?」

「ああっ!思い出した!」

ティオの話を聞いたランディは驚き、シャマーラは声を上げた。

「まったく………大使館でクロスベルの知名人は学んだというのに、もう忘れたのですか?」

シャマーラの様子を見たエリナは呆れて溜息を吐いた。

「元々、父の旧い友人だったの。祖父とも昔から親交があってそれで仲良くさせてもらっていて………娘さんは、私の幼馴染にあたるわね。」

「そうだったのか………しかしそんな人だと………不在だとしても仕方ないか。」

「うん……一年の半分くらいは外国を飛び回っているらしいから。でも、駄目で元々だわ。私の友人ならいるかもしれないし、訪ねるだけ訪ねてみましょう。」

「ああ、そうしよう………しかし、これで何とか捜査の目処がついたけど……」

「……メールの意図ですね。脅迫状もそうでしたがどういうつもりなんでしょう?」

エリィの提案にロイドは頷いた後ティオと共に考え込み

「ま、せっかく向こうからわざわざ接触してきたんだ。ここは敢えて乗ってみようぜ。」

「今の所はそれしかないもんね。」

ランディとシャマーラはそれぞれ言った。

「そうね……行きましょう、IBCビルへ。」

その後ロイド達はIBCのビルの前まで来た………




 
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