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Three Roses

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第四話 新王の即位その九

「マリー様をな」
「次の王にですか」
「されたいとお考えなのですね」
「そうなのですね」
「そうだ、私よりもだ」
 むしろというのだ。
「マリー様の方が王に向いている」
「だからですね」
「マリー様を王に」
「若し王に何かあれば」
「そうお考えなのですね」
「そう考えているが」
 大公はここまで話してだ、そしてだった。
 自身の側近達を目だけで見回してだ、こう言ったのだった。
「卿達はどう思うか」
「難しいところですね」
「王のご長寿は我々も願っていますが」
「しかしです」
「やはり王はです」
「過去にも女王の例はありましたが」
 しかしというのだ。
「しかしです」
「それはあくまで王家に男子がいない場合のみ」
「我が国には大公がおられます」
「他ならぬ貴方様が」
「ですから」
「それはです」
「あまりお勧め出来ません」
 こう言うのだった。
「我等はどうしてもです」
「これはこの国だけではありません」
「帝国も王国も周辺の国々も同じです」
「大陸の各国も」
 帝国、王国だけでなくというのだ。
「それが我々の宗教の教えです」
「旧教、新教に関わらず」
「男が第一にきます」
「女はその次です」
「そうだな、この教えは変えられない」
 男が第一であるそれはとだ、大公もわかっている。わかってはいたがそれでも言ったことなのである。考えた末に。
「しかし私よりもだ」
「マリー様ですか」
「あの方をですか」
「王にしたい」
「そうお考えなのですね」
「そうだ、何としてもな」
 これはというのだ。
「考えているが、王も」
「ですか、確かにです」
「マリー様は立派な方です」
「あの方なら正しく国を導かれるでしょう」
「我々もそう考えています」
「ですが」
 それでもとだ、側近達はまた言った。
「それが出来るかというと」
「やはり教えがあります」
「これは無視出来ません」
「ですから」
「そうか、では仕方がない」
 大公はここまで聞いてだ、そしてだった。
 そのうえでだ、また言ったのだった。
「王に何かあればな」
「はい、その時はです」
「お願いします」
「王としてです」
「お立ち下さい」
「そうさせてもらう、しかし」
 苦い、これ以上はないまでにそうなった顔でだ。大公はこうも言った。
「私にもだ」
「今度ですね」
「男のお子がおられなけれれば」
「その時はですね」
「マリー様と考えている」
「わかりました」
 側近達は王のその言葉を受けて応えた。
「ではです」
「その時はマリー様に」
「王位継承権からいっても妥当です」
「それでは」
「その様にな。私は己の身体を大事にしていくが」
 しかしというのだ。 
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