おぢばにおかえり
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第三十一話 研修先でもその四
「昔は昔、今は今じゃない。今十三で結婚はできないわよ」
「十六からよね」
「そうよ。女の子は十六、男の子は十八」
何歳から結婚できるのかはもう頭の中に入れています。これは何があっても忘れません。
「だから全然」
「ちっちと阿波野君の年齢が逆だったらできるじゃない」
「ねえ」
本当にああ言えばこう言うの流れになっています。最近私が何か、というか阿波野君絡みになるとこんな展開ばかりになるのは気のせいでしょうか。
「すぐにね」
「ちっち今年十八よね」
「高校三年だから当たり前じゃない」
もう何を言わんやのお話です。
「それは」
「で、阿波野君が今年十六」
「はい」
阿波野君はその言葉に笑顔で頷いてきました。
「どっちにしろあと二年ちょっとよね」
「今のうちに色々二人で勉強したら?」
「色々って何がよ」
「だから。恋人にでもなって」
「お似合いよ」
「冗談じゃないわよっ」
八重歯を出して怒りました。
「何で阿波野君なのよ。ここで中村優一さんとか山本裕典さんじゃなくて」
「また仮面ライダーの役者さんって」
「ちっち何か特撮の人本当に好きよね」
逆に突っ込みを入れられてしまいました。御二人共太陽と海の教室に出ておられているのはマークしています。実家でお母さんが録画してくれたビデオで観ました。北乃きいちゃんがとても可愛いです。
「まあそれは置いておいてよ」
「いいじゃない」
「ねえ。阿波野君も特撮俳優みたいだし」
「何処がよ」
阿波野君をジロリと見て皆に応えました。
「全然そうは見えないじゃない」
「見えるわよねえ」
「ねえ」
けれど皆はこう言うのでした。
「背は高いし」
「顔はいいし」
「スタイルだって」
「いやあ、どうもどうも」
言われている本人はもうかなり頭に乗っています。すぐにこうなっちゃうからこの子はあまり褒めたらいけないのに皆がまたこうして。
「じゃあ先輩、お似合いだってことで」
「誰もそんなこと言ってないでしょ」
「まあまあ」
「まあまあじゃないわよ」
強引に自分のペースに乗せてこようとしているのがわかります。
「大体ね。君はもう少ししっかりしなさい」
「勉強は毎日予習復習してますよ」
ああ言えばこう言うでした。
「天理大学に行く為に」
「それはいいことね」
それは認めます。
「勉強はいいわ」
「どうもです」
「けれど」
それでもです。私が言いたいことは。
「全く。何でそんなに簡単に頭に乗るのよ」
「気にしたら駄目ですよ」
「そういうことは普通自分で言わないの」
自分で言うところが全く。何の緊張感も自覚もないです。こうしたところが駄目だっていうのに本人は何一つとしてわかっていません。
「そんなのだからね。阿波野君は」
「それじゃあねちっち」
「楽しくね」
あれこれ話しているうちに皆離れていきました。
「私達これからお店に行くから」
「吉原には二人でね」
「えっ、ちょっと」
皆が去って思わず声をあげてしまいました。
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