英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第38話
エリィの自室に向かったロイドだったが、部屋にはエリィはいなく、エリィを探し回り、その途中屋上に来た。
~夜・特務支援課~
(………あ……………)
屋上に出たロイドは外を見つめているエリィに気付き
「ロイド……?」
ロイドの気配を感じたエリィは呟いた。
「ああ……どうしてわかったんだ?」
エリィの言葉を聞いたロイドは驚いた後、エリィに近づき、エリィはロイドに振り向いた。
「何となく、かな。何となくだけどあなたが来るんじゃないかってぼんやりと思っていた。」
「そっか……」
エリィの言葉に静かな笑みを浮かべて頷いたロイドはエリィの隣に移動して外の景色を見つめた。
「綺麗だな………あっちに見えるのは……IBCビルか。」
「多分、大陸全土を見回してもこの街ほど夜景が綺麗な所は無いんじゃないかしら。だけど………街の明かりが増えれば増えるほど星の光は見えなくなる………女神の慈愛の証たる、清らかな星の光は………」
ロイドの言葉に頷いたエリィは複雑そうな表情をした。
「………エリィ………」
「昼間のこと……覚えているでしょう?ルバーチェ、黒月、そしてダドリー捜査官が言ったこと。」
―――てめぇらが何をしようがこの街の現実は変わらねぇ………ましてや俺達をどうこうする事など不可能ってことをな。
―――ふふ、あくまで”ビジネス”の競争相手としての話ですよ。クロスベルは自由な競争が法によって保障されている場所………何か問題でもありますか?
―――この、正義が守り切れない街で一定以上の秩序を保ち続けること………殺人などの重犯罪を抑止し、犯罪組織や外国の諜報機関から可能な限り人と社会を守ること……その努力がお前達にわかるのか?
「あれが、この街の闇……クロスベルという自治州の真実よ。両帝国と共和国の狭間に生かされ、誇りも持てず、嘘と欺瞞にまみれ……諸外国から集まる富によってかりそめの繁栄と享楽に溺れる………誰もがそれを仕方のない事と諦め、日々の忙しさに追い立てられる………私達はそんな街で生きている。」
「そうか………エリィは……諦めたくないんだな?」
エリィの話を聞いたロイドは重々しく頷いた後尋ねた。
「………………………父と母がいたの。」
「え………」
そして唐突に話し始めたエリィの言葉を聞いたロイドは呆けた。
「……2人は私達を誘拐犯から守る為に亡くなってね…………その前は離婚して、カルバードとエレボニアにそれぞれ私と姉を一人ずつ育てながら住んでいたの。」
「そうだったのか……」
「父は元々、共和国の人だったの。この街に来て、母と出会い……マクダエル家に入ることで政治家としての道を志した。そして議員になってすぐにこの街の歪んだ現実に気付いた。正義感の強い人だったから何とかしたいと思ったんでしょうね。何年もかけて、粘り強く様々な改革案を打ち出していった。」
「……凄いな。」
エリィの話を聞いていたロイドは口元に笑みを浮かべて感心したが
「ううん……結局、父の改革案は潰された。帝国派、共和国派……どちらから排斥される形で。」
エリィは首を横に振って真剣な表情で答えた。
「信じていた同志に裏切られ、友人を無くし、政敵に嘲られ……祖父もクロスベル市長という中立的立場から父を助けられず………父は……クロスベルそのものに絶望してしまった。そして議員を辞め、妻と別れてカルバードに帰る道を選択した……」
「あ………」
「母は父を引き止められず………かといって、幼い私を連れて父と父が連れて行った幼い姉に付いていく事もできず………そして離婚は成立して……父は幼い姉を連れていなくなってしまった。母は父を恨んだみたいだけど……やっぱり愛していたんでしょうね。父のいないクロスベルに住むのが辛くなってしまったみたいで……親戚のいるエレボニアに幼い私と共に身を寄せてしまった。」
「……………………」
「そして……2人ともやっぱり愛し合っていたんでしょうね。離婚をしても数ヵ月に一度、私達を連れて食事をしていたから。――――でもある日、その事がきっかけで2人は私達を誘拐の魔の手から守る為に私達を逃がして、誘拐犯に殺されてしまった。」
「なっ………!?それでエリィとエリィのお姉さんはどうなったんだ……?」
エリィの話を聞いたロイドは驚いた後尋ね
「……その逃げた先がメンフィル帝国領へと続く関所でね。たまたま慰問に来ていたプリネ姫に事情を話して保護されたの。その時にプリネ姫に嘆願して、父達を助けに行ってもらったんだけど………既に父は事切れ、母は私達に遺言を残した後、事切れたわ。」
「そうだったのか………その……誘拐犯はどうなったんだ?」
「………父達を助けに行った時、プリネ姫やメンフィル兵達によって討ち取られたわ。……後でわかった事だったんだけど、私達を襲った誘拐犯達は大陸中で流行っていた子供達の誘拐犯の組織の一員だったらしいわ。ちなみに、その組織は私達がプリネ姫によって保護され、メンフィル大使館でしばらく過ごしている間に壊滅したそうよ。」
「え……じゃあ、エリィはプリネ姫だけじゃなく、あの”英雄王”にも会った事があるのか?」
「フフ……リウイ陛下だけじゃなく、ペテレーネ様やカーリアン様、ファーミシルス大将軍にシェラ将軍、そしてリフィア殿下にも会った事があるわよ。……しばらくは大使館で過ごしていたんだけど……その時にプリネ姫やリフィア殿下に色々励まされてね……そのお蔭で私達はなんとか両親の死から立ち直ったわ。そして……姉はそんな2人に恩義を感じたのか、大使館で働きたいと言い出してね。私達の事を聞いて迎えに来たおじいさまに頼み込んで、メンフィル大使館で働き始めたの。」
「なるほど………そして、働いている時に出会ったメンフィルの貴族の人と恋に落ちて、結婚したのか?アーネストさんから聞いた話だけど……エリィのお姉さんは大使館で働いている時に、その嫁いだ人と出会って、恋に落ちて結婚したって聞いたけど。」
「ええ……………少々特殊な家族関係を持っている方だけどね。」
「特殊な家族関係?」
エリィの話を聞いたロイドは不思議そうな表情をし
「フフ……その方、お姉様と結婚する前から他にも複数の愛人や子供、さらには孫もいたの。」
「え”。……え、え~と……お姉さんはその事を結婚する前から知っていたのか?(孫!?という事はエリィのお姉さんは凄く離れた年の人と結婚したんだろうか……?)」
苦笑しながら言ったエリィの話を聞き、表情を引き攣らせた後、心の中で驚きながら尋ねた。
「ええ。不思議な事にお姉様がその貴族の方の正妻として嫁いだの。……結婚式では嫁いだ方の愛人の方や子供の方達にも祝福されて、幸せそうだったわ………それにクロスベルに帰って来る前に姉に会ったんだけど、もうすぐ子供も生まれて来るって嬉しそうな表情で報告してくれたわ………」
「そうか………………そう言えばアーネストさんがメンフィルの貴族に嫁いだエリィのお姉さんならクロスベルを何とかできるみたいな事を言ってたけど……いくらメンフィルの貴族だからと言って、そこまでは難しいんじゃないのか?」
「…………その嫁いだ貴族の方はね。メンフィル皇室と深い縁がある方で、メンフィル帝国の皇族の方達と深い繋がりを持っているの。」
「なるほど………あのメンフィル帝国の皇族が動くのなら、クロスベルの状況も変えられる可能性は高いな………けど、何でそれをしなかったんだい?」
「………祖父は姉が嫁いだ方にクロスベルの政治と関わらず、普通に姉と幸せな家庭を築いて欲しいと願ったの。………クロスベルの政治のせいで離婚した父と母の二の舞になってほしくなかったんだと思うわ。」
「そうだったのか………」
エリィの説明を聞いたロイドは驚きの表情で呟いた。
「……そして私が政治の道を志そうと思ったのは父と母が亡くなり、姉が大使館に残ったその時よ。別に父や母の仇を取ろうとかそういうつもりじゃなかった。ただ、納得がいかなかったの。あんなにも幸せだった家族が何で壊れてしまったんだろうって。」
「………………………」
「祖父の助けもあって……私は各地で留学をしながら政治・経済などを学んでいった。でも、勉強すればするほどクロスベルの置かれている状況は困難なものである事に気付いたの。結局はエレボニアとカルバード………この二大大国の持っている重力にあらゆる正義と利害は絡め取られ、歪みを余儀なくされてしまう。私は”壁”にぶつかった。」
「………”壁”か。」
「ええ………父もそうだったけど、祖父も感じているであろう”壁”。ねえ、ロイド。クロスベル自治州の政府代表って、誰だか知ってる?」
「それは……マクダエル市長じゃないのか?」
エリィに尋ねられたロイドは意外そうな表情で尋ねた。
「ううん、正確には『クロスベル市の市長』と『自治州議会の議長』の2人よ。つまり今だと、おじいさまと帝国派のハルトマン議長という人がクロスベル政府の共同代表なの。これは自治州法で定められているわ。」
「そうか、不勉強だったな………でも、どうしてそんなややこしい体制になってるんだ?」
「決まっているわ。―――同格の代表が2人いたら政治改革が起こりにくいからよ。」
「そんな………!……いや、でも……確かにそうなるのか……?」
そしてエリィの話を聞き驚いた後、考え込んだ。
「ええ、トップが2人いた場合、どちらかが改革を起こそうとしてももう片方が必ず足を引っ張る……これはもう、政治力学としてそうなるのが歴史の必然なのよね。70年前……帝国・共和国双方の承認を受けて創設されたクロスベル自治州……その時、自治州法を定めたのは両国の法律家だったそうだけど……今にして思うと、まさに”呪い”ね。」
「………………………」
「私は……途方にくれてしまった。政治の世界にそのまま入れば、その呪いに必ず蝕まれてしまう………だから、父とも祖父とも違う別の切り口が欲しかった。」
「それが……警察だったのか。」
「ええ、政治とは別の視点で様々な歪みが観察できる場所。そこでの経緯は、いずれ政治の世界に入った時の武器になると思った。父が失敗し、祖父がなし得なかったクロスベルの改革………それを実現する手掛かりになるんじゃないかと思ったの。」
「そうか………」
「……でも、やっぱりそれはただの逃げだったのかもしれない。今日、あった出来事は、どれも予想の範囲内だったけど……想像以上に重たく、冷たかった。それを突き付けられて……またしても途方にくれてしまった。結局私は……自分一人で何もなし得ないのかもしれない。自分の道を見つけ、幸せに生きている姉と違って………道すらもわからない幼い少女のままなのかもしれない。」
「………………………」
複雑そうな表情で呟いたエリィの言葉を聞いたロイドは黙ってエリィを見つめた後
「―――それで、いいじゃないか。」
「……え………」
静かな笑みを浮かべてエリィを呆けさせた。
「エリィはさ、完璧すぎるんだよ。全て自分が、一度も失敗しないでやり遂げる必要がある……そんな風に思っているんじゃないか?」
「そ……そんな事は………」
「……確かに今日は色々とヘコまされることが多かった。でも、そんなのは働いていれば当たり前の事なんだ。そして……今日乗り越えられなかった”壁”は明日には乗り越えられるかもしれない。」
「”壁”………」
「この場合の”壁”ってのは脅迫状の事件のことだ。一課が出張った所をルファ姉が抑えたこの事件……できればここからはルファ姉の助けなしに動いてみたい。」
(あら………)
「ええっ……!?で、でもルファディエルさんの助けなしで私達が出来る事なんて………」
ロイドの提案を聞いたルファディエルは声を上げた後興味深そうな表情をし、エリィは驚いた後不安そうな表情になった。
「ルファ姉は確かに凄いけど………それでもわからない事もある。ひょっとしたら俺達が別の切り口を調べて行く事で、事件を解決できるかもしれない。そんな気がしてきたんだ。」
「ロイド………」
「そう、さっきエリィが言った話に似ているだろ?これでもし、俺達が大金星を上げることが出来れば……エリィが目指そうとしている事だって決して不可能じゃないか?」
「…………………………」
ロイドに語りかけられたエリィは呆けた表情をし
「もちろん、今回の事件とクロスベル全体の大きな問題は一緒にはできないかもしれない。でも………俺達に必要なのは”壁”を乗り越えるための力だ。こういった小さな”壁”を一つずつ乗り越えていければ………いずれ巨大な”壁”を乗り越えられる力だって手に入れられるんじゃないか?」
「…………………………―――この2ヵ月、一緒にいて何となくわかった。貴方もまた私と違った悩みを抱えている。それなのに……どうしてそんなに前向きでいられるの?」
複雑そうな表情で考え込んだ後、ロイドに尋ねた。
「……俺はそうだな……目指している人達がいるから前に進めているのかもしれない。それはそれで……問題なのかもしれないけれど。」
「そう……でも私は……貴方ほど強くないみたい。少し……疲れちゃった………」
「…………………………」
「……本当は昔のことなんて、話すつもりはなかったの……でも………何だか耐えきれなくなってしまって………このままじゃ、本当にあなたたちの足を引っ張るかもしれない……だったら、いっそ……もう……」
エリィがロイドから視線を逸らして、外の景色を見ながら弱音を吐いたその時
「―――エリィ。」
静かな笑みを浮かべたロイドが片手をエリィの肩に置いた。
「……あ………」
(おっ!?なんだか面白そうな予感!!)
肩を置かれたエリィは驚き、ギレゼルは興味深そうな様子になった。
「俺には……俺達にはエリィが必要だ。射撃や剣術、そして魔術の腕、交渉センス、政治経済の知識とバランス感覚………この街を相手にするにはどれも必要不可欠だと思うんだ。」
「………で、でも………」
ロイドの話を聞いたエリィは言いよどんだが
「いや……違うな。それも確かにそうだけど、そんな事よりも前に………エリィが側にいてくれたら俺はそれだけで嬉しいんだ。」
「え………」
ロイドの言葉を聞いて頬を赤らめてロイドを見つめ
(キタ――――――ッ!かかかっ!ここで一気に攻め落とせ、ロイド!)
(えっ!?まさかロイド、エリィの事を……)
(なっ!?)
ギレゼルは嬉しそうな表情になった後笑い、ルファディエルとメヒーシャは驚いた。
「バラバラな俺達だったけどこの2ヵ月で呼吸も合って来た。忙しい毎日に翻弄されながらも食事当番なんかも決めたりして……お互いの得意分野に関してはもう何も言わずに信頼できるしな。そんな仲間がいるっていうのはそれだけで嬉しいもんじゃないか?」
「………あ……………」
そしてロイドの話を聞いたエリィは嬉しそうな表情でロイドを見つめた。
「……俺達は若造だ。世界を甘く見るにも、絶望するにもまだ早すぎる。力を尽くして、やれることをやって何度でも諦めずに挑戦して………それでも駄目なら……その時はみんなで考えればいい。俺は勿論、ランディやティオ、セティ達やルファ姉達もきっと力になってくれる。ああ見えて課長だって色々根回しをしてくれているし………ツァイトなんていう変わった助っ人も来てくれたしな。エリィ――――君は一人じゃないんだ。」
「…………………………ふふっ……一人じゃない………か。………そうね。そんな当たり前の事を………私は忘れていたのかもしれない。――――ありがとう、ロイド。私自身の問題は簡単に解決するものではないけれど………それでも少し、気が楽になった気がする。」
「そっか………」
「ふう……それにしても。青春ドラマみたいな台詞はともかく、少しびっくりしちゃったわ。」
「う………クサイのは承知してるよ。でも、ビックリしたって?」
溜息を吐いた後呟いたエリィの言葉を聞いたロイドは呻いた後、尋ね
「だ、だって………私が必要だとか、側に居てくれて嬉しいとか………てっきり告白でもされているのかなって……」
尋ねられたエリィは頬を赤く染めて答えた。
「へ………」
エリィの言葉を聞いたロイドは呆けた後
「なっ!?い、いや!別にそんな意味じゃ………!」
ある事に気付いて慌てた様子でエリィから離れ
「あら………?私なんか、告白する価値すらないっていうことかしら?……そうよね。ルファディエルさんがいつも側にいるから、私なんか価値はないわよね。」
エリィは真剣な表情でロイドを睨んで尋ねた。
「そ、そうじゃなくて………というか、そこで何でルファ姉が出てくるんだよ!?………ああもう………エリィ、からかってるだろ!?」
「ふふっ……お返しよ。でも貴方、ちょっと気を付けた方がいいわね。天然っていうか……凄く女たらしな所があるから。」
(………まったくだな。)
(フウ………ロイドの将来の中でも女性関係がどうなるかが、読めないのよね………)
(クカカカカッ!そんなの勿論、ハーレムを築いて酒池肉林に決まっているだろうが!)
慌てている様子のロイドに言われたエリィは微笑んだ後ある事を言い、それを聞いたメヒーシャは頷き、ルファディエルは溜息を吐き、ギレゼルは陽気に笑っていた。
「ちょ、ちょっと待て!ランディならともかくなんで俺がそんな………」
「……自覚がない所がまたタチが悪いというか………はあ……参ったわね………まさかあんな言葉だけでこんなに気分が変わるなんて……(ううっ……まさか本当に複数の女性と関係を持ちそうな人を好きになるなんて………もしかしたらお姉様に本当に相談する日が来るかもしれないわ………)」
「え………」
(クク……完全に墜ちたな♪)
(フフ、エリィとロイドならお似合いでしょうから、エリィの恋を手伝おうかしら?)
(エリィから目の前の人間が”好き”という感情が溢れ出ている………という事はいつかあの人間とエリィが結ばれるのか?そうなった場合、あの悪魔とも今後も共に行動する等……クッ、考えただけでも忌々しい!)
ジト目のエリィに言われたロイドは呆け、ギレゼルは口元に笑みを浮かべ、ルファディエルは微笑み、メヒーシャは静かな表情で語った後、表情を歪めた。
「な、何でもありません。その―――課長への報告を任せてしまってごめんなさい。脅迫状の捜査だけど………何かプランはあるのかしら?」
「いや、今のところは。ただ結局のところ……全ては”銀”の狙いだと思う。それを探る糸口が無いか、明日、みんなで話したいかな。」
「わかったわ。おかげで今夜は……ゆっくり休めそうな気がする。お互い頭をすっきりさせてミーティングに臨みましょう。」
「ああ………!」
エリィの言葉にロイドが力強く頷いたその時
「………………」
エリィはロイドの顔をじっと見つめた。
「エ、エリィ……?」
エリィの見つめられたロイドが戸惑うと
「(複数の女性と関係を持つ可能性があるなら……お姉様の言う通り、私が一番になれるようにロイドに一番最初の女性として意識してもらわねいと……!)…………ん。」
なんと決意の表情をしたエリィがロイドの頬に口付けをした!
「!!!!???」
頬に口付けをされたロイドは混乱し
(エ、エリィ!?)
(おおおおおおおっ!?我輩が睨んだ通り、最高に面白い展開になってきたぜ!!クカカカカカッ!!さすがはロイド!期待を裏切らない奴だ!)
(あら。いきなりこんな大胆な行動に出るなんて、エリィもやるわね。)
メヒーシャは信じられない表情をし、ギレゼルは興奮した後笑い、ルファディエルは微笑ましそうにエリィを見つめた。
「ふふっ、今のは元気づけてくれたお礼よ。……それと……私、負けませんからね、ルファディエルさん。」
混乱しているロイドに頬を赤く染めながら微笑んだエリィは真剣な表情でロイドを見て言った後、ロイドから走り去って行き
(かかかっ!どうやら恋敵に認定されているようだぜぇ?)
(……別におかしな事ではないでしょう?ロイドに最も近しい女性は私なのだから、そう思われても仕方ないわ。)
ギレゼルは笑いながらルファディエルに念話を送り、ギレゼルの念話にルファディエルは冷静に答えた。
「……………」
一方ロイドは口付けをされた頬を手で押さえ、放心していた。
「フフ………キスをされた感覚はどうだったかしら?」
「かかかっ!面白いものを見せてもらったぜぇ?さすがはロイドだな!」
その時、ルファディエルとギレゼルがロイドの傍に現れ、それぞれ声をかけ
「ル、ルファ姉!ギレゼル!ま、まさか今の……見てた?」
声をかけられたロイドは我に返った後、表情を引き攣らせながら尋ね
「見てたもなにも……私達、ずっと貴方の身体の中にいたんだから、そのつもりがなくても見せられたわよ。フフ……セシルにさっきの出来事を話したら、なんて言うかしらね?」
「どうだ~?女に初めてキスされた感想は?」
「!!!~~~~~~~!?ちょ、ちょっと外の空気を吸って来る!」
ルファディエルとギレゼルにからかわれたロイドは顔を真っ赤にした後、走って屋上から去って行った。
「クク………そんなチェリーボーイだと、ハーレムを築くのは難しいぜぇ?」
「フフ、ここも外でしょうに………それにしても……ふふっ、どうやらあの子に恋人ができる日が近いかもしれないわね………」
走り去ったロイドを見つめていたギレゼルは口元に笑みを浮かべ、ルファディエルは微笑んでいた…………
ページ上へ戻る