ハイスクールD×D 新訳 更新停止
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第6章
体育館裏のホーリー
第109話 交流戦、始まります!
前書き
ディオドラもよくあそこまでアーシアに固執してましたよねぇ。
放課後、部室で部長が眷属のみんなに話しがあるとの事で、イッセー達は部長を注視する。眷属でない俺達は離れた所で話を聴いていた。
「レーティングゲーム?」
「ええ。次世代を担う若手悪魔の実力を見る為のトーナメント戦よ。ロキの襲来が無かったら、夏休みの間に行う予定だったのだけれど」
予想外のロキの襲来で延期になってしまったって訳か。
「若手悪魔って事は、ソーナ会長や……サイラオーグさんと戦う事になるんですね?」
「ええ。ただ、シトリー家とアガレス家はシード枠と言う事になってるわ。上役悪魔達の政治的なものがあったみたいなの」
と言う事は、一回戦からイッセー達と会長達が当たることは無いのか。
「……もう組み合わせ決まってるのですか?」
「ええ。一回戦では、バアル家とグラシャラボラス家が当たるわ。正直、優勝の最有力候補であるサイラオーグと当たらなく良かったわ。……そして、私達と当たるのは…」
シトリーとアガレスがシード枠って事は、消去法でもう一つしかないな。
「……ディオドラ・アスタロトよ」
ー○●○ー
若手悪魔の交流戦の話を聞いてから数日後、俺達はバアル家とグラシャラボラス家のレーティングゲームの記録映像を見ていた。
戦況はバアルの優勢だった。
グラシャラボラスの次期当主、ゼファードル・グラシャラボラスの眷属悪魔達が最終的に全滅し、『王』一人を残すのみとなっていた。
『くぅぅ……サシで勝負だ、サイラオーグ!』
追い詰められたゼファードル・グラシャラボラスはサイラオーグ・バアルに一騎打ちを申し出る。
はっきり言って、バアル側に受けるメリットは無い。
『いつでも良いぞ』
だが、サイラオーグ・バアルはその申し出を躊躇う事無く受ける。
その振る舞いからは、相手を舐めてるとかそう言うのは一切無い。ただ、小細工無しで真っ向から相手をすると言う意思だけが感じられた。
『なろぉ!』
だがそれはゼファードル・グラシャラボラスにとっては癪だったのか、目に見えて怒りを露わにしていた。
『フッ!ハッ!オラァァアアアアア!!!!』
ゼファードル・グラシャラボラスは手から無数の魔力弾を連射する。
映像越しでも、その脅威は見て取れる。
『あっ!なんだとぉ!?』
ゼファードル・グラシャラボラスの顔が驚愕に染まる。
サイラオーグ・バアルが撃ち出された魔力弾を全て、拳一つで弾き飛ばしていたからだ。
『こちらの番だな』
サイラオーグ・バアルはそう言うと、一瞬でゼファードル・グラシャラボラスへと肉薄する!
ゼファードル・グラシャラボラスは幾重にも防御障壁を張り巡らすが、サイラオーグ・バアルの拳はそれをいとも容易く砕き、その拳はゼファードル・グラシャラボラスの溝内へと鋭く打ち込まれる!
その一撃によってゼファードル・グラシャラボラスは意識を失い、ゲームは終了となった。
『…………』
誰も何も言えず、部室内は静まりかえってしまう。
皆、圧倒されているのだ。サイラオーグ・バアルと言う男の力に。
何より驚異的なのは、その力を己の肉体一つで実現させている事だ。
「……これが若手悪魔ランキング一位の力か…」
ようやく、木場が言葉を発する。
「……相手のゼファードルも代理とは言え、決して弱い訳ではないのだけど…」
それでも、そんな事など関係無い程の実力があの男にはあった。
「ところで部長、代理って?」
「グラシャラボラス家の本来の次期当主が事故死したのよ」
それであいつが次の次期当主になったって事か。
「サイラオーグもそうだけど、今は目の前の相手の事を考えないとね」
目の前の相手、ディオドラ・アスタロトか。
「実はこの交流戦前にアガレスとアスタロトがお家同士の交流でレーティングゲームを行ったのよ」
そう言い、部長は別の記録映像を取り出す。
パァァァァァ。
突然、部室に転移用魔法陣が展開された!
「……アスタロト」
部長が魔法陣の紋様を見て、その名を口にする。
魔法陣から爽やかな笑顔を浮かべる優男が現れる。
「ごきげんよう、皆さん。ディオドラ・アスタロトです」
現れた男、ディオドラ・アスタロトは開口一番にそう言う。
ー○●○ー
部長とディオドラは対面に座り、眷属の皆は部長の背後、眷属じゃない俺達は部室の片隅で待機していた。
副部長がディオドラにお茶を淹れるが、ディオドラはそれに目もくれず、部長の背後…アーシアの事をジッと見ていた。
アーシアはディオドラが現れてから不安そうな様子を見せていたが、イッセーが手を握る事で不安な様子は消えていった。
それを見て、ディオドラは一瞬だけ目線を鋭くするが、すぐに柔和な笑みを受けべて部長と対峙する。
「単刀直入に言います。『僧侶』のトレードをお願いしたいのです」
やっぱりそれか。奴がここに来る理由なんてアーシアの事だけだろうからな。
「いやん!僕の事ですか!?」
「訳ないだろ」
『僧侶』と聞いて、ギャスパーが身を守る仕草をするが、イッセーに頭を小突かれる。
「……お望みはアーシアでしょ?」
「フフ。流石に話が早い。悪い取り引きではありませんよ。なにしろ、こちらが用意するのは…」
「悪いけど、その気は無いわ」
ディオドラが自分の提供する眷属を紹介しようとするが、それをされる前に部長がトレードを断る。
「アーシアは私の眷属悪魔。そして、彼女を妹の様に思ってるわ」
部長はどれ程の好条件を出されようと、アーシアを手放すつもりは無い事をはっきりと告げる。
「求婚した女性をトレードで手に入れようとするなんて。貴方、求婚の意味を理解しているのかしら?」
口調は穏やかだが、部長は明らかにキレかけている。
「分かりました。今日はこれで帰ります」
少しは話が拗れるんじゃないかと思ったが、ディオドラは素直に引いた。……終始笑顔だったのが正直不気味だったが。
「けれど僕は諦めません」
そう言うと、ディオドラはアーシアの下に近寄り、跪いいてアーシアの手を取る。
「僕達の出会いと再会は運命だ。この世の全てが僕達の間を否定しても、僕はそれを乗り越えてみせる。愛しているよ、アーシア」
そう言い、ディオドラはアーシアの手の甲にキスをしようとする。
「アーシアに何しやがる!」
イッセーも我慢の限界だったのか、ディオドラの肩を力強く掴んでいた。
パァン!
瞬間、イッセーの手はディオドラによって弾かれる!
「放してくれないか?薄汚いドラゴン君に触れられるのはちょっとね」
ディオドラの目はイッセーの事を見下したものだった。
奴の本性が垣間見えた気がした。
バチッ!
イッセーへの暴言を吐いたディオドラの頬がアーシアによって叩かれる!
「イッセーさんにそんな事を言わないでください!」
基本的に敵であっても傷付ける事を良しとしないアーシアがこんな事をするとはな。
「なるほど。分かったよ」
ディオドラは再び笑みを浮かべる。そして、イッセーに指を突き付けて、宣言する。
「赤龍帝兵藤一誠、次のゲームで僕は君を倒すよ。そうしたら、アーシアは僕の愛に応えてほしい」
ずいぶんと自信満々だな?
イッセーもそれに受けてたつ。
「負ける訳ねえだろ!ディオドラ・アスタロト、お前が薄汚いって言ったドラゴンの力、存分に見せてやるさ!」
睨み合うイッセーとディオドラ。
ディオドラは踵を返し、転移用魔法陣を展開する。
「ッ!」
転移する瞬間、俺は見逃さなかった。奴がアーシアの事を今までに無い程の下衆めいた笑みを浮かべて見ていたのを。
……なんだ、あの笑みは?惚れた女に向ける様な笑みじゃねえぞ?
ー○●○ー
ディオドラが去った後、俺達はアスタロト家とアガレス家とのレーティングゲームの記録映像を見ていた。
『…………』
バアルとグラシャラボラスの戦い同様、映像を見て皆黙ってしまう。
結果を先に言えば、ディオドラの勝ちだった。
戦況はアガレス陣営の有利で進んでいた。だが、途中から眷属のサポートに徹していたディオドラが孤軍奮闘し、結果、ディオドラが勝利した。
その際、ディオドラが急激に力を上げたものだから、みんな訝しげ思っているのだ。
「……なんだよ……あれ……?」
「……明らかに急激に力を上げたね。それも、異常な程……」
「……部長、ディオドラはあれ程の力を持つ男だったんですか?」
「……いいえ、私の知る限りでは、ディオドラはあそこまでの力は無かったわ」
俺の質問に部長はそう答える。
それを聞いて、皆はますます訝しげになる。それ程までに、ディオドラの急激なパワーアップは異常だった。
ふと、アーシアの方を見ると、不安そうになっていた。
イッセーと奴との勝負の事を思い出し、負けてしまった時の事を考えているのだろう。
「アーシア、負ける事なんて考えるな。俺は…俺達は絶対に勝つんだからさ!」
「そうよ、アーシア。確かにディオドラのあの力は驚異的だわ。でも、私達だって日々強くなっているのよ。だから、余計な心配はしなくて良いのよ?」
「はい!」
イッセーと部長の言葉を聞き、笑顔を浮かべるアーシア。
今の映像を見て、士気に影響するんじゃないかと心配したが、どうやら良い方向に影響したようだな。
ー○●○ー
あの後、俺達はいつも通りに過ごして夕食を摂っていた。
「イッセーさんと小猫ちゃんはまだ悪魔のお仕事ですか?」
「ええ。急に入ってしまって」
イッセーと塔城は急な指名があって、今この場にはいない。
それから、部長もディオドラ戦に備えて、作戦を練っている為、この場にいない。
ふと、アーシアの方を見ると、あんまり食が進んでいなかった。
「アーシア、まだ、ディオドラとの事が不安なのか?」
「は、はい……」
みんなが負けるはずが無いと信じてはいるんだろうが、やはり、まだ不安はある様だな。
「アーシア、心配いらないよ。イッセーが必ず君を守ってくれるさ」
「ええ。私達にはイッセー君がおりますもの」
「そうだよ〜、アーシアちゃん。あんなの、イッセー君がパンチでド〜ンだよ」
「……そんなに簡単じゃないと思うけど……まあ、イッセーを信じて良いと思うわよ」
「珍しく素直だね、燕ちゃん?」
「……ッ…うっさいわよ!」
「ふふ、私もそう思うよ。イッセーさんがいれば安心ですよ、アーシアさん」
「イッセー兄ならなんとかしてくれるよ。だから、不安を感じる事は無いよ、アーシア先輩」
みんな、イッセーの事でアーシアを安心させようとする。
アーシアを一番安心させるには、イッセーの事を切り出すのが一番良いと分かっているからだろう。
もちろん、皆、そう言うだけの信頼をイッセーに寄せている。
「は、はい!そうですよね!」
アーシアもようやく不安が取り除かれたのか、笑顔で箸を進め出す。
「へぇー、イッセー君ってずいぶん信頼されてるのね?」
イリナはみんなのイッセーに対する信頼の寄せ方を見て、興味深そうに訊いてくる。
「今の私達はイッセーあってのものだと言っても良いくらいだ」
ゼノヴィアの言う通り、今のこの団欒はイッセーがいなかったら、実現はしなかっただろうな。
「ええ。なんのお返しができないのが申し訳ないくらいで」
あいつはそんな事、ちっとも思ってないでしょうが。
「じゃあ、お返しすれば良いじゃない!」
「きっと、お仕事から帰ってきたらイッ君クタクタだろうから、みんなで疲れを癒してあげようよ!」
こうして、イリナとユウのアイディアで、帰ってきたイッセーに女性陣によるお礼をする事になった。
ー○●○ー
「お邪魔しましたぁ」
俺と小猫ちゃんはお互いのお得意様である森沢さんから俺達二人に急な指名が入り、今ようやく契約取りを終えたのだ。
「森沢さん、急に俺達二人を指名してくるんだもんなぁ」
「イッセー先輩との悪魔漫才、楽しかったです」
まあ、それは俺も楽しかったし、森沢さんにも大変好評だった。
「ごめんな、小猫ちゃん。もう、魔法陣でジャンプできるんだけど、俺、チャリで来る悪魔ってキャラが定着してるからさ…」
冥界での合宿で魔法陣によるジャンプができる様になったんだけど、一度ジャンプしてお得意様の依頼者の下に行ったら、軽く落胆されてしまった。よって、俺は変わらず、チャリで依頼者の下に赴いていた。
ただ、今回みたいに他の誰かと一緒、特に同じお得意様がいる小猫と赴く時は俺に付き合って、チャリで移動する事になっちゃってる。いつもは魔法陣でジャンプしてるのに、付き合わせちゃって悪い気がしてならない。
「いえ、こんなのも楽しいですから」
小猫ちゃんは特に気にした様子を見せず、微笑みながら言ってくれる。
冥界から帰ってきてから、小猫ちゃんにはよく懐かれる様になった。
エロエロな事には相変わらず手厳しいんだけど、事ある度に俺の膝の上に座ったり、いつの間にかベッドの中に潜り込んで寝てたりなんてあった。それから、冥界での合宿で一緒に修行してたからか、小猫ちゃんと神楽が前よりも仲良くなった。ただ、普段は仲良いんだけど、俺の事が絡むと、競い合う様に火花を散らしている。たまにそこへ千秋が交じる事もある。
女の子に懐かれるのは悪い気がしない、と言うか、むしろ嬉しい事なので、それは良いのだが、その度に他の女性陣が不機嫌そうになるんだよなぁ。
うぅぅ、これも俺の甲斐性の無さが原因なのか?……ハーレム王の道は険しいぜ…。
「イッセー先輩!」
「え?ッ!?」
小猫ちゃんに呼ばれてようやく、何かの気配を感じる!
俺と小猫ちゃんは自転車から降りて、辺りを見渡す。
「……この気は!」
「おひさにゃん♪」
「「ッ!?」」
聞き覚えのある女性の声が聴こえ、そちらを見ると、そこにいたのは、黒い着物を着こなし、頭部に猫耳を生やした女性、小猫ちゃんのお姉さんの黒歌が塀に座っていた!
「……黒歌姉様!」
小猫ちゃんが黒歌の名を呼ぶと、黒歌は微笑み、塀から小猫ちゃんの下まで跳んで降りてくる!
俺はすかさず、小猫ちゃんを守る様に前に出る!
「お前、また小猫ちゃんを!小猫ちゃんは絶対に連れて行かせないぞ!」
俺は真っ直ぐに黒歌を見つめて言った。
すると、黒歌は顔を近付けて俺の顔をジロジロと見てくる。
突然の美少女のアップに思わず動揺してしまう!
「へー、最初に会った頃よりもお顔が凛々しくなってるにゃん。禁手に至ったから?それとも女の子を知った?」
「ッ、何言ってんだ…」
ぺろっ。
「っ!?」
不意に黒歌がほっぺを舐めやがった!
「う〜ん、この味はまだ子供の味かにゃ?」
「わ、悪かったな!」
図星だったので、つい口調もキレ気味になってしまう。
「ね?ねね、私と子供を作ってみない?」
「…………へ?」
突然の言葉に俺は返答に困った。
困惑する俺に構わず、黒歌は続ける。
「私ね、ドラゴンの子が欲しいの。今ならお買い得にゃん。妊娠するまでの関係で良いから、どうかにゃ?」
思わず「是非!」と言いそうになるけど、その前に小猫ちゃんが俺と黒歌の間に入る!
「……姉様に先輩の……ごにょごにょ……は渡しません!」
途中の声が聞き取れなかったけど、黒歌には通じたのか、にんまりと笑みを浮かべていた。
「そう言うのはヴァーリに頼めば良いだろ!」
内心、残念に思いながらそう言う。
「俺が断ったんだ」
そこへ、闇夜から人影が現れる!
「ヴァーリッ!」
現れたのはヴァーリだった。
「おひさ、赤龍帝」
さらに美猴まで現れやがった!
俺は『赤龍帝の篭手』を出して、警戒を最大にまで高める!
「フッ、ずいぶんと好戦的じゃないか?」
「ロキを焚き付けておいて今更何言ってやがる!」
「あれはロキが勝手にした事よ。ウチらは冥界に案内しただけ」
「神喰狼を狙っといて、ぬけぬけと言いやがって!」
「お前さんのダチが余計な事をしたせいで、こっちも予定が狂ったんだぜぃ?」
「知るかよ、んな事!」
「まあまあ、落ち着けよ。こっちは戦いに来た訳じゃねえんだから」
上の方から声が聴こえ、そちらの方を見れば、屋根に腰掛けている夜刀神竜胆がいた!
「レーティングゲームをするそうだな?」
「ッ!」
「相手はアスタロト家の次期当主」
「それがどうした?」
「奴には気をつけろ」
「何!どう言う事だよ?」
「俺の助言など、リアス・グレモリーは聞く耳持たないだろうから、とりあえず、君に伝えておこうと思っただけだ」
ヴァーリは肩を竦めながらそう言う。
「……わざわざ、そんな事言う為に来たってのかよ?」
俺は未だ警戒を緩めずに訊く。
「まあ、禁手に至った君を一目見ておきたかったてのもあるかな」
相変わらず、上から目線かよ!
「用はそれだけだ。帰るぞ、三人とも」
「あ、待ってくれ、ヴァーリ」
踵を返そうとしたヴァーリを竜胆が呼び止める。
「なんだ、竜胆?」
「悪い、たった今用ができたから、ちょっと待ってくれ」
「用?」
「ああ」
ヒュン!
突然、竜胆目掛けて何かが飛来し、竜胆はそれを人指し指と中指の間で挟んで止めてしまう!
飛んできたのは、鶇さんと燕ちゃんが持っているのと同じクナイだった!
「ご挨拶だなぁ?」
竜胆はクナイの穴に指を入れてクルクル回しながら、闇夜に向けて問い掛ける。
そして、闇夜から赤紫色の髪をした黒ワイシャツ姿の男性が現れる。
俺はその姿を見て驚愕する。なぜなら…。
「もう少し穏やかな挨拶はできなかったのかよ?…………雲雀」
鶇さんと燕ちゃんのお兄さんである風間雲雀さんだったのだから。
後書き
ようやく、鶇と燕の兄である雲雀の登場です。
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