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提督がワンピースの世界に着任しました

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第11話 人食い島

「上陸したら最後、人が戻ってこないと言われている島?」
「えぇ。島の人達は、私達が居るこの島をそう呼んで恐れていました」

 開発資源を使用しないまったく別の方法によって、軽巡洋艦である北上の建造に成功した後。偵察任務を任せていた3人の艦娘が神威鎮守府に戻ってきたので、早速調べてきた事についての報告を、妙高から聞いていた。

 時間も夜遅くなってしまったので、天龍と吹雪の2人は先に休ませて、旗艦を務めてくれた妙高はに疲れている所悪いとも思ったけれど、なるべく早く情報は共有しておきたいと考え話してもらっていた。後で彼女には、疲れを癒やす甘味でも用意しよう。

 司令官室の中央にある立派な提督机の隣に設置した、四人掛けの長机に皆で座る。部屋には今、加賀に妙高と妖精さん、そして俺の四人が居た。

 秘書官である加賀が俺の横に座り、備忘録を取りながら静かに報告を聞いている。そして、偵察結果の内容を報告してくれている妙高は、俺の真ん前に向かい合う形となって座っていた。妖精さんは、身体が小さいので椅子に座らず机の上に乗って座っている。こういった配置関係で、話し合いは進んでいた。


 偵察任務を任せていた妙高達は、頼んでいた通り島に無事上陸して、島の中にある村にも入り込んで、住んでいる人に直接話を聞くことに成功したらしい。

 そこで手に入れたという、我々の拠点としている神威鎮守府があるこの島の情報についての話を、まず一番に聞いていた。

 神威鎮守府の事について、そして自分たちの事を知るためにも、何か手がかりになるような情報が無いか、少しでも関連した話が聞ければ良いのにと思っていたけれど、どうも話を聞く限りではこの島についての謎は深まるばかりだった。


「話を聞いたところ、私達の居るこの島に近づいたり、島の中に入ったりすると、二度と戻って来れなくなると古くから言い伝えられている、とおっしゃっていました。そんな事が何度も起こっていて、この島は人食い島と呼ばれるようになったそうです」
「なるほど。人が消えるから”人食い島”とは、おっかない名前で呼ばれているな」
「はい。今も時々、度胸試しにと人食い島に挑む若者も居るそうですが、本当に誰一人として帰ってこなかったらしくて、普段は恐れて近づこうとするものが居らず、島の内部について詳細を知る人達は居ませんでした」

 近づいたり上陸したりした人間が帰ってこない、という事はこの辺りの海の中や、島の中に人間を襲う生物、獣か何かが住んでいたんではないだろうか、という事を真っ先に思い浮かべた。
 だが、先日俺達が島を見まわった時には人が襲われたような形跡や死体、人骨など島の中には一切見当たらなかった。そもそも、それほど危険で人間を襲うような獣を俺は、島の中で見つけてはいない。そして、なぜ俺達は今まで大丈夫だったのだろうかという疑問。

 他に島に近づいた人が帰ってこなくなるという原因は何だろうか。次に、思い当たるのがオカルト的な何か、神隠しとか……。と、考えを深めてみたけれど結局は答えは見当たらないし、今はこれ以上考えても無駄な気がするので一旦置いておく。

「つまりは、神威鎮守府の事について、村の人達は誰も何も知らなかったのかい?」
「えぇ、誰も知らなかったようです。いくら話を聞いても、この島の情報は全くありませんでした」
 やはり、付近の島に住んでいた人たちでも、島の中に来たことが無いのなら分からないか。更に話を変えて、別の事について聞く事にした。

「村の人達との関係は、どうだった? 色々と情報を集めて来れたようだけれど、出会った人たちは皆友好的だったのかい?」

 突然海の向こうからやってきた正体不明の人が、村の中にまで入って来て話を聞こうとしても、普通は警戒されて受け入れられないだろうと思っていた。なので、島に上陸しての偵察任務は難しいだろうから、俺はもう少し時間が掛るだろうと予想していた。

 けれど、実際は妙高達は村の人達に色々と話しを聞いて情報を得ることが出来たようだった。それが何故なのか気になっていた俺は、妙高に直接問う。すると、彼女は村の人達と友好的な関係を築けた経緯を話してくれた。

 その経緯について簡単に説明すると、村に迷惑を掛けていた山賊集団が屯っていた酒場に、妙高たちが聞き込みを行おうと入ったら、山賊たちに絡まれたので撃退。そうしたら、村の人達が大喜びしたという事らしい。

「天龍が酒場で因縁をつけられて、返り討ちにした、ね」
「はい、そうです。その絡んできた人達が山賊をしていた集団だったらしく、撃退した所に村長がお礼を言いに来てました。その後、村長に山賊の悪行や乱暴な振る舞い、村民がどれだけ迷惑を掛けられたのかを詳しく説明されました」
「村の問題を解決したら、信頼されるようになったと言うことか?」
「えぇ、そのようです。山賊たちは、日頃から村に押しかけて住人に迷惑を掛けていたそうで、村の人達も反撃のために自警団を立ち上げたそうですが、その時は歯が立たなかったらしく、それから、従順なふりをしてさらなる反撃のための機会を伺っている最中だった、ということです」

 村の厄介な問題を妙高達が解決したから受け入れられた。そして、情報も簡単に聞き出せたということか。妙高の報告を聞いて、情報を頭のなかで整理していると、隣りに座っている加賀が質問を始めた。

「資材や食料の補給ルートは、確保できそうですか?」
「食料は、今の鎮守府に居る艦娘と提督の分を島の人達に融通してもらうのは可能だそうです。ただ、これ以上艦娘の数が増えたり、長期間にわたって供給が必要なら商船隊の人達と交渉した方が良いと言われました」
「商船隊ですか?」
「島には、二ヶ月に一度だけ商売をしに来る船が居るそうなので、お金が有るならば、その人達と交渉して欲しい物を注文すれば良いと教えられました」
「なるほど、一度その商船隊の人達に会って話をする必要が有るな」

 幸いな事に先の遠征で、我が鎮守府は金目の物を結構手に入れることが出来たので、お金の問題については大丈夫だと思う。

 後は、その商船隊と接触し売買の交渉をして資材の入手ルートを確保できれば、補給問題は解消されるかもしれない。その商船隊から資材の入手が難しそうだとしても、その商売人のコネを辿っていけば、いつかは補給ルートを作ることが出来ると思う。

 妙高の報告を聞いて、大まかな今後のスケジュールを頭の中で組み立てていく。そして、俺は最後に彼女に質問をした。

「妙高、遅くまで報告ありがとう。後は、何か話しておきたい事は有るかい?」
「お気遣いありがとうございます、提督。最後に一つだけ、報告しておかなければならない事があります。偉大なる航路(グランドライン)についてです」

「グランドラインだって……?」

 妙高の言葉を聞いて、俺は確信してしまった。今まで、艦娘が居て鎮守府が有ることで”艦隊これくしょん”の世界なのだと思っていた。だから、自分たちが居るのは日本の何処か、少なくともアジア地域の何処かに居るのだと考えていたけれど、それは見当違い。実際は、全然別の世界に来てしまっていたようだ。

 こうして俺は、この世界に来て数ヶ月たった今頃になってようやく自分が”ONE PIECE”の世界に居るのだと認識するのだった。 
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