とある3人のデート・ア・ライブ
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第十章 仮想世界
第4話 いざ、仮想世界へ
愛とは何か、か。
と、士道は心の中で呟いた。
その抽象的すぎる質問に声を詰まらせた。
恐らく目の前の彼女は辞書を引用したような答えは求めてないだろう。そうならばこんな事を見知らぬ人に聞くはずがない。
しかし、それを実際見せろと言われても無理な話だし、言葉で説明しようにもどう言えばいいか、何が正解なのか分からない。
「愛とは、どうなものなのですか?わたしはそれを知らない。だから、知りたい」
目の前の彼女にまた質問された。
士道「えーっと、どうしてそんなに知りたいんだ?」
「……どうしてでしょうか?」
士道「いや、俺に聞かれてもな……」
よく分からない子だ。
知らない事を聞いといて知りたい理由を知らないとは。
「でも知りたい……そう思います。この世界で、愛だけを……」
この世界、というのは大袈裟な話だ。だってここは仮想世界。リアルの世界とは違うのだから。
「そうしなければ、私は役割を果たす事が出来ない。だから……知りたい」
士道「何だか深刻な話なんだな……」
しかし、愛か……本当に曖昧な言葉だな、と士道は思った。
「五河士道は愛を知らないのですか?」
士道「いや、言葉は知ってるんだけど……って何で俺の名前を?」
「……私はこの世界の全てを把握してます」
全てを……把握?どういうことだ?
士道「ナビゲーションNPCじゃないよな……?」
「それが私の役割ですか?」
士道「……自分の役割がわからないのか?」
「私には役割が設定されていません。ただ、愛を知らなければならないのです」
士道「んー……あ、じゃあ君の名前はなんていうんだ?」
彼女は少し考えたのち。
或守「…………或守。外見データから判断してそうだと思います。」
士道「えっと……分かった。よろしくな或守」
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ーーー
ーー
ー
大事すれば愛。
だが花に毎日水をやって大事にしてるのは愛と言うのは少し難しい。
大切にすれば愛。
だがお金を愛していると言うのはそれも難しい。
大事にしていても大切にしていても愛してはいない。
守ってあげたい人、家族のためになんでもするのが愛。
だが首をつけられ、踏ませてと言われても愛のために了承するかどうかと言われれば首を縦に振るのは難しい。
まあ、前述の事に愛を注ぐ人も中にはいるが大多数は違うだろう。
ならば愛とは何なのか?
ここ、哲学。
士道「でも人間に対する愛は、他のものに対する愛とは少し違う……と思う」
或守「……そうなのですか?」
士道「まあ……食べ物とかスポーツとか趣味とか……そういう愛してるとはちょっと違うかな」
或守「なるほど……そうだとしたら私は……人間に対する愛、それを知りたいです」
士道「えっと……なんでだ?」
或守「私に記録されている愛という情報の中でそれだけが不明瞭なものだからです。ですから、五河士道。それを私に教えてください」
士道「えっと……」
愛……いとおしい……あれ?これって同じ意味じゃね?
ヤバイ、考えれば考えるほど分からなくなってくる。
士道「……ゴメンな或守。今の俺には分かんない」
或守「それならば……実際に愛の形成・育成をシミュレートする。それで答えが見つかるかもしれません」
士道「……へ?それってどういう意味だ?」
或守「五河士道と愛を形成するのに適切な人材が必要です……検索を開始します」
士道「け、検索?」
一体何を……
或守「検索完了。これよりコンタクトを開始します」
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ー
〈フラクシナス〉のパソコンに妙なメールが届いた。
『五河士道を愛するために、こちらに来てください』
そのメールを返信することはできず、どういうわけかご丁寧に来る人たちのリストまである。
そして、その特定の人物にアクセスが許可されていた。
その人物とは。
夜刀神十香。
四糸乃。
時崎狂三。
五河琴里。
八舞耶倶矢。
八舞夕弦。
誘宵美九。
鳶一折紙。
佐天涙子。
上条当麻。
一方通行。
このリストに、琴里は疑問を覚えた。
琴里「どういう基準なのかしら。士道が封印した精霊……いえ、狂三や鳶一折紙も入ってるし……そもそも当麻君と一方通行は男だし、そういうわけじゃなさそうね」
令音「シンの身近にいる人たち、ではないかな」
琴里「じゃあ女の子だけでよくない?女の子なら士道を愛することは可能だけど、当麻君と一方通行は流石に無理でしょ。まさかそっちの趣味があるわけじゃあるまいし」
令音「……確かに、あの二人はシンと性格は違えど本心はどこか似ているからね。……そういえば、彼女ーー人工精霊と仮称するが、あの子はシンと切断する前に『愛とは何なのか』と質問していた」
琴里「……どうしてそんな事が知りたいのか分からないけど、あの二人がリストに入ってた理由がわかったわ」
令音「あぁ。恐らくシンと同じことを、上条君と一方通行にもさせるのだろうね……愛を知るために」
琴里「恐らくね……やるしかないようね」
それを全て聞いていた精霊達は強い決意を固めていた。
十香「私は行くぞ!ゲェムの中に入ってシドーを助け出すのだ!」
四糸乃「わ、私も……行き、ます!士道さんには、たくさん助けてもらいました。だから……!」
耶倶矢「くく……五河士道は我らの所有物だ。それが奪われたとなれば……」
夕弦「決意。取り戻しに行くのは当然です」
美九「だーりんを取り戻せるためならどこへでも行ってみせますよー!」
佐天「な、なんか私達も呼ばれてるみたいですね……一応行かないとダメですよね?」
上条「士道、お前のことは忘れない」
一方「達者でな」
佐天「……やっぱりちゃんと来てください」
……上条と一方通行はともかく女の子達全員は士道を助けるために仮想世界に行く気はあるようだ。
端末の問題もない。
本来は一人用だが、仮想世界への情報量が膨大になるため控えているだけで実際にはかなりの大人数で使えるらしい。
さて。
鳶一折紙と時崎狂三を呼ばなければ。
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ーーー
ーー
ー
折紙は士道の携帯を使って電話し、狂三は神無月がサーチして見つける事が出来た。
折紙「……到着した。ここであってる?」
狂三「うふふ、何やらお探しのようなのでご一緒させてもらいましたわ」
なんと、折紙を転送させたら狂三までついてくるという何というお得感。
どうやら狂三には全て筒抜けだったらしい。士道のためという事で協力してくれるそうだ。
二人にも状況を説明し、了承を得た。
折紙「問題ない。士道が危険な状態なら迅速に行動するべき」
狂三「そうですわね。みなさん、士道さんを助けたいのでしょう?」
と言うと狂三は皆の方を見て……上条と一方通行を見つけてフッと微笑んだ。
上条は首を傾げていたが、一方通行は相変わらず狂三を睨んでいた。
しかし、どんなトラブルがあるか分からないのも事実だ。
仮想世界に入ったまま戻ってこれない可能性もあるし、罠の可能性もある。
まあ考えても今は仕方がないのも確かだが。
上条『それじゃあ、凜祢とは一旦お別れだな』
凜祢『そうだね。ちゃんと士道を助けるまで戻ってきちゃダメだからね?』
と、上条は凜祢に話しかける。これが最後の会話になるかもしれないから。
上条『………お、おう』
柑果『頑張れよ少年』
と、柑果からもエールをもらった。
柑果は普段は上条の力を借りて外に出歩いている事が多いが、70年分の空白を埋めるための知識をかけ集め、整理する時は基本的に上条の『石』の中に戻っているのだ。
上条『………今思ったんだが、神代の力で士道を何とかすることは出来ないのか?』
柑果『私は機械についてはさっぱりだし、さっきも五河琴里が言ってたが無理矢理引き剝がしたら脳に損傷するかもしれん』
上条『………行くしかないのか』
柑果『最悪骨は拾ってあげるから』
上条『勝手に上条さんを殺さないでくれますかね!?』
凜祢『頑張ってね〜』
上条『………愛しい人の命が危ないってのに呑気だな』
凜祢『当麻を信じてるからね』
上条『………やべぇよヤベェよ。これで士道助からなかったら俺どうなるんだよ?』
柑果『同じ運命を辿ることになる』
上条『よし、待ってろ士道。今すぐ助けに行ってやるからな』
脳内で謎の茶番を繰り広げていたが、それは誰にも気づかれることはなかった。
まあそれは当たり前のことだが。
そして計11名の勇敢な少年少女達は、士道を助けるべく仮想世界へダイブした。
後書き
4話目でやっと仮想世界に行った……この章何話になるんだろ……
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