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最高の贈りもの

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7部分:第七章


第七章

「そうした裏事情があるのね」
「うっ、しまった」
「言ってからわかったの」
「言っちまったよ。どうしようか」
「どうもしないわよ。ただね」
「ただ?」
「気持ちは変わらないから」
 それはだ。変わらないというのだ。
「御礼の気持ちはね」
「何だ、そうなのか」
「ええ。できればこれが」
 こうしただ。気の利いたことがだ。
「これからも続けばいいけれどね」
「何だよ、続かないっていうのかよ」
「ペドロだから」
 そのだ。彼だからだというのだ。
「スペイン一気の利かない男だから」
「じゃあその気の利かない奴とずっと一緒にいるのはどうしてなんだよ」
「どうしてかって?」
「そうだよ。どうしてなんだよ」
 こうだ。テレサに少しムキになって問い返すのである。
「それはどうしてなんだよ」
「ああ、それね」
「それだよ。それはどうしてなんだよ」
「決まってるじゃない」
 一呼吸置いてからだ。テレサは彼に答えた。
「もうそれはね」
「決まってる?」
「好きだからよ」
 だからだというのだ。
「それでよ」
「それでか」
「確かに気が利かないわ」
 それはどうしてもだ。否定できないことであった。
「けれどそれでもね」
「他にもいいところあるってか」
「この靴下よ」
 彼がくれたその。温かい靴下だというのだ。
「こういうことよ」
「靴下か」
「確かにお婆さんに教えてもらったけれど贈りものをくれたのはペドロだから」
 それでだと。テレサは話す。
「そういうことだから」
「まあ。よくわからないけれどな」
「言葉ではよね」
「頭の中では大体わかるけれどな」
「じゃあそれでいいから」
 そんなペドロのことを受け入れての言葉だった。
「それでね」
「そう言ってくれるんだな」
「そうよ。だから」
 それでだと。また言ったテレサだった。
 そのうえでだ。彼女から彼に言った。
「それでね」
「ああ。それで?」
「今日はとことんまで飲みましょう」
 こう彼に言ったのである。
「二人でね」
「もうお互い酔い潰れるまでか」
「そうよ。気分がいいから」
「わかったよ。それならな」
「ウォッカならどれだけでもあるし」
「少し飲んだだけでも効くのにそれが幾らでも」
「ええ。だから一緒にね」
「飲むか。乗ったぜ」
 ペドロも笑顔で応え。そうしてであった。
 二人でだ。そのウォッカで乾杯して。それからその日は本当に酔い潰れるまで飲んだ二人だった。ささやかだが温かい贈りものを身に着けながら。


最高の贈りもの   完


                   2011・7・4
 
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