最高の贈りもの
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6部分:第六章
第六章
その寒さはシベリアではより顕著だ。そのシベリアの寒さは最悪だとしてだ。テレサはペドロに対してだ。こんなことを話したのだった。
「この靴下はね」
「気に入ってくれたんだな」
「そうよ。最高の温かさよ」
そしてだ。それは。
「最高の贈りものよ」
「そう言ってくれるんだな」
「ええ。けれどよくわかったわね」
微笑みからだ。少しいぶかしむ顔になっての問いだった。
「貴方が。こんなこと」
「こんなことって?」
「貴方みたいに気の利かない人が」
「俺って気が利かないか?」
「普通彼女をシベリアに連れて来る?」
言うのはここからだった。最早センス以前の問題だった。
「そういうことよ」
「何だよ、そのシベリアだからな」
「この贈りものができたっていうのね」
「そうだよ。お婆ちゃんに教えてもらったんだよ」
そしてついついだ。自分で言ってしまうのだった。
「売店のお婆ちゃんにな」
「贈りものなら?」
「靴下がいいってな」
そのままテレサに話してしまうのだった。
「お婆ちゃんが教えてくれたんだよ。シベリアじゃ最高の贈りものだってな」
「成程、そうなの」
その話を聞いてだ。テレサも納得した。
そのうえで頷いてだ。こうペドロに言った。
「これでわかったわ」
「わかったって?」
「ペドロがこんな気の利いた贈りものする筈ないから」
言うのはこのことだった。ペドロのことだ。
「どうしてかって思ったけれどね」
「これでわかったって?」
「お婆さんに教えてもらったのね」
「ああ、そうだよ」
「そういうことなのね」
「だからそれがどうしたんだよ」
「気が利かない人が利くことをする時って」
その時はだ。どうかというのだ。
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