英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)
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第32話
その後港湾区に向かったロイド達水バス乗り場で、水上バスを待っていた。
~港湾区~
「ん~………?こっちでいいのかねェ。」
ロイド達が水上バスを待っている一人の軽そうな青年が近づいてきた。
(あら、あのお兄さんは……)
(観光客………?)
(ええ、いかにもそんな感じの人みたいね………)
青年を見たレンは目を丸くし、青年はロイド達に気付いた後、ロイド達に近づいて尋ねた。
「よー、彼氏たち。ちょいと訪ねたいんだけど構わないか?」
「ええ、いいですよ。観光客の方みたいですけど道に迷いましたか?」
「ああ、この街ちょっと広すぎるんだよな~。そんでさ、ミシェラムって場所に行きたいんだが、こっちでいいのか?」
「ああ、こっちでいいですよ。俺達も丁度、ミシェラムに行く水上バスを待っているところなんで。」
「お、ビンゴだったか。そんじゃあオレも並ばせてもらうかねぇ~。おっと、名乗り忘れたな。オレの名前はレクター。レクター・アランドールだ。エレボニアの帝都からさっき鉄道で着いたばかりだぜ。」
ロイドの話を聞いた青年―――レクターは口元に笑みを浮かべた後、自己紹介をした。
「エレボニアの帝都……」
「帝国の方だったんですか………」
「へえ、それにしちゃあなかなかイカしか格好してんな。サングラスなんざかけてもろにバカンス仕様じゃねえか。」
「レンの知り合いにも帝国出身が二人いるけど……どちらかというと”普通の帝国人とはかけ離れた方の人”に近いわね。」
”質実剛健”を国風として帝国人でありながらとてもそんな風には見えない軽い服装を身に纏っているレクターが気になったランディは興味ありげな表情をし、レンは意味ありげな笑みを浮かべてレクターを見つめた。
「おう、クロスベルっていやぁ、最近リゾートでも有名だからな!郷に入れば郷に従え。これでも気合い入れて来たんだぜ~?」
「気合いを入れる方向が間違っている気もしますが……やっぱりテーマパーク目当てでいらっしゃったんですか?」
「テーマパーク?………なんだそりゃ。そんな面白いモンがミシェラムにあんのか?」
ティオの話を聞いたレクターは首を傾げた後尋ねた。
「ええ、まあ………俺も行った事ないですけど。」
「元々、保養地でしたけれど最近ではそちらの方が有名ですね。」
「へ~、なるほどねぇ。まあ今回は、ただの代理として出席しに来ただけだからな。もうちょい色々と調べてから来りゃあよかったかもなァ。」
エリィの説明を聞いたレクターは残念そうな表情で溜息を吐いた。
「代理として出席……?」
レクターの口から出た意味ありげな言葉にロイドが首を傾げたその時、水上バスの汽笛が聞こえて来た。
「お、来たみたいだなァ。」
少しの間時間がたつと、水上バスが港に到着し、乗客が降りた後、港で待っている客達は乗船し始めた。
「うむ、なかなかイカス船ではないか。早速、オレ様は甲板席の最前列をゲットさせてもらおう。そんじゃ、お先になー♪」
そしてレクターは水上バスに乗船した。
「何だかランディを更にチャランポランにしたような人だったわね……」
「どういう意味だっつーの。俺はあそこまで遊び人って感じじゃねえだろ?」
レクターが去った後溜息を吐いて呟いたエリィにランディは突っ込み
「……十分、遊び人風かと思いますけど。」
「うふふ、隙あらばカジノに行こうとしているものね♪」
呆れた表情で指摘したティオに続くようにレンは小悪魔な笑みを浮かべてランディを見つめた。
「まあ、同じ遊び人でもぜんぜん違うタイプかもな。ランディみたいに夜遊びとナンパが趣味っていうより妙にフリーダムな感じと言うか。」
「おお、わかってんじゃねーか。俺と同じくらいの歳みてぇだが一人で何しに来てんだろうな。」
そしてロイドの言葉にランディが頷いたその時
「あら―――奇遇ね。」
女性の声が聞こえた後、黒髪の女性がロイド達に近づいてきた。
「あなたは………」
「おおっ……!?キリカさんじゃないッスか!」
女性―――『偽ブランド業者の摘発』の支援要請の際、逃亡した犯人の逮捕を手伝った東方から来たキリカの登場にロイドとランディは驚いた。
「フフ、一昨日はどうも。ここにいるという事はあなた達もミシェラムへ?」
「ええ……キリカさんもですか?」
「仕事半分、観光半分ね。それより……今の派手な格好をした子は?あなた達のお友達かしら?」
「いえ……先程知り合ったばかりです。何でもエレボニアの帝都から観光に来たみたいですけど。」
「帝都から……ふふ、成る程ね。」
「???」
「ひょっとしてお知り合いですか?」
一人で納得しているキリカを見たロイドは首を傾げ、ティオは尋ねた。
「いえ、ユニークそうなオーラをまとっていたから職業柄気になっただけよ。それではお先に……あなた達も早く乗りなさい。」
そしてティオの疑問に答えたキリカは水上バスに乗船した。
「いや~………相変わらずクールで素敵だぜ。」
「仕事半分って言ってたけど……やっぱりテーマパークが目当てかな?」
「芸能関係の仕事ならその可能性が高そうね……そう言えばレンちゃんはキリカさんと知り合いのようだけど、一体何の仕事をしている人なのかしら?」
「(キリカお姉さんの”今の仕事”を言ったら、”黒の競売会”に集中しきれないから言わない方がいいわね。)――――今は何の仕事をしているかは知らないけど、以前は遊撃士協会の受付をしていた人よ。」
エリィにキリカの正体を訊ねられたレンは考え込んだ後キリカの過去を答えた。
「ええっ!?遊撃士協会の!?」
「ええ。しかも武術の腕前も相当で、あのバルバトス・ゲーティアをレン達と一緒に撃退した事もあるわよ♪」
「オイオイ……バルバトス・ゲーティアって”星見の塔”で現れたあの滅茶苦茶な野郎だろう?あんな野郎を撃退できる実力があるとか、おっかなさすぎだろ……」
驚いている様子のエリィに答えた説明を聞いたランディは疲れた表情で溜息を吐き
「そう言えば一昨日もキリカさんが逃亡した犯人を足止めしてくれましたよね?」
「ああ…………『人は見かけによらない』とはよく言ったものだよ……」
ティオの話にロイドは疲れた表情で頷いた。するとその時水上バスの汽笛が鳴り、汽笛を聞いたロイド達は水上バスに乗り込み、そして水上バスは出航した。その後水上バスがミシェラムに向かっている最中キリカや帝国貴族と名乗ったレクターと話をしたロイド達が席に戻ると水上バスは保養地―――”ミシェラム”に到着した。その後ロイド達は会場の様子を見に行く為に、”ハルトマン議長邸”に向かった。
~ミシェラム・ハルトマン議長邸~
「あれがハルトマン議長邸………すごいな……屋敷というより城みたいだ。」
「まあ、クロスベルでは昔からの名士の家系だから………あの屋敷も、百年近く前、帝国の統治時代の総督邸として建てられたものだと聞いているわ。」
「それにしたってデカすぎだろ。帝国の大貴族じゃねえんだから。」
「確かに帝国貴族の中でも最も権力がある”四大名門”の城館とも見劣りしない大きさね。」
議長邸の大きさに驚いているロイドに説明をしたエリィの話を聞いたランディは呆れた表情で溜息を吐き、レンは興味ありげな表情で議長邸を見つめていた。
「あんな場所を使って開かれるという”競売会”………相当、大規模なものみたいですね。」
「ああ―――あれは……!」
そしてティオの言葉にロイドが頷きかけたその時、マフィア達とガルシアが入口から現れ、ガルシアに自分達がいる事を気づかれない為にロイド達は物陰に隠れた。
「―――警備の手筈は例年通りだ。だが、今年は”黒月”どもが仕掛けてくる可能性も考えられる。招待カードを持ったヤツ以外は誰であろうと通すんじゃねえぞ。」
「承知しました!」
「若頭の方はどうされます?」
「俺は屋敷内部の警戒に当たる。何しろ神出鬼没なヤツだ。警戒しすぎる事はねえだろう。………そういえば、出品物は全部搬入されたのか?」
「ええ、今朝方。例の人形が最後みたいですね。」
「今回の目玉の一つか……どれだけの値がつくことやら。まあいい、開場まであと数時間だ。くれぐれも気を抜くんじゃねえぞ………!」
「はい……!」
「お疲れ様です!」
マフィア達に指示をし終えたガルシアは屋敷の中へ戻って行った。
「―――出やがったか。あのオッサンも早速、中に詰めているらしいな。」
「たしかガルシアという元猟兵の若頭さんでしたね。」
「パーティの開場はたしか夜の7時から………もう警備を始めるみたいね。」
「ああ………それだけ警戒してるんだろう。………しかし参ったな。いくら招待カードがあっても簡単には中に入れなさそうだ。」
「まあ、レンはともかく何度かルバーチェの下っ端と戦った事があるロイドお兄さん達は顔を知られているものねぇ。」
「何か手立てを講じる必要がありますね………」
疲れた表情で考え込んでいるロイドの言葉を聞いたレンは苦笑し、ティオは疲れた表情で考え込んでいた。
「…………………とりあえずいったんここから離れよう。ここで連中に見つかったら元も子もなくなりそうだ。」
「そうね。」
そしてロイドの提案によってロイドが仲間達と共にその場から去りはじめたその時
ミツケテ
何者かの声がロイドの頭に響いてきた。
「え………(………今のは………空耳………それとも…………)」
頭に響いた声に気付いたロイドは振り向いて議長邸を見つめ続けていた。
「………ロイドさん?」
「どうしたの?」
「いや……―――ゴメン、気のせいだったみたいだ。」
「???」
その後ロイド達は競売会に入るかどうかの相談をする為にホテルに空き部屋がないか聞く為に、ホテルに向かった――――
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