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Everlasting oathーブラッド・オンラインー

作者:ゆぅ駄狼
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第1章
  昔の出来事

 
前書き
     注意事項

1、この小説はソードアート・オンラインの二時創作であり、私の妄想をぶち込んだ作品です。

2、独自設定や独自解釈、オリキャラなども多数存在しています。

3、文章の書き方は上手くないので覚悟して下さい。面白いと思っていただけたら、お気に入りをしてくれるとモチベが上がります。

以上を踏まえた上でどうぞ。
 

 
 君が呼んだ名前はいつかきっと、俺は忘れてしまうだろう。

 いや、もう覚えていないのかも知れない。

 いつからか自分では思い出せなくなったのに気付けないでいた。

 これで──良かったんだ。

 二人で歩んできた道はとても輝かしい物であり、愛すべき物だった。

「大好きだよ」

 その言葉がいつも頭から離れない。

 君に抱き付いて泣いてみても、君は動こうとしない。

 周りの皆も。

 君が死んでからどれくらいの時が経ったのだろう。

 病室の中、自由の利かない体を無理矢理動かして近付いて。

 沢山の人達が悲しんで、君が人から物になって。

 きっと、何千年に渡る物語。

 二人一緒に死ぬか、片方が死ぬか、どっちが正しいかなんて分からないけど。

 死んでいるのが逆だったらこの役目を背負っていたのは君だったんだろう。

 それなら俺が背負っていた方がいいんだよ。

 心が折れそうで、足を休めそうになるけど君が代わりだったらと思うと頑張れる。

 何回も、何十回も、何千回も同じことを繰り返して。

 願いながら剣を振るう、君にまた会いたいと。

 何千年目の報告。

「全部、終わったよ。きっといつか、会えるから待っててな」

 崩壊していく鉄の城を眺めながら俺の人生は暗闇に覆われていく。

 己の身に刃を貫かせ、自ら死んでいく。

 またリセットされるのだ。

 次の人生に記憶は引き継がれ、鉄の城、森の中で目を覚まして何度も何度も同じことを繰り返す。

 未来を変えて、君ともう一度出会う為に───



 俺は自分と君を殺しに戻る。



 それが、()の前で誓った、永遠の誓い(Everlasting oath)


 ────────────────────





  2017年────

「おーい圭介、朝だぞ〜」

 いつもの朝、いつもの声が聞こえた。柏木圭介の1日は身内の声によって始まり、声の主は時々、度の過ぎた行動をしようとする。

 普通の家庭は、起きなさい、何時まで寝ているの、だろうが、俺の家はインパクトがある起こし方で朝を迎え、最悪の気分で体を起こす事になる。

 愛のある御奉仕をするぞ?と扉の向こう側、階段を降りた先の一階から聞こえてくる。そして、相手は本気で行動を起こそうとする時があるのでギリギリまで布団の中で包まり、相手が扉の目の前に来た瞬間に起き上がる。

 これが圭介の朝の規則。

 このまま寝ていたい、そう思うのだが段々と足音が近付いてくる。さっき言った通り、家に潜む魔物に変なことをされる前に起きなければいけない。

 自分の身体を暖めてくれている掛け布団を取っ払い、一呼吸する。

「…………眠い」

 今日の夢は美女に蹴られ続ける夢でした。え?どうでもいいって?そうですか。

『もっと叩いてくださいッッッッッ!』

 あれは夢の中だ、そうだ夢の中さ。現実で言ったわけじゃない。

 なんてことを思いつつカーテンを開け、朝の日差しに御対面。起きたばかりの俺には少し(まぶ)しく、目を細める。

 欠伸(あくび)をしていると背後のドアがきぃと開く。危険を察知し、途端に寒気がする。ヤバイの(叔父)を部屋に招き入れてしまったようだ。

「愛のある御奉仕に参ったでござる」
「……すいません、人生に迷いが生じたんですか?交番ならすぐ近くなので相談して来たらどうです?」
「人生に迷いは付き物さ………」

 目に映ったのは破壊力抜群の叔父の姿────筋トレを続けた結果、ボディービルダー並みに強化された上腕二頭筋、小刻みに振動させる事を可能にした胸筋、中学生が見たらバッキバキと言い表す程、六つに割れた腹筋。筋肉を隠す衣類は一枚のエプロン。

 所謂(いわゆる)、裸エプロンの姿で部屋に入ってきた。危険を感じないわけない。

「出て行けよ……」
「出て行かぬ、御奉仕しに来たって言ってんだろ」

 こいつ(叔父)は一体何をする気なんだよ。時々だけど同性愛者(ホモ)じゃないのかって疑うんだけど。

 中学1年の頃────当時から時々、こうやって色々な衣装で部屋に突撃してくる傾向がある。初めて衣装を着てきた時は軍人のコスプレ。バリエーションは増えて、太平洋を泳ぎ回る直前の男性コスプレ。しかもブーメランパンツ。長年の追求で裸エプロン、恐ろしい。

「美しいって?照れるわ」
「誰が美しいなんて言ったんだよ。勝手に言ってもいない言葉を頭の中で作るなよ」
「俺の筋肉が美しいなんて知ってるが?」
「もういいです。あんたの脳内には妖精が住んでいるみたいだからどうしようもない」

 毎度毎度、俺から褒められたい衝動を表に出すのは辞めてもらいたい。

「俺はもう下に行くから、早く降りて来るんだぞ」

 キレのある方向転換をするとエプロンが宙を踊り、後ろ姿を見ている俺は叔父の締まりがある美尻を見てしまった。

 裸エプロンで待ってることはないって願ってる。マジで。

 叔父が部屋を出て行った後、溜息を一つ吐いて身支度を済ませる。そして、叔父が待っているリビングへと向かう。

 リビングに着くと普段通りの私服姿で叔父が料理をテーブルに運んで朝食準備をして待っていた。亡くなった母親の料理とは違って少し雑で──男っぽい料理。それでも美味しく感じる。

 何故、親がいないのか。いないものはいない。ただ、俺を良く知ってくれているのは叔父だけになってしまった。

 俺がまだ小さい頃、車に乗っていた俺と両親は事故に()い、親は亡くなり、後部座席に座っていた俺自身は骨折程度で済んでいた。

 事故に遭って時間が経ち、車の中で意識が回復した幼い俺は父親に声を掛けた。お父さん、痛いよと。でも、返事は返って来なかった。

 それなら母親に助けてもらおうと声を掛けた。お母さん、痛いと。でも、返事は返って来なかった。来る筈が無かった。父親と母親の顔はグシャグシャになって喋れ無くなっていたのだから。

 それでも、俺は両親の(みにく)い姿に気付かないまま話し掛けていた。

「お母さん痛いよ、お父さん痛いよ………何で無視するの?ねぇ、手が痛いよ………」

 助けが来たのは数十分後。街外れの事故だった為、助けが駆け付けるのに時間が掛かったらしい。周りで見ていた人が少なかったから。見ていたのは動けないでいる幼く、無力な俺と、大型トラックの運転手だけ。

 運転手の男がパニック状態になり、頭の中で葛藤(かっとう)していたから行動するまでに時間が掛かって遅れてしまったという事もある。

「お父さん、お母さん………どうしたの?」

 大型トラックとの正面衝突。運転手の(おこな)った飲酒運転の所為(せい)で、スピードの出し過ぎの所為で、優しく微笑み、明るい笑顔で話をしてくれていた両親は前の姿の面影(おもかげ)も無い。仕事でのストレスで酒を飲み過ぎた、くだらない理由で家族を失った。

 最後に両親を見たのは救急隊員が両親を車から引き()り降ろす時だった。

(まみ)れになり、肉塊(にくかい)と成り果てた姿を見せながら引き摺り降ろされていた。両親へ向かって言った言葉が、お父さん、お母さん、痛いよと一言だけ。

「偉いよな圭介は。毎朝こうやって遺影に挨拶してるんだから」
「………親だから、一応だよ。母さん達との思い出は覚えてないけど」

 気にしたってしょうがない、いないもんはいない。つまり、俺は強いってことだ。うん、関係無いね。

 そうか、と叔父は(つぶや)いて朝食の置いてあるテーブルへと向かう。ベーコンエッグと思われるモノと焼いた食パン。それと牛乳。朝食と言えるメニューが置かれていた。

「悪い、毎度ながら俺は猫型ロボットじゃないから優れたものは出せない」
「知ってる」
「酷いっ!」

 叔父えもんがポンコツなのは前から知ってる。

「ま、暗い話はぱーっと忘れて。食おうぜ」

 叔父は笑顔でケイスケをテーブルへと手招きする。

「だよなー……昔のことだし、覚えてねーし!」
「そうだそうだ、親なんて忘れちまえー!」

 それは酷すぎやしませんか?



『何でお父さんとお母さんを殺したの。お父さんとお母さんを返してよ!』

 とは言え────

 "昔の事だから"、素っ気無い一言で忘れられる筈がないんだ。脳裏(のうり)に焼き付いた両親の『肉片』、『血』、『前頭葉』、『頭蓋骨』、『肋骨』。

 普通の子供の人生では目にするモノではない人間の内側。事故から時間が経つにつれて、孤独でいる時間も増えては心の奥に閉じ籠っていった。

 知らない大人に、この子をどうすると勝手に話を進められ、色々なモノを失ったばかりの俺を施設へと預けようとしては知らない子供達と交流を図る。

 構わないで欲しい、誰とも話したくない───そんな時だった。

「俺がその子を引き取る」

 無気力に立っている自分に近寄って来た男は心なしか母さんに似ていた。

 幼い圭介の小さな手を引っ張り、何処かへと連れて行こうとするが、圭介は、また勝手に決め付けるんだと心の中で呟いて無理矢理その場に(とど)まった。

 いつものことだ。自分がこうやって動かないでいたり言うことを聞かないと相手は諦める。言うことの聞かない糞餓鬼と判断して。この男もそうだって思ってた。なのに、立ち留まって数秒、数分、数時間、と経っても居なくならない。

 気付けば頭に手を乗せて耳元で何かを(ささや)いている。

「俺はお前の母さんに似てるだろ?当たり前だよ、俺とお前の母さんは兄妹なんだから。お前は強いな、自分の親が亡くなっても泣かないんだね。………姉さんは返って来ない。お前の父さんも返って来ない。………姉さんそっくりだよ、そうやって泣かないようにしてる所。…………もう、寂しい思いをさせないから………おいで」



 男は俺の手を引いて連れて行く。留まろうとしていた自分の足は自分の意志で前へと、一歩一歩踏み出して行く。目からは暖かく透明な液体が溢れ出し、目の前が(かす)んで良く見えない。その所為で地面につまづくと男がおんぶをしてくれた。

 背中で泣いていた自分に絶えず話し掛けて来る。昔、母さんとよく喧嘩をしていた事。俺が生まれる前、父さんと釣り勝負をして負けた事。そして、俺が生まれた時の事を。

「叔父さん」
「なんだ?」
「いや……なんでもない」

 感動的なシーンだと言うのにアホ面をしながらコーヒーに角砂糖をぼとぼとと投下している姿を見ていると感謝の言葉を言う気が削がれてしまう。

 密かに心に隅で言っておこう、ありがとうって。

「あ、今日は何の日か分かってるか?」
「え?」

 今日は何の日だっけ…………建国記念日は一昨日(おととい)に迎えたばかりだけど………他に何かあったか?

「今日はお前の誕生日だよ」
「あ、本当だ。忘れてた」
「自分の誕生日くらい覚えてろよ………おめでとう。圭介」
「………ありがとう」
「勝手に応募したんだけど、これをお前に」

 なんだコレ……………あぁ、あれか『ナーヴギア』ってやつか。

 取り出して来たのはヘルメットのような物。ネット対応の物らしく、LANケーブルが差し込まれている。テレビで見た事がある。SAOと呼称されるゲームを作った茅場彰彦という開発者の代物なのだが、今までのゲームにはない仮想空間(VR)技術を使い、操作するキャラクター自体になれるという新感覚のコントローラー兼、ゲーム機。『ナーヴギア』と呼ばれ、叔父が俺に渡した物だ。

「βテスターってのに応募したらたまたま当選したっぽくってな。希少な物らしい。圭介、ネット得意だろ?」
「うん………ありがとう、叔父さん」 
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