英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第10話
~クロスベル市・旧市街~
「……………………………」
ワジ達が去った後、ロイドは真剣な表情で黙り込み
「………困った人たちね。それにどちらもかなり本気みたいだったわ。」
エリィは溜息を吐いた後真剣な表情で話し
「ああ、あの調子だと数日中にやり合うつもりだろ。血を見るぞ、あの様子じゃ。」
ランディはエリィの話を補足した。
「でも、課長からの任務は一応終えた形にはなりますし………これ以上は任務外なのでは?」
一方ティオはロイドに確認した。
「………いや。それじゃあ本当の意味で任務を終わらせた事にはならない。ここで放置したら………警察に対する市民の信頼はいつまでも回復できないだろう。」
「………まあ、確かに。」
「そうね………知ってしまった以上は何とかして止めるべきだわ。」
「でもよ、そいつは結構難しいんじゃないか?お互い仲良くしろなんて聞くような連中じゃないだろ。」
「そうだな………」
ランディの話を聞いたロイドは考え込み
「………本部に報告したところで頼りになるとは思えない。ここは自分達で何とかするしかなさそうだ。」
ある結論を推測した。
「あら………報告するだけしてみたら?もしかしたら旧市街の巡回を強化してくれるかもしれないわ。」
ロイドの推測を聞いたエリィは意外そうな表情をして提案した。
「いや………たぶん難しいだろう。あれだけ騒ぎを起こしているのに彼らは警察を気にもしてなかった。多分、この旧市街は意図的に放置されてるんじゃないかと思う。」
「あ………」
「確かにデータベースによれば、ここ最近、旧市街での巡回が大幅に減らされているようです。予算の削減が名目らしいですが………」
「フン、ビンゴって訳か。しかし……それなら尚更、打つ手ナシなんじゃねえか?いっそ俺達が両チームにケンカを売って言う事を聞かせちまうか?」
ロイドとティオの説明を聞いたランディは頷いた後提案し
(クク………それはいい考えだね!なんならあたいも一緒に大暴れしてやってもいいよ?)
ランディの提案を聞いたエルンストは好戦的な笑みを浮かべ
「あのな………――――待てよ。そういえば………どうしてあの2チームは”潰し合う”つもりなんだ?」
ロイドは呆れた後、ある事に気づいた。
「どうしてって………」
「そりゃ、縄張り争いだの、意地の張り合いってやつだろ?」
ロイドの疑問を聞いたエリィは不思議そうな表情をし、ランディは意外そうな表情で答えた。
「いや、それだけじゃ普通、本気の潰し合いにはならない。利害が絡んでいるならともかく街の不良同士のいざこざだ。どうして念入りに準備してまで徹底的に潰し合う必要がある?」
「「「!………………」」」
そしてロイドの疑問を聞いたエリィ達は考え込み
「………驚きました。」
「ええ、私も。」
「ふーん、なるほどねぇ。」
(フフ………)
ティオ達は感心した様子でロイドを見つめ、ルファディエルは微笑んでいた。
「な、なんだよ………そんなに変なこと言ったかな?」
「ううん、さすが捜査官の資格を持っているだけはあるなって。」
「いいとこ突いてると思うぜ。見た所、ヘッド同士がそこまで険悪な関係って雰囲気でもなかったしな。」
「………多分、理由があるのではないかと。当事者以外は知らない、本気で争うだけの理由が。」
「あ、ああ。まさに俺もそう思ったさ。だったら――――やるべきことは一つだろう?」
エリィ達の話に頷いたロイドはエリィ達を見回し
「だな。」
「『サーベルバイパー』に『テスタメンツ』………まずはどちらに話を聞きに行くべきかしら?」
ロイドの言葉にランディは頷き、エリィが提案したその時
「………だったら、『サーベルバイパー』の方は私が聞いておくわ。」
人間の姿のルファディエルがロイドの傍に現れた。
「ル、ルファ姉!?確かに分担して情報を集めるのは効率がいいけど………」
「さすがに女性一人で行くのは危険だと思いますし………」
「しかも向こうの方が凶暴ですよ?」
ルファディエルの提案を聞いたロイドは驚き、エリィとティオは心配した。
「あら。………まさか”あの程度”の連中にこの私が遅れをとるとでも?」
しかしルファディエルは笑顔で尋ね
「………!」
(うむ。確かにあの程度の者達にルファディエルが遅れをとるなどありえないな。)
「………まあ、ルファディエル姐さんの一昨日の魔法を考えれば奴らが纏めてかかってきても撃退できるッスね………」
ルファディエルの言葉からとてつもない強さを感じ取ったエリィは身をすくめ、ラグタスは頷き、ランディは苦笑しながら言った。
「ロイド、私の実力は貴方が一番わかっているでしょう?」
「それは……………」
そしてルファディエルに尋ねられたロイドは考え込み
「―――わかった。じゃあ、『サーベルバイパー』の方はルファ姉に頼むよ。………ただし、異種族の人達を誰か一人付けて聞きに行ってくれ。いくらルファ姉が強くても一人で行くのは危険すぎる。」
すぐに結論を出して提案した。
「フフ、わかったわ。じゃあ、エリィ。メヒーシャを少しの間だけ、貸してくれるかしら。」
「わかりました。――――メヒーシャ。」
ルファディエルの言葉に頷いたエリィはメヒーシャを召喚した。
「メヒーシャ、ルファディエルさんの護衛、よろしくね。」
「ああ。」
エリィの言葉にメヒーシャは静かに頷き
「メヒーシャ。鎧はまだ良いとして、せめて頭の輪と背中の翼は隠しておきなさい。でないと面倒事が増えるわ。」
「………わかりました。ルファディエル様がそうおっしゃるのなら、そうします。」
ルファディエルの指示に静かに頷き、天使の輪と背中の翼を消し、見た目は人間の姿になった。
「それじゃあ、ルファ姉。また後で。」
「ええ。」
そしてロイド達は『テスタメンツ』に話を聞きに行き、ルファディエルはメヒーシャを連れて『サーベルバイパー』に話を聞きに行った。
「だ、誰だ、お前達は!」
『サーベルバイパー』達が拠点にしている場所の門を守っている赤ジャージを着た少年は近づいてきたルファディエルとメヒーシャを見て2人を睨んだ。
「『特務支援課』の者よ。先程の闘争について聞きたい事があるから尋ねて来たの。貴方達のリーダー――――ヴァルドと会わせてくれないかしら?」
「なっ………なんで先輩達と戦った仲間のお前達をヴァルドさんに合わせなきゃならないんだよ!」
ルファディエルの言葉を聞いた少年は怒ったが
「――――ねえ。あなた、名前は?」
「オ、オレ?ディーノだけど。」
ルファディエルの質問に呆けた後答えた。
「そう、ディーノね。貴方はここで不審な人間を見張っているのかしら?」
「そ、そうさ!ヴァルドさんに頼まれてテスタメンツどもが入らないようここで見張りをしてるんだ!べ、別に先輩たちに押し付けられたんじゃないからな!」
「なるほど、見張りも立派な役目ね。でも、私達はテスタメンツの一員じゃないわ。だったら案内してくれてもいいんじゃないかしら?」
「だ、だけど………さっき先輩達と戦ってたし、そんな奴らを案内したら………」
ルファディエルの話を聞いた少年―――ディーノは戸惑っていたが
「ふふ、戦ったといっても、あのくらい貴方達にとったら挨拶みたいなものでしょう?貴方たちのリーダーだって気にしていないみたいだったし。それに私達は貴方の先輩達と戦っていないわ。」
「で、でも………」
「フウ………まだ信用できないというのなら――――」
答えを渋っている様子のディーノを見たルファディエルは溜息を吐いた後
「はい。――――私の銃を貴方に預けてもいいわ。できれば後でちゃんと返して欲しいけど。」
懐から銃を出して、ディーノに差し出した。
「………~~っ~~………!い、いいよ!そこまでしなくてもさ!ヴァルドさんに聞いてくる!絶対に入ってくんなよな!」
それを見たディーノは驚いた後、ルファディエル達を睨み、そして中へと入って行った。
「………さすがですね、ルファディエル様。」
「フフ、このぐらいの交渉事なんて大した事ないわ。」
ディーノが入るのを見守ったメヒーシャはルファディエルに視線を向け、視線を向けられたルファディエルは微笑んだ。するとその時、ディーノが中から出て来た。
「ヴァルドさんがお呼びだ!入ってもいいけど………変なことをしたらタダじゃ済まないからな!」
「ふふ、ありがとう。」
そしてディーノの言葉に微笑んだルファディエルはメヒーシャと一緒に中に入って行った。
~ライブハウス・『イグニス』~
ルファディエル達が中に入ると広間中、大きな音を立てる音楽が流れていた。
「………耳障りな音ですね。」
「確かこういう所は………『ライブハウス』………だったかしら。」
広間中に流れる音楽を聞いたメヒーシャは顔をしかめ、ルファディエルは静かに呟いた。
「クク、待ってたぜ。」
その時ヴァルドの声が聞こえ
「ちっ………新手の奴等か。」
「しかも女ばかりじゃねえか。」
「ハッ、わざわざフクロにされに来やがったのか………?」
『サーベルバイパー』の青年達に睨まれている中、ルファディエルとメヒーシャは堂々と歩いて行き、木箱に座っているヴァルドの正面に来た。
「どうやらさっきの奴等の仲間みてぇだが………何をしに来た?」
「貴方達が潰し合う理由を知りに来た………それだけよ。」
「クク………俺達を逮捕すれば簡単にすめばいいだけの話なのに面倒な事を………―――なあ、警察の女。仮にお前らの知りたい情報を俺達が持っているとして………それを渡す見返りにお前達は何をくれるんだ?」
ルファディエルの話を聞いたヴァルドは不敵な笑みを浮かべた後、ルファディエル達を睨んで尋ねた。
「………あのワジという少年はともかく貴方の方は『真実』のみでは納得しないと思っていたわ。―――大方、ただ単に暴れられればそれでいい………でしょう?」
「クク、話が早いじゃねえか。そうさ……俺はとにかく暴れらればそれでいい。この血のたぎりをスカッとさせてくれるんなら何だって構わねぇんだ!!」
ルファディエルの言葉に好戦的な笑みを浮かべて頷いたヴァルドが立ち上がると、『サーベルバイパー』の青年達は武器を構え
「フン………」
(予想通り………)
それを見たメヒーシャは不愉快そうな表情をした後斧槍を構え、ルファディエルは静かな表情でヴァルド達を見回した。
「俺達全員相手に勝てりゃあ何だって話してやるよ。クク、悪い取引じゃねえだろ?」
「フフ………ロイドなら反対するでしょうけど生憎私はそこまで甘くないし、警察は私を手放したくないようだから、ここで貴方達と戦った所で今後の事に支障はでないわ。―――遠慮なくかかってきなさい。”格”の違いを見せてあげるわ。」
ヴァルドの提案を聞いたルファディエルは不敵な笑みを浮かべた後、杖を構えた!
「クク………ハハハハハハッ!!」
一方ヴァルドは好戦的な笑みを浮かべて大声で笑い、そして近くにあったドラム缶を片手に持った武器――――鎖を巻いた木刀を振るって吹っ飛ばした!
「まさか女2人でこの俺様達にそんな無謀な事をするとはな………いいだろう、女!サーベルバイパーのヘッド、ヴァルド・ヴァレスの鬼砕きとサーベルバイパーの力………とくと思い知れ!」
そしてルファディエルとメヒーシャはヴァルド達との戦闘を開始した……!
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