英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第9話
~ジオフロントA区画・最深部~
「……あいつじゃねえか?」
『手配魔獣』を捜してジオフロント内を探索をしていたランディは少し先にいる一際大きい魔獣を見て、ロイドに確認し
「………特徴通りだ。よし―――それじゃあ、退治するぞ!」
確認されたロイドは頷いた後号令をかけ
「ええ!」
「はい!」
「うッス!」
エリィ達は力強く頷いた後、戦闘を開始した!
「エリィとランディはまず、取り巻きの魔獣達を片付けてくれ!ティオは後方から俺のサポートを頼む!」
「わかったわ!
「おう!」
「わかりました!」
戦闘を開始したロイドはエリィ達に指示をし、エリィとティオは魔術の詠唱を開始し、ロイドは手配魔獣に、ランディは取り巻きの魔獣たちに向かった!
「「「「キィッ!!」」」」
取り巻きの蝙蝠の姿をした魔獣達は自分達に向かって来たランディに体当たりを仕掛けて来たが
「はぁぁぁぁ………喰らいなっ!!」
「「「「!?」」」」
ランディが放ったクラフト―――パワースマッシュによって吹っ飛ばされると共に怯んだ!
「風よ、切り裂け!旋刃!!」
そこに詠唱を終えたエリィが放った魔術が命中し、数体の魔獣達はダメージを受け
「そこだっ!!」
そこにすかさずランディが龍の如き姿を伴う、炎の衝撃波を放つクラフト――――サラマンダーを放って、止めを刺した!しかしその時、残りの魔獣達の一体がランディを襲い、もう一体がエリィに向かった!
「キィッ!」
「チッ!お嬢、そっちに一体行ったぞ!」
魔獣の噛み付き攻撃を回避したランディはエリィに警告し
「わかったわ!」
警告に頷いたエリィは銃を腰に付けているホルダーに収めた後、鞘から細剣を抜いて構え
「キィッ!」
「ハッ!」
魔獣の噛み付き攻撃を軽やかに回避し
「そこっ!!」
反撃にリウイとプリネ直伝の剣技――――フェヒテンバルを放って、敵の片翼を破壊した!
「キィッ!?」
片翼を破壊された魔獣は驚き、不安定な飛行をし始めた。
「………………」
その時、エリィは細剣を見つめて集中した。すると細剣にほとばしる雷が宿り、エリィは雷が宿った細剣で強烈な突きを放った!
「ラインバル!!」
「キッ!?…………」
雷を宿したフェヒテンバルを放ち、範囲内を攻撃する魔法剣技――――ラインバルを受けた敵は消滅した!
「キィッ!」
一方ランディに襲い掛かった魔獣は再び体当たりを仕掛けたが
「っと!」
ランディは身体を少しだけ横に傾けて回避し
「甘いっての!」
「キッ!?………」
反撃に跳躍してスタンハルバードを叩き付け、その際に発生した衝撃で気絶させる警備隊仕込みのクラフト――――大切斬で敵を真っ二つにして消滅させた!
「とうっ、やっ、はっ!!」
手配魔獣に向かったロイドはトンファーで連続攻撃を仕掛けてダメージを与え
「……………」
攻撃をされた手配魔獣は勢いを付けてロイドに噛み付こうとした!
「!!」
敵の行動を見たロイドは防御態勢を取り
「えい!守護の霧!!エニグマ駆動………」
詠唱を終えたティオは仲間達全員に絶対防壁と幻影を付加させる魔術を放って、絶対防壁と幻影を付与させ、さらにオーブメントを駆動させた!
「………!」
そこに手配魔獣がロイドに噛み付いてきたが、絶対防壁に阻まれロイドはダメージを受けなかった!
「炎よ………彼の者に猛き力を!フォルテ!!」
そしてオーブメントの駆動を終えたティオはアーツでロイドの攻撃力を上げ
「さぁ、行くぞ!だぁあああっ!」
ティオのアーツによって攻撃力が上がったロイドは敵にトンファーで怒涛のラッシュを放ち
「タイガー………チャージ!!」
最後の一撃に虎の頭を形どった衝撃波を纏って突撃した!
「!?」
怒涛の連続攻撃で敵を圧倒する、猛虎の如き突撃技にしてロイドのSクラフト―――タイガーチャージを受けた敵は大ダメージを受け、怯んだが
「………………」
すぐに立て直して、見た目が重そうな体ながら大きく上へと跳躍した!
「隙あり!シュート!!」
「そこだっ!!」
そこに取り巻きの魔獣達との戦闘を終えたエリィとランディが空中にいる敵にそれぞれ遠距離攻撃を放ち
「出でよ、烈輝の陣!イオ=ルーン!!」
魔術の詠唱を終えたティオが敵が落下して来る真下で純粋の爆発を起こし、爆発によって発生した爆風で敵を宙に打ち上げた!それを見たロイドは武器をトンファーから双聖銃に持ち替え
「これで終わりだっ!派手に踊れっ!アンスタンヴァルス!!」
2丁の銃から怒涛の銃撃を放った後、最後は同時に銃弾を放った!ロイドが放った反撃の暇も与えない怒涛の銃撃で敵を制圧するSクラフト――――アンスタンヴァルスを受けた敵は身体中が銃弾によって穴だらけになり、最後の攻撃を受けると空中で消滅した!
「よし、何とかなったか。」
「ま、エルンスト達と一緒に倒したのよりは格下だったけどな。」
「ふふ、でも4人で協力すればある程度は何となりそうね。」
「………ですね。先程、奥のゲートのロックを解除しておきました。地上に戻る近道があるのでそちらのルートを使いましょう。」
「あ、ああ。(って、いつの間に?)」
その後ロイド達はジオフロントを出た。ジオフロントを出るとロイドのエニグマが鳴りはじめ、通信のボタンを押したロイドはエニグマを耳に当てて通信を始めた。
「はい、特務支援課、ロイド・バニングスです。」
「おー、俺だ。調子の方はどうだ?」
「セルゲイ課長。えっと、ちょうど今、手配されていた魔獣を倒した所です。」
「順調で結構、結構。今、どこにいる?」
「えっと………ジオフロントを出た所ですが。」
「ふむ、まあそんなに遠いわけじゃないな。」
「へ………」
「―――お前達に緊急の捜査任務を与える。支援要請は後回しでいいから最優先で対応してくれ。」
「―――了解です!それで………一体、何を捜査すれば!?」
「南東エリアにある旧市街………急いでそちらへ向かえ。住民から警察に連絡があった。厄介な2組の不良軍団が喧嘩を始めようとしてるらしい。」
「え――――」
「後腐れがないように止めてこい。―――以上だ。」
「ま、待ってください!喧嘩を止めろって………それって捜査任務じゃ―――」
セルゲイの指示を聞いたロイドは反論したが
「―――ってもう切れてるし!」
既に通信は切れていた。
「課長から?いったい何だったの?」
「その調子だとロクでもない話っぽそうだな?」
ロイドの様子を見たエリィとランディはそれぞれ尋ね
「いや、それがさ………」
尋ねられたロイドはセルゲイから伝えられた任務内容をかいつまんで説明した。
「旧市街の不良集団………」
「さっき旧市街で見たあの物騒なガキどもか。」
「データベースによると………たしか『サーベルバイパー』と『テスタメンツ』という2チームが旧市街で徒党を組んでるらしいです。喧嘩などは日常茶飯事だとか。」
説明を聞いたエリィとランディは表情を険しくし、ティオは情報を提示した。
「俺達が街を離れている間にそんな連中が出てきてたのか………―――まあいい、とにかく急いで旧市街に行ってみよう。小競り合いが始まる前に何とか止める必要がありそうだ。」
「ええ、そうね。」
「そんじゃ、とっとと旧市街に向かうとするかね。」
その後ロイド達は旧市街に向かった。
~クロスベル市・旧市街~
「あれは………!」
「おーおー。一触即発みたいだな。」
旧市街に到着したロイドとランディは集団で睨みあっている青年達を見つめた。
「おうおう、青坊主ども………あんまり調子コイてるとマジでブチ殺すぞ………?」
「ヒャハ、とっくにネタは上がってんだよォ!テメエらがクソ汚い真似をしたってよォ!」
赤ジャージの青年達は青い装束を着た青年達を睨み
「フン………これだから低脳な連中は。君達ごときチンピラに卑怯な真似をするまでもない。」
睨まれた青装束の青年の一人は嘲笑し
「そ、そちらこそよくも仲間を病院送りにしてくれたな………目には目を、歯には歯を………か、覚悟してもらうぞ………」
同じく青装束の青年の一人は赤ジャージの青年達を睨んだ。
「上等だよ、この青坊主ども!ヴァルドさんが出るまでもねぇ!」
一方赤ジャージの青年達はそれぞれ武器を構え出し
「こちらこそワジの手を煩わせるまでもない………総員、聖戦の準備!バイパーどもを殲滅する!」
対する青い装束を着た青年達も武器を構えた!
「―――待った!」
そこに2組が開始しようとした戦闘を制する声が聞こえ、声に気づいた青年達が視線を向けるとロイド達が走って近づいてきた。
「なんだァ………?」
「見かけない顔だな………」
「双方、喧嘩を中止してくれ!ここは公共の場だ!他の住民が迷惑している!」
2組の集団から睨まれたロイドは忠告し
「ハァ………?」
「な、何だお前………いきなり現れて口出しを………」
忠告を聞いた集団達はロイド達を睨んだ。
(まあ、普通そうだわな。)
(どうするの………?)
集団の様子を見たランディは頷き、エリィはロイドに判断を促し
「(ああ………)クロスベル警察、特務支援課の者だ。付近住民の要請により君達の喧嘩を止めに来た。」
エリィの言葉にロイドは頷いた後、捜査手帳を集団達に見せて名乗った。
「ハアアアッ、警察だァ!?」
「ひゃはははは!フカシこいてんじゃねーぞ!」
「殆んど警官も寄り付かないのにそ、そんなわけあるか……」
「まったく………つくならもっとマシな嘘をつきたまえ。」
しかし青年達は捜査手帳を見せても信じていなかった。
「………と、とにかく!君達がしている喧嘩は他の住民にとって迷惑なんだ!」
「そんなに喧嘩がしたけりゃ街の外でやってきたらどうだ?いい運動になるだろうぜ。」
「ハッ、上等だ……この旧市街で俺達にそんな口が利けるとはなァ………」
「旧市街には旧市街のルールがある。興味本位で口を出すつもりなら痛い目にあってもらおうか。」
ロイドとランディの話を聞いた2組の集団は嘲笑した後、それぞれ武器を構えてロイド達を睨んだ。
「くっ………」
「ダメだな、これは。」
「………結局、こうなるわけですか。」
「ふう………仕方ないわね。」
(クク………そうさ。こういう奴らはてっとりばやくぶちのめしてからいう事を効かすのが一番だよ!)
一方ロイド達は説得を諦めた後武器を構え、エルンストは不敵な笑みを浮かべていた。
「なんだなんだ、よく見たら可愛い子ちゃんたちと一緒かよ。彼女にカッコいいところを見せてやろうってつもりかァ?」
「なあなあ、そんな連中放って俺達とデートでもしねぇ~?」
そしてロイド達の中にいるエリィとティオを見た赤ジャージの青年達は嘲笑したり、ナンパをし
「阿呆だな、君達は………ナンパなんかしてる場合か。」
「じゃ、邪魔者を追っ払ったら改めて戦闘を開始する………い、いいな、赤マムシども………」
赤ジャージの青年達の行動を見た青装束青年の一人は呆れ、一人は提案し
「おお、上等だよ!そんじゃサクッとボコボコにすっかなァ~!!」
青装束の青年の提案に頷いた赤ジャージの青年は仲間の一人と共にロイド達に襲い掛かってきた。青年の集団と戦闘を開始したロイド達はそれぞれ連携をして、襲い掛かって来た青年達を戦闘不能にした。
「こ、こいつら………ただの素人じゃない………?」
「お、女どもも………ただの連れかと思ったが………」
「あの杖はなんだ………?………ビリビリきたぞ………」
「クソが………!やっぱ遊撃士じゃねえか!?」
戦闘が終了し、ロイド達によって叩き伏せられた青年達は驚きの表情でロイド達を見つめ
「いや、だからさっきから警察だって言ってるし………」
「ふう………よっぽど信用ないのね。」
「まあ、警察の格好で通用するのは人間の姿のルファディエルさんぐらいですし………」
青年達の言葉を聞いたロイドとエリィは溜息を吐き、ティオはジト目で呟いた。
「チッ、上等だ………こうなったら全員でブチのめしてやらぁ………!」
「我々も遅れをとるな………!たとえ相手が遊撃士でもテスタメンツの誇りを見せろ!」
一方地面に膝をついた青年達はそれぞれ立ち上がって再び武器を構え
「くっ………」
それを見たロイドが身構えたその時
「おいおい………何やってやがる。」
「その辺にしときなよ。」
獰猛そうな青年が赤ジャージの青年達の背後から、禿の大男を連れた涼しげな少年が青装束の青年の背後から現れた。
「ヴァ、ヴァルドさん………」
「ワジ………来てたのか。」
(………もしかして。)
(両チームの頭のお出ましのようだな………)
青年達の反応を見たロイドとランディはそれぞれ新たに現れた青年達を見つめた。
「クク、人が昼寝をしてる間に楽しそうな事をしてるじゃねえか。なあ、お前ら………こいつは一体どういうつもりだ?」
「いや………へへ、なんと言いますか。青坊主どもにお仕置きをしようとしたらこの変な連中がですね………」
獰猛そうな青年に尋ねられた赤ジャージの青年の一人が笑いながら答えようとしたその時、獰猛そうな青年は理由を話し始めた青年の首筋を掴んで、宙に上げた。
「ひっ………!」
「………タコが。先走るなって言ったろうが?てめえら前座がしゃしゃり出て俺様の顔を潰すつもりかよ………?」
「め、め、滅相もない!ヴァルドさんの顔を潰すなんてそんな事はこれっぽっちも………!」
獰猛そうな青年―――ヴァルドに睨まれた青年は慌てた様子で言い訳をした。
「フン………」
言い訳を聞いたヴァルドは青年を宙に上げていた青年を地面におろし
「ゴホッ、ゴホッ………」
地面におろされた青年は咳き込んでいた。
「君達も………一体どういうつもりかな?僕の言ったことが聞けないっていうわけ?」
一方涼しげな青年は青装束の青年達を見つめて尋ね
「だが、ワジ………」
「こ、こいつらが絡んでくるから、つい………」
尋ねられた青年達はそれぞれ言い訳をしようとしたが
「言い訳はいい。俺達はワジの手足。余計な気を回す必要はない。」
「………わかった………」
「も、猛省する………」
禿の大男の言葉にそれぞれ頷いて、言い訳を止めた。
「ま、わかってくれればそれでいいけどね。」
その様子を見た涼しげな少年は頷いた。
「クク………相変わらず気色の悪い連中だぜ。舎弟にそんな格好をさせて………どこぞの宗教家気取りかよ?」
「フフ、別に僕がその格好を強制してるわけじゃないけどね。そっちの方こそ、手下に当たり散らしてばかりだとお山の大将が知れるってもんだよ?」
「ククク………」
「フフフ………」
そしてヴァルドと涼しげな少年はそれぞれ不敵な笑みを浮かべて互いの顔を睨みあっていた。
(な、なんだ………?)
(どういう関係なのかしら………)
2人の様子を見たロイドは戸惑い、エリィは真剣な表情で考え込み
(クク………なるほどね。奴らはあたいとラグタスの同類って訳か。)
エルンストは不敵な笑みを浮かべていた。
「―――まあ、それはともかく。君達、警察の人って本当?フフ………とてもそうは見えないけど。」
そしてヴァルドと睨みあうのを止めた少年はロイド達に視線を向けて尋ね
「フン、そこそこやりそうだがな。特にそこの赤毛………いいガタイしてんじゃねえか。後そこのチビガキ………見た目の割にはテメエらの中では一番実力があるんじゃねえか?」
ヴァルドは好戦的な笑みを浮かべてランディとティオに視線を向けた。
「そりゃどうも………アンタほどじゃないけどな。」
「……………ただの気のせいじゃないですか?(”影の国”の経験があるから、少なくともロイドさん達よりは戦闘経験があるのは本当ですけどね………)」
(まあ、あの男のいう事は間違ってはいないな。”影の国”で悪魔達と戦い続けたティオの経験から考えると他の者達と比べ、圧倒的に実力はある。……実際、悪魔達との戦闘を経験し、探索によってついた体力、そしてさまざまな猛者達の動きを見た事のあるティオの今の実力なら、ここにいる者達全員を叩き伏せることも可能だな。)
ヴァルドに視線を向けられたランディは嫌そうな表情で呟き、ティオはジト目でヴァルドを見つめ、ラグタスは静かな様子で頷いて呟き
(ラグタス、さすがにそれは評価し過ぎです。…………まあ、魔術の詠唱の時間稼ぎをしてくれる前衛がいれば、あの人達全員を戦闘不能に持ち込むこと事態は可能ですけどね。)
ラグタスの念話を聞いたティオは念話で返事をした後、ヴァルド達を見回して戦力を分析した。
「まあ、そっちの姉ちゃんはとても警察には見えねぇけどなァ。クク………なかなかの上玉じゃねえか?」
(フン、下種が………)
「………それはどうも。」
そしてヴァルドに視線を向けられたエリィは不愉快そうな様子を纏わせ、メヒーシャは鼻を鳴らした後ヴァルドを睨んでいた。
「………新人だけど一応全員、警察の人間だ。『特務支援課』………発足されたばかりの新部署に所属している。」
「へえ、今日出たクロスベルタイムズに載っていたアレか。」
一方ロイドの話を聞いた少年は意外そうな表情をしてロイド達を見つめ
「うっ………」
「さすがクロスベルタイムズ………早速広まったみたいね。」
見つめられたロイドは図星を突かれた表情になり、エリィは疲れた表情で溜息を吐いた。
「なんだァ?コイツら何かやったのか?」
少年の言葉を聞いたヴァルドは意外そうな表情をして尋ね
「ああ、ギルドの噛ませ犬として大活躍だったみたいだよ。いや、ゴメンゴメン。一応少しは役立ったんだっけ?」
尋ねられた少年は口元に笑みを浮かべながらロイド達を見つめ
「ぐっ………」
見つめられたロイドは悔しそうな表情で唸った。
「フフ、イジめるのはこのくらいにしておいて………―――僕はワジ。ワジ・ヘミスフィア。一応、『テスタメンツ』の頭をしてるみたいだよ?」
「………なぜ疑問形を使う?」
少年―――ワジの名乗りを聞いた禿の大男はワジに尋ね
「だって君の方がいかにもヘッドじゃないか。フフ、禿頭だけにヘッドが光ってるしね。」
「……………………」
尋ねた際に答えたワジの言葉を聞き、黙り込んだ。
「フン………戯言はそこまでだ。―――ヴァルド。ヴァルド・ヴァレスだ。『サーベルバイパー』の頭をやってる。」
「ワジにヴァルドか………改めて――――クロスベル警察・特務支援課のロイド・バニングスだ。2人とも、どうやらこれ以上事を構えるつもりはなさそうだし………ここは任せてもいいのかな?」
ワジとヴァルドの名乗りを聞いたロイドは自己紹介をした後、2人にそれぞれ視線を向けて尋ねたが
「ククク………」
「フフフ………」
2人はそれぞれ不敵な笑みを浮かべ
「ハハハハハハハッ!」
「あははははははっ!」
それぞれ大声で笑った!
(かかかっ!それは甘い考えってもんよ、ロイド!)
2人の様子を見たギレゼルは笑いながらロイドに念話に送り
「(!?どういう事だ、ギレゼル。)な、何がおかしい?」
ギレゼルの念話で2人の様子に驚いたロイドは尋ねた。
「いやいや、おめでたいなーと思ってさ。」
「事を構えるつもりがない?クク………なに寝ぼけた事を言ってんだ?」
(奴等はある意味俺達悪魔達とルファディエル達天使達の関係………本来なら相容れない関係だ。そんな奴らが簡単に引くわけねーだろ?)
そしてワジ、ヴァルド、ギレゼルはそれぞれ答えた。
「この場で手を引くのは単に準備が済んでいないから………―――準備が終わりしだい、徹底的にやり合うつもりだよ。」
「それも今までみたいなセコイ小競り合いじゃねえ………どちらが生き残るか、お互い潰し合うつもりでなァ!」
「なっ!?」
「おいおい………殺し合いでもするつもりかよ?」
(ハッ!殺しを経験した事がないガキどもが果たしてどこまで本気になれるかねぇ。)
ワジとヴァルドの説明を聞いたロイドは驚き、ランディは目を細め、エルンストは嘲笑した。
「クク、そうなっても不思議じゃねえだろうなァ。ま、どちらが血ヘドを吐くかは分かりきってるけどよォ………?」
そしてヴァルドは好戦的な笑みを浮かべてワジを見つめ
「フフ………言ってなよ。まあ、どっちにしてもお呼びじゃないってことさ。腰抜けの警察の犬――――まして君達みたいな若造はね。」
見つめられたワジは不敵な笑みを浮かべた後、ロイド達に視線を向けて嘲笑し
「っ………!」
ワジの言葉を聞いたロイドはワジを睨んだ。
「クク………行くぞ、てめえら!」
「オ、オッス!」
「フフ………こちらも引き上げるよ。」
「………了解だ。」
そしてヴァルドとワジの号令の元、『サーベルバイパー』、『テスタメンツ』共にロイド達から去って行った…………
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