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バレンタイン爆弾

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3部分:第三章


第三章

 陽気に笑ってだ。そして言ったのだった。
「二月十四日ね」
「うん、その日に」
「楽しみにしておいてね」
「味は」
 またこう言う宇大だった。しかしだ。
 彼はそのチョコレートのデザインには心から、今の時点で既に憂いていた。それでだった。
 こうだ。また友人達に言ったのである。
「運命の日だけれどな」
「ああ、バレンタインデーな」
「そのチョコレートの日な」
「一応和風になった」
 それはだ。そう決まった。しかしだった。
 宇大はその和風からだ。こう友人達に言うのだ。この日も講義の前に教室で話している。
「けれどその和風な」
「和風なあ。日本のチョコレートな」
「けれど作るのは紗江ちゃんだからな」
「一体どうなるか」
「それが問題だよな」
「正直想像できないんだよ」
 深い憂いでだ。彼は言った。
「どんなチョコレートが来るかな」
「抹茶を使ったチョコじゃないのか?」
 友人の一人がオーソドックスに言ってきた。
「そういうのじゃないのか?」
「いや、そんな普通のじゃないだろ」
「外見の問題か」
「シュモクザメにハートの胸像だぞ」
 その有り得ないチョコの他にだった。
「その前も壮絶でな。蜘蛛とかゼータガンダムとかな」
「付き合ってから毎年だったんだな」
「そんなのばかりだったんだな」
「そうだよ。だから今年だってな」
 悪い意味で期待できるというのだ。
「和風で何が出てくるかだよ」
「刀とかじゃないのか?」
 一人がやけに物騒なものを出してきた。
「それじゃないのか?」
「刀か」
「そうだよ。刀だよ」
「日本刀のチョコレートか。普通に有り得るな」
「まあ普通はそんなチョコ作らないけれどな」
 ましてや女の子ならばだ。しかし相手は紗江だ。
 だからこそだ。宇大は真剣に憂える顔で言うのだった。
「けれどなあ。果たしてどうなるか」
「まあ。恐ろしいのが来るな」
「それは間違いないな」
「けれど味はいいんだからな」
 それならばだと言ってだ。彼等は宇大に告げた。
「しかもあんな可愛い娘から手作りだぞ」
「じゃあ満足しろ」
「充分過ぎるだろ」
「それはそうだけれどな」
 このことは言われると辛いところだ。しかしだった。
 彼はそれでもだった。憂いを消せずに言った。
「しかし。運命の日はな」
「怖いんだな」
「その日が来るのが」
「ハートなんか食えるか」
 北斗の悪役、それをだというのだ。
「有り得ないだろ、本当に」
「それに蜘蛛にゼータガンダムか」
「ある意味凄いな」
「シュモクザメだぞシュモクザメ」
 人食い鮫もいた。しっかりと。
「今度は何かって思うとな」
「殆どホラーだな」
「ホラーバレンタインかよ」
「ああ、そんな感じだよ」
 こう言ってだった。宇大はだ。
 バレンタインが来ることを心底怯えていた。そうしてだ。
 
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