真田十勇士
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巻ノ四十五 故郷に戻りその八
「御主達も妻を迎える」
「だからですな」
「我等はこの屋敷から出て」
「それぞれの家を構え」
「そこに住むのですな」
「そうすることになる」
これまでとは違いというのだ。
「御主達もな」
「ですか、では」
「これまでは共に寝起きしていましたが」
「この屋敷で」
「それが変わるのですな」
「そうなる、しかし御主達の家はな」
建てられるそれ等はというと。
「この屋敷のすぐ傍じゃ」
「十人共ですな」
「我等皆ですな」
「結婚して妻を迎えても殿のお傍にですな」
「いられるのですな」
「父上もそう申されておる」
真田家の主である昌幸もというのだ。
「その様にな」
「ではこれからもですな」
「毎日ですな」
「我等はですな」
「結婚しても殿のお傍にですな」
「いつもいられますな」
「それぞれの家にいる時以外はな」
まさにそうした時以外はというのだ。
「我等はこれまで通り共におる」
「そして生きる時も死ぬ時も」
「同じ」
「そのことは変わりませぬな」
「誓いは守られる」
例え何があろうとも、というのだ。
「安心せよ」
「では」
「それではですな」
「妻を迎えて家を持っても」
「変わりませぬな」
「そういうことじゃ、安心していようぞ」
「あの、源四郎様」
ここでだ、幸村にだった。真田家の若い武士が言って来た。
「お聞きしたいことがありますが」
「何じゃ?」
「はい、源四郎様は源次郎様とも言われていますが」
「うむ、そちらが正しい」
「しかしです」
「拙者の名がそう呼ばれることはじゃな」
「どうしてでしょうか」
こう幸村に問うのだった。
「それは」
「当家では名は兄弟の順序とは限らぬな」
「はい、何かと」
「それで兄上とそれがしでもな」
「三と二ですね」
信之は源三郎、幸村が源次郎である。
「それがですね」
「うむ、しかしな」
「それが、ですか」
「自然とじゃ」
「源四郎様とですか」
「呼ばれる様になったのじゃ」
「そうでしたか」
若い武士もこれで納得した。
「何故か」
「誰が最初にそう呼んだかは」
「わかりませぬか」
「四郎様やもな」
武田家、真田家が仕えていた家の主の彼ではというのだ。
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