英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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終章~いつか、辿り着く場所~ 第110話
その後無事庭園に戻ったケビン達はエステル達に全ての事情を説明した。
~隠者の庭園~
「―――以上が、この事件の大まかな全貌です。」
「………………………」
ケビンとリースから”影の国”や何故、自分達が取り込まれたかを聞いたエステル達は黙ってケビン達を見つめた。
「はっきり言って………全てはオレが元凶ですわ。皆さんはそれに巻き込まれただけにすぎません。………申し訳ない。お詫びのしようもないですわ。」
事情を全て話し終えたケビンは目を伏せた。
「え、えっと………正直、ケビンさんがなんでそこまで恐縮するのかあたしにはわからないんだけど………」
「へ………」
しかしエステルの話を聞き、目を見開いて呆けた声を出した。
「話を聞く限り、”環”を失った”影の国”が『主』を求めるのは必然………ならば、君がいようがいまいがそれに相当する事件は必ずや起こったに違いない。」
「フッ、確かにね。おそらく他の誰かが選ばれてその人物のトラウマを反映した”影の国”が誕生しただけさ。」
そしてミュラーとオリビエが説明をし
「………お前が選ばれた時のことを考えると正直、ゾッとしないがな。それだけでも僥倖というものだ。」
「失礼な………少しは信用してくれたまえ。せいぜいここにいるみんなで酒池肉林のパーティーでも繰り広げる世界になったくらいさ。」
「フッ。それは少し興味深いな……」
いつもの調子で会話を始め、ヴァイスと共にその場にいる全員を脱力させた。
「……………………」
「ヴァイス様………こんな時に悪い癖を出さないで下さい………」
「ふ、ふぇえ………」
「………………最低です。」
オリビエの言葉を聞いたミュラーは顔に青筋を立てて黙り込み、リセルは呆れた様子で溜息を吐き、ティータは不安そうな表情で呟き、ティオは蔑むような視線でオリビエ達を見つめ
「こいつらは……」
「あ、あんたねぇ………というかヴァイスさんもオリビエと同類だったなんてショック………」
「少し見直したと思ったらこれか………」
「もし、そんな事になったら絶対殺す!」
アガットとエステル、リフィアは呆れた様子で、エヴリーヌは殺気を纏ってオリビエ達を睨み
「じょ、冗談じゃないよ!」
「全くじゃ!」
「??シュリ姉様~!”酒池肉林”って何ですか~?」
「サリアは知らなくていい事よ!」
ジョゼットとレシェンテは怒りの表情でオリビエ達を睨み、シュリはサリアが尋ねた言葉に慌て
「とんでもない皇子ね………」
「ふう………シャレになってないわね。」
「………ねえ、レーヴェ。本当にハーメルを守っていた国の皇族なのよね、あの方。」
「言うな、カリン……頭が痛くなってくる…………」
マリーニャとシェラザード、プリネ、レーヴェは呆れて溜息を吐いた。
「え、えっと……そう言う問題なんですかね?」
仲間達の様子を見たケビンは戸惑った様子で尋ね
「ま、別にお兄さんのことかばうわけじゃないけど………ある意味、”影の国”に選ばれたのがお兄さんだったのは幸いだったかもしれないわね。」
「へ………」
「それは一体………!?」
レンの言葉に驚き、リースと共にレンに視線を向けた。
「お兄さんの”聖痕”はかなりの支配力を持っているわ。”影の国”が曲りなりにも秩序を保っているくらいにはね。でも、果たしてそれが他の人のトラウマだったりしたらその秩序は保てたかしら?」
「あ………」
そしてレンの推測を聞いたケビンは呆けた声を出し
「混沌を制御しきれずに”影の国”が暴走していた………その可能性もあったわけだね。」
ヨシュアが続きを答え、レンに視線を向けた。
「うふふ、さすが話が早いわね。その場合、もっと沢山の人が取り込まれてた可能性もあるわ。ま、それはそれで楽しいお茶会になりそうだけど♪」
「レ、レンちゃん………」
「さすがにそれは勘弁してほしいよ………」
「全くよ………カーリアン一人いるだけでも我慢しているというのに………」
「なんですって~!?それはこっちの台詞よ!」
「あら。それはいい考えだね♪」
「沢山の人達と………もっと………仲良く…………楽しい………」
レンの話を聞いたミントとツーヤは苦笑しファーミシルスは不愉快そうな表情で頷き、カーリアンはファーミシルスを睨み、リタとナベリウスは微笑んだ。
「はは……ま、そういう意味でも気に病む必要はないだろうさ。」
「立場も違えば生き様も違う………だが、この場にあって我々はすでに運命共同体だ。」
「そうそう。困った時はお互いさまですよ。」
「僕達は君の仲間だしね!」
「仲間の悩みは僕達の悩みでもあるんですから。」
「みんな一緒に頑張るの!」
「それに”輝く環”に関してはリベール王国の問題でもあります。むしろケビンさんの方が巻き込まれた側かもしれません。」
「そういう意味でも、ケビン殿。これまで通り是非とも我々を導いて欲しい。半年前のあの事件を本当の意味で解決するためにも。」
「そうね。”影の国”にとって重要な貴方が私達にとって鍵となる人物よ。」
ジン、リシャール、アネラス、アドル、ナユタ、ノイ、クローゼ、ユリア、エリザスレインはそれぞれケビンを見つめてケビンに非がない事を伝えたり、ケビンに微笑んだ。
「それに…………この”影の国”に取り込まれて救われた人達もいます。私もその中の一人。」
「ええ……そのお蔭で私達もようやく共に笑い合える事ができるのですから………」
「はい………多くの仲間ができ……娘とも和解でき………過去の因縁も断ち切り………そして愛する人もできた………こんなにも幸せな気持ちになったのは生まれて初めてです。」
「ああ……もし取り込まれていなかったら………今こうして全ての記憶を思い出し、サティアと出会う事もなかったしな………」
「ええ………感謝をしたいのは私達の方………こんなにも多くの人達から暖かい気持ちで接してもらったのは初めてよ………」
(フッ………我としてはこれほどの血がたぎる戦いを幾度も経験させてくれた事に礼をしたいぐらいだの。)
一方エクリア、イリーナ、シルフィエッタ、セリカ、サティア、ハイシェラはそれぞれ微笑み
「私も今ではこの”影の国”に感謝しています………今回の事件のお蔭で愛する人と同じ時を歩めるようになったのですから………」
「ああ。ずっとユイドラをもっと良い街にする事ができるようになって、本当に感謝しているよ………それに娘達の成長もずっと見守れるしね……」
「私もずっと好きな人と再会できましたから本当に感謝しています。……それに兄さんともちゃんとしたお別れができましたし………」
「私はもう会えないと思っていたアドルさんとまた会えた事もとても嬉しかったですし………こんなにも多くの方達と仲良くなれるなんて夢にも思いませんでした。」
続くようにセラウィ、ウィル、エレナ、フィーナはそれぞれ微笑み
「………俺としてもこの”影の国”には感謝している。懐かしき戦友達や父上達と再び出会えたのだからな………」
「リウイ様………」
リウイは静かな笑みを浮かべ、ペテレーネは微笑みながらリウイを見つめ
「はい。またこうして皆さんと出会える事は”奇蹟”と言ってもおかしくないでしょう………」
「ええ。フフ………生まれ変わった人と共に戦うなんて体験、私達が初めてでしょうね………」
「そうですね。………ですがそのお蔭で生まれ変わった者に私達の全てを受け継がせることができたのですから………」
「……私も子孫や私の意志を継ぐ者に私の持つ技を受け継がせる事ができ………本望です。」
「自分も同じだ。血は繋がっていなくても先祖代々から受け継いで来た意志を伝える事ができたのだからな………」
ティナ、ラピス、リン、シルフィア、ティファ―ナはそれぞれ微笑みながら頷いた。
「………皆さん………」
仲間達の様子を見たリースは微笑み
「はは……まったく………あんたら、ほんまアホやな。揃いも揃ってお人好しすぎるっちゅうか………こっちは最初から最後まで利用するつもりだけやったのに………なんでそんな………」
ケビンは苦笑した後、辛そうな表情で呟き、顔を俯かせた。
「ケビン………」
「ケビンさん……」
ケビンの様子を見たリースは優しい微笑みを浮かべ、ヨシュアは口元に笑みを浮かべながら見つめ
「あはは………人間、諦めが肝心って言うし。あたしたちに関わったのがケビンさんの運の尽きってやつね。」
(フフ………私もその内の一人という事ですね……)
エステルは苦笑した後、口元に笑みを浮かべて言い、エステルの棒の中にいるフェミリンスは微笑んでエステルを見つめた。
「ふふん、ボク達って言うより主にアンタじゃないの?強引だし、おせっかいだし、人外だし、逃げても喰らいついて来そうだし。」
「あ、あんですって~!?………ってか誰が人外よ!?あたしはれっきとした人間よ!」
そしてジョゼットの言葉を聞いたエステルはジョゼットを睨み
「翼を生やす上、魔神どころか神と契約するなんて絶対人間とは思えないんだけど。」
(フフ、確かに言えてるわね。)
(これほどの数の種族と契約した人はエステルが初めてでしょうね………)
(フッ………逆に言えばエステルだからこそこれほどの種族と契約できたという訳だがな………)
(そうですね……)
(クー♪)
「アハハ……」
「……はは。」
「ま、確かにそれは言えてるかもしれないわね。」
エヴリーヌは突っ込み、エステルの身体の中で聞いていたパズモ達は微笑み、プリネ、ヨシュア、シェラザードは苦笑し
「えとえと………その、それだけお姉ちゃんが凄いってことだと思うし………」
「うんうん。私達、まとめてエステルちゃんの影響を受けちゃってるんだろうね。」
「さすがはママだね!」
ティータ、アネラス、ミントはそれぞれ微笑みながらエステルを見つめた。
「も、もう………」
仲間達の言葉を聞いたエステルは呆れた表情で溜息を吐いた。
「ま、でも確かに揃いも揃ってアホなんだろ。これだけ状況が厳しいのに切羽詰まった感じがしねぇからな。」
そしてアガットが仲間達の言葉を続けるように答え
「フッ、これだけのメンツがここに集まっているのだからね。今ならエレボニアを国家転覆することだって出来そうな気がするよ。」
「また貴様は微妙な発言を………」
「フッ……皇子がお望みならやってやろうか?」
「もう、レーヴェったら………」
「フッ………センタクス奪還の前哨戦として参加するのもいいかもしれないな………」
「ヴァ、ヴァイス様………」
「フフ………”出来そう”ではなく”出来る”の間違いよ。」
「そうね♪私達に加えて神自身や”神殺し”がいるんだからそんな事、簡単にできるわね♪」
「やめろ、お前達…………」
オリビエの言葉を聞いたミュラーは顔に青筋を立て、レーヴェは不敵な笑みを浮かべ、レーヴェの言葉を聞いたプリネは冷や汗をかいて苦笑し、ヴァイスは口元に笑みを浮かべ、リセルは苦笑しながらヴァイスを見つめ、カーリアンとファーミシルスは不敵な笑みを浮かべ、リウイは呆れた表情で2人を見つめた。
「……ハハ………降参や。………あらためて…………今度は本当の意味であらためてよろしくお願いするわ。」
一方顔を俯かせていたケビンは苦笑した後、仲間達を見回して言い
「うん………!」
「こちらこそ……よろしくお願いします。」
エステルとヨシュアが仲間達を代表して頷いた。
「いずれにしても………オレらがすべきことはもう、はっきりしている。”影の王”………ルフィナ・アルジェントを止める必要があるってことや。」
「………うん……………」
「当然………そうなるだろうな。」
そしてケビンの言葉にリースは辛そうな表情で頷き、ユリアは重々しい様子を纏わせて頷いた。
「でもケビンさん。私達が落とされた”煉獄”に彼女はいませんでしたよね?」
「リタちゃんによってこちらに飛ばされた後、すぐに皆さんと一緒に向かったのですが既にいませんでしたし……」
「………そうですな…………」
「少なくとも………あの場所に姉様の気配はぜんぜん感じられなかった。もし居たとしたら………絶対に姿を現したと思う。」
「………そやな。しかし、そうなると姉さんは一体どこに行って………」
リタとクローゼの質問とリースの推測を聞いたケビンが考え込んだその時
――――その疑問になら私が答えられると思います。
聞き覚えのある声が全員に聞こえた後、セレストが姿を現した。
「始祖様………」
「セレストさん………さっきはホンマ、ありがとうございました。」
「………あのままでは私達も無事ではいられなかったと思います。本当に………ありがとうございました。」
「ふふ、いいのです。”影の王”に囚われていた以上私もあなた方と同じ立場………仲間の一人としてそのくらいはさせてください。」
ケビンとリースの言葉にセレストは微笑みながら答えた。
「はは……おおきに。それはそれとして………疑問に答えられるっていうのは?」
「ええ………”影の王”の居場所をやっと掴むことができました。」
「へ………」
「ほ、本当に………!?」
セレストの話を聞いたケビンとリースは仲間達と共に驚き
「もしかして………今までそれを調べていらっしゃったんですか?」
クローゼは驚きながら尋ねた。
「ええ………”第九星層”を調べる過程で現在の”影の国”の全貌をおおよそ掴むことができました。”影の王”は現在、”星層”の外側にいるようです。」
「”星層”の外側………」
「そ、それってどういう場所なんですか?」
そしてセレストの話を聞いたリースはセレストの言葉を繰り返して呟き、ティータは不安そうな様子で尋ねた。
「”星層”とは”影の王”が”影の国”の中心に造り上げた多層的な構造物のようなもの。その構造物の外側にも”影の国”は続いているのです。もっともそれは現在、何もない荒野のような形で放置されてしまっていますが………」
「何もない荒野………」
「むう………ずいぶんと漠然とした話だな。はっきりとした居場所は掴めてねぇのかよ?」
説明を聞いていたシェラザードは考え込み、アガットは考え込んだ後再び尋ねた。
「いえ、大体の場所はわかります。しかし問題が一つ。その荒野ですが………途方もなく広すぎるのです。おそらくは………大陸規模の広さではないかと。」
「あ、あんですって~!?」
「それは………かなり厳しそうですね。徒歩で行くとなると一体、何ヵ月かかることか………」
セレストの説明を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは考え込み
「ふむ………移動手段は他に無いものでしょうか?」
リシャールは他の手段が無いかセレストに尋ねた。
「そうですね………私が行使できる力では、正直難しいかもしれません。”石碑”によるアンカーもここから離れすぎた場所には打ち込めませんし………」
しかしセレストは難しい表情で考え込み
「仮に徒歩になると”方石”が使えない上、補給も不可能な状態で進軍せねばならんということか……」
「何十日分の食糧や医薬品を持っての探索は現実的ではないな………」
セレストの説明を補足するようにリウイとヴァイスはそれぞれ真剣な表情で答えた後、考え込んだ。
「ふむ………こいつは参ったな。向こうがこちらに来ない限り打つ手は無しっていうことか。」
一方ジンは溜息を吐いた後考え込み
「ならば飛行手段を持つ者達と転移魔術ができる者達が共に探索し、本拠地がわかれば転移魔術で全員で行くというのはどうじゃ?」
「えー………それだとエヴリーヌ達に凄い負担がかかるからできればやりたくないよ……」
リフィアはある提案をし、提案を聞いたエヴリーヌは嫌そうな表情で呟いた。
「………………」
「なんだ………気になる事でもあるのか?」
一方考え込んでいるティータの様子に気づいたアガットはティータに声をかけ
「あ、はい、その………”アルセイユ”が使えないかなって思って。」
声をかけられたティータは意外な提案をし、その場にいる全員を驚かせた。
「なに………」
「”アルセイユ”………”第一星層”にあった偽物か?」
ティータの提案に驚いたアガットは声を上げ、ユリアは尋ねた。
「は、はい。えっと、この”影の国”って人の願いが反映されるんですよね?確かにあの”アルセイユ”はニセ物かもしれないですけど………形状や構造を含めて、ここにいる半分以上の方達は良く知ってる船ですしイメージは十分だと思うんです。みんなで一緒に願ったら動かせるんじゃないかなって………」
「………………」
そしてティータの説明を聞いた全員は黙ってティータを見つめ
「あ、あのあの………さすがに無理ですよね!?願うだけで動くなんてそんな技術者らしくもない…………」
仲間達の様子を見て不安になったティータは仲間達を見回して言った。
「………ううん、ティータ。それ、とってもいい考えかもしれないわ。」
「ふえっ!?」
その時レンが賛成の意を示し、それを聞いたティータは驚いてレンに視線を向けた。
「確かに、イメージが確固としたものであるものほどこの”影の国”には再現されやすい。ユリアさんは言うまでもなくティータちゃんも構造には詳しいし………」
「………ありえる話かもしれません。”黒の箱舟”が再現されている以上、飛行船が駄目という事も無いでしょう。」
「ああ。想念で現れたマウアも破壊された魔導戦艦を再現したから、大丈夫だと思う。」
そしてケビン、ヨシュア、セリカがそれぞれの推測を言った。
「セレストさん、どうかな!?」
仲間達の意見を聞いたエステルは明るい表情でセレストに尋ね
「…………………たしかあなた方は”リベル=アーク”に乗り込む時、あの船を使ったのでしたね。ならばその時のイメージをフィードバックさせれば………………ええ、可能だと思います。あなた方全員が乗り込めば………”白き翼”は必ずや甦るでしょう。」
尋ねられたセレストは考え込んだ後、微笑みながら答えた。
「ホ、ホンマですか!?」
「し、信じられない………」
「ふふっ、お手柄ね。」
「やったね、ティータちゃん!」
「あはは………すごいじゃない、ティータ!」
「まさかこんな形であの”アルセイユ”に乗船できるなんて………不謹慎ですが今回の件に巻き込まれてよかったです。」
セレストの答えを聞いたケビンは明るい表情で驚き、ティータは恥ずかしそうに笑い、レンは口元に笑みを浮かべてティータに視線を向け、ミントとエステルは微笑みながらティータを見つめ、ティオは驚きの表情で呟いた後静かな笑みを浮かべた。
「ちょ、ちょっと待って………じゃあ、王都の港に止まってる”山猫号”も動くわけ!?」
「そうか、それもあったね。」
ある事を思い出したジョゼットは嬉しそうな様子で尋ね、ジョゼットの言葉にヨシュアは頷いた。
「そうですね………そちらは、どれだけの方に馴染みがある船なのでしょうか?」
「あ…………」
「乗ったことがあるのは彼女と僕………くらいですか。」
しかしセレストの疑問を聞いたジョゼットは表情を暗くし、ヨシュアは考え込んで呟き
「あたしとシェラ姉、エヴリーヌ、それとオリビエも船倉に忍び込んだ経験ならあるけど………」
エステルはかつての事を思い出して声を出し
「ああ、定期船強奪事件の時ね。」
「フッ………今となってはいい思い出だね。」
「そう?狭い所にいたから窮屈だっただけだよ。」
エステルの言葉にシェラザード、オリビエ、エヴリーヌはそれぞれかつての事件を思い出していた。
「それだけですと…………動かすのは少々難しいかと………”白き翼”を甦らせるのを優先した方がいいかと思います。」
「そっか………」
そしてセレストの意見を聞いたジョゼットは肩を落とした。
「しかし………いずれにせよ願ってもない話です。さっそく準備を整えて”アルセイユ”に向かいましょう!」
「ヘッ………そうだな!」
「そうと決まれば………色々と忙しくなりそうだ。」
一方ユリア、アガット、リシャールはそれぞれ明るい表情になって言った。
「ただし一つだけ………もし、あの”白き翼”で”影の王”のいる場所まで向かうとしたら…………もう、この”庭園”には戻れなくなってしまうでしょう。」
「あ………」
「”方石”の転位が…………出来なくなってしまうのですね?」
そしてセレストの忠告を聞いたリースは声を上げ、クローゼはある事を推測して尋ねた。
「ええ、その”方石”の転位機能は”庭園”から離れすぎてしまうと働かなくなってしまいますから。もし出発するのであれば……覚悟していただく必要があります。」
「そっか………」
セレストの説明を聞いたエステルは納得した様子で頷き
「こいつは一度、全員揃って鍛え直す必要があるかもしれんな。」
「そ、そうですね!足手まといにならないよう、ウォーミングアップしなくちゃ!」
「各地の”扉”を開けるのもこれが最後の機会というわけか。」
「勿論、最後の戦いに向けて新たな装備を用意する必要もあるね。」
ジン、アネラス、オリビエ、ウィルはそれぞれの意見を言った。
「そんなら……一旦オレも先導から外れますわ。必要があるなら”方石”や”星杯手帳”の使い方も教えます。みんな、悔いの残らへんようできる限りのことをしましょうや。」
そしてケビンは仲間達を見回して提案し
「応!」
仲間達全員はケビンの提案に力強く頷いた。
その後全ての準備を整えたケビン達全員は”煉獄”で救出したギルバートも連れ、”第一星層”にある”アルセイユ”に向かい、乗船した…………
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