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英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)

作者:sorano
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第103話

~始まりの地~



「ここは………」

「こんな場所が孤児院の地下にあるなんて………」

始まりの地の景色を見回したクローゼとリタは驚きの表情で呟いた。

「………………………………」

一方ケビンは中央に置かれてある台座を見つめた後、語りだした。

「ちょうどここで、オレは気絶したお前を運んできた猟兵に追いついた。まさか邪魔が入るとは思ってへんかったんやろな。焦ったそいつはあっさりと銃を落としてそこの台座へと駆け寄った。」

ケビンは話を続けながら台座にさらに近づいた。

「そして、台座にあったのは………”ロアの魔槍”と呼ばれる封印指定された古代遺物やった。」

「”ロアの魔槍”………」

ケビンの話を聞いたリースは呆けた表情で呟き、ケビンは振り返って真剣な表情でリースを見つめた。

「………手にする者の肉体を”化物”に変えてしまう槍。正直、女神の秘蹟の元に造られたとは思えへん代物や。そして追い詰められた猟兵は………その”魔槍”を手にしてしまった。」

そしてケビンは当時の戦い―――”魔槍”を手にして”化物”へと変わった猟兵との戦いを思い出し、語り始めた。

「………圧倒的やった。肉体の構造ごと変化して、異形の化物になった猟兵の前にオレはすぐに叩きのめされた。そしてその化物が………気絶したお前に”魔槍”を振るおうとしたその時………それは……起こった。」



――――異形の者が少女に”魔槍”を向けたその時、従騎士の背中に妖しい赤い光を放つ何かの紋章が浮かびあがり、凶悪な笑みを浮かべた従騎士がボウガンを向けると無数の魔槍が異形の者を襲い、無数の肉片へと変えた――――



「オレの”聖痕”は……猟兵が持ってた”魔槍”の力をその場で取り込んだらしい。そして、その力を数十倍に増幅した上で容赦なく猟兵へと叩き込んでいった。もはやそれは戦いではなく………一方的な虐殺にすぎへんかった。そして化物になった猟兵は………何千もの肉片に千切れて絶命した。そしてオレは………初めて”聖痕”が顕れたオレはその沸き上がる力に翻弄され、完全に我を失ってしまった……」



―――従騎士が狂気に蝕まれたその時、一人の正騎士が駆け付けた――――



「………駆け付けた姉さんはすぐに状況を理解したらしい。ボウガンと法剣で牽制しながらオレをリースから引き離して……そして………」



――――決意の表情になった正騎士は優しげな微笑みを浮かべて、両手を広げ、そして――――



「我に返った時……オレは姉さんの腕の中にいた。身体を無数に穿たれながら姉さんはオレをしっかり抱き締めて………そのまま………事切れてた。」



「…………あ…………」

姉の死の真実を知ったリースは信じられない表情で身体をよろめきさせながら、一歩下がった。

「ま、そういう事や。オレはルフィナ姉さんを助けられなかったんやない。このオレが………お前の目の前にいるこのロクでもない疫病神がお前の姉さんを殺したんや。」

「で、でも………でもケビンは………!」

「殺すつもりがなかった………そんなのはタダの言い訳や。あの時のオレは”聖痕”の力に翻弄されて血と暴力に酔いしれていた。オレの心が弱くなかったら………こんな事にはならんかったやろ。」

「…………ケビン………………」

「それに……それにな……オレはな、あのとき姉さんが自分の母親のように見えてたんや。オレの首を締めてきた………あの時の母ちゃんと同じように。そして……裏切られた腹いせを込めて”魔槍”を叩き込んでやった………どっちも大好きで………オレの手で守りたかったのに………ククク………母ちゃんとルフィナ姉さんをまとめて殺したも同然や………」

「………………………………」

暗い笑みをを浮かべているケビンをリースは辛そうな表情で見つめた後、頭を俯かせ

「………どうして………たの………?」

静かに呟いた。

「………え………?」

リースの言葉の一部しか聞こえなかったケビンはリースを見つめたその時

「どうして黙ってたの!?この5年間………私に一言も話さないで……!」

涙を流し、怒りの表情のリースがケビンを睨んで叫んだ!

「ああ………ホンマ悪いと思ってる。でも、話したからにはオレにも覚悟は出来てるわ。お前にやったら………仇を討たれても本望やし。」

そしてケビンは寂しげな笑みを浮かべてリースを見つめて言った。

「………バカっ!」

ケビンの言葉を聞いたリースは怒りの表情で叫んだ後、ケビンに詰め寄ってケビンの法衣の首元を掴んで顔を近づけた。



「お、おい………」

「ふざけないで!ケビン・グラハム!私が怒っているのはそんなことじゃない………!どうして………なんでそんな重いものを抱えて一人ぼっちで生きてきたの………!?私に………!あなたの家族のこの私に………!一言も相談しないで………!一緒に抱えさせもしないで………!」

「リースさん……………」

「……………………」

涙を流し、涙声で叫ぶリースの言葉を聞いたクローゼとリタは辛そうな表情で2人を見つめ

「…………リース…………」

ケビンは静かに呟いた。

「やっとわかった………ケビンがどうして”外法狩り”をしているのか………姉様を死なせてしまった償いのためじゃなかったんだね?」

「な………!?」

寂しげな笑みを浮かべて呟いたリースの言葉を聞いたケビンは驚いてリースを見つめた。

「もう………私にはわかる………償いのためなんかじゃない………罪悪感を消すためでもない…………ケビンは………ケビンは………っ!」

涙を流し続けるリースがケビンを睨んである答えを言おうとしたその時!



その通り………『罰』を受けたがっているのさ。



辺りに不気味な声が響いた後、なんと”影の王”が現れた!

「あ……」

「現れましたね………!」

「こ、こんな時に………」

現れた”影の王”を見たリースは呆け、リタは真剣な表情で”影の王”を睨み、クローゼは不安そうな表情で見つめた後、武器を構えた!

「フフ………よくぞここまで来た。ここより先は”第九星層”………私が生まれた場所にして全ての星層の礎となる場所さ。」

「やはりそうか………その地に通じるのがこの場所であるという意味………どうやらオレの『確信』は間違いなかったみたいやな。」

「え…………」

影の王を見つめて言ったケビンの言葉にリースが呆けたその時

「フフ、それではあらためて問うとしようか。どうかな、ケビン・グラハム。そなたは本当に………私の素顔を知りたいのかな?」

影の王は不気味に笑った後、ケビンに問いかけた。

「………言うまでもない。とっとと、悪趣味な仮面を外してもらおうか………”影の王”――――いや、ルフィナ・アルジェント!」

そして問いかけられたケビンは”影の王”を睨んで叫んだ!



「ハハハ、いいだろう!」

ケビンの言葉に大声で笑った”影の王”は仮面を外した。すると影の王の素顔はリースの姉であるルフィナの顔だった!

「ね、姉様…………あの時はまさかと思っていたけど………」

影の王―――ルフィナをリースは信じられない表情で見つめていた。

「久しぶりね、リース。フフ……その様子だと”魔弓将”が私の仮面を半分砕いた時から少しだけ疑っていたようね?………そしてケビン………よく私の正体を見破ったわね。」

ルフィナは妖しげな笑みを浮かべてリースとケビンを見回した。

「いや………答えは最初から明らかやった。思わせぶりな言動………そして挑発的な台詞の数々。今まで確信できんかったんは………オレが気づきたくなかったからや。」

「ふふ、そうね。あなたは昔から弱虫だから。まさか私の最強の騎士や異界から呼び寄せた神を倒してしまうとは思わなかった。」

「黒騎士と神………いや”剣帝”と”姫神”のことか………一体、姉さんとどんな繋がりがあるんや?」

「本人からも聞いていると思うけど”剣帝”とは6年ほど前………ある事件で知り合ったのよ。私と彼は対立していたけれどお互い、納得のいく形での落とし所にまで持っていけた。それを彼は『借り』を作ったと受け取っていたみたいね。”姫神”は自分の半身―――エクリアだったかしら?彼女が”神殺し”の”使徒”となった為、自分の悲願を叶えられなくなって、『どんな手段』をとってでも復活したいと思っていたから、彼女自身を呼び寄せられたのよ。………最もあれほど強い”想い”があったのにあんな予想外な結果に終わって今でも驚いているわ。エステル・ファラ・サウリン・ブライトだったけ?彼女と彼女が持つ神剣に宿る”想い”に随分、予想を覆されたわ………」

「なるほど……その借りや想いを上手い事利用して”剣帝”という概念を甦らせ、封印されてるはずの”姫神”を呼び寄せられたんか。まったく………姉さんらしい裏ワザやで。まあ、その姉さんの裏をさらにかいたエステルちゃんもエステルちゃんらしいけどな…………」

ルフィナの説明を聞いたケビンは苦笑しながらルフィナを見つめた。

「フフ………褒めても何も出ないわよ。ここまで辿り着いた以上………私の目的はわかっているのでしょう?」

「ああ………覚悟はできている。連れていくんならとっとと連れていってくれ。」

「ま、待って……!なにを……2人とも何を言ってるの!?」

ルフィナとケビンの会話を聞いて驚いたリースは戸惑った表情で2人を見比べた。

「リース………」

「ふふ………あなたもわかったのでしょう?ケビンはね……『罰』を受けたがっているのよ。」

「!も、もしかして姉様は………」

そしてルフィナの話を聞いたリースは驚きの表情でルフィナを見つめた。



「そう、私はケビンに『罰』を与えるためにこの地に生み出された存在………そのために私はこの”影の国”を造り変え、あなたたち全員を迎え入れた。それもこれも全て望んだのはケビン自身なの。」

「う、嘘………!」

「………残念やけどその通りや。なぜ、そうなってしまったのかはっきりとはわからへんけど………姉さんが言ってることが真実であることは間違いない。」

「そ、そんな………」

自分の言葉を聞いて信じられない表情をしているリースを一瞥したケビンはルフィナに近づいた。

「おそらく”第九星層”とはこのオレを罰し続けるための地。母親を見殺しにし、姉さんをこの手で殺めてしまったオレにふさわしい場所のはずや。そして………オレさえそこに落ちればこの事件は無事、解決するやろ。」

「そ、そんな………そんなのいけません!」

「ええ。答えを出すにはまだ早すぎるのではないですか?」

ケビンの説明を聞いたクローゼは不安そうな表情で真剣な表情のリタと共にケビンを見つめ

「……………っ………………」

リースは辛そうな表情で唇を噛み

「ハァァァァァァ………セイッ!!」

なんと法剣に魔力や闘気を込めて、ルフィナに放った!しかしルフィナは法剣が当たる瞬間、転位して消え、回避した!



「リース!?」

リースの行動にケビンは驚き

「うふふ、どうしたのリース?姉さんに向かってそんなおいたをするなんて………」

転位したルフィナは宙に浮いた状態で現れ、妖しげな笑みを浮かべてリースを見つめた。

「黙りなさい……!あなたが姉様のはずない……!姉様がケビンにこんなことをするはずがない!」

「リ、リース………」

そしてリースは怒りの表情でルフィナを睨んで叫び、リースの言葉を聞いたケビンは真剣な表情でリースを見つめていた。

「ケビン、思い出して!ケビンは私に………姉様が哀しむようなことは絶対にしないって誓った!本当にそんな事をして…………自分一人が犠牲になって姉様が喜ぶとでも思ってるの!?」

「!!」

「ふふ………どうかしら?確かに『私』は本物のルフィナではないけれど、限りなく近い存在ではある………ケビンが”罰”を望むのなら叶えたくなるのではないかしら?」

「そんなこと、ない!本物の姉様なら、そんな風にケビンを甘やかしたりしないもの!」

「な………」

「………………………………」「

リースの叫びを聞いたケビンは驚き、ルフィナは黙ってリースを見つめ続けていた。

「思い出して、ケビン!初めて会ったときのことを!絶望して………自分から消えようとしていたケビンを姉様は決して許さなかった……!問答無用でチョコレートを食べさせてこちら側に連れ戻した……!」

「……あ…………………」

リースの言葉を聞いたケビンはかつてルフィナに口移しで無理やりチョコレートを食べさせられた事を思い出した。

「………………………………オレは…………」

「ふふ……驚いたわ。まさかあなたがそんな物言いができるくらい成長していたなんてね…………」

どこか迷っている風に見えるケビンを見たルフィナは口元に笑みを浮かべてリースを見つめ

「だから黙りなさい……!これ以上……姉様を侮辱するのは許さない!」

ルフィナに見つめられたリースは怒りの表情で睨んだ。



「フフ、いいでしょう………そういう事なら……ケビンの代わりにあなたを招待してあげることにするわ。」

「え………」

ルフィナの言葉にリースが呆けたその時、ルフィナは詠唱をした。するとリースの周囲に裂け目が現れ、さらに裂け目はリースを吸い込もうとし、リースは地面に跪いた!

「な……!」

それを見たケビンが驚いたその時

「ふふ……そこで黙って見ていなさい。」

「くっ………!」

「これは……!?」

「そ、そんな……」

なんとルフィナは魔眼を放って、ケビン達の動きを封じ込めた!そして裂け目はさらに開き、リースは裂け目の端に捕まって耐えていた。

「………っ…………」

「……リース!やめろ姉さん!リースは関係ないやろ!?」

耐えているリースを見たケビンは必死の表情でルフィナを睨んで叫んだが

「これも『罰』のひとつよ。この子があなたの代わりに永劫に苦しむとしたら………さぞ、あなたの苦しみも一層深まるころでしょうね?」

ルフィナは妖しげ笑みを浮かべ、ケビンの要望を否定した。

「な………」

ルフィナの言葉を聞いたケビンは驚き

「やれるものならやってみなさい………!」

リースは大声で予想外な事を叫んだ!

「あら………」

「リース……!?」

リースの言葉を聞いて驚いたルフィナとケビンはリースに視線を向けた。

「たとえ何処に落とされようと私はきっと生き延びる………!もう二度と………ケビンを一人きりにしないために……絶対に………無事に戻ってみせる……!」

「………あ………」

「フフ、よく言ったわ。それでは………せいぜい頑張ることね。」

決意の表情で叫んだ後優しげな微笑みを浮かべたリースの言葉を聞いたケビンは呆け、ルフィナは口元に笑みを浮かべた。

「あ………」

するとなんとリースは裂け目の奥へと落ちて行った!そして裂け目は閉じようとしたが

「うおおおおおおおおおっ!!」

ケビンは”聖痕”を解放して、魔眼の効果を打ち破った!

「な………」

それを見たルフィナは驚き

「!クローゼさん、2人は私が守りますからクローゼさんはこの事を皆さんに報告して、私達を探して下さい!ドラブナよ……行け!!」

「リタちゃん!?一体何を…………」

リタはクローゼに叫んだ後、クローゼに懐から出した”飛翔の耳飾り”を放り投げて”庭園”へと転移させた後、魔槍と共にケビンの”聖痕”と同化して消え

「だああああああああああああっ!!」



ケビンは閉じようとする裂け目に飛び込み、リースを追って行った……………!




 
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