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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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後日譚~門出の時~ 第89話

内戦終結から約3ヶ月。リィン達”Ⅶ組”は最後の学院生活を過ごしていた。



3月12日―――――



~トールズ士官学院・1年Ⅶ組~



二限目 歴史学――――



「――――近代までの流れはここまでにしておきましょう。来週からは現代――――五十年前の”導力革命”から今日までの流れに入ります。かなり駆け足になってしまうのでできれば予習しておいてください。エマさん、マキアス君。サポートしてあげてくださいね~。」

残り少ない授業の内容を予想していたトマス教官は苦笑しながら忠告した後エマとマキアスに視線を向けた。

「はい、そのつもりです。」

「任せてください。いい参考書もありますし。」

「ふむ……そうしてくれると助かるな。」

「メンドくさいけど仕方ないか。」

「ん。それにどうせ後少しなんだから、それが終わったらもう勉強しなくていいもんね♪」

「エ、エヴリーヌお姉様……お願いしますから全てとは言いませんが、学院で学んだ事はこれからも覚えておいてくださいよ……?」

フィーの後に答えたエヴリーヌの言葉を聞いたリィン達が冷や汗をかいて脱力している中、プリネは呆れた表情で指摘した。



「フフ……俺も”導力革命”については少々、知らない事も多いな。」

「技術史についてだったら私もサポートできると思うわ。」

「”導力革命”かー。あのシュミットじーちゃんの名前も出て来るんだよね?」

「まあ一応、導力革命の父”エプスタイン博士”の三高弟の一人だからねぇ。」

「フン、あの偏屈な老人の名前が教本に載っているとはな。」

「はは……そう考えると凄いよな。」

ミリアムがふと呟いた言葉を聞き、シュミット博士を思い出したエリオットは懐かしそうな表情をし、ユーシスは鼻を鳴らし、リィンは苦笑していた。

「そう言えば……お姉様のご友人の中で有名な導力技術者の血縁の方でその方もご家族のように導力技術者の見習いをしている方がいらっしゃると聞いた事がありましたが……」

「うん。というかあたしのリベールの友達―――ティータちゃんはシュミット博士と同じ”エプスタイン博士”の三高弟の一人である”アルバート・ラッセル博士”の孫娘だから、ティータちゃんのおじいちゃんは当然だけどひょっとしたらお母さんの名前も技術史にも出て来るかもしれないよ。確かラッセル博士の娘のエリカ博士も導力技術者として有名な人だし。」

そしてセレーネの問いかけに対して答えたツーヤの口から出た話を聞いたプリネとエヴリーヌを除いたリィン達はツーヤの予想外の驚愕の人脈に冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



三限目 数学――――



「―――言った通り来週はおさらいの小テストをする。範囲は二次関数に因数分解、集合、論理、確率ってところだ。おっと、微積分の触りも入れるからわかるヤツは備えておけ。」

マカロフ教官の口から出た小テストの内容を知り、かなり難しい事を悟ったリィン達は冷や汗をかいた。

「と、飛ばしますね。」

「ううっ、憂鬱だなぁ……」

「意味不明……呪文みたい。」

「ん。聞いているだけで眠くなるんだから、もしかしたら暗示系の魔術の詠唱かも。」

「一応、今までに習った範囲なんだが……」

「そんな詠唱はありませんよ……」

フィーとエヴリーヌの言葉を聞いたマキアスとツーヤは呆れた表情で指摘し

「ふふっ、基本的な公式だけでもおさらいしておきましょう。」

「私達も一緒に復習しますから、頑張りましょう?エヴリーヌお姉様。」

エマとプリネはそれぞれ苦笑しながら慰めの言葉をかけた。



四限目 政経・論理――――



「――――以上が帝……いや、”エレボニア王国”における株式市場の仕組みの概要だ。駆け足になってしまうが来週は失業・インフレ問題について学んでもらうとしよう。ディベート形式の討論も行うのでせいぜい備えておきたまえ。」

「でぃべーと?」

「肯定・否定の二手にわかれて議論を戦わせる討論形式ね。」

ハインリッヒ教頭の口から出た始めて聞く名前の言葉に首を傾げているフィーにアリサは説明し

「フフ、議論と言えば以前レンから”戦争回避条約”をリィンさん達に伝えに行った時に反論したリィンさんの主張にレンも感心しているような事を言っていましたよ。」

「ハハ、とは言ってもすぐに反論の余地もなく黙らされてしまったんだけど……それでもあのレン姫からそんな高い評価を貰ったんだから、ありがたいと思わないとな。」

プリネに微笑まれたリィンは苦笑しながら答えた。



五限目 芸術・音楽―――



「……色々考えたのですけど残りの授業は音楽鑑賞の時間に当てたいと思います。名だたる古典音楽や現代の名曲までたくさんのレコードを揃えたので楽しんで聴いてくださいね。へびめた……でしたかしら?そんなジャンルも借りたのですけどどんな感じなのかしら――――」

笑顔を浮かべて答えたメアリー教官の話を聞き、メアリー教官が学院の授業で鑑賞するようなジャンルではない音楽も選んだ事に気付いていたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

(ぬう……音楽を記録した媒体を聴く事が悪いとは言わんが、せっかく音楽を愛する”魔神”たるこの我がいるのだから我に頼めば、我が知る限りのありとあらゆる音楽を聴かせてやったと言うのに。)

(お願いだから、それだけは止めて……)

アムドシアスの念話を聞いたプリネは疲れた表情で指摘した。



H・R―――



「ふふっ、お疲れ様。他の教官達も気合が入ってたみたいだからさぞ大変だったんじゃない?」

「……正直クタクタ。」

「エヴリーヌは早く寮に帰って寝たい……」

「あはは……強行軍だったもんねぇ。」

「フフ、でもそう言いながらもお二人ともちゃんと起きて勉強していたのですから、立派ですよ。」

サラ教官の言葉を聞き、今までの詰め込み授業を思い返したフィーとエヴリーヌは疲れた表情で呟き、エリオットは苦笑し、ツーヤは微笑みながらフィーとエヴリーヌを見つめた。



「だが……これも我らが選んだ道。」

「詰め込んでもらえるなら有り難いというものだ。」

「ふふ、独学でも伸ばせるよう配慮していただいていますし。」

「そうね……教官達には感謝しないと。」

「はい……わたくし達の為に特別なカリキュラムを組んで頂いたのですから。」

「ええ……本来でしたら休校していた分の授業のカリキュラムについても相当悩みながら組まれていたでしょうし。」

「そうだな……今まで学んだことを忘れずに俺達のそれぞれの人生に役立てる事……それが教官達に対する恩返しだろうな。」

仲間達がそれぞれ話し合っている中リィンは静かな表情で呟き

「アハハ、何だか最近のリィンってクサい台詞をよく言うよね~。」

「い、言われてみれば確かに……」

「フッ、そしてある一定の部分について鈍感な所についても目立つな。」

「え、えっと……?」

無邪気な笑顔を浮かべるミリアムの言葉を聞いたマキアスは苦笑し、ユーシスは静かな笑みを浮かべ、ミリアム達の言葉を聞いたリィンは困った表情をし

「ええ……全く持ってその通りね。」

「いい加減にその”ある一定の鈍感な部分”を治して欲しいのですが……」

「す、すみません、お兄様。それについてはわたくしも思っていますわ……」

「セ、セレーネまで……」

ジト目のアリサと真剣な表情をしているエマに見つめられ、更にセレーネまでもが二人の意見に同調した事にリィンは疲れた表情で肩を落とした。

(うふふ、ご主人様の超鈍感な所が治る日が来るといいわね♪)

(私はそんな日が来るとはとても思えませんが。)

(ア、アハハ……)

(フフ、だってリィンだものね。)

からかいの表情をしているベルフェゴールとジト目のアルティナの念話を聞いたメサイアとアイドスはそれぞれ苦笑していた。



(フッ、最後の最後までこの調子とは奴等らしいな。)

「…………………」

リィン達の様子を静かな笑みを浮かべているレーヴェと共に寂しげな笑みを浮かべて見守っていたサラ教官だったが、手を叩いて雑談を中断させて自分に注目させた。

「さて―――明日は久々の”自由行動日”になるわ。授業も大詰めだけど部活や趣味も大切にしなさい。いい天気になるみたいだし、デートってのもいいんじゃない?」

「あ、あのですね……」

「教官の立場でそういうのを勧めるのはどうかと……」

ウインクをしたサラ教官の話を聞いたアリサとマキアスはジト目で指摘した。



「あら、あたしは教官として”ある生徒”の未来の為にも勧めているんだけどねぇ?何せ”ある生徒”はデートもせずにアルフィン殿下ともうすぐ結婚する所かアルフィン殿下以外の婚約者にも子供ができているし、更に後で多くの女の子達と結婚するんだから、将来破局しない為にも少なくても結婚前にお互いの事を良く知る為にデートはすべきだと思っているんだけど?」

「え、えっとサラさん。その”ある生徒”というのは……」

「フッ、確かにアルフィン皇女どころか他の女性ともそんな事をしている所は見た事が無いな。」

「……言われてみればそうね。私なんか半年以上付き合っているのに未だにデートを1回もした事ないし。(それどころか、私のお腹の中には赤ちゃんもできているんだけど!?)」

「この埋め合わせは必ずしてもらわないといけませんね。」

「う”っ……」

「サラ教官……洒落にならない事を言わないで下さいよ……」

口元をニヤニヤさせながらリィンを見つめるサラ教官の言葉を聞いたセレーネは冷や汗をかき、静かな笑みを浮かべるレーヴェの話を聞いてそれぞれジト目になって自分を見つめて来るアリサとエマの視線に耐えられなかったリィンは冷や汗をかいて呻き声を上げ、プリネは疲れた表情で指摘した。



「フン、確かに節操のない阿呆に嫁ぐ殿下の将来を心配する事には同意するが、そういう台詞はまず自分が相手を見つけてから言うべきと思うが?」

「し、失礼ね……!あたしだって良い相手の一人や二人……!」

意味ありげな笑みを浮かべるユーシスに見つめられたサラ教官は慌てた様子で言い訳をし

「うーん、その割には独り酒が多いような……」

「まあ、それ以上は触れないのが礼儀だろう。」

「ラウラのお父さんとかサラは高望みしすぎ。」

「ふむ、悪くないとは思うが縁遠そうでもあるな。」

「フッ、いっそ”黄金の百合”に頼み込んで若返らせてもらった方がいいのではないか?」

「レ、レーヴェさん。幾らミントちゃんが優しくてもそんな事の為だけに自分の力を使いませんよ。」

「人間の女って老化が速いから大変だね、くふっ♪」

「ぐっ、見てなさいよ~!残り半月で、素敵なオジサマをゲットしてやるんだからっ……!―――ああそれと、次の金曜日が最後の実戦技術授業になるけど、最後の授業用の”とっておきの実技テスト”を用意しておいたから、今の内に覚悟しておくことね♪」

それぞれ好き勝手にいう”Ⅶ組”のメンバーの言葉を聞いたサラ教官は悔しそうな表情で声を上げたが、ある事をすぐに思い出すと意味ありげな笑みを浮かべてリィン達を見つめた。



「”とっておきの実技テスト”……ですか?」

「以前やった”特別模擬戦”以来の怪しげな名前ですね。まさかとは思いますが”特務支援課”の人達がまた来るんですか?」

「フン、ならば好都合だ。以前受けた”借り”を倍にして返してくれる。」

「うんうん!成長したボク達の力を見せつけるちょうどいい機会だよね~!」

「何で君達はそんな自信満々なんだよ……ロイドさん達も成長しているんだぞ?」

サラ教官の言葉が気になったセレーネは首を傾げ、アリサはジト目で尋ね、それぞれ自信満々な発言をするユーシスとミリアムにマキアスは疲れた表情で指摘した。



「残念ながら”特務支援課”ではない。―――むしろ”特務支援課”の相手をする方が数百倍もマシだと思うくらいの相手だ。」

「ロ、ロイドさん達を相手にした方が数百倍もマシだと思うくらいの相手って……」

「ううっ、一体どんな人と戦わされるんだろう……?」

「くふっ♪たくさん遊べる相手なら誰だっていいよ♪」

レーヴェの答えを聞いたリィンは表情を引き攣らせ、エリオットは疲れた表情をし、エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべた。



その後HRは終わり、サラ教官とレーヴェが退出するとリィン達は談笑を始めた。 
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