英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第66話
その後探索を続けたリィン達は牢屋らしき場所に到着した。
~ジュライロッジ~
「あ……!」
「もしかして……貴族連合に誘拐された人達!?」
牢屋がある場所に到着し、牢屋の中に閉じ込められている貴族らしき人々を見たリィンとエリオットは声をあげた。
「!あの人達は……!」
「……どうやら士官学院の人達も一緒に閉じ込められていたようね。」
「ん~……やっぱりカイエン公はいないみたいだね~。」
「恐らく別の場所に監禁されているのでしょうね。」
「ええ……ここから更に下の階層のどこかに監禁されているのでしょうね。」
牢屋の中にいる見覚えがある人物―――パトリックや貴族生徒を見たエリスは目を見開き、エリゼは静かな表情で呟き、牢屋の中にカイエン公がいない事に気付いたミリアムの言葉を聞いたルイーズとサラ教官はそれぞれ推測し
「お、お前達は……!?」
「ユーシス君……!それに”Ⅶ組”のみんなやサラ教官も……!」
「し、しかもエリス嬢やエリゼ嬢まで何故シュバルツァー達と一緒にいるんだ………!?」
するとその時牢屋の中にいたパトリックと貴族上級生の乗馬部の部長――――ランベルトはリィン達に気付くと驚きの表情で声をあげた。
「パトリック……よかった……無事だったか。」
「部長も無事の様子で何よりだ。」
パトリックとランベルトの声を聞いて二人を見たリィンとユーシスは安堵の表情で呟いた。
「……我々が無事なのもエーデル君のお蔭だよ……彼女があのヨアヒムとかいう司祭の申し出に応じていなければ、今頃我々も……」
「――――!シュバルツァー、頼みがある……!エーデル先輩とセレスタンを助けてくれ!二人は僕達の代わりにヨアヒムとかいう薄気味の悪い司祭に連れていかれたんだ……!」
ランベルトは重々しい様子を纏って呟き、ランベルトの言葉を聞いてある事を思い出したパトリックは血相を変えてリィン達を見つめた。
「心配しなくてもセレスタンさんは既に僕達が保護している。」
「エーデル部長はまだ見つけていませんが……絶対に見つけて助けるつもりですわ……!」
パトリックの嘆願に対し、マキアスは静かな表情で答え、セレーネは決意の表情で答えた。
「事情はよくわからないが……君達はもしかして我々を助けに来てくれたのか!?」
するとその時貴族の青年が希望を持った表情でリィンに問いかけ
「ほ、本当に!?」
「私達、出られるの!?」
青年の言葉を聞いた牢屋にいる他の貴族達もそれぞれ明るい表情になってリィン達を見つめた。
「それは………」
貴族達の問いかけに対し、どう答えるか迷ったリィンは悩み
「………とにかく扉だけでも開いてしまおう。」
悩んでいるリィンにパントが提案し
「どうやらあれが扉の開閉装置みたいだな。」
「向こう側にもあるから手分けしてとっとと開けてやるわよ!」
「はい!」
牢屋の開閉装置らしきレバーを見つけたガイウスとサラ教官の言葉にリィンは頷いた後仲間達と手分けしてレバーを降ろした。すると牢屋の扉は全て開き、リィン達は嬉しそうな表情で牢屋から出てきた貴族達にすぐに脱出できない事を説明した。
「す、すぐには出られないだって!?」
リィン達の話を聞いた貴族の青年は信じられない表情で叫んだ。
「………すみません。皆さんを地上に送る事はできるのですが、軍や他の士官学院生達はジュライ特区の救助活動を行っていて、地上に送ってもすぐには安全な場所に避難できない状態なのです。」
「ここから一番近い都市のジュライ特区内は貴族連合の残党もそうだが、魔獣もうろついている。例え地上に送っても、現状安全の保障はできん。」
「しばらくここで救援を待っていただく方がいいかと。」
「そ、そんな………」
「ああっ………どうしてこんな事に………」
リィンとユーシス、エリゼの説明を聞いた貴族達はそれぞれ表情を暗くした。
「そう言えば……内戦は今どうなっているんだ?」
「それは…………」
パトリックの質問を聞いたリィンは複雑そうな表情で黙り込み
「先程彼らは貴族連合の事を”残党”と言った。これだけで答えは十分だろう。」
「え……」
「ま、まさか……!?」
「正規軍に負けたのですか!?」
ランベルトの言葉を聞いたパトリックは呆け、ある事に気付いた貴族達は血相を変えた。
「そだよ~。色々あったけどユーゲント皇帝を含めた皇族全員も奪還した上貴族連合が占拠していた帝都も解放したから、君達”貴族派”の”負け”なのは間違いないね~。」
「ミ、ミリアムさん。」
「き、君な……こんな時くらい気を使う事はできないのか?」
ミリアムの答えを聞いたセレーネは冷や汗をかき、マキアスは呆れた表情で指摘した。
「そ、そんな!?貴族が平民に負けるなんて……!?」
「エレボニアの伝統はどうなってしまうんだ……?」
「それよりもカイエン公爵閣下は何をしていたのよ!?私達を人質にしてまで、革新派とメンフィル帝国に勝とうとしていたのに……!」
「そもそも貴族連合の状況が劣勢になり、我々がこんな目に遭う事になったのも、メンフィル帝国が介入したからだ!奴等が介入して来なければ、今頃は……!」
「それと”鉄血宰相”もだ!平民の分際で、エレボニアの古き伝統を滅茶苦茶にしようとしたから、それを憂いたカイエン公や私達が仕方なく内戦を引き起こしたのだ!奴さえいなければ、私達も内戦を引き起こさなかったものを……!」
「それよりも私達がこうなったのも貴方達が貴族連合への融資を中断したからじゃないのですか!?責任を取って下さい!」
「なっ!?こんな状況になったのも私達の責任だというのですか!?」
「それにどうして平民達の救助を優先しているんだ!?まず救助すべきは卑しき平民達ではなく、”尊き血”を引く私達貴族だろう!私達も被害者なのだぞ!?」
「そ、そうよ!同じ被害者でも優先すべき命は平民ではなく、私達”貴族”よ!」
一方内戦の結果を知った貴族達は言い争いを始めたり、自分達の状況がわかっていないにも関わらず愚かな事を言い始めた。
「貴方達という人は……!」
「自分達の状況がわかっていて、よくそんな事が言えますね。」
「幾ら何でも厚かましすぎるよ………」
「それに何故彼らは自分達が人質にされてもなお貴族連合の勝利を願っていたんだ……?」
「ハア……何だか助ける気が一気に失せて来るわね。」
「全くですよ。こんな事なら、牢屋に入れたままの方が大人しくてよかったかもしれませんね。」
「……エレボニアの貴族達の腐敗は話には聞いていたが、まさかここまで腐りきっていたとはな。」
「本来貴族というものがどういう存在であるのかを忘れている証拠ですね。」
「余りの愚かさにあきれ果ててものも言えないわね。」
その様子を見ていたエリスは怒りの表情をし、エリゼは蔑みの表情で貴族達を見つめ、エリオットとガイウスは信じられない表情をし、疲れた表情で溜息を吐いたサラ教官の意見にマキアスは頷き、パントとルイーズ、セリーヌはそれぞれ呆れた表情で呟いた。
「お、落ち着いて下さい、皆さん!今はそんな事を言っている場合ではないでしょう!?」
「皆さん、一端冷静になって下さい!」
「帝国貴族の恥さらし共が……ッ!貴様ら――――」
一方パトリックとランベルトは貴族達を仲裁しようとし、怒りのあまり身体を震わせながら貴族達を見回したユーシスが制しようとしたその時
「――――いい加減にしろ!!」
リィンが怒りの表情で声をあげ、リィンの怒鳴り声によって貴族達は怯んだ後リィンに注目した。
「確かに今回の件に関しては貴方達も被害者だろう!それにユーゲント陛下の信頼を盾に貴族達の反感を買うような政策を強引に取り続けた上、貴族達との共存の道を探らず、対立の道を歩み続けたオズボーン宰相やオズボーン宰相のやり方に賛同して諌めるような事もせず、オズボーン宰相を増長させていた”革新派”にも非はあっただろう!だが、幾らオズボーン宰相や革新派が貴族達にとって危険な存在だったとはいえ、内戦を引き起こした挙句メンフィル帝国との戦争勃発まで陥らせた貴族連合に加担した貴方たちに責任が無いと言わせないぞ!ましてや貴族連合は”貴族が仕えるべき主”であるユーゲント皇帝陛下を始めとしたエレボニア皇家の方々を自分達の”大義名分”として利用する為に幽閉し、挙句の果てには中立地帯であった上内戦によって難民と化した民達を保護してくれていたメンフィル帝国まで巻き込んだ!そしてそのメンフィル帝国から謝罪と償いの猶予を与えてもらったにも関わらず、それを無視し続けた事でメンフィル帝国との戦争勃発に発展し、それによって多くの犠牲者が出て、メンフィル帝国との和解の為にエレボニアは多くのものを失う事になるという最悪の結果を引き起こした!その”元凶”となった貴族連合に加担したのは他ならぬ貴方たち”貴族派”だろうが!?」
「くぅ……っ!」
「そ、それは……」
「…………………」
「……さすがに内戦を引き起こして中立の立場であったメンフィル帝国まで巻き込んだ上、陛下達を利用したのはやりすぎだったな…………」
リィンの正論によって図星を突かれた貴族達は反論できず、それぞれ肩を落としたり、後悔し始め
「リィン君の言う通りだ。例えどのような理由があろうと内戦を引き起こし、他国との戦争を勃発させ、そして陛下達を利用した事は決して許されない所業だ。」
「……はい。」
重々しい様子を纏って呟いたランベルトの言葉にパトリックは静かな表情で頷いた。
「………今度ばかりは”貴族派”と”革新派”の対立に苦心していたユーゲント皇帝陛下も貴方達を許さないだろう。特にセドリック皇太子殿下は貴族連合に加担した貴族達に対しては、重い処罰を科すべきだと考えられている。当然敗色が濃くなってきたからと言って、貴族連合から脱退した貴族達も例外ではないと仰っていた。」
「首謀者である”四大名門”も全て何らかの形で重い処罰を受ける事になっているのです。”四大名門”全てが処罰される以上、貴方がた帝国貴族をかばう存在は現れないでしょう。しかもメンフィル帝国との和解の為にエレボニア帝国は多くの領地をメンフィル帝国に贈与する事に加えてユーゲント皇帝陛下の愛娘であるアルフィン皇女殿下が責任を取ってエレボニア帝国から去ってメンフィル帝国領で一生を過ごす事になったのですから、その元凶となった”貴族派”に所属していた貴方がた帝国貴族達の爵位剥奪や降格、全財産没収、最悪は国外追放の処罰を覚悟した方がいいでしょうね。」
「………………」
「そ、そんな!?」
「あのセドリック殿下が……」
「し、しかもメンフィルにエレボニアの領地を贈与するって……そうなったらその領地を納めていた我々はどうなるんだ!?」
「そ、それに何故アルフィン殿下がメンフィルとの戦争の責任を取る為にメンフィル帝国領で一生を過ごす事になったのですか!?」
「わ、私達はこれからどうなるの……!?」
そしてパントとルイーズの話を聞いたパトリックは複雑そうな表情で黙り込み、貴族達はそれぞれ表情を青褪めさせたり、絶望の表情をしていた。
「「兄様…………」」
「フッ、新たなるクロイツェン統括領主としての威厳は既に身についているな。」
「はい……!将来お兄様は素晴らしい統括領主になるでしょうね……!」
一方その様子を見守っていたエリゼとエリスは驚きの表情でリィンを見つめ、感心した様子でリィンを見つめるユーシスの言葉にセレーネは嬉しそうな表情で頷き
「フフッ、内戦を経験した事で見違えるように成長したわね。」
「えへへ……今のリィン、凄くカッコイイよ……!」
「ああ。さすがはリィンだ。」
サラ教官は口元に笑みを浮かべ、エリオットとガイウスはそれぞれ明るい表情でリィンを見つめ
「もしオジサンが生きていて、今のリィンの発言を聞いたらどう思うんだろうな~。何せ自分の息子に自分がやっていた事が間違っているって言われているようなものだし。」
「き、君なぁ……いい加減空気を読んで発言する事を覚えた方がいいぞ。」
興味ありげな様子でリィンを見つめて呟いたミリアムの言葉を聞いたマキアスは呆れた表情で指摘した。
「――――じきに混乱が収まれば救援が来ます。どうかそれまでご辛抱を。」
「正規軍も今回の事件解決の為に全面的に協力しているわ。例えあんた達が内戦に加担した貴族であろうと救助対象であるから、安心しなさい。」
「ま、アンタ達は大人しくここで待ってなさい。幸いこのフロアには魔獣達の気配もしないから、現状ではここが安全地帯よ。」
「わ、わかりました……」
「どうか一刻も早く事件を解決してくれ……!」
「エーデル君の事、くれぐれも頼む……!」
「頼んだぞ、シュバルツァー……!」
リィンとサラ教官、セリーヌの言葉に貴族達はそれぞれ頷き、ランベルトとパトリックもそれぞれリィン達に声をかけた。
「さてと……―――そろそろ行こう。」
「その前に他のメンバーもこの場に呼び寄せておくべきだろう。このあたりは安全地帯だし、中継地点としてもちょうどいい。」
「あ……そうですね。それではパント卿、お願いしてもいいですか?」
「ああ。」
その後パントの転移魔術によって待機班は新たな拠点となる場所まで移動し、リィンはメンバーをアリサ、エマ、セレーネ、フィー、プリネ、ツーヤ、レーヴェ、クロチルダ、シャロン、レン、シグルーンに編成し直し、探索を再開した。
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