英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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第81話
~隠者の庭園~
「クッ………ユン・ガソル軍の攻撃か!?リセル、構えろ!」
「お下がり下さい、ヴァイスハイト様!ここは私が時間を稼ぎますので、どうか貴方は本陣に………!」
光から現れ、立ち上がった青年―――ヴァイスハイトと女性―――リセルはそれぞれ武器を鞘から抜いて構えて叫んだが
「なっ………」
ヴァイスハイトは目の前にいる人物達を見て呆け
「…………見た所ユン・ガソル軍の者ではないようですが…………貴方達は何者です?人間がエルフどころか天使に加え、さらに魔族と共にいるなんて………」
「それによく見ればマーズテリアの聖騎士やイーリュンのシスターもいる上……あのシスターはまさかアーライナか?………イーリュンとアーライナのシスターが共にいるのも驚いたが、まさかマーズテリアが魔族達と共に行動するとは………」
リセルは警戒した様子でケビン達を見回し、油断なく武器を構えて睨み、ヴァイスハイトはシルフィアとティナ、ペテレーネの服装についている紋章を見て驚いた後興味深そうにケビン達を見回した。
「え、えっと………」
「と、とりあえず俺らは敵と違いますから、武器を収めてほしいんですけど………」
2人の様子にエステルは戸惑い、ケビンは苦笑しながら言い
「……俺の名はリウイ・マーシルン。メンフィル帝国の前皇帝だ。貴殿らこそ何者だ?紋章を見る限りメルキア帝国の者のようだが………」
リウイはケビン達の前に進み出て名乗り、2人に尋ねた。
「………メンフィル帝国?リセル、知っているか?」
「……いえ。申し訳ありませんが私も知りません。アヴァタール地方の国は全て覚えていますから少なくともアヴァタールではないようですが………失礼ですがメンフィルとはどの地方の国なのですか?」
しかしリウイの言葉を聞いたヴァイスハイトは眉を顰めてリセルに尋ね、尋ねられたリセルは戸惑った表情で答えた後、リウイを見て尋ねた。
「何………?」
「余達メンフィルをメルキアの軍人が知らないだと!?」
「私達メンフィルはアヴァタールの北、レスペレント地方を収めている大国なのですが………」
「いくらなんでも私達の事を知らないなんて、ありえないでしょう………それもメルキアほどの大国の軍人が。」
「………どういう事かしら?」
一方尋ねられたリウイと会話を聞いていたリフィアは驚き、プリネは戸惑い、カーリアンは呆れて溜息を吐き、ファーミシルスは眉を顰めていた。
「……確かにアヴァタールの北、レスペレントは知っているが………メンフィルという名の国は聞いたことがないぞ……?」
「はい。現在レスペレントで最も広大な土地を持ち、強国なのは”カルッシャ王国”です。……他にはレスペレントには”魔神”が2柱いると伝えられています。……一柱の魔神の名は周辺国を頻繁に襲い、暴虐の限りをつくす魔神―――――ディアーネ。もう一柱は”モルテニア”という地方に隠遁している魔神―――グラザ。」
「何!?」
「「「えっ!?」」」
「はあっ!?グラザ様が生きているって………ま、まさかあんた達………!」
「……私達の世界の過去の人間………!」
そしてヴァイスハイトに説明したリセルの話を聞いたリウイ、イリーナ、ペテレーネ、エクリアは驚き、カーリアンは驚いた後、呆けて呟き、信じられない表情をし、ファーミシルスは真剣な表情で呟いた。
「過去……?”私達の世界”………?一体どういう意味だ………?」
「……ヴァイスハイト様。これからどうしましょう………少なくともここは私達が先ほどいた場所ではありませんし………」
リウイ達の話を聞いたヴァイスハイトは考え込み、リセルは周囲の景色を見た後戸惑いながらヴァイスハイトを見つめた。
「………………とりあえず、目の前の者達に聞くとしよう。どうやら私達がここにいる事情を知っていそうだしな………」
「ハッ。」
リセルに見つめられたヴァイスハイトは少しの間考えた後ケビン達を見回してリセルに提案し、リセルは頷いた。
「………私の名はヴァイスハイト。メルキア帝国軍千騎長、ヴァイスハイト・ツェリンダーだ。今私達に何が起こっているか……できれば教えてもらいたい。」
「ヴァイスハイト様の副官、リセル・ルルソンです。事情の説明をお願いします。」
そしてヴァイスハイトとリセルはそれぞれ名乗った後、ケビン達を見つめて言った。その後ケビン達はヴァイスハイト達に事情を説明し、自己紹介をした。
「…………にわかには信じ難いな………」
「ええ………目の前の人物達が私達より先の時代の者達という事も驚きましたが………まさか異世界が存在するとは………」
事情を聞き終えたヴァイスハイトは驚きの表情で呟き、リセルはヴァイスハイトの言葉に頷いた。
「……だが、こうして私達の目の前には”彼ら”やこの”影の国”という”現実”がある。一刻も早くセンタクスを奪還する為に彼らと協力し、帰還方法を探すぞ。」
「わかりました、ヴァイスハイト様。」
お互い向き合って会話していた2人はケビン達に向き直り
「……リセルに伝えたように”俺”とリセルも自分の世界に帰還する為に貴方達に協力しよう。」
「よろしくお願いします。」
「ハ、ハハ………こっちとしては助かりますけど………えらく物分りがいいですな……オレ達とは初対面なのに協力まで申し出てくるなんて………」
ヴァイスハイトとリセルの返事を聞いたケビンは苦笑しながら言った。
「これでも人を見る目は養ってきたつもりだ……俺の目から見て、貴方達は十分信用に値する。」
「………私はヴァイスハイト様と常に共にあります。よってヴァイスハイト様が貴方達と協力するのなら、私も共に協力するだけの事。」
ケビンの質問に対しヴァイスハイトは口元に笑みを浮かべ、リセルは微笑んで答えた。
「2人ともよろしく!………あ、そういえばヴァイスハイトさんだっけ?ちょっと気になった事があるんだけどいいかな?」
「何だ?」
「さっき自己紹介の時、”千騎長”って名乗っていたけど………もしかして凄く偉い階級なの??」
「まあ将軍階級だから、”偉い”という言葉に間違いはないが………序列で言えば良くて中の上といった所だから大した事はないさ。」
エステルに尋ねられたヴァイスハイトは苦笑した後、静かな笑みを浮かべた。
「しょ、将軍!?父さんでも准将なのに………!」
「モルガン将軍さんと比べたら、凄く若いよね……?」
「なっ………!?」
「あれほどの若さで将軍とは………!」
「……よほど有能なのだろうな………」
一方エステルは驚き、ミントはモルガンを思い浮かべた後ヴァイスハイトを見て首を傾げ、リシャールとユリアは驚きの表情で見つめ、ミュラーは真剣な表情で呟いた。
「そう謙遜する必要はない。俺の事は気軽に”ヴァイス”と呼んでもらって構わない。こっちとしても仕事でもないのに堅苦しい態度で接されると息がつまる。」
「フフ……ヴァイスハイト様らしいですね。」
「リセル、君もだ。」
「え……?」
「今は仕事ではないしな。リセルに”ヴァイス”と呼ばれるだけで俺も落ち着く。」
「なるほど………では、お言葉に甘えて……ヴァイス様。」
ヴァイスハイト―――ヴァイスの説明を聞いたリセルはわずかに雰囲気を柔らかくしてヴァイスに微笑んだ。
「あはは……同じ将軍のモルガン将軍とはえらい違いね………けど、ヴァイスさんも凄いよね。その若さで将軍なのに大した事ないって………」
「フッ……君を含めて君たちの仲間の中には侯爵、皇子、王女どころか次期王位継承者や皇帝、皇妃もいる。その方達に比べて庶子の俺の今の身分など大したことはないさ。」
「ほう………?」
「へっ……”庶子”って………」
「まさか………王族の方なのですか?」
ヴァイスの話を聞いたオリビエは驚いた後ヴァイスを見つめ、エステルは呆け、クローゼは驚いた後尋ねた。
「……よろしいのですか、ヴァイス様?」
一方リセルは心配そうな表情でヴァイスに尋ねたが
「構わないさ。知られた所で彼女達は俺達にとって未来の人間だ。今後の支障にはならないし、国内の上流階級の者達も知っている事。俺にとってそれほど重要な情報ではない。」
尋ねられたヴァイスは静かな笑みを浮かべて答えた。
「………ヴァイス君だったね。一つ聞きたいことがあるのだがいいかな?」
「貴方は……オリヴァルト皇子でしたね。私に聞きたい事とは何ですか?」
オリビエに声をかけられたヴァイスハイトは自己紹介の時の名前を思い出しながら尋ねた。
「ああ、ボクの事は気軽に皆のように”オリビエ”と呼んでもらって構わないよ。それにわざわざ仕事とプライベートの口調を使い分ける必要はないよ。君は先ほど自分の事を”ヴァイス”と呼んでいいと言った……つまり君は今はプライベートでボク達に接している訳だろう?」
「フッ、これは一本取られたな………それで?何か聞きたいんだ?」
オリビエに指摘されたヴァイスは口元に笑みを浮かべた後尋ねた。
「先ほど君自身が言ったように将軍という軍でもかなり上の階級でも君自身は全然満足していなく、常に上を目指している様子………そこまで上を目指す理由とは一体なんだい?」
「………………」
オリビエの質問を聞いたミュラーは真剣な様子でオリビエを黙って見つめ
「答える前に一つ聞きたい………何故、そのような質問を?」
ヴァイスは興味深そうな様子で尋ねた。
「なに………同じ庶子の身として参考までに聞いておきたいのさ。」
「え………」
「ほう?君も庶子とは………………」
オリビエの答えを聞いたリセルは驚き、ヴァイスは驚いた後考え込みやがて、オリビエを見つめて言った。
「”庶子”である事。それが俺が上を目指す理由だ。」
「………?それは一体どういう事だい?」
静かな表情で答えたヴァイスの答えを聞いたオリビエは不思議そうな表情をして尋ねた。
「……俺が幼い頃に逝った母の想いに報いる為だ。………母は生前俺にこう述べていた。半分であろうと俺には尊い血が流れており、皇族である事に変わりはないのだと。『皇族である自覚と誇りを持ち、誰よりも皇族らしくあれ』。俺という”存在”は庶子という”烙印”があると同時に母の言葉も事実。母の……俺自身の為に俺は常に上を目指す。それが俺が上を目指す理由だ。」
「ほう……………」
「うむ!ヴァイスハイトよ、お前の母は良き母であったのだな……!余からすればお前の母やお前自身はそこらの王族共より王族らしいぞ!」
ヴァイスの説明を聞いたリウイは感心し、リフィアは表情を輝かせ
「………立派な母君だったのですね…………」
クローゼは眩しそうな表情でヴァイスを見つめていた。
「…………そうか…………素晴らしい母君だね……………ありがとう………良い話を聞けたよ…………」
「………………………」
ヴァイスの話を聞いて呆けていたオリビエは静かな笑みを浮かべ、オリビエの様子をミュラーは表情をわずかに辛そうに変えて見つめていた。その後ケビン達は次の”試練”を超える為に相談してメンバーを編成し、ケビン、エステル、アドル、ナユタ、ノイ、セリカ、リウイ、ウィル、ヴァイス、セオビット、シルフィエッタ、サティア、エレナのメンバーに編成した。
「では早速”試練”とやらに向かおうか。」
「ヴァイス様、どうかお気をつけて………」
ケビン達を見回して言ったヴァイスにリセルは心配そうな表情で見つめた。
「心配するな、リセル。こちらにはかの”神殺し”に加えて、”古神”や”魔神”までいる………それに他の者達も聞けばそれぞれの国を、故郷を守る為に戦い抜いた歴戦の戦士達。……下手をすれば我がメルキア帝国の全軍を軽く超える戦力だ。どこに不安要素がある?」
一方ヴァイスは静かな笑みを浮かべてリセルを見つめて尋ねた。
「フフ、そうですね。ご武運を。」
「ああ。」
そして自分の答えを聞いて微笑んだリセルにヴァイスは頷いた。
「あ、一ついいかい?」
「なんだ、ウィル?」
その時ウィルがヴァイスに声をかけ、声をかけられたヴァイスはウィルに振り向いた。
「2人共今現れたばかりだから、装備も俺達と比べたら見劣りするだろう?よかったら俺が2人の装備を創るけど。幸い材料は今までの探索で手に入れた材料が豊富にあるから今すぐにできるよ。」
「そういえばウィルは”工匠”だったな………職人に創ってもらえるなら、ぜひ頼みたい所だ。よろしく頼む。」
「わかった。とりあえず今は探索のメンバーのヴァイスの分だけ創るね。リセルさんの分は探索から帰った時に創るよ。」
「はい、お願いします。」
そしてウィルはヴァイスに新たな大剣――――”神剣リグライア”と新たな重鎧――――”ガードナー”を創って、ヴァイスに渡して、渡されたヴァイスは装備して感触を確かめた。
「どうだい?」
「…………良い剣と鎧だ。フッ……我が軍にぜひ欲しい人材だな………」
ウィルに尋ねられたヴァイスは静かな笑みを浮かべてウィルを見つめた。
「ハハ、悪いけどそれはできない頼みだね………後リセルさんの”砲剣”だっけ?初めて見る武器だな………うん、今から創るのが楽しみになって来たな。」
「は、はあ……?ただ私のこの”砲剣”は魔導技術が必要となってきますが……大丈夫でしょうか?」
興味深そうな様子で自分の武器を見つめられたリセルは戸惑った後尋ねた。
「ああ、それは大丈夫だよ。俺も魔導技術の武器は創れるし。」
「ほう……なら、リセル。後で彼の技術を見せてもらうのがいいかもしれないな。元の世界に戻った時、彼の魔導技術があれば今後の俺やリセル自身の力となるかもしれないしな。リセルは”砲剣”の整備の為の魔導技術を知っているから、ある程度はわかるだろう?」
ウィルの答えを聞いたヴァイスは驚いた後、リセルを見つめて提案し
「そうですね………わかりました。ウィル殿、後でご教授の方、よろしくお願いします。」
提案されたリセルは頷いた後ウィルに頭を下げた。
「え、え~と……別に大した事じゃないから頭を下げなくていいよ。」
一方ウィルは苦笑しながら答えた。その後ケビン達は周遊道に転移し、シルフィエッタとセオビットは石碑に手を触れてケビン達と共に新たな”試練”の場所に転移した。
~宿命の城~
「……!やっぱりここだったのね………」
「………まさかこんな形で帰ってくる事になるなんてね…………」
転移して来たシルフィエッタは周囲を見回して静かに呟き、セオビットは複雑そうな表情で呟いた。
「……その様子からするとかの”破戒の魔人”が拠点としていた場所か?」
2人の様子を見たリウイは真剣な表情で尋ねた。
「……はい。――――”ラエドア城”………”ザルフ=グレイス”の拠点でリガナールの悪夢が始まった城です…………」
「フム………となると”守護者”は恐らく予想通りの奴という事ですな………」
(クク……これだけ距離が離れていても感じるぞ……とてつもない”魔”の気が……!ハハハハハハ!たえぎってくるだの……!)
辛そうな表情で説明したシルフィエッタの話を聞いたケビンは真剣な表情で呟き、ハイシェラは不敵な笑みを浮かべていた。そしてシルフィエッタとセオビットは真剣な表情になってケビン達に振り返り
「……みんな。”守護者”は私の父だからと言って、遠慮をする必要はないわ。あの男との縁はとっくに切ったから遠慮なく戦って!」
「……皆さん………私達とあの男の因縁を断ち切る為にどうか力を貸してください……!」
セオビットはケビン達に叫び、シルフィエッタは頭を下げた!
「……”星杯騎士”としてそんな”外法”、ほっとく訳にはいかんしな。遠慮なく戦わせてもらうで!」
「人として……遊撃士として……全力で戦うわ!」
「僕も全力で戦うよ!」
「”ジェノス”の末裔として……人に仇名す”魔”を滅します!」
2人の言葉に答えるかのようにケビン、エステル、アドル、エレナはそれぞれ武器を空へ掲げて叫び
「勿論僕達も一緒に戦います!」
「みんなで力を合わせてやっつけるの!」
「……俺とイリーナが誓った”覇道”を阻むのなら相手が何者であろうと滅するのみ!」
「全ての種族が共存して行く為に………俺も全力で戦う!」
「皇族として………かの魔人を討つ!」
ケビン達に続くようにナユタは武器を空へと掲げ、ノイは片手を空へと掲げ、リウイとウィル、ヴァイスも武器を空へと掲げて叫び
「……争いのない世界を創る為に今こそ、この剣を取ります。――星芒より出でよ、”天秤の十字架”!!……私も共に戦うわ……!」
「……俺とサティアを……そして俺の仲間を傷つける者は斬るだけだ……!」
サティアは”天秤の十字架”を召喚してその手に持って、セリカと共に剣を空へと掲げて叫んだ!
「……行くわよ、みんな………!」
「イグナート………今こそ貴方との因縁を終わらせます……!」
そしてセオビットはケビン達に号令をかけ、シルフィエッタは決意の表情で先に進む道を見つめていた。
こうしてケビン達は探索を開始した………!
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