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【ヒロアカ】ミライセレクト
前書き
旧タイトル「僕らのヒーロー作戦もよろしく!」から続く全話は、色々と考えた結果、一度全部非公開にして書き直すことにしました。これが第一号です。
人は運命に沿って生きている、と俺は思う。
子が親に影響されること。それはその親に元に子が生まれてきたという一種の運命だ。それとは別に「運命的な出会い」などという突然訪れる運命もある。大小性質は様々だが、人々はこの運命に影響されながら、時には運命を共有して生きている。
それは時に楽しく、時に悲しく、そして時々神秘的にさえ思えるほどに複雑に絡み合いながら一つの道筋を形成してゆく。
そういう意味で、「ヒーロー」は実に数奇な運命を辿っている場合が多い。
強靭な精神力と「個性」という超常的な力で気に入らない運命を力づくで捻じ曲げ、人々の笑顔を勝ち取ろうとする。時にそれは力ある者の傲慢だとも言われるが、俺は何事も貫き通せば王道になると思っている。
俺――水落石択矢とは、そんなことを取り留めもなく考える男だった。
俺の個性は『未来視』、つまり未来予知だ。こいつは自由に発動させられないので弱いけど、自分や周辺の危機を察知しやすいという意味では強い。直接的な戦闘能力はないが、便利という意味だ。つまり日常生活では重宝するが、ヒーロー活動にはそれほど向いていない。だから俺は雑誌やテレビ、或いは現場でヒーローの活躍を見るので満足であり、ヒーロー飽和社会の中で無理にヒーローを目指そうとは考えていなかった。
なにより、俺には非常に楽しみにしている物語があったのだ。
『僕のヒーローアカデミア』――『前世で大好きだった俺のお気に入り漫画』だ。
前世の記憶なんて口に出してしまうとイタい奴なので誰にも言っていないが、俺にはそのような記憶がある。何がどうやってこの世界に俺がいるのかはまるで分らない。「第4の壁」的なサムシングなのかもしれないが、真相なんぞ分かる筈もない。案外理由なんてないのかもしれないと思っているので気にしてはいないが、とにかくそう言う事だ。
だから俺は物心ついたころからデクくんをはじめとする未来のスーパーヒーローたちの物語が楽しみでしょうがなかった。参加するのは流石に無理そうだったが、一ファンとして原作のさらに先を期待しているという訳だった。
よって、目指すのはヒーロー受け取り係などと揶揄される警察官。堅実に働きながらもヒーローに近づく機会があるという割と不純な動機だが、個性が弱いけど世の役に立ちたい人にとってはありふれた選択でもあった。
実家の近くの剣術道場に通ってみたり、エアガンで軽いサバゲにハマってみたり、遊んでばかりいると滅茶苦茶怒るじいちゃんを恐れて勉強したら予想以上に高得点を取って褒められたり……まぁ、充実してたと思う。
――魔が差した、というべきか。
俺はあるとき、デクくんが雄英高校に通う前の海岸清掃トレーニングが行われている粗大ごみ海岸の場所を特定した。今の時期ならデクくんはおそらく凄まじいハードワークを行っている筈だし、運が良ければオールマイトのサインが貰えるかもしれない。そう思った俺は、休みの日を利用して海岸に行き、さりげなーく走り込みをしているデクくんとすれ違った。
瞬間、俺の『個性』――未来視が彼のとんでもない未来を映し出した。
砕けるプロテクター、裂ける繊維。深く切り裂かれた肉から噴き出る致死量の鮮血。
驚愕に目を見開き、吐血で全身を真っ赤に染めるヒーロー風のその青年は、鮮やかな緑髪。
それは――「緑谷出久」の死だった。
のんきに物見遊山を決め込もうとしていた俺の脳に、この未来はメガトン級の威力で響いた。
具体的な内容はまるで分からない。ぼんやりしたイメージからして、そのデクくんのヒーロースーツはデクママ特製の一号とも改修された2号とも違った形をしていた気がするので、かなり未来のことだとは思うが……それでも恐らく今までに見てきた未来から逆算した経験則からして3年以内くらいにそれは起こると確信した。
未来視で見た未来には、ある程度の決定力が発生する。
何かのきっかけで変化させることはできるが、きっかけを自分で作らなければ未来は覆らない。
つまりこの瞬間、俺が何も選択しなければデクくんが死んでしまうことが確定してしまった。
遠ざかっていくデクくんの背中を呆然と見つめ、それが見えなくなってから俺は口元を抑えてうめいた。軽はずみな行動が、最悪の未来を知るきっかけになってしまった。決定的に俺は彼と関わってしまったのだ。
「やるしか、ない……よな?」
そこからの俺の決断は早かった、と思う。
――俺が未来を変えるしかない!!
俺はすぐさま実家に戻って進路を雄英高校ヒーロー科一本に絞った。デクくんの未来を変える為に一番都合がいいのは、彼と同じ雄英高校ヒーロー科のA組にいることだ。割とヴィランに襲われまくるおっかないクラスだが、俺としてはそれを気にする余裕はなかった。
デクくんはオールマイトの力を受け継いでこれからのヒーロー界を牽引していくであろう、俺にとっての希望の象徴。それが死んだら………恐らくこの世界で最後に笑うのは 死柄木弔――どす黒く純粋な悪意の塊だ。そうなったらもう俺の暮らす日本は滅茶苦茶になってしまう。
今になって思えば、あの夢はまさに「俺にとって最大の危険」となる予知だったんだろう。デクくんが死んじゃったらこの「ヒロアカ」の世界は終了したも同然だ。俺は、自分の為にもみんなの為にも、ヒーローにならざるを得なかった。
幸か不幸か、或いは俺のような転生者の影響か、来年度の雄英高校ヒーロー科入試枠が拡大されて36人から44人になっていたのは都合がよかったといえるだろう。俺は直接的な戦闘能力を持たなかったから、只管に体を苛め抜いた。
「入試に必要なのは覚悟と戦闘能力とレスキューポイント……ちぇっ、原作知識がこんなセコイところで役に立つとはな!!」
入試まで時間がない。俺は必死になってヒーロー計画を練りながら未来へ思いを馳せた。
長くなったが、そろそろプロローグはおしまいだ。
ここから始まるのは、俺のデクくん生存を賭けた長い長い戦いの物語だ。
後書き
最初より少しはマシになったかなーとか思ったりしますが、こんな感じに書き直しました。
続きも書き直すかはわかりません。
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