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歌集「春雪花」

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 小夜更けて

  時節返らむ

   寒空の

 そぼ降りし雨に

    思うものかな



 真夜中…時節は初夏だというのに冷え込み、外では冷たい雨がしとしとと降っている…。

 目を瞑れば…まるで晩秋を思い立たせる陽気に、些か気が滅入らされてしまうものだ…。

 そんな夜更け…彼はどうしているかと考えてしまい、どうにも会いたくて仕方無くなってしまった…。

 全く…この寒空のせいに違いない…。



 逢ふもなく

  恋しき影の

   ぬくもりの

 求むや寂しき

     初夏の暁



 今や会うこともなくなった彼…。

 恋しくて仕方無く、彼を求めてしまうのは…なんとも愚かなことだ…。

 だが、心はどうにもならない…考えないようにと思いはしても、いつも彼の姿を思い浮かべてしまうのだから…。

 そんな寂しさを抱いて空を見上げれば…もう朝になりかけ、辺りからは様々な鳥の囀ずる声が聞こえていた…。

 もう初夏なのだ…ただ溜め息だけが洩れるだけ…。




 
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