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新妹魔王の契約者~龍剣使いの神皇帝~

作者:黒鐡
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2巻
  《里》からやって来た元幼馴染とお目付け役

俺が槍を抜くと崩れ去ったようだけど、静かに観戦している相手を呼び出した。

「おい、そこに居る奴。とっとと出て来い、どうせ見ていたのなら姿を現せっつうの」

「・・・・・」

俺は銃を抜き撃ち放つと槍で防いでみせたようで、姿を現した一人の青年が槍を持って現れた。いつの間にか銃を抜いた事より、剣から槍へと変化した事で驚愕と言う顔付きをしていたな。

「おや、誰かと思えば高志か。こんな所で出会うとはな」

「・・・・誰なの一真?」

「早瀬高志・・・・《里》にいた頃の幼馴染だったかな?今となればどうでもいいが、柚希と同じくのようだけど俺の事を知らない様子だ」

「そりゃそうですよお兄様。あの時は偽名として《里》にいたのですから」

この空間に入って来れる存在だと並みの力を持つ者に限られるだろう。俺が名で呼ぶと誰だコイツ?と思っただろうが、《里》にいた頃の分身体によると己の能力を暴走結果、人心を癒える事ない傷を負わせて里を追放される事になった原因だろう。柚希のように事件を経ても尚、俺に対して好意的な人間は少なくとも今の俺には何も弊害はないけどね。

「おや。俺を見る目としては、久しぶりに再会した幼馴染に向けられたのではなくまるで初対面と言う感じだ。聞きたい事があるけどさ・・・・何でオメエがその槍を握ってるんだよ?」

「うん正解、とでも言っておこうか。謎の剣術使い君、それは『白虎』だよ。にしても何故高志の事を知っているのか、未だに謎だねぇ。殺気と言い並みの者とは思えないよ」

殺気を籠めて質問すると別の誰かが答えた事で、深雪達が振り返るとそこには糸目の青年が居た。青年を見るなり、俺は更に表情を鋭くさせて深雪達を守るかのように動いた。

「何故ここに居るんだ?斯波恭一」

「僕の事を知っているなら君は何者なんだい?」

「俺の事は謎の剣術使いだけだが、まだ自己紹介は止めておこう。役者が揃っていないのでね、そちらで言う謎の剣術使いで間違いないけど」

「謎の剣術使いについて情報が無かったから、やっと拝めるようで何よりだが何故俺達の名を知っているんだ?」

まだ名を名乗る訳にはいかないので、とりあえず謎の剣術使いと言う形で剣を構えている俺。まだ役者が揃っていないと言うと、勇者側は役者とは何だ?と言う顔付きをしていた。いずれ分かる事だけど、正体については揃い次第真実を語るか。

「では本題へ入ろうか、何故勇者の一族がここにいる?監視側が足りないとでも言うのか」

「いいや、監視なら柚希ちゃんで充分だけど逆さ。監視では不充分だと判断したのさ、君が何者かは分からないけど先代魔王の力を受け継いだ娘を守護していると言う事は穏健派の魔族か元勇者の可能性が高いね」

「斯波さん。まさかこの剣術使いが刃更だと言いたいのか?」

「そこまでは言っていないけど、もし刃更だとしても魔剣ブリュンヒルドを持っていなくて戦闘タイプもスピードではなく万能だ。先程の戦いを見るに、剣術だけでなく体術を得意としている元勇者はいないよ」

「お喋りはそこまでにしときな。どうせ《里》は、成瀬澪を準S級監視対象から準S級消滅対象へと切り替えた事でここにいる。しかも正式な決定としてお前らはここに来たようで、一族としての使命を果たす為とかだったか。冗談ではなく事実なら尚更、俺らを舐めているとそちらが死にに来ましたと言っているようなもんだ」

挑発のように告げると高志はそれに乗るよう槍を構えるけど、斯波は今回戦力じゃなくてお目付け役だろう。澪としては殺しに来た相手がいるにも関わらず、深雪の背に隠れているので何とか落ち着いている様子。監視から消滅となれば誰だって不安がる。澪の考えは勇者の一族と敵対する道は避けたいと言う考えであり、現魔王派の魔族を相手にしながら勇者の一族と戦うのも慣れている。

『こちら織斑、現在勇者の一族と交戦中。確認として聞きたいが《里》は本当に消滅対象にしたのか?』

『その通りです。現在《里》にいる諜報員からの通達だと、それに関しては正式に決定されたようです』

『了解。こちらはこちらなりに戦ってやる』

『織斑様、結界外でも大きな進展はないのでこのままでどうぞ』

元勇者なら兎も角、神族で上位神だと言う事を知った柚希と解り合えたから買い物も出来た。現魔王派も勇者の一族も澪ではなく、魔王ウィルベルトの娘だとな。すると静かに澪の肩を置かれる手、この場で二人の内の一人である深雪が静かに見ていた女性。家族として妹として守る兄兼父である織斑一真も静かに銃と剣を構えたままとなる。

「そちらが何者かはさておき、相手が相手だからこちらも遊びで来た訳ではない。《里》を追放された刃更なら兎も角、君達は元勇者や魔族でもなさそうだから一般人と言う感じだ。・・・・邪魔をするなら敵としてみなすよ?」

「上等だ、そちらから喧嘩を売ってきたのなら正当防衛に繋がる。それより聞きたい事がある・・・・柚希はお前らの元にいるのか?」

「ん?ああ、柚希ちゃんなら・・・・」

「やはり・・・・気配だけで感じたが、柚希も敵になっちまうとは」

斯波の背後から一人の少女が姿を現すが、どうやらまだ俺の正体を言ってないのか。俺の呼びかけに一瞬こちらを見るけど、すぐに視線を逸らした事で敵と認識するしかないらしい。こちらは魔王の娘を守護者であちらは勇者の一族として、澪討伐しに来たと言う事は自動的に戦う事となる。

「で?《里》の奴らは柚希も戦わせるつもりなのか?」

「・・・・どう言う意味だ?」

「そのままの意味だ、柚希は里に居た時から大人しくて戦う事が好きではなかったはず。澪の監視役に選抜されたのは《里》の方針だろうが、ソイツを無理やり戦わせようとしていない・・・・」

だろうなと言おうとしたら、言葉を遮るかのように横から雷球が迫ってきた。雷球が間合いに入った瞬間、剣での真っ二つにより雷球はそのまま深雪の方に向かう。まるで予測していたかのようにして、深雪と澪に万理亜がいる周辺一帯に守護結界により無傷。飛んで来た方向の路地陰から一人の少女が姿を現したけど、俺が雷球を真っ二つにして守護結界により無傷の事を見たのか顔が驚愕だった。

「ほう、エレメンツによる攻撃と言う事は精霊と交信して自然現象を自在に操って戦う『精霊魔術師(エレメントマスター)』ね。具現化武装は『霊操術の篭手』だったかな・・・・お前まで俺らの敵になっちまった訳か、胡桃よ」

「なっ!何でアンタが私達の事を知ってるのよ、裏切り者である刃更なら兎も角無関係なアンタらがお姉の事を知ってるような口で言わないでよ!」

「胡桃、一真の正体は・・・・実は刃更なのよ」

「何ですって!?容姿や顔付きや声まで違うのよ!お姉は騙されているのよ『それが事実だと言ったらどうする?胡桃』何よ」

先代魔王の娘を守ると言うふざけた真似だが、それは東城刃更が言うセリフであり俺からの口だとそう言わないでこう告げる。五年経ったけど顔付きや声だけで知り合いだと理解した上で正体をバラす時が来たようだな。

「では改めて自己紹介をしようか。俺の名は織斑一真、そこにいるのは俺の妹である深雪だ・・・・《里》ではこう名乗っていたな。コホン、俺の名は東城刃更だ。久しぶりだな、五年振りとも言っておくがこれでも信じられないとでも言うのか?」

「容姿が違うのにどうして刃更の声が響く!」

「そりゃ本人が名乗っているのだからな・・・・何時までもこの声で名乗るのも止めておくとしようか。いい加減、偽りの記憶を植え付けられた事に気付け。俺の出身が里出身者ではない事をな」

「・・・・なるほどねぇ。こりゃ僕らの情報不足か今まで《里》でも知られてないのかもしれないけど本当のようだ、声を変えるだけで本人か分からないが五年前の波動を感じ取れたから刃更本人って事らしいね。いや偽名だと言う事は本名は織斑一真らしいから、今度から一真と覚えておこう」

改めて名乗った事で、俺は銃をホルスターにしまってから剣も鞘に入れた。そして空間に入れて、五年の間に何かあったのかを考えていたが相手は槍と籠手を構えていたけど今の俺にとって武器無しでも余裕で倒してしまう力を持っている。コイツらが居た時から、既に結界はラードゥンによって再展開されて強度も増している。

『ふむ。五年の間に何が起きたかは知らんが、俺らの知らない間に何かあったのは事実』

『お兄様は聖ヶ坂学園で柚希さんと再会しましたが、五年と言う短い間に変貌してしまった。里を離れてから柚希さんを知る権利も無ければ、先代魔王の血を引く澪を守る事で勇者の一族と敵になってしまいました』

『俺が刃更だったら裏切り以外の何物でもないが、どうやら念話している間に動きがある』

「俺らと念話してる間に攻撃するバカがどこにいるんだよ!」

霊槍『白虎』を持つ高志と籠手を装着した胡桃が俺に斬り掛かろうとしたので、俺は槍を掴んで腹に蹴り掛かってから再び雷球で攻撃しようと重力制御により地面へと張り付けにされていた。突如の重力が体に襲った事で立ち上がろうと、俺が重力を上げている限り永遠だがそれを制止しようと斯波が結界に殴りつける。

「いったぁぁぁ・・・・この結界は一体何だ?結界を張った魔族は死んだから、僕の攻撃一つで壊れるはずなのにまるで張り替えたみたいだ」

「当たり前ですよ。それは私が張り替えた結界であり、魔族が死んでから強度を倍にしてやったのですからね」

「君は誰なのかは良いとして、一真。高志と胡桃を解放してくれないかな『敵に情けをする程、俺は甘くないが』それは分かっているけど、ここで決着すると面白くないでしょ?一真の実力は未知数だと知った上で、ここを破壊されると厄介だろう?

「いいだろう。ただし、俺の実力がこれで本気に見えたら大間違いだからな」

そう言って高志と胡桃を解放してやると、見事に地面が凹んでいた。ラードゥンは深雪付近にいて、俺は戦闘態勢を解除してからの合流。俺らの本気を見せるような空間だと、周囲に被害が出てしまう事を承知でやるのか?と思った。魔族は死んでいるが、生憎とラードゥンが張り直した結界だからここで戦闘出来る。

「困るな、高志と胡桃ちゃんも・・・・確かに今回やるのは君達だけど、相手がどうあれ感情的になり過ぎるなって言っておいた筈だよ。僕はただのお目付け役で、《里》からは先代魔王の娘を守護している者との戦闘を禁止されているんだからさ。余り僕を働かせないでくれるかい?ま、今の状態じゃ一真達に勝てる勝率は低いけどね」

「・・・・・」

「っ・・・・解ってるよ!」

高志と胡桃は不機嫌そうにしながらも跳躍し、斯波と柚希がいる所に着地した。重力に潰されたのか、循環器が苦しそうに見えたが大丈夫だろう。勇者の一族は戦闘後の回復が早いし、まだまだ力不足を感じながらもこちらを見ていた。

「そう言う訳だから一真、とりあえず今日の所は挨拶として受け取って構わない。下手に街を破壊されちゃったら長老達の血圧が上がるし、恐らく一真=刃更だと言う報告はさせてもらう。この決着は一週間後、僕らの戦闘に耐え得る結界空間を準備するけど」

「結界ならラードゥンが得意だ、俺の仲間であるコイツは障壁と結界を得意とするドラゴンと言っておこう。ドラゴンがヒト化しているのもお初に見えるね、一週間後に決着を付けるならもう少し力を付けとけ。剣を抜くには雑魚過ぎて話にならん」

「あー・・・・もしかして僕も雑魚扱いなの?」

「だと言ったら?いくら斯波相手でも今の俺はお前を瞬殺出来る力を持っているぞ」

そう言って『死神の眼』を発動させたのか、高志と胡桃に斯波の三人は幻覚として自分の首と体が分離する事を見た。結界を張るにしても実力不足なのは変わらない、ならばハンデをくれてやると言うとハンデ無しでらしい。結界を張るにしても、適した場所はアイツら知らん様子だ。

「生憎と結界を張るにしても、僕らはこの街を全て把握していない。どこにするかは分からないけど、場所が決まり次第連絡するよ。君の実力としては僕も行きたいけどお目付け役だからね、こちらは柚希ちゃんと胡桃ちゃんと高志が相手をするよ」

「いいだろう、こちらは俺と深雪でいいぜ。澪と万理亜は今回斯波と一緒に見学しといてくれ、俺と深雪だけで充分だ」

「人数的には些かだけど、ハンデとしてなら三対二でもいいよ。・・・・そんじゃ、一週間後に」

そう言って斯波達は背を向けて去った後、結界を解除して元の場所へ戻ってきた。遠くにいた護衛者の蒼太と沙紀と合流後、俺らの家に帰るとすぐに迅へ電話した。一応今何してるか知りたいし、魔界にいるけど電話は通じるから大丈夫だけどな。 
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