英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第32話
~月の僧院~
「クロウ、無事!?――――なっ!?」
戦闘終了後その場にグリアノスが現れるとクロチルダの幻影が現れ、クロチルダはクロウとオルディーネの惨状に絶句し
「お前は確か……―――”蒼の深淵”とやらか。僧院の結界は先程俺達の仲間が破壊した。まだ無駄なあがきをするつもりか?」
セリカは剣の切っ先をクロチルダに向けて睨んだ。
「……そのつもりはないわ。敵である貴方に頼むのは間違っていると自覚しているけど、ここはどうか見逃してもらえないかしら?後日貴方に見逃してもらった恩を必ず返す事を約束するわ。」
「…………リィンやその家族にリィンとエリゼの妹―――エリスを誘拐した事を謝罪し、”騎神”同士の決着を除いた今後起こる”結社”の”計画”とやらに2度とシュバルツァー家に手を出さない事とシュバルツァー家に危機が訪れればお前自身やお前の子孫が力になる事を誓え。それがお前達を見逃す条件だ。」
「なっ!?…………………………わかったわ。だけど一つだけ聞いてもいいかしら?」
セリカが出した条件に驚いたクロチルダは少しの間考え込んだ後疲れた表情で頷き、そして予想外の条件を出したセリカの真意を知る為に問いかけた。
「何だ?」
「何故わざわざほとんど接点のないリィン君達―――シュバルツァー家の為にそんな条件を出したのかしら?」
「………………ただの気まぐれだ。――――行け。」
クロチルダの問いかけに対してセリカは目を伏せて黙り込んだ後答えを誤魔化してクロチルダに去るように促し
「……失礼するわ。」
セリカに促されたクロチルダは転移魔術を発動してクロウやオルディーネ、そしてグリアノス自身を転移させた。
「セリカ様。」
グリアノス達が去るとエクリアがセリカに近づいてきた。
「アリオス・マクレインを始めとした国防軍は撤退しました。」
「……そうか。後は”星見の塔”がどうなっているかだな。」
「ロイドさん達にはエリゼに加えてカーリアン様とロカ様も協力していらっしゃるので、問題ないかと思われます。それよりもセリカ様……何故あのような条件を出されたのですか?」
セリカがクロチルダに突きつけた条件が気になっていたエクリアは戸惑いの表情でセリカに尋ねた。
「…………お前にとってエリゼはお前が手塩にかけた大切な”弟子”だと聞いている。お前の”主”としての”義理”を果たしたまでだ。」
「セリカ様…………私とエリゼの為にありがとうございます。ですがセリカ様。セリカ様は”飛燕剣”をリィンさんにご教授なされたとの事。リィンさんの”師”としても、リィンさんの”約束”を叶える為に”C”をお見逃しになられたのではないですか?」
セリカの意外な答えに目を丸くしたエクリアは頭を深く下げた後ある事を思い出し、苦笑しながらセリカに問いかけ
「別に奴の事は気にしていないし、弟子だとも思っていない。ただ後でリィンと契約しているアイドスが文句を言って来るかもしれないから、奴等を見逃しただけだ。――――行くぞ。」
「かしこまりました。(フフッ、エステルさんの影響を受けている事によって以前以上にお優しくなりましたね……)」
セリカは静かな表情で答えた後外套を翻して仲間達の所に向かい、エクリアも続くようにセリカの後を追った。
~1時間後・オルキスタワー・屋上~
「………………」
1時間後クロスベルを覆う結界は消滅し、その様子をキーアは悲しそうな表情で屋上から見つめていた。
「―――申し訳ございません、”零の至宝”殿。私達の力が不甲斐ないばかりにこのような事になってしまって……」
するとその時クロチルダがキーアに近づいてきた。
「ヴィータ……クロウの手当てをしなくていいの?酷い傷を負ったって聞いたけど……」
「……実はその件についてご相談に参りました。”零の至宝”殿、本来なら”部外者”である私達をこのクロスベルに受け入れて頂いたという恩もある上、ミシェラムに続いて月の僧院の防衛失敗という失態を作っておきながら、ずうずうしい頼みがあるのですがどうか聞いて頂けないでしょうか?お願いします……!」
キーアの問いかけに対して重々しい様子を纏って答えたクロチルダはキーアを見つめて頭を深く下げた。
「……もしかしてクロウとオルディーネをキーアの力で治して欲しいの?」
「!!はい…………私でできる事でしたら、何でもする所存です。どうかクロウの失った腕を繋ぎ直し、深刻なダメージを受けたオルディーネの修理をお願いします……!」
「…………もう2度とクロスベルやロイド達を”結社”の”計画”に巻き込まない事を約束して。それを約束してくれたらヴィータの望みを叶えてあげる。」
「―――かしこまりました。”身喰らう蛇”の”蛇の使徒”―――第二柱”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダの名に賭けてその条件を必ず守らせて頂く事を確約致します。」
「うん……それじゃあクロウとオルディーネをここに連れて来て――――」
その後クロチルダは転移魔術で眠りについているクロウとオルディーネをキーアの前に連れて来た。
「……………………」
キーアが全身から神秘的な光を放つとクロウとオルディーネはそれぞれ光に包まれ、光が消えるとクロウの失った腕は元通りになっており、更に四肢のほとんどを失い、機体全体にも深刻なダメージを受けていたオルディーネも元通りになっていた。
「よかった………オルディーネ、そちらも問題ないわね?」
クロウの様子を見て安堵の表情をしたクロチルダはオルディーネに問いかけ
「問題ナイ。霊力、ダメージ共ニ完全回復シテイル。」
オルディーネはクロチルダの問いかけに淡々と答えた。
「本当にありがとうございます、”零の至宝”殿。このご恩は一生忘れません。」
そしてクロチルダがキーアに感謝の言葉を述べたその時
「あらあら……私達に声もかけずに、キーアさんに力を使わせるなんて、随分と厚かましい”部外者”ですわね?」
嘲笑を浮かべるマリアベルがキーア達に近づいてきた。
「…………ッ……!」
「ベル………ディーターが捜してるみたいだけど行かなくてもいいの?」
マリアベルの顔を見た瞬間クロチルダは嫌悪を示すかのように表情を歪め、キーアは複雑そうな表情でマリアベルに問いかけた。
「うふふ、お父様にはもう少し焦っていただきましょう。やはり”鐘”の共鳴がないと”結界”の展開は難しいですか?」
「……うん、今のままだと。あの子達は動けるけど”空”の力は使えないかな……―――ロイド達、来るよ。」
「フフ、困りましたわね。これでは予定通り動くしかなくなってしまいますわ。”彼”のプラン通りに。」
キーアの話を聞いたマリアベルは口元に笑みを浮かべて言った後怪しげな笑みを浮かべ
「…………………」
キーアは黙り込んでいた。
「そうそう、貴女達が今後どこに落ち延びて何をするつもりか知りませんが、エレボニアから落ち延びた貴女達を匿った恩とキーアさんに力を使わせた恩をまとめて返して頂きましょうか?」
「……貴女達に声もかけずに”零の至宝”殿を頼った事は謝るわ。でも、”零の至宝”殿の件は今後”結社”がクロスベルや”特務支援課”に手を出さない事を条件にクロウとオルディーネを治してもらったから、”零の至宝”殿の件は関係ないわよ。」
マリアベルに問いかけられたクロチルダは厳しい表情で答え
「まあ……既にキーアさんとそんな取引を………フフ、キーアさんの件はそれでいいとしても、エレボニアから落ち延びた貴女達を匿った恩はまだ返してもらっていませんわよね?」
「……ッ……!明日にはクロスベルが落ちる状況だというのに私達に何をさせるつもりよ……!?こちらに落ち延びた時に”大樹”の件には私達は一切関わらない事を承知したわよね?」
マリアベルに図星を突かれると唇を噛みしめて問いかけた。
「ええ、それは勿論理解しておりますし、”大樹”の件に関わってもらいたいとも思っておりませんわ。貴女達にしてもらいたいのはそれぞれが分担してクロスベルの防衛をしてもらう事だけですわ。」
「!!私達を”捨て駒”にするつもり……!?」
マリアベルの説明を聞いたクロチルダは怒りの表情で身体を震わせながらマリアベルに問いかけた。
「そんなつもりは一切ありませんわ。ですが貴女達が落ち延びたクロスベルに対して”誠意”も示さずに去るなんて、名高き”蒼の深淵”の名に傷を作るだけですし、”貴女の未来の仲間”としての”貸し”を返して頂く為にも提案をしただけですわ。”新参者”の私に”貸し”を作ったままというのは、貴女にとってもよろしくないでしょう?」
「………ッ……!国防軍や猟兵達の旗色が悪くなったら、即撤退させてもらうわ。それでいいわね?」
「ええ、構いませんよ。それでは”灰”と”蒼”の決着が付けられる事……心から願っておりますわ。」
「今回受けた屈辱……いつか倍にして返すから、覚悟していなさい……!」
マリアベルの言葉に唇を噛みしめたクロチルダはマリアベルを睨んだ後転移魔術でクロウ達と共にその場から去った。
「フフ、”計画”に狂いが生じたくらいであそこまで取り乱すとは……私と同じ魔導士で相当な使い手との事ですが、精神年齢は私より下ですわね。――――さてと。邪魔者も消えた事ですのでキーアさんに確認させて頂きます。全てはキーアさん次第……わたくし達は従うだけです。ここで降りるか――――それとも”全てを叶えるか”。そろそろ選ぶ時ですわよ?」
「…………うん。最初から、他に道が無いのはキーアにもわかってたから……ロイドやエリィ、ティオやランディ、シズクやみんなのためにも………―――きっと全てを叶えてみせる。」
そしてマリアベルに尋ねられたキーアは考え込んだ後微笑みながら答えた。
翌日、クロスベルの解放を望むロイド達”特務支援課”や”六銃士”を始めとする多くの有志や協力者達による”クロスベル解放作戦”が行われようとしていた……!
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