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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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外伝~アルノール家の威光~

~黒竜関~



「なっ……―――セドリック殿下、アルフィン殿下!何故そのような余りにも理不尽な条約を我々”四大名門”に相談もなく独断で受け入れたのですか!?メンフィルは卑劣にも帝都を襲撃した上バリアハートとオルディスを占領し、更には占領した都市で貴族の虐殺やカレル離宮で虐殺を行い、挙句の果てには皇城を爆撃して瓦礫の山と化させたのですぞ!?」

ユーゲント三世達がサインした戦争回避条約の件等を知ったログナー侯爵は怒りの表情で声を上げた。

「あら、卑劣はどちらですか?宣戦布告もせずにメンフィル帝国領であるユミルを2度襲撃し……一度目の襲撃では領主夫妻に危害を加えて領主のご息女であるエリス嬢を誘拐、監禁し……そして2度目の襲撃では領主のご子息であるリィン・シュバルツァーを脅迫による誘拐をしたではありませんか。」

「それはカイエン公やアルバレア公達がやった事だ!私やハイアームズ候はその件には一切関わっていない!」

シグルーンの指摘を聞いたログナー侯爵は反論したが

「例え全く関わっていなくても今まで貴族連合に所属し、カイエン公達の行動を黙認していた彼らと同じ”四大名門”である貴方達―――”ログナー侯爵家”や”ハイアームズ侯爵家”にも当然連帯責任があるのではなくて?メンフィル帝国領であるユミル襲撃に関してカイエン公達に意見をするどころか、メンフィルへの謝罪も行わず監禁されたエリス嬢を独自で救出してメンフィルに返還するという努力行為すらも見せなかった貴方達もカイエン公達と同じ穴の(むじな)ですわ。第一先程何故自分達に相談しなかった事に苦言を申していますが、ユーゲント皇帝を始めとした皇族達を幽閉した貴方達貴族連合にユーゲント皇帝を始めとしたエレボニア皇家の方々が連絡を取る訳がないでしょう?もし貴方達に連絡した場合、貴方達貴族連合によって再び幽閉の身にされる事は目に見えているのですから。」

「グッ……!」

シグルーンの正論に反論できず、唇を噛みしめて唸り声を上げた。



「第一メンフィル帝国はエレボニア帝国にエリス嬢返還を始めとした常識的に考えて”当然の要求”と同時に要求に応えなければエレボニア帝国に戦争を仕掛けると”警告”を”3度も”して要求に応える”猶予期間”も与えた上、襲撃前にリベールのエレボニア帝国大使館にて宣戦布告も行った。ユーゲント皇帝陛下を始めとした皇族達を誘拐、監禁した貴方達が私達メンフィルの行動を”卑劣”と叫ぶとは傲岸不遜だと思われるが?そもそも皇帝を始めとした皇族達に反旗を翻した時点で貴方達”貴族連合”は”逆賊”だ。皇家に歯向かい”逆賊”にまで墜ちた貴族達は処刑されて当然の存在の上、。”逆賊如き”が皇族の決定に口を挟む権利があると思っているのか?」

「なっ!?」

「我らが”逆賊”だと!?」

パントの指摘を聞いた領邦軍の兵士達は厳しい表情で声を上げた。

「……まさか自覚もしていなかったのか?”帝国解放戦線”――――国家を揺るがした所か各国のVIPの命まで脅かしたテロリストに加担した上、貴方達貴族連合は仕えるべき主である皇帝や皇族達に自分達の私欲の為だけに彼らを幽閉し、内戦を引き起こした。現にエレボニア各地にユーゲント皇帝が貴方達”貴族連合”を”逆賊認定”した事が記されてある新聞も民達や貴方達の手にも渡っている筈だが?」

「ふざけるな!大方あの新聞は貴様らメンフィル帝国の”(はかりごと)”によるものだろうが!?」

パントに問いかけられたログナー侯爵は怒りの表情で声を上げたが

「黙りなさい、ログナー侯爵!パント卿の仰った事は真実ですわ!」

「なっ!?で、殿下………それは一体どういう事でしょうか……?」

アルフィン皇女の言葉に驚いた後身体を震わせながら信じられない表情でアルフィン皇女とセドリック皇太子を見つめた。



「父や僕達―――”アルノール家”全員は非公式ですが貴方達”貴族連合”を”逆賊認定”しました。確かにあの新聞はメンフィル帝国によって発行され、エレボニア中にばら撒かれたものですが……あの内容は偽りではなく、全て”真実”です。」

「!!」

「そ、そんな……!」

「お、俺達が”逆賊”…………」

セドリック皇太子の話を聞いたログナー侯爵は目を見開き、領邦軍は表情を青褪めさせていた。

「なお、セドリック殿下が即位した際には”四大名門”を含めた貴族連合に加担した貴族達が持つ数々の特権の排除や、領邦軍に対する厳罰等を考えておられるとの事だ。」

「なっ!?殿下!今の話は真ですか!?」

パントの説明を聞いたログナー侯爵は血相を変えてセドリック皇太子を見つめた。



「―――はい。内戦の最中、かつてメンフィル帝国の”宰相”を務めていた経験があるパント卿から色々と学んで考えた結果、内戦が起こったのは貴族達に特権を持たせ過ぎた事や領邦軍の存在が一番の原因だという答えが出ました。父上は貴方方をどうするかわかりませんが……僕は貴方方を絶対に許しません!僕が即位した際には貴族達が持つ数々の特権の排除並びに領邦軍の制度の廃止を実行するつもりです!」

「そ、そんな!?」

「りょ、領邦軍の制度を廃止…………」

「お、俺達は一体どうなるんだ……!?」

「貴様ぁッ!殿下に一体何を吹き込んだ!?」

セドリック皇太子の説明を聞いた領邦軍は絶望の表情をし、ログナー侯爵は怒り心頭の様子でパントを睨み

「私はセドリック殿下直々に政治の教育を依頼された為、”紅き翼”の”協力者”としてその依頼を請け、将来エレボニアの国王となられる殿下に必要と思われる知識をお教えしただけの事。人聞きの悪い事は言わないでもらおうか。そもそも殿下達に”降伏”したにも関わらず、反論をするとは余りにも傲岸不遜かと思われるが。」

パントは静かな表情で語ってログナー侯爵を見つめた。



「なっ!?我々が殿下達に降伏したとは、一体どういう意味だ!?私は殿下達に『貴族連合からの離脱』及び『内戦への不干渉』を誓ったのだぞ!?なのに何故我らが”降伏”した事になる!」

「ハア……まだわからないのですか。貴方方”貴族連合”は先程セドリック殿下が仰ったように、”逆賊認定”されています。”逆賊如き”が中立勢力に変更するというそのような都合のいい話が通る訳がありません。”逆賊”の貴方方が貴族連合から脱退する事―――即ちセドリック殿下とアルフィン殿下率いる”紅き翼”に自らの”罪”と”敗北”を認め、”降伏”したという事になります。我々の言っている事に何か間違っている事はありますか?」

「グググググググ……ッ!」

シグルーンの正論に反論できないログナー侯爵は身体を震わせながら怒りの表情でシグルーン達を睨みつけた。



「…………父上。シグルーン中将閣下やパント卿の仰っている事には何一つ間違っていない。ユーゲント陛下が戦争を回避する条約の契約書に調印なさった上殿下達も同意なされたのだから、陛下達―――”アルノール家”に忠誠を誓う帝国貴族ならばエレボニア皇族である陛下達の意志を汲み取り、大人しくルーレを始めとしたノルティア州の領地をメンフィルに差し出すべきだよ。そうなってしまった”元凶”である貴族連合に今まで加担してきた父上に責任がないとは言わせないよ?」

「そのくらいの事は理解している!だがっ!話によればメンフィルに差し出すノルティアの領地はクロスベルに贈与されるという話ではないか!メンフィルならまだ納得できるが、何故クロスベル如きにルーレを始めとしたノルティアの地を渡さなければならない!?」

アンゼリカに諭されたログナー侯爵は怒りの表情で声を上げたが

「―――お黙りなさい、ログナー侯!貴方は先程エレボニア皇家であるわたくし達に再び忠誠を誓いました!先程の誓いを反故し、エレボニア皇家であるわたくしやお父様達の決定に逆らうというのですか!?」

「それは……ッ……!―――殿下はそれでよろしいのですか!?エレボニアの多くの領地がメンフィル所か、資産凍結を行い、帝国を混乱させたクロスベルの手にまで渡り、挙句の果てには殿下自身が祖国であるエレボニアではなく、皇城爆撃等の数々の卑劣な行為を行ったメンフィルで一生を過ごして骨を埋める事になり、更には殿下のお相手までも勝手に決められたのですぞ!?」

アルフィン皇女に怒鳴られて表情を歪めた後アルフィン皇女に反論した。



「メンフィルとの外交問題はわたくしがユミルに滞在した事で起こった事なのですからわたくしに異存はありません。それにわたくしの降嫁相手であるリィンさんは”一人の女”として愛していますから異存もありませんし、わたくしが嫁ぐ事でメンフィルに対する賠償を少しでも緩くし、メンフィルより多大な金銭や復興物資を受け取る事ができる上瓦礫の山と化したバルヘイム宮の修繕費の半分以上を請け負って頂けるのならばむしろ望む所です。そもそもそんな事になってしまった”一番の原因”は内戦を引き起こした貴方達―――”貴族連合”ではありませんか!」

「…………………………」

「お、皇女殿下……」

そしてアルフィン皇女の正論を聞くとログナー侯爵は領邦軍の兵士達と共に辛そうな表情で黙り込み

「かしこまり……ました……殿下達の仰る通り……内戦を引き起こした元凶であり……そちらのシグルーン中将やパント卿の言う通り……一時は逆賊にまで成り下がった私達に……反論の余地はありません……殿下達に”降伏”した身でありながら傲岸不遜にも反論をした事……お許しください……ッ!」

やがて悔しさのあまり涙を流しながら身体を震わせて頭を深く下げた。



「ならば、内戦が終結次第”戦争回避条約”を護る為にも”ルーレ”を始めとしたメンフィルが指定するノルティアの領地をメンフィルに差し出すのですね?」

「はい…………ッ!」

「それと……もし、メンフィルが定めた期間に内戦が終わらず、メンフィルとクロスベルが侵攻して来た場合は抵抗せずに降伏してください。―――これはエレボニア皇族としての”勅命”です。」

「なっ!?」

セドリック皇太子の命令を聞いたログナー侯爵は驚き

「……シグルーン中将閣下、パント卿。お手数をかけ、大変申し訳ありませんがノルティア州の貴族達が無血開城した際はログナー侯を始めとした貴族達、そして領邦軍の兵士達の命は取らないようにメンフィルとクロスベルに取計らってくれるようにリフィア殿下に伝えて頂けないでしょうか?お願いします……!」

「彼らに生きて自らの罪を償わせる為にもお願いします……!」

「で、殿下……」

「そ、そんな……」

「で、殿下達が他国の将軍や貴族に頭を下げるなんて……」

シグルーンとパントにそれぞれ頭を下げて嘆願するセドリック皇太子とアルフィン皇女の様子を見ていたログナー侯爵や領邦軍の兵士達は信じられない表情で見つめていた。

「―――かしこまりました。殿下達の決意と思いを無下にしない為にも、カレイジャスに戻り次第リフィア皇女殿下に殿下達の嘆願をお伝えし、ノルティア州侵攻時に降伏してきた際領邦軍や貴族達の命は奪わず謹慎に留め、事態が落ち着いた際は彼らを解放する取計いをして頂くように説得させて頂きますのでご安心ください。」

「同じくパント・リグレ、今回の件をリウイ陛下にご報告し、殿下達の嘆願に応えて頂くように説得致しますのでご安心下さい。」

一方シグルーンとパントは真剣な表情で敬礼をしてセドリック皇太子達の嘆願に答えた。



「……ありがとうございます。―――ログナー侯、内戦に巻き込んだエレボニアの民達に罪を償う為にもわたくし達や貴方達は生きなければなりません。帝国の”誇り”や伝統を護る為だけに自分達の罪を償う事もせず、自ら命を投げ出す行為はエレボニア皇家は決して許しません!これはエレボニア皇家であるアルノール家の”勅命”です!」

「御意……ッ!」

「それと……僕もできる事ならば、世代を超えて僕達”アルノール家”を支え続けて来た”四大名門”を含めた帝国貴族達に内戦終結後に父上が貴方達に与える厳罰に更に加えるような惨い仕打ちはしたくないと思っています。僕が即位するまでの貴方達のアルノール家やエレボニアに対する忠誠心や働き次第では、先程口にした事――――貴族が持つ数々の特権の廃止を少しでも減らす事は考えています。自分達の”罪”を償い、貴族としての”誇り”を守りたいのであれば、今後は誠心誠意父上や僕達―――いえ、エレボニアの為に身も粉にして働いてエレボニアとアルノール家に尽くして下さい。」

「御意……ッ!セドリック殿下の寛大なお心に心から感謝致します……ッ!――――それでは我々はこれで失礼します……ッ!」

アルフィン皇女とセドリック皇太子の言葉に身体を震わせながら会釈をして答えたログナー侯爵は悔しさや怒りを必死に抑えた様子で兵士達と共に砦に戻って行った。



「姫様…………」

「ログナー侯に対する勅命……ご立派でした……」

「……先程の殿下達のご様子を殿下達を侮辱したメンフィルも知れば、きっと殿下達を見直すと思われます……」

ログナー侯爵達がその場から去るとエリスは辛そうな表情でアルフィン皇女を見つめ、ラウラとリィンはアルフィン皇女とセドリック皇太子に慰めの言葉をかけ

「……………………」

「フフッ、皇族の威光がようやく役に立って何よりですわ………さあ、カレイジャスに戻りましょう。」

セドリック皇太子は辛そうな表情で黙り込み、アルフィン皇女は寂しげな笑みを浮かべてリィン達に微笑んだ後リィン達と共にカレイジャスに乗り込んだ。



こうして………セドリック皇太子とアルフィン皇女の”勅命”により、”最悪の事態”に陥ってもノルティア州の領邦軍や貴族達の命は助かる事となった。



そして、ラインフォルト社にはイリーナ会長が無事に復帰し―――貴族連合の支配によって混乱していた各地のグループを再び総括、コントロールしていくことになった。



しかし、情報を整理する中で機甲兵の主要プラントは帝国西部にあるという事実が判明し……その洗い出しを行いながらも、内戦の終結と今後の建て直しやルーレがクロスベル領化した際のために動き始めるとのことだった。



一方ログナー侯爵を始めとしたノルティア州の貴族連合からの脱退の報はカイエン公爵にも届いていた。 
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