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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐

作者:sonas
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第1章終節 離別のポストリュード  2024/04
  10話 深淵と日向の狭間

 朝霧と木陰だけの空間。
 静謐な朝を描くデータの塊は、同時に無慈悲なまでに先刻までの惨劇を無に帰していた。

――――鳥の囀りの響く梢は、断末魔に打ち震えていたというのに、
――――地に伏し、生に縋ろうと足掻いた土の後も綺麗に整えられ、
――――そこに在るべき亡骸達は、青い光に融けて消えてしまった。

 いや、意図的に意識していないだけ。
 気を逸らずに風景を直視してしまえば、恐らく()()見えてしまうのだろう。
 ポリゴン片となって爆散するだけのアバターが、今も無残に転がる光景を見えてしまうのだろう。
 無造作に骸を晒す、名前の知らない誰かの、虚空を見つめる《眼だったもの》と視線が合うだけで、また怖気に駆られて動けなくなってしまうのだろう。これで罪の意識に苛まれているつもりだというのならば、こんな幻覚で済ませようとする自分の精神に我ながら情けなさを覚えてしまう。

 それに、自らの意思で躊躇なく他者の命を絶っておきながら、これほどまで臆病だとかえって滑稽に思えてしまう。
 結局のところ、俺はこれほど大それた行為をする器ではないし、そんな間違った行為をしてしまえるほど歪んでいるし、こんな行為を断行する度に内側で何かが摩耗するように感じる。それは、ヒヨリやクーネ達の輪の中に居られた俺を着実に壊してゆく変化だ。人間としての大切なものを失うような変質だ。

――――否、既に俺は尋常な精神を失している。それは疑いようもない事実だ。

 このまま行き着くところまで行き果て、その結末としての《俺だったもの》は、恐らく見境など設けはしないだろう。誰かを守る為に戦うなどと言えば聞こえこそ良さそうなものだが、実際は保護対象を策定した上で、敵と断じた対象を殺戮するという昆虫的なまでに単調且つ機械めいた演算と動作の為す工程の群れに従っているに過ぎない。感情が責め苛むのは、全てが終わってからだ。そのプロセスに齟齬が生じて、かけがえのない友人達にさえ毒刃を振るわない保証など、どこにもない。むしろ、そうなってしまう公算が高く思える。
 うんざりするような自己評価だが、俺ははっきり言って弱い人間だ。力に呑まれないという確証は無いし、その逆に分不相応の力に酔って破綻する程度はきっと造作もないだろう。

 だから、ここで終わらせるべきだと思った。
 友人達を守るという意味でも、その傍に間違った力が在ってはならない。
 そんなものは、災禍を呼び込むくらいしか能がないのだから。


「………もう、いいよな?」


 これまで出会った人達から貰った恩に、俺はどれだけ報いる事が出来ただろうか。
 それを思うだけで、自分がどれほど無価値な存在であったかを思い知らされる。
 おまけに害悪に成り果てたともなれば、もはや存在意義など求めるべくもない。

 スキル《秘蝕剣》の名が指すところは、恐らくは習得したものの精神を試すためのものだったのだろう。他者(プレイヤー)(HP)をたちどころに削り、スキルを与えられた者の精神を(ひそ)かに蝕む暴力。
 あの時、このゲームが正式に開始されたあのチュートリアルで、茅場を名乗るアバターは明言したのだ。

――――《この世界を創り出し、観賞するためにのみ、私はソードアート・オンラインを創った》

 ならば、このスキルを宿したプレイヤーの変貌はさぞかし愉快な演目になることだっただろう。
 過ぎた力に溺れた者の末路が如何なるものか、ともなれば俺はさぞかし得難い玩具であったことだろうに。
 だが、思うようになってやれないのが気味の良いところか。
 創造主が目にするのは、傲り昂った殺人鬼でも、恐怖の末に駆除される魔王でもない。
 力に疲弊して自滅する弱者という、凡庸にもならない三文小説のような終焉を、誰が期待しようか。
 だが、それでも人間としての矜持を失わずに死ねるならば、俺には過ぎた恩赦だ。

 右手に握った毒剣(クラン・カラティン)が逆手に半転する。
 左手は鍔に添えられて、鋒は防具のない喉に向けられる。刺したままにすれば状態異常で事もなく済むだろう。自害には十分過ぎるダメージだ。

 二度、三度、息を吐いて呼吸を整える。
 耳に忙しなく響く拍動はもう最期まで鳴り止むことはないだろう。
 指の力が抜けそうになるのを必死に堪えて、最後に深く長く息を吐き、刃を喉元に引き寄せた。

 手元が狂って深く突き刺さることはなかったが、それでも継続ダメージによって状態異常を示すアイコンは徐々に数を増やしていった。惜しむらくは発生確率を耐毒スキルによって抑えられてしまっていることと、戦闘回復スキルによる自動回復がHPバーの損耗を抑えてしまっていることくらいか。それでも、減少する速度からすれば、もう五秒も待たずに俺はゲームオーバーを迎える。

 やっと終われる。
 震えて、途切れ途切れに吐き出した溜め息は、しかし次の瞬間に残りの呼気ごと肺から押し出されることとなった。

――――凄まじい勢いで迫った質量に弾き飛ばされた。

 俺の認識できる範囲では、この現象をそう結論付ける他なかったのだ。
 おかげで剣は手から滑り落ち、金属音を響かせて遠ざかってゆく。
 代わりに、腹の上に馬乗りになって見下ろす双眸に思わず目を剥いた。


「………なんで………、ここに?」


 問いかけは森の霧に吸い込まれてしまったかのように、誰も応じることはない。
 代わりに現れた人物は、剣の鋒が刺さっていた場所にピンク色と緑色の二つの結晶アイテムを押し付けて発動させた。それによって危険域まで落ち込んでいたHPは急速に全快し、複数発生していた状態異常を報せるアイコンも消滅してしまう。ただ、荒い息遣いと震えのみが身体に染みついて残っているだけだった。

 突如として現れた人物は今も存命している俺を確認するように頬に手を伸ばし、そっと撫でると大粒の涙を零し始める。声を抑えているものの、掠れた声には安堵したような色が窺える。俺としては、どうして彼女がここを訪れたのかが判然としなかった。


「みんな、助かったの………無事だったんだよ………スレイド君………」


 ポツリポツリと、涙と共に言葉が零れた。
 後ろで束ねていた髪は、衝突の勢いで紐を切ってしまったのか解けてしまっている。制動さえないままに突っ込んで来たのだから、その必死さは推して量るべきだろう。でも、何故だろうか。そこまでして彼女に、――――グリセルダさんに俺を助ける理由なんてあるだろうか。

 かつての仲間が無事であったならば、それで良かったじゃないか。俺も義理を果たせたんだ。それについては喜ばしい。
 だが、俺のもとに訪れる理由なんてないだろうに。こんな人殺しのところに来たところで、ましてや助ける理由なんてどこにあるのか。


「………スレイド君がこの事件を教えてくれたから、旦那もこれ以上道を踏み外さずに済んだの………黄金林檎のみんなだって、無事だった………なのに、どうして……ッ………どうして貴方だけ死のうとするのよ………!?」


 徐々に勢いを増す炎のように語勢が増し、終いには絶叫じみたものになる。
 既に精神が擦り減った俺には何を言い返そうにも思考が巡らない。ただ、声を情報として受容する程度しか望めない。しかし、希望を抱いてしまう。生きても良いのだろうか、許されるのだろうかという、その後に振りまくであろう不幸さえ顧みない悍ましく歪んだ希望を。

 しかし、だからこそ解せない。
 あれほどまで拒絶した俺という存在を、今になってグリセルダさんはどうして生かそうとするのか。
 俺の危険性は、殺戮の現場を目の当たりにしたグリセルダさんが最も良く知るところだ。それを考えると、グリセルダさんの言葉に違和感を覚えてしまう。
 それでも、せめて投げ掛けられた問いには答えるべく声を絞り出した。


「………また、殺したからだ」


 涙を流したまま、グリセルダさんは変わらず視線をこちらに向けてくる。
 一拍おいて、整理した言葉を連ねて続けた。友人の愚かしい行為を止める為に。


「相手は、《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》だったか………。リーダーと幹部二人に引き連れられて、かなりの数が丘の上を目指していたのを見つけた。………すぐに気付いたよ、こいつらが黄金林檎のメンバーを狙ってるってな。場所も目と鼻の先だ。このまま様子見しても意味は無いし、放置するなんて選択肢は無かった。だから………俺はこの前のように殺せるだけ殺した………解るよな? 俺は、アンタの思っているような人間じゃない。アンタが前に言った通り、俺は殺人鬼なんだよ。何も躊躇わないで誰かを殺せる人間が、おかしくないわけないだろう。………生きていて良いわけがないだろう………」


 言い終えると、辺りに静寂が戻る。
 しかし、それも束の間に破られた。未だに大粒の涙を零したグリセルダさんは、事もあろうに俺を無理矢理起こし上げて、抱き締めていた。


「………ごめん、なさい」


 いつか、こんなことがあった気がする。
 定かではない記憶を探ろうとする俺に、嗚咽の混じったグリセルダさんの声が響いた。


「あの時………半年前のあの時も、どうしてこう出来なかったのかな………私、ただ自分が怖い目に遭ったってだけで、それだけでいっぱいになって………必死に戦ってくれたスレイド君に、………辛いこと全部押し付けて……………最低よね………こんな弱い想いで親友なんて気取ってたんだもの…………でも、今更だけど…………スレイド君には、どうしても生きて欲しいの…………」


 言葉を詰まらせながらも言い終え、グリセルダさんは一層強く腕に力を込める。
 その言葉が、温度が、心が、俺にはとても痛かった。嘘偽りのない行為だとしても、いやむしろ、だからこそより苦痛は増すばかりだ。


「………無理だ。もう、生きたくない。人を大勢殺した罪なんて、どだい俺には抱えられる代物なんかじゃないんだよ」


 この温度を享受したくても、罪の意識がそれを許さない。
 目の前に倒れ伏した物言わぬ骸の群れが、俺の行く先にさえ転がる彼等が、俺に救済を赦さない。

 決して、救済を求めないのではない。手が届かないから諦めただけ。
 そして遅かれ早かれ壊れた俺が誰かを襲わないとも限らないから、だからこそ自ら終止符を打とうとした。
 自分の犯した罪が怖い。
 それを知られるのが怖い。
 でも、逃げ場のないこの世界から抜け出すなんて、一つしか思い浮かばなかったというのに。


「………でも、助けてくれたじゃない」


 怯えた心を打つように、言葉が告げられる。
 まだ涙混じりの湿った声なのに、妙に力強い一言が、胸の奥に突き刺さったものを揺るがした気がした。


「スレイド君は、殺人鬼なんかじゃないわよ………誰かを助ける為に最善を尽くしてくれているだけ。だから………一人で抱え込まないで。逃げ出した私なんかが言っても、もう届かないかも知れないけれど………貴方が追った苦しみは、きっと助けられる側にだって抱える責任があるんだと思う………だから今からでも良ければ、荷物を私に分けて欲しいの」
「何を、言っているんだ?」
「私も、貴方の罪を背負う。………私の命は、スレイド君が汚れてでも掴み取ってくれたものだから………だから、絶対に貴方だけを悪者にしたくないの。もう決めたから………どんなに嫌がっても、私の好きにさせてもらうんだから」


 荒唐無稽、グリセルダさんの意思はその一言に尽きた。
 殺人鬼の罪の一端を引き受けるなど、正気の沙汰ではない。奪った命の重さは、その者の善悪などに拘わらず(すべか)らく重いものだ。
 たった一つでさえ、心は(ひしゃ)げて歪み果てる。数寄者の妄言で済むような甘いものでは決してない。


「………はっきり言って、御節介の領分を越えている。そんなもの、これから間違ってでも請け負うなよ」
「でも、私は………!」
「その代わり、了承してもらいたいことがある。グリセルダさんにしか頼めないことだ」


 ………だから、抱えさせるわけにはいかないと思った。
 罪はあくまでも当事者のものだ。それを横から掠め取るなどあってはならない。
 しかし、《()()()な親友》だからこそ果たしてほしい役目がある。

 グリセルダさんの抱擁から抜け出して、同じ視線の高さに居直して言葉を繋げる。


「もし俺がこのスキルの使い方を誤ったら、誰かを救おうとする以外でプレイヤーに向けるようなことがあったら、全力で叱りつけてくれ。どんな手を使ってでも、誰に頼ってでも構わない。とにかく、俺を止めてくれ」


 数秒間、グリセルダさんは呆然と俺を見ていた。
 でもそれは、発言が理解できないという訳ではなく、思いも寄らない言葉への驚きのようだった。
 そして、当然のように笑みを浮かべたグリセルダさんは一つ頷いて見せる。


「任せなさい。でも、そういうお小言については私は手加減しませんからね」
「ああ、だからこそ安心して任せられる。………頼むぞ」
「ふふっ、望むところよ」


 得意気に微笑んでみせるグリセルダさんを見つつ、ようやく心が楽になったような実感が現れ出した。
 グリセルダさんと和解できたからか、それとも《秘蝕剣》との折り合いが付いたからか、これまでになかった温度を帯びた感情を確かに確認できたように思えた。この温かさがあれば、まだ頑張れる。今は、この温度を絶やさないように努めよう。

 ………戻ったら、少しだけヒヨリ達と話す時間を増やそうかな。

 そんなささやかな目標を立てるや否や、グリセルダさんが勢いよく立ち上がった。何事かと勘繰るよりも先に、グリセルダさんは俺に右手を差し出していた。


「スレイド君、まだ《婚約指輪》って持っているかしら?」


 あまりにも唐突に切り出されて脳内で情報を検索するのに時間を要したものの、思い至ったそれを急ぎ用意する。
 メニューウインドウからストレージを呼び出し、オブジェクト化したのは黄金色で細身の指輪。内側には向き合うように二つの名が刻まれたオーソドックスなエンゲージリングを右の掌に載せると、今度はグリセルダさんが左手の薬指に嵌っていた()()()()の指輪を外しては、双方を寄り添わせるように並べて見せる。


「………いきなり、どうしたんだ?」
「スレイド君の方は決着がついたから、今度は私の番よね」


 言いつつ、グリセルダさんは名残惜しそうに見つめていた両の指輪を遠投してしまった。
 達成感と哀愁が入り混じる表情で指輪の行方を眺めながら、これも已む無しと言わんばかりの溜め息を零す。腰に両手をつく後ろ姿が妙に清々しく見えて、でも苦しそうで痛々しい。


「指輪、捨てて良かったのか?」
「良いのよ。これが私なりの落としどころなんだから………あの人のくれた《この世界での愛の証》と、スレイド君の作ってくれた《生きる為の嘘》………両方とも、この辺りで休ませてあげないと私たちだって昔に縛られちゃうから、これで良いのよ」


 あの人――――彼女の旦那が、この世界でも変わらずグリセルダさんを愛そうとする誓いの結晶たる《本物の結婚指輪》。
 半年前の誘拐殺人未遂の裏側を恐れた俺がグリセルダさんを生かすべく、彼女の死を偽装するためだけに作り出した曰く付きの《偽りの結婚指輪》。

 その指輪の発端は当時、アルゴに急行してもらった生命の碑にて事件発生時に近い死亡時刻を刻んだ《Grithellda(もう一人のグリセルダさん)》が確認したことに起因する。クーネ達にグリセルダさんの回収と事後処理を依頼した後、可及的速やかに執行された死の偽装は酷く悍ましい行いだっただろう。

 アルゴから確認した《Grithellda》の死亡時刻に合わせ、グリセルダさんにギルド脱退とフレンド枠削除をさせるようクーネ達に託す。PKの仕業としてしまえば、救助を呼ばれるリスクを減らすとか雑多な理由で片付けられる。良くも悪くも死人に口はない。
 更に《Grimlock》と《Grithellda》の両名の名を刻んで偽造したレイ謹製の結婚指輪と、グリセルダさんの持つギルドの印章とを受け取り、黄金林檎のギルドホームに俺が届ける。

 実行したことと言えば、本当にそれだけ。
 しかし、一つでも条件が欠落すれば偽装は破綻していたし、精神が薄弱となったグリセルダさんを黄金林檎に引き渡してしまえばそれだけで済んでいた可能性さえある。それでも、俺はグリセルダさんを狙った人物が判然としなかった以上は大人しく帰らせることこそ回避すべきだと思ってしまっていた。

 恐怖に耐えられず、涙にくれるグリセルダさんの口から聞かされたオレンジプレイヤーの発言。
 彼女の旦那が黒幕であったからこそ、結果論で判断すれば正しかっただろうが、他者の死を利用した手段が正しかったとは今でも思えない。


「………どうかしたの? また暗い顔になってるわよ?」
「いや、旦那さんから貰った指輪まで捨てることなかったんじゃないかって思ってさ」
「良いのよ。むしろ、きれいさっぱり清算しといた方がスッキリするじゃない」
「そういうものか?」
「そういうものよ………だって、この世界のことを引き摺ってたら………」


 朝の日差しを背に、グリセルダさんはいっそ無邪気なまでの笑顔で振り向く。
 その笑顔が物語っていた。俺は間違っていないと肯定してくれる優しい笑顔に、妙に救われた気がしつつ、続く言葉に耳を傾けた。


「こんなつまらない事をウジウジ引き摺ってたら、リアルで旦那に『おはよう』って言えないじゃない?」


 こんな時でさえも惚気られる親友に苦笑しつつ、俺も街へ戻るべく立ち上がる。

 そう遠くないうちに、嘘と誠の二つの指輪は時間に飲まれて消滅するだろう。
 でも、いつまでも苦痛を背負って立ち止まっているわけにもいかないのだから、やがては言い訳を捨て去って前に進まねばならない。きっと、あの遠くへ消えていった指輪が、グリセルダさんにとっての過去の枷なのだろう。一切の迷いを振り切ったようなグリセルダさんが身を屈めて視線を合わせると、まだ涙の止まらないまま柔らかい笑顔を作ってみせる。


「俺もそろそろ前を見なきゃ、仲間に置いて行かれそうだ」
「じゃあ、これでおしまい。これからまた頑張りましょう?」
「………そうだな、そうしよう」


 朝霧の晴れた森に、骸はどこにもなくなっていた。 
 

 
後書き
圏内事件、終結回。


燐ちゃんの精神を気に掛けるお言葉を頂戴していましたが、自害するほどの心的外傷を負っていましたね。
視覚的にも《殺した相手の死体が見える》《その死体が行く先々で転がっている》という軽いホラーのような状況で半年間も過ごした燐ちゃんは果たしてメンタル的に強かったのか弱かったのかはさておき、やはりトラウマを解消するには《向き合うこと》が大事ということで、グリセルダさんとの和解が特効薬となったようです。というか、脳が生み出した幻をそのまま視覚に投影するナーヴギアも大概なんですけど………

というか、グリセルダさんに至ってはヨルコに情報流して旦那をお縄に掛けたり、自害寸前の燐ちゃんを救ったりともう一人の主人公といっても過言ではないくらい活躍していますね。人妻枠を出したかっただけなのに、見事に食われました。原作モブはヤバイ(戦慄)


そして、今章最大の謎となっていたグリセルダさん生存を支えた燐ちゃんのお手軽偽装死テクですが、これはカインズさん達のトリックをほぼ踏襲しています。我ながら興醒めも甚だしいところではありますが、要約すると………


・アルゴに生命の碑で《グリセルダ》と読める《死亡したプレイヤー》を探してもらう。

・死亡時間がジャスト一年前のプレイヤー《Grithellda》を発見。

・クーネ達に引き渡し。頃合いを見てグリセルダさんにギルド脱退、PKの所為にしてフレンド欄全削除。

・レイに結婚指輪を偽装してもらい、グリセルダさんから渡してもらったギルドの印章を黄金林檎に渡す。
(一緒に添えた印章は黄金林檎のメンバーしか持ち得ないアイテムであり、アカウント抹消を偽装したことでグリセルダさんのプレイヤーネームのスペルを調べる手段を奪う意味合いがある)

生命の碑にて指輪に刻まれた(もう一人の)グリセルダさんの名前を確認することで、黄金林檎メンバーにグリセルダさんの死を定着させる。


身も蓋もないでしょう?

情報にブラインドを掛け、ブラフだけを見せることで真実を捻じ曲げるという《力技の運ゲー》という滅茶苦茶ぶり。
強いて言うならば、グリムロックさんに勘付かれるか否かという勝負があったくらいでしょうか。死亡時間に合わせるという以上はタイムリミットもあったでしょうが、そこは文章力的な意味で書けない領域なので、ご想像にお任せします。


というわけで、幻影式圏内事件編も完結。
というかこれ、圏内事件なの?


トラウマを克服して《秘蝕剣》との向き合い方を見定めた燐ちゃん。
逃げ続けた過去を清算して先に進むことを決めたグリセルダさん。
黄金林檎の仲間によって償う機会を与えられたグリムロックさん。

ウォーミングアップを始めたピニオラちゃん。

文章内であれ、文章外であれ、それぞれのこれからに繋がる物語になっていればと思います。
次回、幻影版グリセルダさんのキャラ紹介です。




ではまたノシ 
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