青砥縞花紅彩画
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33部分:稲瀬川勢揃いの場その三
稲瀬川勢揃いの場その三
日本「今日は一緒に身の終わりと、覚悟はせしが一日でも、逃れられなば逃げ延びん」
南郷「いかさま命が物種ならば」
忠信「五人連れにて一先ずこの地を」
日本「いや、五人では目立つ。忠信と赤星は中山道を行け(あえて青砥に聞こえるようにして言う)」
忠信「はっ」
赤星「わかり申した」
日本「南郷と弁天は東海道、よいな」
南郷「おう」
弁天「わかりやした」
四人「して頭は」
日本「わしはとりあえずはここに隠れる。まずはお主達を逃がす」
忠信「何と」
赤星「まことでござるか」
日本「嘘は言わぬ。そしてそれから後で出立」
南郷「了解しやした」
弁天「達者で」
日本「青砥殿、お聞きになりましたな」
青砥「むうう」
日本「それがしもこの者達も逃げも隠れもいたしませぬ。捕らえたければ何時でも参られよ」
青砥「もとよりそのつもり。そなた等を捕らえるのこそ我が仕事」
日本「さすれば者共」
四人「はっ」
南郷「これより右左」
赤星「別れ別れに旅路に出かけ」
弁天「道中筋を一働き」
忠信「皐月を待って都にて」
日本「再び出会う」
五人「五人男」
ここで派手に見得を切る。青砥はそれを受けて言う。
青砥「ならば私も京にて待とう」
日本「是が非でも」
青砥「そしてそこでお主等を捕らえん」
弁天「生きるも死ぬも同じの我等」
忠信「捕まる時も同じ時」
赤星「さすれば死ぬも怖くはない」
南郷「せめて捕らえられるは名のある方に」
日本「それこそが白浪の誇り」
青砥「では京で会おうぞ」
五人「はっ」
青砥「今度はこうはいかぬ。私も刀を抜こうぞ」
弁天「さすれば我等も」
忠信「天下に知られたこの腕前」
赤星「名うての使い手青砥様に」
南郷「是非お見せしよう」
青砥「面白い、ではどちらが皐月に散るか」
五人「見物よのう」
日本「さすれば者共、京へ発て。わしも後程行く」
四人「合点だ」
青砥「楽しみにしておるぞ」
五人「おう」
こうして五人は傘を手にそれぞれ正面を向いて見得を切る。青砥はそれを後ろで仁王立ちとなって見届ける。そこで終幕となる。
青砥稿花紅彩画 完
2004・12・28
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