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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第10話

~カレル離宮~



「こ、これは……!?」

「ヒッ……!」

「キャ、キャアアアアアアアッ!?」

オリヴァルト皇子達と共に脱出を開始したレーグニッツ知事は離宮内の到る所に血だまりの中に無残な姿になっている近衛兵達の死体を見て目を見開き、ユーゲント三世達の世話係であるメイド達は表情を青褪めさせたり、悲鳴を上げた。

「も、もしかしてこれもリフィア殿下達―――メンフィル軍が……!?」

「…………ああ。」

「……………………」

信じられない表情をしているセドリック皇太子の言葉にオリヴァルト皇子は頷き、ユーゲント三世は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。



「申し訳ございません、陛下……!こうなってしまった全ての原因は父――――”アルバレア公爵家”!本来でしたら内戦が終結次第、父に内戦に加担した罪や他国領であるユミルを猟兵達に襲撃させた罪を購わせるべきですが、昨日カイエン公が再びユミルを襲撃してシュバルツァー家の子息―――リィン・シュバルツァーを脅迫によって”パンダグリュエル”へと向かわせた事を知り、更に怒りの炎を燃やしたメンフィルによってもはやそれも不可能という状況に陥ってしまいました………!」

「ユーシス…………」

「メンフィルに……?一体どういう事だ。」

ユーゲント三世に頭を下げて謝罪するユーシスの様子をラウラは心配そうな表情で見つめ、ユーゲント三世は眉を顰めて尋ねた。

「……実はメンフィルが行った襲撃は帝都とカレル離宮の襲撃だけでなく、同時にバリアハートとオルディスの制圧作戦も現在行い、その際にアルバレア公爵夫妻を拘束するとの事です。しかもルーファス卿に関しまして先日メンフィルに拘束され、処刑されたとのことです。」

「!!」

「そ、そんな!?ルーファスさんが………!」

「なっ!?という事は今メンフィルによってバリアハートとオルディスも襲撃されているのか!?」

クレア大尉の話を聞いたユーゲント三世は目を見開き、セドリック皇太子は驚き、レーグニッツ知事は信じられない表情で尋ねた。

「ああ……しかもバリアハートとオルディスを攻めているメンフィル軍を指揮しているのはメンフィル皇家の分家の方達なんだ。」

「ええっ!?」

「分家とは言え、皇家の者達が指揮をしているという事は今回の戦争は”百日戦役”の時と違い、”本気”でエレボニアを滅ぼそうとしているのか…………」

レーグニッツ知事の質問に答えたマキアスの説明を聞いたセドリック皇太子は驚き、ユーゲント三世は重々しい様子を纏って呟いた。



「それどころか、今頃バリアハートとオルディスに住んでいる貴族連合に加担した貴族の当主達の殺害をしている最中だと思うよ。」

「な―――――」

「そ、そんなっ!?どうしてそこまでするのですかっ!?」

フィーの口から出た驚愕の事実にユーゲント三世は絶句し、セドリック皇太子は悲痛そうな表情で声を上げた。

「――――それが”戦争”による”報復”だからだよ、セドリック。市民達に危害を加えられていないだけ、まだマシな方だ。それに”百日戦役”の時と比べればメンフィルは良心的だよ。”百日戦役”でリベール軍の反撃によって劣勢に陥ってしまったエレボニア帝国軍は”報復”としてリベールの都市の一つ――――ロレント市を襲撃して、ロレントに住まう多くの罪なきリベールの民達を虐殺したのだからね。」

「それは…………」

重々しい様子を纏ったオリヴァルト皇子から語られた答えにセドリック皇太子は複雑そうな表情をし

「……それと陛下達にとってお辛い報告がまだあります。メンフィルは本日中にリィン・シュバルツァーを救出する為に”パンダグリュエル”を制圧し、同時にカイエン公によってパンダグリュエル内に幽閉されているアルフィン殿下を拘束するとの事です。」

「!!」

「なっ!?”パンダグリュエル”を制圧し、しかもアルフィン殿下を拘束するですって!?一体何故何の罪もないアルフィン殿下を……!」

アルゼイド子爵から語られた驚愕の事実にユーゲント三世は目を見開き、信じられない表情で声を上げたレーグニッツ知事は唇を噛みしめた。

「―――あくまで推測になりますが、アルフィン殿下自身に今回のメンフィルとエレボニアの戦争の責任を取らせるつもりかと思われます。ユミルに避難したアルフィン殿下の身柄を確保する為にアルバレア公爵が雇った猟兵達がユミルを襲撃し、更に貴族連合の手の者がエリスを誘拐した事がメンフィルがエレボニアとの戦争を決めた一番の原因かと思われますので。」

「そ、そんな…………アルフィンは何も悪くないのに……!」

サラ教官の推測を聞いたセドリック皇太子は悲痛そうな表情をしたが

「――いや、自分の身柄が狙われているとわかっていて他国領であるユミルに避難し、そのままテオ達に匿われ続け、何の対策も取らなかったアルフィンにも落ち度がある。自分の身を狙って貴族連合がユミルを襲撃する可能性は十分に考えられたはずだ。」

「父上…………」

ユーゲント三世の正論を聞くと複雑そうな表情をした。



「………失礼ですが、陛下はシュバルツァー卿とはお知り合いなのでしょうか?父達と違い、シュバルツァー卿をファーストネームで呼んでおられますが……」

「シュバルツァー家は皇帝家縁の貴族だという話は聞いておりますが……」

「うむ。―――”アルノール家”の男児はトールズで学ぶのが代々の習わしでな。私はその時にテオと出会い、友人同士になった。」

「ちなみに私も例外なくトールズで学び、卒業している。」

ユーシスとラウラの質問にユーゲント三世とオリヴァルト皇子は静かな表情で答え

「―――だからこそエリス嬢が私達の元に連れてこられ、彼女から事情を聞いた時私は自分の無力さと愚かさを呪った………私の不徳によって友人であるテオに重傷を負わせ、ユミルの者達を命の危機に陥らせ、テオの娘であるエリス嬢が家族と離れ離れにされて幽閉されてしまい、更には同じくテオの娘であるエリゼ嬢は妹を助ける為にリフィア皇女達と共に近衛兵達を殺戮し、自らの手を血で染めてしまった……テオ達には幾ら謝っても、足りないだろうな……」

「陛下…………」

辛そうな表情で肩を落としているユーゲント三世をレーグニッツ知事は辛そうな表情で見つめていた。

「……今は嘆く事よりも、これからどうやって内戦を終結させ、メンフィルと和解するかを考えるべきです、父上。―――急ぎましょう。」

「……うむ。」

そしてオリヴァルト皇子の言葉にユーゲント三世は頷いた。



ユーゲント三世達を救出したオリヴァルト皇子達がカレル離宮からの脱出をしている中、アリサ達B班はメンフィル軍が撤退した事で空いたスペースに着陸したカレイジャスを背中にユーゲント三世達の無事を確認する為に来た領邦軍と戦いを繰り広げていた。


「「「アークス駆動―――エクスクルセイド!!」」」

「ががっ!?」

「グッ!?」

トヴァルとエマ、エリオットが放ったアーツによって機甲兵達は怯み

「今よ!―――ファイアッ!!」

「風よ、私に力を!旋風の精密射撃!!」

「ガッ!?しまった、センサーが!?」

「おのれ、学生風情が生意気な真似を……!」

アリサとミルモが放った矢はそれぞれ機甲兵の目に命中した。

「いっけ~、ガーちゃん!!」

「―――――!」

「ハァァァァ……!セイッ!!」

「参ります―――そこっ!!」

「グッ!?」

「うおっ!?」

その時アガートラムとガイウス、セレーネがそれぞれ強烈な一撃を機甲兵の脚の関節部分に叩きこんで追撃し

「うふふ、これでチェックメイトですわ♪」

「魔神や上級悪魔と比べれば、耐久力は大した事ないわね!」

「グアッ!?」

「ば、馬鹿な……!?」

そしてシャロンは鋼糸で関節部分を締め上げ、ヴァレフォルは短剣で脚の関節部分を破壊して機甲兵を転倒させた!



「ぐぬぬぬ……ッ!メンフィル軍に撃破された機甲兵達が邪魔で数で圧し切れん!空挺部隊はまだ来ないのか!?」

アリサ達に無力化され続ける機甲兵達を見た領邦軍の司令官を唇を噛みしめて声を上げた。

「もう~!倒しても倒してもキリがないよ~!クレア達は一体いつになったら帰ってくるのさ~!?」

「今は機甲兵しか来ていない上メンフィル軍と戦ってやられた領邦軍の機甲兵達が進路を邪魔して機甲兵が来る数を制限させているからから俺達でも何とか撃退できているが………空挺部隊が到着したら、ヤバイぞ。」

一方倒しても倒しても次々と襲い掛かってくる領邦軍にミリアムは文句を口にし、トヴァルは時折空を見上げながら厳しい表情で呟いた。



「……もしかしたらカレル離宮から感じる”気配”によって、何らかのアクシデントが起こっているのかもしれないわね。」

「……そうね。しかもこの”気配”は――――」

カレル離宮に視線を向けたエマの言葉にセリーヌが頷いて話を続けようとしたその時

「――――審判の轟雷!!」

「え―――ギャアアアアアア――――――ッ!?」

聞き覚えのある声が聞こえた後凄まじい雷が領邦軍に襲い掛かり、それによって多くの領邦軍の兵士達が絶命した!



「ええっ!?」

「今の魔術、ミルモじゃないわよね!?」

「う、うん!」

突然の出来事にエリオットは驚き、アリサに視線を向けられたミルモは頷いた。

「そ、それより今の声は確か――――」

一方声に心当たりがあるセレーネが驚きの表情で答えを言おうとしたその時、アリサ達の背後から膨大な魔力や闘気を纏った矢が凄まじい速さで次々と機甲兵に命中した!

「グアッ!?」

「がふっ!?」

「あぐっ!?ば、馬鹿な………っ!?矢で機甲兵の装甲を貫く……だ……と…………」

矢は機甲兵の装甲を易々と貫いて操縦席にいる兵士達を絶命させていた。



「全く……あんな鉄屑相手に手こずっているなんて、先が思いやられるね。」

カレイジャスの機体の上にいつの間にかいたエヴリーヌは武器を構えたまま呆れた表情でアリサ達を見下ろし

「エヴリーヌ……!」

「ほえっ!?メンフィル軍は撤退したのに何でエヴリーヌがここにいるの!?」

「も、もしかして私達を助けに来てくれたのでしょうか……?」

エヴリーヌの登場にガイウスは目を見開き、ミリアムは驚き、エマは期待が籠った表情で尋ねた。

「ま、そんな所。プリネにみんなが脱出するまでの間だけ援護して欲しいって頼まれたからこっちに来たんだ。」

「プリネが……!」

「ふふ、心強い援軍ですわね♪」

エヴリーヌの話を聞いたアリサは明るい表情をし、シャロンは微笑んだ。



「みんな、無事!?」

そして少しの間領邦軍を迎撃し続けているとオリヴァルト皇子達と共にカレル離宮を脱出したサラ教官がアリサ達に駆け寄ってきた。

「サラさん……!はい、皆さん、無事ですわ……!それにプリネ様のお蔭でエヴリーヌ様が援護しに来てくれましたわ!」

「ハアッ!?エヴリーヌが!?―――って、ホントにいるわね……フフッ、プリネには本当に色々と世話になってしまったわね。」

セレーネの話に驚いたサラ教官はカレイジャスの機体の上で絶えず矢を放ったり魔術を発動して次々と領邦軍を撃破し続けているエヴリーヌを見つけると目を丸くし、苦笑し始めた。

「陛下達も全員無事に救出しました!総員、速やかにカレイジャスに乗り込んでください!」

「はいっ!」

クレア大尉の号令を合図にアリサ達は次々とカレイジャスに乗り込み

「あれ……エヴリーヌは乗らないの!?」

エヴリーヌが未だ戦い続けている事に気付いたエリオットは心配そうな表情でエヴリーヌに問いかけた。



「エヴリーヌはカレイジャスが飛び立つまで雑魚共を殺し続けてあげるから、さっさと乗って!カレイジャスが飛び立ったらエヴリーヌは転移魔術で帰るからいらない!」

「で、でも……」

エヴリーヌの答えを聞いたエリオットは戸惑いの表情をしたが

「迷っている暇はないわ!それにガレリア要塞の時に見たでしょう?生身で自動操縦の正規軍の兵器を圧倒するエヴリーヌを。むしろ心配するのは領邦軍の方よ!さっさと乗り込みなさい!」

「は、はい!」

「そなた一人に殿を務めさせてすまぬ、エヴリーヌ……!」

サラ教官に急かされてカレイジャスに乗り込み、ラウラは申し訳なさそうな表情でエヴリーヌを見つめた後カレイジャスに乗り込んだ。

「なっ!?い、いかん!へ、陛下達が……!おのれ……絶対に奴等を逃がすな――――!!」

アリサ達と一緒に乗り込む様子のユーゲント三世達を確認した領邦軍の司令官は焦りの表情で指示をした。



「だから無駄ぁ!!」

「ががっ!?」

「ギャアアアアアアッ!?」

撤退を阻む為にカレイジャスに突撃して行く機甲兵だったが、エヴリーヌによって次々と撃破され続けた。

「―――オリビエ!プリネからの伝言!リウイお兄ちゃん達がパンダグリュエルを襲撃する前にオリビエの妹を連れて自力でパンダグリュエルからの脱出を始めたリィンが、さっきヴァリマールにオリビエの妹と一緒に乗り込んでそのままパンダグリュエルから脱出してユミル方面に向かっているって!」

「何ですって!?」

「!!そうか……!リィン君がアルフィンを……!何から何まですまない、エヴリーヌ君……!」

全員がカレイジャスに乗り込んだ後最後に乗り込もうとしていた殿(しんがり)を務めているサラ教官はエヴリーヌの伝言に驚き、オリヴァルト皇子は明るい表情をした後サラ教官と共にカレイジャスに乗り込んだ。そして全員が乗りこむとカレイジャスは離陸を始めた。



「い、いかん!このままでは陛下達が……!撃ち落せ―――ッ!何としても陛下達を逃がすな!」

離陸を始めたカレイジャスを見た司令官は慌てた様子で指示をしたが

「くふっ♪最後は思いっきり消し飛ばしてあげるよ!――――リーフ=ファセト!!」

「え―――――ガアアアアアアア―――――ッ!?」

「グギャアアアアアア――――――ッ!?」

「うああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

エヴリーヌが放った最高位魔術によって塵も残さず消し飛ばされ、魔術が終わると司令官がいた場所を中心にクレーターになっていた!

「さてと。エヴリーヌもそろそろ帰ろうっと。」

そしてカレイジャスが飛び立つところを見送ったエヴリーヌは転移魔術でその場から消え、カレイジャスは全速力でカレル離宮から飛び去った!



こうして……オリヴァルト皇子達はユーゲント三世達の救出を無事に成功させ……パンダグリュエルからの脱出を果たしたリィンとアルフィン皇女と合流する為にユミル方面に急行した。 
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