英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第1話
~シュバルツァー男爵邸~
「……よろしくお願いします。このような田舎にこれ程の戦力を割いて頂き、痛み入ります。」
エレボニア帝国を滅ぼす存在にしてユミルを守護する為に派遣されてきたエフラム達やデュッセル達をシュバルツァー男爵は複雑そうな表情をしたがすぐに気を取り直してエフラム達を見回して会釈をし
「フフ、ユミルが田舎だなんて謙遜しすぎですよ。シュバルツァー卿もご存知の通り、シュバルツァー家の長女のエリゼは誰もが務める事ができなかったリフィアお姉様のお目付け役と共に専属侍女長を立派に務めていますし、長男のリィンさんは”七大罪”の一柱、”精霊王女”、”女神”と交流を深め、メンフィルが目指す理想―――”光と闇の共存”に大きく貢献しています。そして何よりシュバルツァー家は将来クロイツェン州全土を納める事になるのですから、謙遜する事はありませんよ。」
シュバルツァー男爵の言葉を聞いたターナは微笑みながら答えた。
「え……」
「何だとっ!?」
「シュ、シュバルツァー家がクロイツェン州全土を納める事になるって……」
ターナの口から出た予想外の話にルシア夫人は呆け、ユーシスは信じられない表情で声を上げ、エリオットは不安そうな表情をし
「……どうやら既に”エレボニア帝国を滅ぼした後の事”を考えているようね……」
「………………」
セリーヌは目を細め、サラ教官は厳しい表情で黙り込んだ。
「―――ターナ、第三者を前に余計な情報を口にするなといつも言っているだろうが!?」
「あ”。ご、ごめんなさい、お兄様。」
「まあまあ……遅かれ速かれ”Ⅶ組”の皆さんは”戦争回避条約”を知る事になるでしょうから、その一部を教えた所でそんなに問題はないかと思いますよ、ヒーニアス皇子。」
ヒーニアスに怒鳴られたターナは表情を引き攣らせた後申し訳なさそうな表情で謝罪し、エイリークは苦笑しながらヒーニアスを諌めようとしていた。
「せ、”戦争回避条約”……?」
「……まさか、エレボニア帝国がメンフィル帝国との戦争を回避する為の条約でしょうか?」
エイリークの言葉が気になったアリサは不安そうな表情をし、クレア大尉は真剣な表情で尋ねた。
「―――そうだ。そしてその条約の中にはメンフィル帝国にクロイツェン州全土を譲渡する事や”アルバレア公爵家”の爵位剥奪も入っている。」
「ほえっ!?」
「ア、”アルバレア公爵家”の爵位剥奪って……!」
エフラムの口から出た驚愕の事実にミリアムは驚き、マキアスは信じられない表情でユーシスに視線を向け
「……爵位剥奪とは一体どういう意味なのだ?」
「……―――爵位剥奪とは”貴族の爵位”を剥奪される――即ち”平民”に落とされるという事です。」
「…………っ…………!」
「ユーシスさん……」
不思議そうな表情をしているガイウスの疑問にクレア大尉は複雑そうな表情でユーシスに視線を向けながら答え、辛そうな表情で唇を噛みしめて身体を震わせているユーシスに気付いたエマは辛そうな表情をし
「エレボニア帝国に全面的に非があるとはいえ、幾ら何でもえげつなさすぎる内容じゃねぇのか……!?」
「それに”一部”と言う事はまだ他にもあるという事ですわね……」
トヴァルは厳しい表情でエフラム達を見つめ、シャロンは静かな表情で呟いた。
「――――!!エフラム皇子殿下、先程”クロイツェン州全土”と仰りましたがまさかその中には”レグラム”も入っているのですか!?」
「あ……」
「そ、そう言えばラウラさんの故郷―――”レグラム”はクロイツェン州に属していますね……」
その時ある事に気付いたラウラは血相を変えて声を上げ、アリサは呆け、セレーネは不安そうな表情をし
「当然入っている。」
「ちなみに条約の中には内戦に加担したエレボニア帝国の貴族達のメンフィル帝国への帰属は許可しないという内容もありますが、”アルゼイド子爵家”は中立の為、メンフィル帝国への帰属は許されていますから”アルゼイド子爵家”はそのままレグラムの領主であり続けられますから、その点はご安心下さい。」
「………………」
エフラムの後に答えたエイリークの説明を聞いたラウラは複雑そうな表情をした。
「……エイリーク皇女殿下。先程内戦に加担したエレボニア帝国の貴族達のメンフィル帝国への帰属は許可しないと仰りましたが……その者達はどうなるのですか?」
「――――メンフィル帝国領となったクロイツェン州にそのまま住みたいのならば爵位を剥奪して平民に落とし、それが不服ならエレボニア帝国に引き取ってもらい、エレボニア帝国領に住んでもらう事になります。」
「何ですって!?」
「い、幾ら何でも酷いよ……」
シュバルツァー男爵の質問に答えたエイリークの説明を聞いたサラ教官は厳しい表情で声を上げ、エリオットは不安そうな表情をした。
「フン、酷いのはどちらだ?こちらはエレボニア帝国に対して敵対行動は取っていない上、宣戦布告もせずにメンフィル帝国領を襲撃した挙句、領主夫妻に危害を加え、メンフィル帝国の貴族の子女の誘拐までしたのだからな。そして極めつけは先程の貴族連合による襲撃並びに脅迫による誘拐行為だ。むしろエレボニア帝国は、メンフィル帝国との戦争を回避できる方法をエレボニア帝国に対して相当な怒りを抱いているメンフィル帝国自身が提案してやっただけでも感謝すべきだ。」
「…………………」
鼻を鳴らして不愉快そうな表情で呟いたヒーニアスの正論を聞いたその場にいる多くの者達は辛そうな表情や複雑そうな表情で黙り込んだ。
「―――どの道唯一虜囚の身でないエレボニア皇族であるオリヴァルト皇子とも合流できていない貴様らとこれ以上語る価値はない。―――失せろ。」
「お兄様!何もそんな言い方をしなくても……!」
Ⅶ組の面々を見回したヒーニアスの言葉を聞いたターナは真剣な表情で指摘し
「……まあ、ヒーニアスの言っている事も一理ある。シュバルツァー卿とお前達の学院の”常任理事”を務めているリウイ祖父上の顔を立てて、同席を許したが今からシュバルツァー卿と話す事は”メンフィル帝国内の話”だ。悪いが今すぐ退出してくれ。当然ツーヤの妹とはいえ、現在はエレボニア帝国の士官学院に所属しているセレーネもだ。」
そしてエフラムがアリサ達を見回して指示をしたその時
「重要会議中の所、申し訳ございません!少々よろしいでしょうか?」
扉がノックされ、メンフィル兵の声が聞こえて来た。
「ああ。何かあったのか?」
「ハッ!リグレ候爵閣下が先程到着し、殿下達とシュバルツァー卿に御挨拶をしたいとの事です!」
「まあ……リグレ候が。」
「フフ、心強い援軍ね♪」
エフラムの質問に答えた兵士の報告を聞いたエイリークは目を丸くし、ターナは微笑み
「―――わかった。すぐにここに案内しろ。」
「御意!」
「あの……先程の兵士の方が仰っていた”リグレ候爵閣下”とは一体どなたなのでしょうか……?」
ヒーニアスの指示が終わった後ルシア夫人が戸惑いの表情でエフラム達に尋ねた。
「―――”リグレ侯爵家”。メンフィルにとって歴史上最悪の裏切り者――――”闇の軍師”ケルヴァン・ソリードの隠し子の系譜の者達だ。」
「ええっ!?」
「メ、メンフィルにとって”歴史上最悪の裏切り者”の隠し子の系譜って……!」
エフラムの答えを聞いたセレーネは驚き、マキアスは信じられない表情をし
「………殿下達のご様子ですとそのリグレ侯爵閣下の事を随分と信用しているように見えるのですが……」
それぞれ驚きや信じられない思いでいる中シュバルツァー男爵がその場にいる全員を代表して質問した。
「確かにケルヴァン・ソリードは私達メンフィル皇家にとって忌々しい存在ですが………それはケルヴァン・ソリード自身だけの事。彼の者の系譜の者達のメンフィル皇家に対する忠誠心は篤く、メンフィルが帝国と化してから様々な功績を残し続け、その結果彼らは”侯爵”の爵位を授かり、今では私達マーシルン家にとって信頼できる家臣として見られているのです。」
「それにリグレ侯爵家の初代当主であるケルヴァンの隠し子――――パント・リグレはケルヴァンが強姦した女性が孕んだ子供でして。その為彼自身は父親の事を忌み嫌っているんです。」
「な――――」
「”強姦”ですって!?」
「しかも”強姦”によって孕んだ子供が”侯爵”になるだと!?」
「”ブレイサーロード”達のサクセスストーリーよりもとんでもないね。」
「ほえ~……能力さえあれば出自を気にしないとか、やっぱりメンフィルってオジサンの考え方にどことなく似ているね~。」
エイリークとターナの口から出た驚愕の事実にクレア大尉は絶句し、サラ教官とトヴァルは信じられない表情で声をあげ、フィーとミリアムは目を丸くしていた。
「貴様ら、一体いつまで――――」
そしてアリサ達がまだ退室していない事を不愉快に感じていたヒーニアスはアリサ達に退室を指示しようとしたその時
「―――失礼します。パント・リグレ、只今参上しました。」
明るい紫色が混じった銀髪の貴公子風の青年が金髪の美しい女性と共に部屋に入って来た。
(あの人が先程の話に出た”リグレ侯爵”か……何となくだが雰囲気がルーファスさんに似ていないか?)
(言われてみれば……)
(兄上…………)
青年を見たガイウスの感想を聞いたラウラは頷き、ユーシスは辛そうな表情をし
(……ッ!何て霊力……!”闇の聖女”やあのエルフ程じゃないけど少なくてもヴィータよりも確実に上ね。)
(ええ……メンフィルには凄まじい術者が一体どれほどいるのかしら……?)
青年からさらけ出されている凄まじい魔力を感じ取っていたセリーヌは目を細め、エマは不安そうな表情をしていた。
(綺麗な人……もしかして奥方かしら?)
(確かに見目麗しい方ですが……あの方も相当な使い手ですわね。)
青年の傍にいる女性の美しさにアリサは見惚れ、女性の強さを感じ取っていたシャロンは真剣な表情をしていた。
「久しいな、リグレ候。貴公の参戦は聞いていないが、一体どういう事だ?」
「はい。2度目のユミル襲撃を知ったシルヴァン陛下より例の作戦内容を変更するべきとの進言がありまして。その作戦を成功させる為陛下より要請され、妻のルイーズと共にこの場に参上した所存でございます。」
ヒーニアスの質問に青年―――――パント・リグレは静かな表情で答え
「そうか。その話は後で聞くとして……リグレ候。まずはシュバルツァー卿に挨拶をしておいてくれ。」
「御意。―――お初にお目にかかります、シュバルツァー卿。私の名はパント。リグレ侯爵家の元当主パント・リグレと申します。以後お見知り置きを。」
「パント様の妻のルイーズですわ。以後お見知り置きを。」
エフラムに促されたパントは女性――――ルイーズと共に自己紹介をした。
「”シュバルツァー男爵家”当主テオ・シュバルツァーと申します。わざわざ異世界からこちらまで足を運んで頂き、ありがとうございます。」
「テオの妻のルシアと申します。その……リグレ侯爵閣下。先程”元当主”と仰っていましたが……」
「フフ、当主の座は30年程前に息子に譲っておりまして。今は隠居の身で、平時は気楽に趣味である魔術の研究をしているだけの者です。」
「え…………」
(”30年程前に当主の座は息子に譲っているって”……それじゃああの人達、何歳なんだ!?)
(御二方とも若く見えますけど、耳が”人間”と違う事から見て恐らく異種族でしょうからリウイ陛下達同様相当な年齢を取っているのでしょうね……)
パントの口から出た話にルシア夫人は呆け、マキアスは疲れた表情をし、セレーネは苦笑していた。
「所でそちらの方々はどなたなのでしょうか?」
「リウイ祖父上が”常任理事”を務めている例の士官学院の者達だ。――――貴様ら、いい加減さっさと失せろ。目障りだ。」
ルイーズの疑問に答えたヒーニアスは不愉快そうな表情でアリサ達を睨んで指示し
「……行くわよ、みんな。」
そしてサラ教官が促し、アリサ達は応接間から退出した。
その後エフラム達とシュバルツァー男爵達との話が終わり、エフラム達が男爵邸から去った後、アリサ達はシュバルツァー男爵達から驚愕の事実を教えられた。
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