英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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外伝~隷姫の幸せ~(7章終了)
~ベルゼビュート宮殿~
「…………………」
はぐれた仲間達と合流する為にリウイは一人、周囲を警戒しながら先頭を歩いて行き
「……………………」
シルフィエッタはリウイの様子を見つめながら歩き続けていたが
「フウ…………」
一端立ち止まり、疲れた様子で溜息を吐いた。
「どうした?」
シルフィエッタの様子に気付いたリウイは先に進むのを止め、シルフィエッタに近づいて来た。
「あ、はい………少し疲れてしまいまして………」
「…………無理もない。俺達と違って、お前は戦いとは無縁の生活をしていたからな。むしろよくもった方だ。…………ここには魔物達の気配もないし、一端休憩するか………」
「すみません………本当なら早く合流しなければいけないのに、私が足を引っ張ってしまって…………」
リウイの提案を聞いたシルフィエッタは申し訳なさそうな表情で謝罪したが
「気にする必要はない。お前はお前なりに努力している事は知っている。」
「……………………」
リウイの言葉を聞き、顔を赤らめて黙り込んだ。そして2人はその場で休憩し始めた。
「………………」
休憩の最中、リウイがオーブメントのクオーツの入れ替えや武器の手入れをしている中、シルフィエッタはリウイを見つめ続けていた。
「………先程からずっと俺を見続けているようだが、どうした?」
武器の手入れやクオーツの入れ替えを終えたリウイはシルフィエッタに尋ねた。
「……やはり貴方は………貴方達は違いますね………その事にずっと疑問を感じて………貴方を見ていました………」
「違う?何がだ。」
「………私が知る”魔族”達です。」
「…………念の為にもう一度言っておくが、俺達は”闇夜の眷属”だ。俺達にとって”魔族”という言葉は最大の侮辱だという事を覚えておけ。」
「す、すみません…………」
リウイの説明を聞いたシルフィエッタは申し訳なさそうな表情で謝った。
「………それで何が知りたい。」
「え?」
そして唐突にリウイに問いかけられたシルフィエッタは首を傾げた。
「………先程エステルと共にお前達を救助しに行った時、お前は言ったな。俺や何故俺達が”共存”を目指すのかを。」
「あ、はい。でしたらお言葉に甘えまして…………」
その後シルフィエッタはリウイ自身の話や何故メンフィルを建国したのかを尋ね、リウイは全て答えた。
「……………………貴方は………いえ、貴方達は自分達が目指す道がどれほど困難かわかっていて、目指すのですか?光と闇の共存を目指すなんて誰も考えた事のない事を………」
話を聞き終えたシルフィエッタは驚きの表情でリウイを見つめて尋ねた。
「無論、理解している。………だが、ようやく理想を近い形で実現できる所まで来た。………そしてユイドラという俺達と同じ道を行く盟友も見つけた。俺とイリーナが目指した理想を………我が”覇道”は何者にも阻ませはさせん。例え相手が同族であろうと………神であろうとな。」
一方リウイは静かに頷いた後、全身にわずかな覇気を纏って答えた。
「……………イグナートが貴方のような人だったら、よかったのに………そうしたらルア=グレイスメイルのみんなも以前のような平和な暮らしに……………それに私だって…………貴方のような人だったら操を奪われても悔いはなかったのに…………」
「………………………」
自分から視線を外し、暗い表情で呟いたシルフィエッタの言葉を聞いたリウイは目を閉じて黙り込んで考え込み、そして目を見開いてある事を提案した。
「…………ならばメンフィルに来るか?」
「え?」
「………イリーナ達も説明したがリガナール半島はもはやどのような生物も住めない腐敗した土地だ。何故お前が生きているかは理解できないが…………今回の件を解決し、そこに戻った所でお前はすぐに死ぬぞ?」
「…………それは…………」
リウイの話を聞いたシルフィエッタは暗い表情で呟いた。
「………レスぺレントにもルーンエルフ族が住む森は存在し、彼らとも交流はある。俺達がお前をそこで生活できるように仲介しても構わん。」
「………どうしてそこまでしてくれるんですか?」
リウイの提案を聞いたシルフィエッタは驚きの表情で尋ねた。
「”王”として当然の義務だ。………それにお前はセオビットの母でもあるしな。奴もお前の事をメンフィルで受け入れてくれないかと頼んでくるだろうし、娘の頼みは”父”として聞いてやらないとな………」
シルフィエッタの疑問にリウイは答えた後、口元に笑みを浮かべた。
「…………本当にありがとうございます…………………でも………今の私は………森での暮らしは求めていません。」
「何?」
シルフィエッタの答えを聞いたリウイが眉を顰めたその時
「………………」
シルフィエッタは頬を赤く染めてリウイに寄り添い
「もし…………許して頂けるのなら………貴方のお傍で………貴方達の理想の為に私も何か手伝わさせて頂いても構いませんか………?」
「………………」
シルフィエッタに見つめられたリウイは驚きの表情で見つめた。
「………貴方に愛する方がいらっしゃるのはわかっています………それでも私は………貴方に抱かれたい………貴方の王としての責任や強さ………そして貴方自身の優しさを知って、私は貴方を信じ、そしてこの身と心を………一生を貴方に捧げたい………私の心の中では貴方の妃でいたい………」
そしてシルフィエッタはなんと自分が着ている服を脱ぎ、一糸まとわぬ姿になった。
「………自分でも不思議なんです。あれだけイグナートに…………魔族に犯され、国を………大切な人達を滅ぼされたのに………………でもこの気持ちは本物です。………どうか私に貴方の暖かさを刻み込んで下さい………!」
「………そこまで言われると、断れんな…………」
その後シルフィエッタはリウイに抱かれ、女性として初めて”幸せに”抱かれた。そして事が終わった2人はそれぞれ服を着て、先に進む準備をした。
「………そろそろ行くぞ。………他の者達も俺はともかくお前を心配しているだろうしな。」
「あ、あの。」
自分に背を向けて先に進もうとしたリウイにシルフィエッタは遠慮気味に話しかけた。
「何だ?」
「できればこれから私の事は………”シルフィ”とお呼び下さい………私と親しい人達のみに呼ばれていた愛称で………今は誰も呼んでくれる方は生きていないし………身も心も捧げた貴方には呼んでほしいのです………」
リウイに見つめられたシルフィエッタは顔を赤らめて、リウイを見つめて言った。
「ああ。…………我が覇道を共に行く者として歓迎する。………シルフィ。」
「はい………!………こちらこそ、よろしくお願いします……………!」
リウイに微笑まれたシルフィエッタは幸せそうな表情で頷いた。その後先を進んでいたリウイ達は探索をしているとまずはリースとアドル、マーリオンと合流でき、さらに進むとティオ、ラグタス、ラテンニールと、合流地点ではセリカとエクリア、セリカの使い魔達、そしてブレアード達と戦った終点ではエステル、ヨシュア、セオビット、そしてエステルの使い魔達の姿が見えた。
~ベルゼビュート宮殿・終点~
「あ………!みんな、ありがとう!もう、大丈夫よ。今は休んで!」
「どうやらみんな、無事だったようだね………」
リウイ達の姿に気付いたエステルは明るい表情をした後使い魔達を自分の身体に戻し、ヨシュアは安堵の溜息を吐きながらリウイ達に近づき
「母様!」
セオビットは嬉しそうな表情でシルフィエッタに近づいた。
「無事で何よりでよかったわ………」
「ありがとう、心配してくれて。幸い私はリウイ陛下と同じ場所に転送させられたから。」
安堵の溜息を吐いているセオビットにシルフィエッタは微笑み、顔を赤らめてエステル達と会話しているリウイを見つめ続けた後セオビットに言った。
「セオビット…………貴女がリウイ陛下を思う気持ち………私も理解したわ………本当に素敵な方ね………」
「ふふっ、そうでしょう?」
「ええ………それに…………………抱いてもらった時も………凄く優しいし………あんなに優しく抱いてもらったのなんて………初めて…………」
セオビットの言葉に頷いたシルフィエッタは小声で呟いた。
「あら?もしかして父様に抱いてもらったの?」
「……………………………」
そしてわずかな驚きを見せたセオビットに尋ねられたシルフィエッタは頬を赤く染め、顔を地面に向けて黙り込み、首を僅かに縦に振った。
「ふふっ♪………そっか………じゃあいつか、私と一緒に父様に奉仕したり、抱いてもらいましょうね?母様♪」
「セ、セオビット!!」
セオビットの言葉を聞いたシルフィエッタは頬を赤くして、セオビットを見た。
(………あれだけ綺麗な人達を自分の周りに囲っておきながらまだ足りないんでしょうか、あの人は。………私は絶対ああいう危険人物を恋人とかにはしたくありませんね。………まあ、そんな人にまず、惚れないでしょうが。)
シルフィエッタ達の会話を聞いていたティオはジト目でリウイを見つめ続けていた。
「お前達はこの近くに転送させられたのか?」
一方リウイは2人の会話やティオの様子には気付かず、エステル達と情報を交換していた。
「うん。ホント、ビックリしたわよ~。みんなといきなり離れ離れになったんだから。」
「幸いセオビットやエステルの使い魔達も僕達の近くに転送させられましたから、なんとかここまで辿り着けました。」
リウイに尋ねられたエステルは疲れた表情で溜息を吐き、ヨシュアは説明した。
「ブレアードはどうなったのですか?」
「僕達がここに到着した時は誰もいませんでした。」
「やられそうになったから、逃げたんじゃないの?」
一方エクリアは周囲を見回して尋ね、ヨシュアとエステルが答えた。
(フン、全く小賢しい事をする雑魚だの。)
「………次は必ず殺す。」
話を聞いていたハイシェラは鼻を鳴らし、セリカは静かに呟いた。
「………敵には逃げられたけど、これで次の”星層”に進めるな………」
「ええ。ではみなさん。そろそろ行きましょうか――――」
アドルの言葉にリースが頷いたその時、リース達の目の前に封印石が現れた!
「え……………」
「そ、それって………!」
「封印石………!」
封印石に気付いたリースは呆け、エステルとアドルは驚いた。そしてリースは封印石を回収した。
「もしかして今度こそ、レーヴェかしら?」
「………………………いえ。……………ひょっとしたらこれは違うのかもしれません。こうして手に取ってもあまり暖かくありませんから。」
エステルの推測を聞いたリースは真剣な表情で考え込んだ後、静かに呟いた。
「え………それって良くない意味で?」
「いえ、どちらかというと涼しく清らかな感じでしょうか。サティアさんやフィーナさん――――彼女達が纏っている神々しさと言うべきか………」
エステルの疑問にリースが苦笑しながら答えたその時
「クク………相変わらずの鋭さだな。」
なんと黒騎士が転位陣の前に現れた!
「あ………」
「へっ………!?」
「…………何者だ。」
黒騎士に気付いたヨシュアとエステルは驚き、セリカは警戒した様子で呟いた。
「黒騎士………やはり現れましたか。」
「フフ………駒はどうやらほぼ全て揃ったようだな………」
リースに睨まれた黒騎士は不敵な笑みを浮かべた。
(誰が駒だ、この戯けが。)
「………なるほど。貴様が話にあった黒騎士か………」
「………………」
黒騎士の言葉を聞いたハイシェラは黒騎士を睨み、リウイは目を細めて睨み、シルフィエッタは不安そうな表情で見つめていた。
「フフ………まさか奴があのような行動に出るとは”王”も予測していなかった。本来なら奴を滅してから授けるつもりだったが、その石はお前達への詫びと考えるがいい。封じられしは駒ではなく、ルールブックの類いではあるがな。」
「ルールブック………」
「遊戯を対等に進めるための知識と約束事をまとめたもの………つまり、ようやく正々堂々と対決する気になったわけですか。」
黒騎士の言葉を聞いたエステルは気になった言葉を繰り返して呟き、リースは睨みながら呟いた。
「フフ、それはお前達次第だ。一つ言えるとするならば………次なる遊戯盤で、お前達は全員、『試練』に直面することになるだろう。」
そして黒騎士は剣を構えて転位しようとしていた。
「………また………!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?『試練』って………いったい何のことなの!?」
「クク、大小様々な乗り越えるべき『試練』………その中にはこの私も含まれる。」
「え……………」
「……………っ……………」
黒騎士の言葉を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは黒騎士から視線を外した。
「『表』と『裏』の『試練』……………果たしてお前達に乗り越えることができるのか………フフ、楽しみに待っているぞ。」
そして黒騎士が消えようとしたその時!
「ハアッ!!」
「フッ!!」
なんとセリカとリウイが強襲した!
「なっ!?ガアッ!?…………………」
2人の行動に驚いた黒騎士は胴を十字に斬られ、斬られた部分から大量の血を噴き出した後消えた!
「チッ。」
「………逃がしたか。」
(うむ。次に邂逅した時は必ず仕留めるだの。)
黒騎士が消えた後リウイは舌打ちをし、セリカはハイシェラの念話を聞きながら静かに呟いた後それぞれ武器を収めた。
「………去りましたか。全く相変わらず甚だしい思わせぶりを………」
「そうね。………それよりいったん拠点に戻って封印石を解放した方がいいみたいね。」
「ええ、そうですね。ルールブック………何を意味しているのでしょうか。」
その後リース達は封印石を解放する為に一端庭園に戻った。
~隠者の庭園~
庭園に仲間達と共に戻ったリースは今までのように封印石を石碑にかざし、封印石を光らせた。
「手に入れた時から気になったけど………封印石の色が今までと違うな………」
その様子を見ていたアドルは考え込み
「たしかに光り方が今までとは全然違うわね………」
「誰が出て来るんだろね~?」
エステルは真剣な表情で呟き、ミントは不思議そうな表情で呟き
「あれ?この感じ……………」
「…………生きて……………ない…………」
リタは首を傾げ、ナベリウスは静かに呟いた。
「……………………………」
一方クローゼは驚いた表情で見つめていた。
「クローゼさん?どうしたんですか?」
「ええ………その光………どこか懐かしい感じがして…………」
「え…………」
自分の疑問に答えたクローゼの言葉を聞いたツーヤが驚いたその時
「ふふ………それは当然でしょうね。」
聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた!そして封印石は光を放ち、光からは今まで現れた女性の亡霊が現れた!
「あ………」
「えっ!?」
「この女性は………!?」
「………………………………」
リース、エステル、ヨシュアが驚いている中、女性はリース達の目の前にゆっくりと降りて来た後
「――――やっと直接、言葉を交わす事ができますね。ふふ………いったい何百年ぶりかしら?それに異なる世界が存在し、そして繋がっているなんて。しかも”神”自身が存在し、その方達が私の目の前にいるなんて。」
優しい微笑みを浮かべてリース達を見つめた後、上品に笑った。
「で、殿下………いや………」
「…………まさか…………あなたは……………」
女性をユリアとクローゼは驚きの表情で見つめていた。
「ふふ………初めまして、我が末裔よ。そして初めまして。我が庭園に訪れし客人たちよ。―――私の名前はセレスト。セレスト・D・アウスレーゼといいます。」
こうしてリース達は”隠者の庭園”の主――――セレスト・D・アウスレーゼと邂逅した…………
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