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衛宮士郎の新たなる道

作者:昼猫
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第26話 帰宅、そして―――

 
前書き
 前回の後書きで書いた通り、原作とは違い1日無理矢理延期させて二泊三日から三泊四日に急遽変更しました。
 全ては私、昼猫の勝手な思い込みと確認を怠ったせいで御座います。
 すいませんでしたm(__)m 

 
 翌日。
 朝食を取り終えた士郎達は、お土産を買うためにそのホテルの土産コーナーでは無く、外へ繰り出していた。

 「アルバさんのお土産、どれにしましょうか?」
 「寄木細工の工芸品とかいいんじゃないかな?若」
 「藤姉ぇのお土産如何しよっか~?」
 「美味い食い物だったら何でも食べるぞ?藤姉ぇは。雑食だからな」
 「・・・・・・・・・」
 「・・・・・・」

 葵ファミリー+αの内の4人は和気藹々としているが、ゲストである京極だけが違った。
 別に不機嫌と言うワケでは無い。
 彼の視線は基本、士郎に向いていた。
 勿論、見る見られる視線に鋭い士郎自身が気づいていない筈も無い。
 それ故、如何して自分を見ているんだと聞こうとした士郎であるが、何故か本能が聞くなと警鐘を鳴らして来たのだ。
 聞けば必ず藪蛇になると。
 イマイチ理由が解らないモノの、自分のこれまでの経験上その警鐘に逆らっていい方向に行った試しがないので、取りあえず聞かないと言う選択肢を取っていた。

 「・・・・・・・・・ふむ」

 そして士郎を見ると言うか観察している京極は、興味深そうに穴が開くほど見続けている。
 京極は今現在の士郎を図り損ねていた。
 数年の間、友人として過ごして来たから微妙な士郎の変化にも気づけたのだが、何がどう変化したかの詳細はまるで分っていなかった。

 (だが感じる。もうすぐすべての謎を解き明かす為に欠けている要因(ピース)と、巡り合う予感を・・・!)

 そして京極の予感通り、百代(ピース)が到着した。

 「あっ、士郎さん達も来てたんですね」

 そこに、同じく土産を買うなどの理由でホテルの外に繰り出していた、風間ファミリーと遭遇した。
 この時に京極は、士郎の微妙の変化の回答へと繋ぐための判断材料を得た。
 何故ならこの中で、士郎と百代が誰よりも早く目線を合わせたからだ。

 (2人の視線が重なった時、互いを見る目が以前よりも柔らかくなった?)

 これは一体何を意味するのかと、気になったので少々爆弾の投下(質問)をする事にした。
 京極が1人観察を続けている間に、風間ファミリーと葵ファミリーが混ざり合ってどのお土産を買おうか等で盛り上がる。
 その中で偶然か必然か、至近距離で話し合ってる士郎と百代(2人)へと切り込む。

 「武神に衛宮」
 『ん?』
 「これは私の勝手な推測だが、2人はまさか・・・・・・付き合いだしたのか?」
 『は?』
 『え?』
 「何・・・です・・・って」

 投下された爆弾に周囲は、1人以外が皆呆気に囚われ、その1人である冬馬が京極の言葉の意味するところに愕然とした。
 そして当人である2人は――――。

 「はぁ!?何言ってるんだ!私が“士郎”と付き合ってるだと!冗談も休み休み言えっ!!」
 「そうだぞ京極?俺が“百代”何かと釣り合う訳無いだろ?」
 「士郎と百代・・・か。2人とも何時から呼び合う仲になったんだ?」

 京極は士郎と百代の言葉を聞いた時の他の皆の意思を代弁する様に聞く。

 「えっ、あっ、そ、そんな事どうでもいいだろ!?」
 「ふむ。取りあえず攻略されつつあると言う事か。流石は衛宮だ。やるな・・・!」
 (士郎さん・・・・・・お得意の天然ジゴロでモモ先輩を攻略中?よしっ!大和を狙う上での最大のライバルが消えた。ありがとう士郎さん!!)

 百代の答えに京極と京だけ何故か納得した。
 それ以外は納得しきれていないものの、そこまで追求するほど興味は無い者と興味はあるがプライバシーに関わる事なので自重する者に見事に割れたのだ。
 しかし当事者であるうちの1人、百代はそんな事を気にもせずに士郎を睨む。

 「それよりも、私“なんかと”釣り合う訳無いとは如何いう意味だ?」
 「ん?意味も何もそのままだが。俺と百代みたいな可愛い女の子が釣り合う訳無いだろ?」
 「・・・・・・・・・」

 百代は士郎の言葉に苛立ちを無意識に治めながら面を喰らう。
 こんな公衆の面前で臆面も躊躇もなく、可愛いと言う言葉を平然と使う士郎に赤面すらも忘れる程だった。
 それを京が百代に囁く。

 「モモ先輩モモ先輩」
 「ん?京?」
 「士郎さんは誰だろうと平然と言って来るから、一々リアクション取ってたらきりがないよ」
 「まさか京も言われた事あるのか?」
 「私の場合、大和がいたから大丈夫(未だ絶好調で片思い中)だったけどね!」

 頬を赤らめキャーと言わんばかりのポーズを取る京に、百代は何とも複雑な顔で士郎を見る。
 それを薄っすらと片目だけを開けた京が、百代の様子を窺う。

 「・・・・・・・・・」
 (まだモモ先輩に自覚は無いかな?クッ、士郎さんの誑しスキルでも現時点ではこれが限界か・・・。中途半端に終われば再び大和争奪戦の最大のライバル(脅威)が復活してしまう。それだけは何としても避けなければッッ!!)

 この京の思考時間、僅か2秒。
 そして百代から微妙な視線を受けている当の士郎は、首を傾げつつも居心地が悪そうにしていた。

 「何なんだ?」
 「それを判らないのが士郎さんの致命的な欠点なんだよ」

 京はこのまま百代と士郎をくっつけたいと思っているが、露骨な後押しをすればその後どのような影響が起きるか想定できないので、歯噛みしつつも軽い注意だけに留めたのだ。
 結局、当人たちにそれ以外の大きな反応と変化も無いので、暫くして士郎と百代のお互いの呼び合いにも周囲が慣れて行ってしまったのだった。


 -Interlude-


 士郎は現在運転中だ。
 土産を買いながら最後の観光を終えた士郎達は、昨夜の時点でほとんど荷物をまとめ終えていたからすぐに出発体制を整えられていた。

 「この車良いなー、ハゲ達行きはこれで来たんだろー?」
 「あんまり騒がないでよガクト。無理して乗せてもらってるんだから迷惑でしょ」

 運転手である士郎を含めて5人で来たには後ろが騒がしい。
 それもその筈。自分達よりも先にホテルに戻っていた風間ファミリー達とまたも遭遇して、共にキャンピングカーに乗って帰る事に成ったのだ。
 確かに風間ファミリー達も乗せる事は可能だったが、行きの時とは違い座席も埋まってしまい、横になって寝るスペースは消えてしまう位には狭くなった。
 とは言っても、お互いの間には1人位なら座れるスペース位のゆとりはある。
 けれども車内の行き来は難しく、冷蔵庫に入っている飲み物や食料品も近くに座っている準が必然的に取り出して手渡す形になっていた。
 座席の位置は、士郎以外の葵ファミリー+αの4人は後ろを希望していたので最優先で決まり、キャップが助手席を希望したが迷惑になるだろうと最古の幼馴染である大和の決断により、無理矢理羽交い絞め状態で後ろに座らせられていた。

 「おーぼーだー!」
 「京、うるさいから黙らせろ」
 「分かりました、旦那様♡」
 「ふぐむっ・・・・・・ぎゃーーーー!!?」

 京に無理矢理に一味たっぷりの焼きそばパンを口に入れられたキャップは、口内の痛みに悶えながら悲鳴を上げる。
 因みに百代が助手席にいた。
 これは京の提案に、本人も拒否姿勢を示さなかったのでこうなったのだ。

 「後ろは賑やかで楽しそうだが、良かったのか?」
 「こんな美少女の横を独占できてるのに、何か不満でも?」

 土産の買い物時の反応に不満が残っていたのか、揶揄うように言う。
 だが百代は京からの忠告をまだ学んでいなかった様だ。
 士郎の臆面も無く言う言葉に。

 「押し付けすぎると思うが不満なんて無いぞ?寧ろ贅沢だと思うな。今だけとはいえ、百代程の美少女を独占できるなんて罪悪感すら感じるかもしれない」
 「なっっ!?」

 口にすれば気恥ずかしいであろう言葉を、士郎は柔らかな表情のまま百代に躊躇なく言う。
 それを受けた百代は二回目とは言え、赤面する。
 傍から見れば好意を抱いている判断材料であろうが、士郎は無自覚で百代は認めたら自分の負けと変な意地を張っていた。

 「如何したんだ百代?顔なんて赤くして・・・」
 「クッッ!!」
 「それで如何して俺は睨まれるんだ?」
 「士郎が悪いからだッ!」
 「なんでさ」
 『・・・・・・・・・・・・』

 そんな2人の様子や会話を盗み聞きしている者達がいた。
 士郎がノーマルなので口惜しく我慢しているが、それでも現時点で何所までいっているか気になる冬馬に2人がくっつく事により最強の恋敵が退場してくれることを切に願っている京。

 『・・・・・・・・・・・・』

 そして意外な事に、小雪と大和も気になっていた。
 小雪は士郎の事を兄同然に見ているが、いざ恋人が出来そうになったからか、複雑そうに窺っていた。
 意外な事にそれは大和も同様だった。
 大和にとって百代は色々無敵過ぎる姉気分だ。
 最高級の美人でもある事は大和も認めていたが、だがそれだけだった筈。
 それ故、今自分が百代と士郎に向けている感情を自覚し発見すると、自分の事ながら誰にも察知されないように装いながら驚くのだった。
 ――――まさか俺、姉さんの事が好きだったのか、と。
 そんな大和の装った気持ちに京だけには気づかれていた。

 (やっぱり大和、モモ先輩に惹かれてたんだ・・・。けど大和の伴侶になるのはこの私だっ!――――帰ったら大和を落とすのと並行して、モモ先輩と士郎さんのくっ付ける策を考えなければいけないなッッ!!)

 京は誰にも気づかれないように装いながらも、静かに闘志を燃やしていた。
 しかし、理由は判らずとも京が闘志を燃やしていることに、大和だけは気付いていた。
 ある意味相思相愛である・・・・・・のかもしれなかった。


 -Interlude-


 士郎の運転で皆を家まで送って行った。
 一番最初にモロの家。
 二番目に島津寮及び島津家前。
 三番目に京極の家。
 そして四番目に今現在居る川神院だ。
 冬馬達3人を車内で待たし、士郎は百代と一子に付き従って鉄心の自室に来ていた。
 そこにはルー師範代を伴った鉄心がいた。

 「なるほどのぉ~」

 鉄心が相づちを打ったのは、一子の修業体制の変革と条件付きである百代との組手稽古の件だ。
 この2人の件は、百代と一子は自分達だけで報告と許可を取ろうとしていたが、今後の川神院の重大案件になるだろうと士郎が提案したので、同伴してきていた。

 「いいだろ~爺ぃ」
 「お前の件は、士郎君さえ言いのなら儂は口出しせんわい。問題は一子の事じゃ」

 鉄心が横目で、2人で真剣に話し合っている一子とルーを見る。
 一子は真剣な表情だが、ルーは渋い顔をしていた。

 「お願いします。師範代っ!」
 「・・・・・・・・・」

 本気も本気の一子の頼みに、ルーは何とも言えない顔をし続ける。
 先程からこの繰り返しに鉄心は一度溜息をつき、口を挿む。

 「一子よ。ルーは別に反対してるわけじゃないんじゃぞ?」
 「え?」
 「アっ、総代!?」
 「ルーは単に悔しいだけじゃ。一子の伸びしろを上手く促せない自分。それにまだ見ぬ一子の新しい師に僅かばかりの嫉妬をの。そうじゃろ?」
 「全部言わなくてもイイじゃないですカ!」

 図星を言い当てられて、全て曝け出されたルーが鉄心に抗議する。
 しかし鉄心は受け入れるどころかさらに突っ込む。

 「ルーよ。答えは出てるんじゃろ?此処で反対するのは一子の為では無く自己満足でしかないと」
 「・・・・・・勿論デス。――――一子の気持ちは分かったヨ。その上、ワタシの未熟な指導力のせいで一子をそこまで押し上げられないのは、今回の事で自覚させられたしネ」
 「そんな!ルー師範代のせいじゃなく、アタシが悪い――――」
 「違うヨ一子、これはワタシ自信の問題サ。だから自分の未熟さを受け止めた上で言わせてもらうヨ。士郎君、如何かワタシの愛弟子川神一子をヨロシクお願いします」

 ルーは愛弟子一子の為、真摯な姿勢で頭を下げた。
 それに士郎も謙虚な態度で応じる。

 「いえ、若輩のみではありますが、出来る限りルー師範代の愛弟子である彼女をサポートして行きますよ」

 士郎の言葉と態度にルーは満面の笑顔になり、一子は何度も頭を下げた。
 無事問題解決となった場で、鉄心は百代に一子、それにルー師範代の3人に気付かれないように士郎にアイコンタクトを取る。

 (しろ)
 (報告しますよ勿論。当然でしょう?)
 (・・・・・・・・・・・・儂、今年の夏を生きて迎えられるかのう?)

 心からの溜息を人知れずつくのだった。


 -Interlude-


 士郎は最後に冬馬達を送り届けていた。
 明日は金曜なので今日くらいならとも思えるが、士郎の事情により今日は帰ってもらうになっていたのだ。

 「ありがとうございました、士郎さん。今回も楽しかったっすよ」
 「百代たちと鉢合わせたから、ゆったりとは出来なかったけどな」
 『・・・・・・・・・・・・』

 士郎の口から出る百代と言うキーワードに、冬馬と小雪は複雑な心境が絡み合って神妙な顔つきのまま黙る。
 それに対して士郎は首を傾げる。

 「如何した2人とも?」
 「えっ!?」
 「あっ!?」
 「若もユキもちょっと疲れてるんすよ」

 2人の変な反応に準がフォローに入る。

 「そうか。ならゆっくり休んで風邪とかひかない様にな」
 「・・・はい」
 「うん・・・おやすみシロ兄」
 「お疲れ様でした!」

 3人からの返事に手を振る事で答えた士郎は、車を発進させた。
 それを遠くに見送る3人の内、小雪と冬馬はまだ矢張り複雑そうだった。
 そして準も、そんな2人に掛ける言葉を探しながら考えていた。

 (全く士郎さんも罪作りだぜ。俺は興味ないが、多くの綺麗な造形然とした女どもを虜にしてるにも拘らず、モモ先輩も攻略中だと?それで若は呆然としてるし、その上ユキも複雑そうだ。――――やっぱモテすぎるのも考え物だな。まぁ、俺には愛しの甘粕真与(委員長)がいるんだけどな!!)

 結局掛ける言葉も見つからず、1人テンションを上げる事で2人を元気づけようと促すが、小雪から若干うざがられて脛を蹴られるのだった。 
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