英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第223話
~トリスタ~
「やっと……帰って来ましたね。」
「そうね……半年くらいしかいなかったけど、何だか懐かしい気分……」
「……エヴリーヌなんか、プリネ達の半分くらいしかいなかったのに、懐かしい気分になっている。……不思議。」
トリスタに戻って来たツーヤとプリネ、エヴリーヌは懐かしそうな様子で周囲を見回し
「フッ、そう言って貰えると君達の留学を推した立場として、心温まる話だよ。」
「それだけ濃い学生生活を送って来たという事だな。……まあ、最初”紫電”がいる上、”Ⅶ組”の担任教官であった事には驚くと共に先行きが少々不安に思ったぞ。」
オリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべてプリネ達を見つめ、レーヴェは静かな笑みを浮かべて呟いた。
「ああん!?その言葉、そっくりそのままお返しするわよ!あたしだって、悪名高き結社の”執行者”が副担任だなんて、正直勘弁してほしかったわよ!ただでさえ手のかかるクラスだってのに、アンタが裏で何か悪さしないか警戒する必要があったからね!」
顔に青筋を立ててレーヴェを睨むサラ教官の様子にその場にいる全員は冷や汗をかき
「アハハ、いつまで経っても二人は変わらないね~。」
「基本的に俺達を放置し、自分は好き勝手にやっていた癖によくそのような事が言えるな。」
「ふふ、今では立派にオレ達の教官として務めているのだから、昔の事は掘り返さなくていいのではないか?」
ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、呆れた表情でサラ教官を見つめるユーシスにガイウスは苦笑しながら指摘した。
(サラさんとレーヴェさんって、仲が悪いの??)
(え、えっと、それは……)
(ある意味仲がいいのだけどね……)
(まあ、サラが一方的に敵視しているだけで、レーヴェは軽く流しているけどね。)
(ふふっ、教官に聞こえたら面倒な事になるぞ、フィー。)
ゲルドの疑問にセレーネとアリサはそれぞれ答えを濁し、フィーの小声の答えを聞いたラウラは苦笑しながら指摘した。
(そう言えば前から気になっていたけどエリス、夏至祭が終わったあたりから定期的に外泊をしていたわよね?もしかしてエリゼと一緒に愛しのリィンさんと愛し合っていたのかしら♪)
(うっ!そ、それは……その………)
(…………アルフィン義姉様の推測している通りです。)
アルフィンにウインクをされたエリスが口ごもっている中、エリゼが静かな表情で答えた。
(うふふ、それなら全部終わった後今度はわたくしを含めて3人でトリスタを訪ねて4人で愛し合いませんか♪”裸の付き合い”という言葉があるのですから、4人で愛し合えば手っ取り早く仲良くなれると思いますわよ♪)
(ア、アルフィン義姉様!?)
(フフ、前向きに考えておきます。)
アルフィンの提案にエリスが慌てている中、エリゼは苦笑しながら答え
「???」
エリス達の様子に気付いたリィンは不思議そうな表情で首を傾げていた。
「フフ、私にとってもここは懐かしいわね。」
「……そう言えばアンタ、この町のラジオ局でも働いていたのだったわね。」
懐かしそうな様子でいるクロチルダの言葉を聞いたセリーヌは呆れた表情でクロチルダを見つめていた。
「最初に聞いた時は驚いたな……まさかあの”蒼の歌姫”がラジオのパーソナリティをやっていたなんて……」
「ううっ、こんな事ならもっと頻繁に”アーベントタイム”を聞いておくべきだったよ……」
マキアスとエリオットはそれぞれ疲れた表情で呟き
「フフッ、お望みなら全部終わって落ち着いた後また”アーベントタイム”に復帰しましょうか?ベルフェゴールの”使徒”になったお蔭で自由は約束してもらえるって話になったし。」
ウインクをしたクロチルダの言葉を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「ったく、本当に自分がやった事に反省しているのか怪しくなって来たぞ。」
「彼女の能力を知る身とすれば、正直勘弁してほしいです。」
「じょ、冗談よね、姉さん……?」
トヴァルとクレア大尉がそれぞれ疲れた表情をしている中、エマは大量の冷や汗をかきながらクロチルダを見つめた。
「フフッ、どっちだと思うかしら?」
「………………」
「お前が言うと洒落になんねーんだよ。それにしても………また帰って来る羽目になるとはな。もうここに帰って来るつもりはなかったんだが……」
クロチルダの答えにエマが固まっている中、クロウは呆れた表情で溜息を吐いた後複雑そうな表情でトリスタを見つめていた。
「クロウ……」
「やれやれ……そんな馬鹿な事を考えていたのかい。」
「クロウ君…………え、えっと、そうだ!今から学院に行かない?クロウ君にもだけど、プリネちゃん達にも見せたいものがあるんだ!」
クロウの言葉を聞いたジョルジュは複雑そうな表情をし、アンゼリカは呆れた表情で溜息を吐き、複雑そうな表情をしていたトワは気を取り直して提案をした。
「トワ会長?」
「え……クロウさんだけでなく、私達にもですか?」
「一体何なのでしょうか?」
トワの突然の提案にリィンやプリネ、ツーヤはそれぞれ不思議そうな表情で首を傾げ
「えへへ、とにかく行ったらわかるから、行こう!」
トワは笑顔で答えを誤魔化した。その後リィン達はトールズ士官学院に向かい、学院に到着するとリィン達を待ち構えていたかのように多くの生徒達がクラッカーを鳴らした!
~トールズ士官学院~
「おかえりなさい!」
「こ、これは一体……!?」
多くの生徒達に迎えられたリィンは驚きの表情をし
「えへへ……実はエリゼちゃんの”試練”が終わった後、私が学院のみんなにクロウ君達の事を連絡して、プリネちゃん達やクロウ君も戻って来てようやく”トールズ士官学院”が全員揃ったから、その記念のパーティーの準備をしてもらっていたんだ♪」
トワは無邪気な笑顔を浮かべてリィン達の説明した。
「ええっ!?い、何時の間にそんな手配を……!?」
「フッ、私達にも黙っているなんて水臭いじゃないか♪」
「ハハ、僕達にとってはサプライズパーティーになったね。」
トワの説明を聞いたエリオットは驚き、アンゼリカは口元に笑みを浮かべ、ジョルジュは微笑ましそうに見守っていた。
「えへへ……みんなを驚かせたくて黙っていたんだ。―――――クロウ君。トリスタに2度と戻るつもりはないなんて、アンちゃんの言う通り凄くバカな考えをしているよ。学院のみんなはクロウ君の帰りをずっと待っていたんだから!これを見たらわかるでしょう?」
「―――会長の言う通りだな、クロウ。俺達や会長達だけでなく、学院のみんながお前の帰りを待っていたんだ。だからこそお前を助ける為に学院のみんなも、お前の”減刑”をする為に署名してくれたんだ。」
「…………ああ………………本当に自分が馬鹿だったと、改めて思い知らされたぜ………」
「フフ………」
トワとリィンの言葉を聞き、自分が戻って来た事に心から歓迎している士官学院の生徒達を見て顔を俯かせて涙を流しているクロウをクロチルダは微笑ましそうに見守っていた。
「勿論、クロウだけでなくプリネ達の帰りもみんな、待っていたのよ?」
「はい!ツーヤお姉様達も”トールズ士官学院”の一員なのですから!」
「…………皆さん………はい……!」
「改めてよろしくお願いします……!」
「……………………」
アリサとセレーネの言葉を聞いた涙を流したプリネは涙をぬぐった後ツーヤと共に微笑み、エヴリーヌは呆けた表情で状況を見守り
「フッ、どうやら俺達はトールズの者達を完全に見誤っていたようだな。」
レーヴェは静かな笑みを浮かべて呟いた。
「―――ふふ。これでようやく”トールズ魂”を1つにする事ができたな。」
するとその時ヴァンダイク学院長がリィン達に近づいてきた。
「ヴァンダイク学院長……」
「その……お久しぶりです。」
ヴァンダイク学院長の登場にプリネが呆けている中、ツーヤは静かな表情で会釈した。
「うむ、プリネ君達も壮健そうで何よりじゃ。君達の帰りを首を長くして待っておったよ。――――勿論クロウ君、君もな。」
「………………学院長…………その………俺のやった事に学院の連中まで巻き込んでしまって、悪かったと思っている……俺のやった事は決して許されない事だとも自覚している……それでも一言だけ謝らせてくれ……―――すまなかった!」
ヴァンダイク学院長に見つめられたクロウはその場で頭を深く下げた。
「―――顔を上げるのじゃ、クロウ君。確かに君のやった事は一生を使っても償いきれない罪かもしれぬ。じゃがな……君は己の罪と向き合い、まだ”やり直せる”。帝国をより豊かな国にしたいが為に多くの怨嗟の声を無視し、更には負けた腹いせに双界に宣戦布告をしてまで、帝国を繁栄させようとする大馬鹿者のオズボーンと君は違う。」
「学院長………」
「………………」
ヴァンダイク学院長の言葉を聞いたリィンは呆けた表情をし、クレア大尉は辛そうな表情で黙り込んでいた。
「それに生徒が教師に迷惑をかけるのは当たり前の事じゃ。君もトールズの生徒。自分自身の罪を認め、儂らに謝罪した事だけで十分じゃ。じゃから君もトールズの一員として胸を張って、トールズの皆と決戦に挑むのじゃぞ?」
「……っ……!ああ……!」
ヴァンダイク学院長に諭されたクロウは一筋の涙を流した後涙をぬぐって決意の表情で頷き
「あっ!クロウ、今泣いていたよね~♪」
「珍しい場面が見れたな。」
「フフ、導力カメラがこの場にないのが非常に残念だよ♪」
ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、ユーシスとアンゼリカはそれぞれからかいの表情でクロウを見つめていた。
「お、お前ら……ってか、ゼリカ!そこで何で導力カメラが必要なんだよ!?」
「ハハ……これもまた久しぶりの”かけがえのない毎日”の一つだね。」」
アンゼリカと言い合いしているクロウを見たジョルジュは苦笑し
「これでようやくトールズ士官学院が真の意味で”一つ”になれたな……」
「うむ。例えどんな苦難があろうと一つの意志になった我らが挑めば必ず超えられるな……!」
「これが”Ⅶ組”……ううん、トールズ士官学院が一つになった瞬間なのね……」
ガイウスの言葉にラウラは力強く頷き、ゲルドは微笑ましそうにリィン達を含めたトールズ士官学院の生徒達を見回していた。
「…………?」
「セレーネ、どうしたの?」
首を傾げて不思議そうな表情で考え込んでいるセレーネに気付いたエリゼは尋ねた。
「いえ……誰か忘れているような気がしまして……」
エリゼの疑問にセレーネが答えたその時聞き覚えのある女性の声が聞こえ
「まあ……私の存在を忘れているなんて、皆さん、薄情ですわよ♪」
「へ。」
女性の声を聞いたアリサが呆けたその時、何とシャロンが近づいてきた!
「うふふ、お久しぶりですわ、皆様♪」
「シャ、シャ、シャ……シャロン!?」
「何でこんな狙いすましたかのようなタイミングで現れるのよ……」
微笑みを浮かべて一礼したシャロンをアリサは口をパクパクさせた後声をあげ、サラ教官はジト目でシャロンを見つめた。
「ふふっ、唯の偶然ですわ♪」
「ハア……母様の傍についていなくていいの?ルーレがクロスベル領となった事で”ラインフォルトグループ”も忙しくなっているでしょうに。」
シャロンの答えにその場にいる全員が脱力している中、アリサが呆れた表情で尋ねた。
「うふふ、その点もご心配には及びませんわ。何せ新しく入った新人の方達が優秀ですので私の代わりを十分務められますし、それに会長からも命令されておりますので♪あ、ちなみに新人の方達もいざという時私が呼べば”いつものように”来てくださるとの事ですのでご安心下さい♪」
「し、”新人”ってエウシュリーちゃん達の事でしょう?ハア……喜んでいいのやら、悪いのやら……」
「というかアタシは前々からあのメイド天使たちの現れ方が滅茶苦茶気になっているのだけど。あの天使達、状況を考えると次元を超えているわよ?」
「セ、セリーヌ。」
シャロンの説明を聞いたアリサは疲れた表情で溜息を吐き、セリーヌの疑問を聞いたエマは冷や汗をかいた。
「――と言う訳でシャロン・クルーガー、再び皆様のサポートを誠心誠意務めさせて頂きますのでよろしくお願いしますわ♪」
「ハハ……――はい、改めてよろしくお願いします、シャロンさん。」
シャロンの言葉にその場にいる全員が脱力している中、リィンは苦笑しながら頷いた。
こうして……それぞれの事情で戻ってくることができなかったメンバーも全員戻って来た事によってトールズ士官学院の意志が真の意味でようやく”一つ”になり……その日の夜のトリスタはトールズ士官学院の意志が真の意味で一つになれたお祝いが行われ……トリスタ全体がお祝いムードになっている中、リィンはカレイジャスの甲板で物思いにふけていた。
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