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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第222話

1月13日、同日7;20――――



~執務室~



「え、えっと………クロチルダさん、申し訳ありませんがもう一度言って貰ってもいいですか?」

事情を聞き終えたプリネは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせながらその場にいる全員を代表してクロチルダに問いかけた。

「ええ、いいわよ。―――私はリィン君の使い魔―――魔王ベルフェゴールの”使徒”になったわ。メンフィルの客将である彼女の(しもべ)になったのだから、レーヴェやアリアンロード達みたいに自由の身にしてもらえないかしら?貴女達も知っていると思うけどこれでも私は歌姫として有名だったから、メンフィル領内で歌姫として活動してその際に発生する利益を勿論メンフィルに還元するし、私の”魔女”の知識が必要なら惜しみなく提供するつもりよ。」

「レーヴェは正確に言えば自由の身ではなくツーヤという監視がいるのじゃがな…………」

「……一体どういう風の吹き回しでベルフェゴール殿の”使徒”になったのだ?」

クロチルダの答えを聞いたリフィアが頭を抱えて疲れた表情で溜息を吐いている中、ゼルギウスは眉を顰めて尋ねた。



「フフッ、それを答える前にレオン、一つだけ謝っておくわね。」

「……何だ?」

突如名指しされたレーヴェは警戒の表情でクロチルダを見つめた。

「”結社”にいた頃は貴方に何度も私に振り向いてくれるようにアプローチしていたけど、私、心から愛する男性ができたから貴方の事はどうでもよくなったの。だから悪いけど私の事は諦めて。」

「…………………」

「あら……フフッ、今の話は初耳ですわね。」

「ア、アハハ……帝都であたしにレーヴェさんへの伝言を伝えた時から何となく察してはいましたけど……というか”また”ですか、ベルフェゴールさん………」

「うふふ、さすがは”七大罪”の一柱を司る”魔神”だけあって、テロリスト、裏組織の最高幹部と、最上級レベルの元犯罪者ばかりを”使徒”にしているわね♪」

「ま、プリネと付き合うつもりなら過去の女とは別れるのが当然だね。」

クロチルダの言葉を聞いたプリネが呆けている中、シグルーンは微笑みながらレーヴェを見つめ、ツーヤは苦笑したがすぐに疲れた表情で肩を落とし、レンはからかいの表情になり、エヴリーヌは静かな表情で呟いてレーヴェに視線を向けた。



「……言っておくが”蒼の深淵”と男女の仲になった覚えはない。誤解を招くような事は言わないでもらおうか。―――それと”蒼の深淵”。諦めるも何も俺は出会った当初からお前の事を何とも思っていなく、むしろ迷惑していたくらいだ。お前が他の男に熱中する事で、俺への関心がなくなる事は俺自身が望んでいる事だ。俺に遠慮する事なくその男に付き纏ってくれた方が俺としても助かる。」

「まあ……あんなに熱いアプローチを何度もしてあげたのに、そんな答えを口にするなんて酷い男ね。―――でも、今となってはどうでもいいわ。今の私は彼のハーレムの一員だしね♪」

エヴリーヌに指摘した後静かな笑みを浮かべて答えたレーヴェの言葉に目を丸くしたクロチルダはすぐに気を取り直し、ウインクをした。

「…………クロチルダさん、念の為に一つだけ確認しておきたい事があるのですがよろしいですか?」

その時呆けた表情で黙り込んでいたエリゼは背後に魔力によって発生した電撃をバチバチと迸らせると共に周囲の空気を震わせる程の膨大な闘気と威圧を纏って微笑みながらクロチルダを見つめ

「ヒッ!?」

「ぬおっ!?」

エリゼの様子に気付いたエヴリーヌとリフィアは悲鳴を上げた後表情を青褪めさせて身体を震わせ始めた。



「何かしら?」

「……クロチルダさんが懸想している男性と言うのは兄様ですか?」

「ええ♪それとエリゼ、昨日はリィン君にあんな罰を与えてくれてありがとう♪お蔭でとても情熱的で素敵な初体験になったわ♪」

「!!!!??い、一体何を……!?―――――!!ま、まさかあの後貴女が兄様の部屋に……!?」

クロチルダの答えに混乱したエリゼだったがすぐに心当たりを思い出し、身体を震わせると共に全身に膨大な闘気や魔力をさらけ出しながらクロチルダを見つめて問いかけた。

「ええ、グリアノス越しで状況を見て、貴女がリィン君と情熱的な愛し合いを終えて部屋を去った後にリィン君に今までのお詫びや助けてくれたお礼も込めて奉仕をした後、リィン君の手錠を外してあげた後リィン君と何度も愛し合ったわ♪」

「…………………………リフィア。急用ができたから少しの間休憩時間を取るわね。」

「ヒッ!?こ、こっちを見ないで……!」

「ぬおっ!?わ、わわわわ、わかった!お主の気が済むまで休憩するがよい!というか昨日リィンがお主の試練を乗り越えた時点でお主は”紅き翼”の所属になったから、目的を果たすまで戻って来なくてよいぞ!」

エリゼに視線を向けられ、エヴリーヌと共に恐怖に震えていたリフィアはエリゼに退室を促し

「――失礼します。」

そしてリフィアから許可を貰ったエリゼは部屋を出た。


「フフッ……それで私の頼みは聞いてもらえるかしら?」

「―――私達がお父様達を説得するので安心してください。”福音計画”の際レーヴェが”教授”との決戦の際に私達に寝返ったように、オズボーン元宰相との決戦に貴女も協力するのですから、説得できると思います。」

「ありがとう♪さすがはレオンが選んだ元私の好敵手ね♪―――それじゃ、私も失礼するわね。」

「フッ、まさか”蒼の深淵”すらも惹きつけるとは……お蔭で厄介払いができた。シュバルツァーに礼を言わねばならないな。」

クロチルダが退室した後レーヴェは静かな笑みを浮かべて退室しようとしたが

「待って、レーヴェ。その前に聞きたい事があるのだけど。」

「?」

プリネに制止され、不思議そうな表情で振り向くと膨大な威圧を纏って微笑むプリネがレーヴェを見つめていた!



「……カリン?」

「フフッ、”結社”にいた頃は随分とクロチルダさんと”仲が良かった”ようね?さっきのクロチルダさんの話……もう少し詳しく聞かせてくれないかしら?」

「待て、カリン。何か誤解していないか?さっきも言ったように”蒼の深淵”とは何もなかったぞ。むしろ言い寄られて迷惑していたくらいだ。」

プリネに指摘されたレーヴェは冷や汗をかきながら反論したが

「私に対して後ろめたい事がないのなら、詳しく話してくれても問題ないわよね??」

「………………」

プリネが聞く耳を持っていない事に気付くと表情を引き攣らせた。



「ヒッ!?プリネまで!?ガタガタブルブル……!」

「うふふ、プリネお姉様が嫉妬している所なんて初めてみたわ♪まあ、仕方ないわよね♪”蒼の深淵”は凄く美人さんで、スタイルだってプリネお姉様より上だし♪」

「何故余の周りには嫉妬深い女性が多いのじゃ……」

「しかも揃いも揃ってその女性達の相手のほとんどは多くの女性達と関係を持っている人達ばかりですよね……」

その様子を見守っていたエヴリーヌは表情を青褪めさせて身体を震わせ、レンは小悪魔な笑みを浮かべ、リフィアとツーヤは疲れた表情で頭を抱え

「……エリゼから話には聞いてはいたが、話以上の節操の無さだな……」

「フフッ、下手をしたら多くの女性達との結婚式を挙げた後も更に増やすかもしれないわね。」

リィンの顔を思い浮かべたゼルギウスは呆れ、シグルーンは苦笑していた。



~客室~



「…………ん………(殺気!?)!!――――え”。」

翌朝目覚めたリィンは自分に向けられる殺気に気付いた後慌てた様子で飛び起きて身構えたが目の前にいる人物達を見て表情を引き攣らせた。

「ようやくお目覚めね、リィン?フ、フフッ、フフフフフ……!」

「そのご様子ですと昨夜もさぞかし楽しまれたのでしょうね、兄様?ウフフフフフ……!」

「私とした事が完全に油断していました……まさかクロチルダさんがこんなにも早く積極的に動いて来るなんて想定外です……!ウフフフフ……!」

「フフ、姉さんとまでそうなる事は予想していましたけど、幾ら何でも早すぎですよ、リィンさん………」

「シュバルツァー家は将来が安泰ですね。跡継ぎには困らないのですから、フフッ………」

「むう~……!やっぱり、リィン君って、大きな胸の女の人が好きなんじゃないの!?」

「お兄様……お兄様は後何人増やせば気がすむのですか……?」

「うふふ、また増えた事を後で女神様に報告しなければなりませんね、あなた♪」

「あわわわわわわわわわっ!?というか何でみんなクロチルダさんの事を知っているんだ!?」

自分と深い関係であるアリサ達から一斉に見つめられたリィンは慌て始めた。



「ああ、それは私がエマ達に教えたのよ♪私もリィン君のハーレムの一員になったからよろしくってね♪」

「…………………」

ウインクをしたクロチルダの答えを聞いたリィンは石化したかのように固まったが

「エリオット、マキアス!悪いとは思うけどまたエリゼ達と一緒にリィンとの手合せをするからリィンを郊外まで連行して!」

「うん、いいよ!」

「了解だ!―――それとできれば僕達も君達と一緒にリィンとの”手合せ”をしてもいいか!?」

「ええ、構いませんよ。」

「エリオット!?マキアス!?何で二人まで加わるんだ!?」

エリオットとマキアスまでもが加わった事に信じられない表情で声を上げて自分の両腕を掴む二人に指摘した。



「リィン……僕は別にリィンが多くの女性と結婚しても他人事だから気にしなかったけど、さすがにその結婚する相手の一人がクロチルダさんだと話が別だよ!」

「”蒼の歌姫(ディーバ)”であるクロチルダさんは僕達にとっては憧れの存在だったんだぞ!?なのにアルフィン殿下を始めとした多くの女性達とうらやまけしからん関係になっている君がクロチルダさんとまでうらやまけしからん関係になるどころか結婚までするなんて、余りにも酷い話じゃないか!僕とエリオットがクロチルダさんのファン達の代表として、君にファン達の怒りの鉄槌を与えるから覚悟しろ!」

「…………………………」

エリオットとマキアスが歌姫でもあるクロチルダの熱烈なファンである事を思い出したリィンは大量の冷や汗をかいた後、諦めた状態で連行され、アリサ達はその後を追って行った。



「フフ、どうやらあの様子だとトワの怒りの代わりの私の拳も必要のようだね♪」

「……私も滅茶苦茶腹が立ってきたから加わってくる。」

アリサ達の後を追うようにアンゼリカとフィーもアリサ達の後を追い

「あ、あの野郎……!俺がいない間にあんなにも綺麗所を増やしていた挙句”氷の乙女(アイスメイデン)”どころかスカーレットまでも自分のハーレムメンバーにしていただと……!?畜生―――――ッ!何でお前ばっかりそんなにモテるんだよ!?しかも鉄血の忠臣だった”氷の乙女”だけに飽き足らず俺の仲間だったスカーレットとヴィータとまでヤって、自分のハーレムにするとか寝取り属性もあるじゃねえか!お前はエレボニア……いや、世界中の綺麗所を全部喰う気なのか!?このリア充野郎が―――――ッ!」

クロウは悔しそうな表情で咆哮を上げたが

「でもクロウだけはリィン君に文句を言えない立場だよね?リィン君のそう言う所のお蔭で僕達と共にいられるんだから。」

「グッ……!」

苦笑しているジョルジュに指摘されると嫌そうな表情で唸り声を上げた。



「アハハ、”結社”の”蛇の使徒”まで惚れさせるとかリィン、どんどん見境がなくなってきているよね~。」

「阿呆が……何故毎回痛い目に遭っている癖に全く反省しないのだ………?」

「フフ、反省はしていると思うが、止める事は無理だろうな。」

「ったく、本当に”天然”って厄介よね……」

「あの性格をどうにかしないと、これからも被害者が増え続けるでしょうね。」

(フフ、既に私もその一人である事は黙っておいたほうがよさそうね。)

ミリアムは無邪気な笑顔を浮かべ、呆れているユーシスの疑問に対してガイウスは苦笑しながら答え、疲れた表情で頭を抱えたサラ教官にラウラは真剣な表情で指摘し、ラウラの言葉を聞いたゲルドは苦笑していた。



「ハッハッハッハッ!さすがは我が義弟(おとうと)!まだ17歳なのに酒池肉林を体現するなんて、本当に羨ましいよ♪下手をすればあのヴァイスすらも超えているかもしれないね♪」

「ハア……あの子に惚れた女性って、どうしてみんなそんなアッサリと自分の純潔を捧げる事ができるのよ……あの子に惚れたら貞操概念も破壊されるのかしら?」

(フフ、その内エマと一緒に奉仕をしたり、抱かれるのもいいかもしれないわね♪)

オリヴァルト皇子が声を上げて笑っている中セリーヌは疲れた表情で溜息を吐き、クロチルダは今後のリィンとの情事を思い浮かべていた。



こうして……”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダはベルフェゴールの”使徒”になった。



その後リウイ達に許可をもらう為にリフィア達と一端別れたリィン達はトリスタへと帰還した。 
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