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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~援軍の鼓動~

~レウィニア神権国・王都プレイア・王城~



「―――久しいですね、セリカ。異なる世界にて滞在し、しばらく留守にしていたようですが……異なる世界での貴方の役目も終わったのですか?」

「……ゼムリアの存在も既にお前の耳に届いていたか。」

(まあ、お前や嬢ちゃんたちと親しい間柄であるレヴィア嬢ちゃんはゼムリアの存在を知っていたからな。大方レヴィア嬢ちゃんが報告したのじゃろう。)

水の巫女が既にゼムリア大陸の存在に気付いている事にセリカは呆れ、ハイシェラは自身の推測をセリカに伝えた。



「――まあいい。水の巫女、双界の破壊を防ぐ為に今は戦力がいる。一部でもいいからレウィニア軍をゼムリアに派遣する事は不可能か?」

「貴方が私に軍の派遣を頼む日が来るとは……少し見ない内に変わりましたね。貴方の”第一使徒”が貴方の元から去った時期の前後あたりに妙な水の流れを感じましたが…………――――それで異なる世界で何があったのですか?」

そしてセリカは水の巫女に事情を説明した。



「……………………なるほど。――――――いいでしょう。貴方の要望通り異なる世界で起こる決戦にレウィニア軍も派遣するようにしましょう。」

「……俺が言うのも何だがそんな簡単に決めていいのか?」

(あまりにもあっさりと決めると、逆に妖しいだの。)

水の巫女の口から出た予想外の答えにセリカは目を丸くし、ハイシェラは真剣な表情で呟き

「―――ですが一つ条件があります。」

(そら来た。一体どんな無茶要望を突きつけるつもりだの。)

次に出た水の巫女の言葉を聞いたハイシェラは呆れた表情をしていた。



「何だ?」

「異なる世界にレウィニア軍を派遣するにしても異なる世界の転移門を管理しているのはメンフィル。セリカ、貴方がレウィニアの外交官の代わりを務め、”闇王”達に異なる世界―――ゼムリア大陸へのレウィニア軍の派遣ができるように説得してください。」

「何……?俺がリウイ達を説得しろだと?」

(セリカが外交官を務められる訳がないのに、何を考えておるだの。)

水の巫女の口から出た予想外の条件にセリカは眉を顰め、ハイシェラは呆れた表情をしていた。



「彼らと”絆”を結んだ貴方にしかできない事です。―――なお貴方の補佐にレヴィアを付けるように手配しますので、レウィニア軍の派遣の件は貴方に託します。」

セリカに伝え終えた水の巫女はただの石像へと戻り

「………これは”借り”だからな………」

それを見たセリカは静かに呟いた後その場から去って行った。そして数時間後水の巫女の”神格者”の一人であり、レウィニアの将軍の一人でもあるレヴィア・ローグライアとセリカの屋敷を訪れていた。



~数時間後・セリカの屋敷・セリカの私室~



「セリカ!ようやく戻ってきたと思ったら、巫女様に何を言ったんだ!?お前が外交官等務まる訳がないだろうが!?しかも相手国はよりにもよってあのエディカーヌとも盟友の関係であると疑われているメンフィルだと!?一体今まで何をしていた!?」

金髪の麗人騎士――――水の巫女の”神格者”の一人にして名門”ローグライア家”の当主であるレウィニア神権国第十一軍『白地龍騎士団(ルフィド・ヴァシーン)』を率いる騎士団長――――レヴィア・ローグライアは憤慨した様子でセリカの私室の扉を勢いよく開けて入って来た。

「何だ、もう来たのか。―――行くぞ。」

レヴィアの訪問にセリカは驚く事無く自身の荷物を持ってレヴィアに近づいた。



「お、お前という奴は………!―――それで行くと言ったがどこに行くつもりだ。」

セリカのマイペースさに顔に青筋を立てて身体を震わせていたレヴィアだったが、長年の経験から怒鳴っても無駄とすぐにわかっていた為気を取り直して尋ねた。

「メンフィルの帝都―――”ミルス”だ。」

「な―――――」

そして自分の答えに絶句しているレヴィアに近づいたセリカは”帰還の耳飾り”を使い、ミルスへと転移した!



~聖魔の帝都ミルス~



「なっ!?転移魔術……いや、魔道具か。セリカ、一体どこに転移した?」

突然の出来事に驚いたレヴィアだったがすぐに落ち着き、真剣な表情でセリカに尋ねた。

「……先程ミルスに行くと言ったが。」

「何だと!?ではここがメンフィル帝国の帝都―――”ミルス”なのか!?」

セリカの口から出た信じられない答えを聞いたレヴィアは信じられない表情で叫んだ。



「―――行くぞ。」

「おい!?今度はどこに行くつもりだ!」

歩き出したセリカの突然の行動に驚いたレヴィアは慌ててセリカを追いかけて尋ねた。

「城だが?」

「帝城だと!?まさか面会の約束も無しに行くつもりか!?おい待て、セリカ!というかそれ以前にまず私に詳細な説明をしろ!私はまだ何も聞かされていないのだぞ!?」

そしてレヴィアはセリカに説教をしながらセリカと共にマルーダ城へと向かい始めた。



~30分後・マルーダ城・客室~



「―――では”風の女神(リィ・バナルシア)”教もゼムリア大陸の決戦に加勢するという事で構わないか?」

30分後シルヴァンはリウイと共に客室で天使と対面していた。

「―――はい。ですがその代わり……」

「――わかっている。”風の女神(リィ・バナルシア)”教がゼムリア大陸でも布教ができるようにメンフィルが最大限に協力する。それで問題ないのだな?」

天使―――”風の女神(リィ・バナルシア)”に仕えている天使モナルカの言葉の続きをリウイは答えた後真剣な表情で尋ねた。



「ええ。では私はゼムリア大陸での決戦に参戦する騎士達の編成がありますので本日はこれで失礼しますわ。」

「……その口ぶりだとモナルカ殿も此度の決戦に参戦するのか?」

モナルカの言葉を聞いてある事を察したリウイは尋ねた。

「はい。メンフィルと何度か面識のある私が適任との事なので。―――それでは今度こそ失礼しますわ。」

リウイの質問に答えたモナルカは客室から出て行った。



「リウイ様、シルヴァン陛下。少々よろしいですか?」

モナルカが退室して少しすると扉がノックされ、ペテレーネの声が聞こえて来た。

「ペテレーネか?ああ、別に構わん。入れ。」

「―――失礼します。リウイ様、シルヴァン陛下。その……セリカ様がレウィニアの”使者”としてお二人を尋ねてきたのですが如何なさいますか?」

入室したペテレーネは戸惑いの表情でリウイとシルヴァンにとって青天の霹靂ともいえる出来事を口にした。


「何?セリカがレウィニアの”使者”だと?何かの間違いじゃないのか?」

ペテレーネの報告を聞いたリウイは眉を顰めた後尋ねた。



「い、いえ……信じられないかと思われますが本当の事です。レウィニア神権国の親書もお持ちでしたし、それにセリカ様と同伴されている方の事も考えると本当の事かと。」

「”神殺し”に同伴者だと?”神殺し”の”使徒”ではないのか?」

ペテレーネの話が気になったシルヴァンは不思議そうな表情で尋ねた。

「いえ、”使徒”の方達ではありません。レウィニア神権国第十一軍『白地龍騎士団(ルフィド・ヴァシーン)』の騎士団長――――レヴィア・ローグライア様がセリカ様の同伴者です。」

「”白地龍騎士団”の騎士団長……―――”レウィニアの白き薔薇”か。一度レウィニアに戻ると言っていたが……何故奴まで連れてきたのだ?」

「それが……ゼムリア大陸で起こる決戦についての話し合いの為に訪問したとの事です。」

考え込んでいるリウイにペテレーネが言い辛そうな表情で答えた。



「…………どう考えても嫌な予感しかせんな。」

「同感です……というかそれ以前に普通使者が面会の約束もなく他国の皇に突然面会を申し出ますか?」

ペテレーネの答えを聞いた瞬間頭痛を感じたリウイは頭を抱え込み、リウイの言葉に頷いたシルヴァンは疲れた表情で呟いた。

「奴が外交の手順を知っている訳がないだろう……ハア……シルヴァン、悪いが奴の面会に付き合ってくれるか?」

「勿論そのつもりです。」

その後リウイ達やセリカ達と面会し、話し合い始めた。



同時刻、ラウルバーシュ大陸西方―――――”クヴァルナ大平原”



~終の御祠~



ラウルバーシュ大陸の西方と中原の境目に広がる”クヴァルナ大平原”に存在する聖地―――”終の御祠(ついのごし)”。そこでは”とある事情”によって門戸が開かれ、様々な種族や宗教の枠組みを超えた多くの若者達が集結し、ある目的の為に熾烈な競争をしていた。そんなある日、金髪の青年―――エルバラード・ハイオンは自分の教官を担当する悪魔族の魔術師コリドーラに呼ばれ、仲間のラヴィリエ・インタルーデとミストリアと共に向かい、コリドーラより事情を聞かされた。

「い、異世界~!?しかもその異世界で起こる決戦の結果によって私達の世界も崩壊する~!?」

「にわかには信じられないな……夢でも見たのではないか?」

事情を聞いた赤毛の娘―――ラヴィリエは信じられない表情で声をあげ、銀髪の少女―――ミストリアは呆れた表情で自分達の担当教官である魔術師コリドーラを見つめていた。



「失礼ですね~。メンフィル帝国からの親書にもちゃんと書いてありますよ~。」

二人の反応を見たコリドーラは不満げな表情を見せながら答えた。

「”メンフィル帝国”……数年前から”クヴァルナ大平原”と交流をし始めたというレスペレント地方全土を治める”闇夜の眷属”達の大国ですか。それでその異世界―――ゼムリア大陸という所で起こる決戦の加勢の要請をメンフィル帝国はどうして”終の御祠”にしたのですか?」

金髪の青年―――エルバラードは考え込んだ後不思議そうな表情で尋ねた。



「何でもメンフィルの理想は”全ての種族との共存”だそうでして~。多くの亜種族達に加えて私のような”闇夜の眷属”も共存して暮らしているこの”クヴァルナ大平原”とは親密な関係になりたいらしくて~。その切っ掛けを作る為に今回の話を持ってきたそうです~。なお加勢に応じた場合は私達―――”クヴァルナ大平原”に住む人々が異世界――――ゼムリア大陸に行って活動する時に最大限に協力や配慮をしてくれるとの事です~。」

「……我々にその話を持ってきたという事はメンフィル帝国の要請に応じ、我々が加勢しに行けという事か?」

「はい~。正確に言えばエルバラード・ハイオン。貴方にですが。」

ミストリアの推測に頷いたコリドーラは真剣な表情でエルバラードを見つめた。



「僕に……ですか?一体何故……―――!まさか僕をここに残してくれた件同様”神の戒土”が……!?」

「そうです~。ただあの時とは違ってちゃんとした理由もありますよ~。”候補者”の中で唯一”候補者”を含めた多くの異種族と協力関係である貴方が適任だとの事です。何せ貴方は幽霊……いえ、幽鬼でしたか~?まあ、どっちでもいいですけど、幽霊の彼女どころか本来決して相容れる事はない存在である魔族と天使に加えて”魔神”すらも仲間にしていますので~。」

「えっと……その戦いに加わったら私達は何か得とかあるんですか?」

エルバラードの疑問に答えたコリドーラにラヴィリエは不思議そうな表情で尋ねた。



「得するかどうかはわかりませんよ~。”特別課題”ですので~。」

「”課題”って事は確定しているようなものじゃない……」

コリドーラの答えを聞いたラヴィリエは疲れた表情をしたが

「――だが”特別課題”という言葉からして、こなす事ができれば”我々の今後”の為にもなるかもしれないな。」

「!それって……!」

「他の”候補者”より有利な立場に立つ事ができるのですか?」

ミストリアの言葉を聞いて顔色を変え、エルバラードは真剣な表情でコリドーラを見つめて尋ねた。



「さあ~、どうなるかは私も知りませんよ~。」

「…………わかりました。その”特別課題”、謹んで引き受けさせて頂きます。二人も、協力してくれるかい?」

とぼけた様子で答えたコリドーラを見つめて考え込んだエルバラードは決意の表情で答えた後二人に視線を向け

「ええ、勿論!それに”冒険者”としても興味が惹かれる話だし!」

「この世界とは異なる世界……どのような世界なのだろうな。」

ラヴィリエとミストリアはそれぞれまだ見ぬ異世界に興味津々な様子を見せながら答えた。



「決まりですね~。ああそうそう~、今回の”特別課題”には面倒ですけど私も引率としてついて行く事になっていますので~。」

「わかりました。先生も一緒に来てくれれば心強いです。異世界か……一体どんな所なんだろう?」

コリドーラの加勢に心強さを感じていたエルバラードはまだ見ぬ未知の世界に期待を膨らませながら窓の外を見つめていた。 
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